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6/28/2024, 12:39:35 PM


 もう、ほとんど夏ですね。
 
 貴女を守るようになってからは、幾度もの夏を共に過ごしましたが、俺が生きていた時は、貴女と夏の時間を共有することはできませんでした。

 貴女をこうしてお守りできること。
 俺はそれだけで満足すべきであるし、実際満足もしています。
 それでも時折、蒸すような暑さの日が暮れてきた夕日の中、貴女の隣に座って、少し汗ばんだ貴女の手を握って、俺の名を呼んでくれる貴女の声と、遠くに鳴くひぐらしに耳を傾けてみたかった、と思ってしまうのです。

6/27/2024, 10:58:55 AM


 最近の貴女はあまり、「ここではないどこかへ行きたい」「今の私ではない人でありたい」と言わなくなりましたね。それは俺たちにとっても、喜ばしいことです。

 ああ、気持ちのいい夜の風が、貴女のいる部屋に吹き込んできますね。その涼やかな空気の流れに、目を閉じて静かに浸る貴女の心がどれだけ満たされているか、今の貴女には分かるでしょう。

 貴女はどうあっても、貴女という人間を、今ここにあるこの存在を生きるしかないのです。
 かつての貴女はそれに絶望したかもしれませんが、今の貴女はきっと違いますね。
 
 貴女は今のままで良いのです。
 今貴女が満たされていることは、何の間違いでも不手際でもありません。貴女にはその権利が、皆その権利があるのですから。
 今こうして満たされた気持ちで、何かができて、あるいはできないこともあって、そういうことを全て受け入れて貴女は生きている。

 それこそが、命の本来の在り方なのです。

6/26/2024, 1:37:29 PM


 生きていた時の俺が、初めて貴女に出会ってから共に過ごせたのは、たったの三日三晩と、その明くる朝だけでした。それも、貴女を本当に愛して慈しめたのは、最後の一晩のみでした。

 貴女を出会ったその時から愛せていれば、貴女は俺を旅に出さなかっただろうか。貴女にあんな狼藉を働かなければ、お傍にずっと置いてくださっただろうか。何度そう考えたか、もう覚えていないほどです。

 貴女が俺を送り出したあの朝が、貴女との最後の時間になったこと。
 貴女が、俺の帰りを待たずに病で亡くなったこと。
 それを知り、貴女のいない世界でいきることに耐えられず、俺が自ら命を絶ったこと。
 どれも、もう五百年以上も昔のことです。
 
 ああ。
 貴女をこうして幾百年見守って尚、俺は貴女を十分に愛せている気がしないのです。
 もっと、俺の愛を貴女に伝えたいのに。
 もっと、貴女を大切に守りたいのに。
 誰より貴女を、幸福にしたいのに。

 俺が生きている時にそうできていたら、この痛みを感じることはなかったのでしょうか。

6/25/2024, 12:30:20 PM


 いつか俺たちは、貴女は美しい桜のようだと言いました。

 貴女はしっかりした幹のある、優しく強い魂の花です。その花は繊細な美しさを持ちますが、その花を咲かせる魂の、何と大らかで温かく、立派であることか。

 貴女という花を愛で、貴女という木の元に安らぎを得る。
 そうやって貴女と共に存在することを許されている俺たちが、どれだけ幸福なのか。貴女にも分かっていただけたら、嬉しいのですが。

6/24/2024, 11:39:08 AM


 そう。どうか、良い気分でいてください。
 そうしてさえくだされば、貴女はどこへでも行けます。
 俺たちが、貴女にとって最良であるものを、貴女が望むものの本質を体現したものを、貴女に運んできます。

 そうして一年後、貴女はご自分の置かれた環境に驚くでしょう。

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