前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここに、ちょうど先月から、稲荷子狐が修行の関係でコンコン・オン・デューティー。
偉大な御狐、立派な神使となるべく、完全週休2日制でもって頑張っています。
ところで、稲荷狐というのは時として、
善悪を超越した価値観でもって、稲荷を粗末にしたものを、酷く祟ると言われています。
狐をいじめた者、狐の隠れ家を荒らした者、
稲荷神社で不敬をはたらいたり、稲荷の神前で五穀や商売を粗末にしたり、
なにより、稲荷神社を悪意で傷つけたりした者は、
稲荷狐によって、酷い目に遭うのです。
稲荷の神様の神使、稲荷狐は、まさしくお題どおり、「善悪」を超越したところに在るのです。
ただ
このおはなしのコンコン稲荷子狐は
善悪超越というより
ぶっちゃけ善悪の加減、善悪の大小が
道徳とだいたい同時並行的に勉強途中でして。
「わぁん!ひどいや!ひどいやぁ!!」
その日のコンコン子狐は、ギャンギャン、
狐の嫁入りもビックリの土砂降りで大泣きして、
管理局に用意されたお部屋に帰ってきました。
「あいつ、キツネのこと、いじめた!キツネのこと、そまつにした!
たたってやる!たたってやる!わぁん!!」
子狐があんまり泣いて泣いて、稲荷狐のチカラをバチクソかつデタラメに暴走させますので、
お部屋の中は、子狐のコンコンマジックで大騒動。
子狐の部屋に忍び込んでた悪いスパイの緊急飲用水は100%豆乳に、
子狐を誘拐しようと潜んでた悪い人間の非常用カロリーブロックは豆腐と油揚げに変身。
革製グローブなんて、ポン!
美味しいビーフジャーキーになってしまいました。
なんでこんなことになってしまったのでしょう
(今回のお題が「善悪」だからです)
『落ち着いて。ご立腹じゃないか。どうしたの』
あーあー。逃走要員さんの本革ライダースーツが。
さめざめ泣いて、それでも頑張って隠れ続ける悪人たちを、
この部屋の元住人、●●年前にオバケになった管理局の幽霊(事実)が、
あわれみの目で、見つめます。
「オバケさん!オバケさん聞いて!」
ぶんぶんぶん、ぶんぶんぶん!
子狐の怒りと悲しみは、おさまりません。
幽霊のピョロピョロをがぶっ!噛みまして、おもちゃよろしく振り回します。
「キツネ、そまつにされた!キツネ!おこった!
たたってやる!たたってやる!」
あーあー、あーあー。
子狐があんまり稲荷のチカラを暴走させるので、
子狐の部屋に隠れてる悪人さんの特殊スーツまで、美味しい美味しいジャーキーに変貌しました。
これが稲荷狐のチカラなんだなぁ。
幽霊はぶんぶんぶん、高速移動する景色のなかで、ぼんやり、思いました。
ひとまず、
子狐が今住み、幽霊がその前に住んだこの部屋は、
侵入者ホイホイの装置が設置されておって、
勝手に部屋に入ってきたモノドモを許しません。
みーんな、あとで自動的に、法務部まで順番にスッポンされます。
そこに侵入理由の情状酌量なんてありません。
この部屋もまた、善悪の外にあるのです。
それはそうと
善悪の内外じゃなく善悪履修途中の子狐は
いったい何がどうしたのでしょう。
『粗末にされたって、何をどうされたの』
幽霊が聞きました。
『ボクに言ってごらん。一緒に考えよう』
すると子狐、子狐せいいっぱいの怒りと悲しみを込めて、幽霊にこう、叫びました。
「しらないオッサン、キツネのチキンたべた!!」
あっ、そうか、そうなんだね。
幽霊は、キュッ、唇をしめましたとさ。
【世界線管理局 収蔵品
『対終焉 最終防衛機構「願い星」』】
元々は効率的に願いを集めて、防壁展開装置にエネルギーを供給するのが目的。
想定されていたのは、滅びゆく世界を食らいに来るという「終焉の獣」。
願いを束ねて星全体を覆うことで、少なくとも、展開宙域には多くの生命が残っていると、
獣に誤認させ、星の臨終を先延ばしにする目論見。
実際はその目論見はミリも機能していなかった
<<機能してなかった>>
――――――
「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織には、
管理局所有の、滅亡世界からこぼれ落ちて生き残ってしまった難民たちを収容しておく、とても大きなシェルターがありまして、
そこでは環境整備部難民支援課の局員が、収蔵部収蔵課とタッグを組んで、
時折、収蔵品を使ったイベントを開催します。
その日は今回のお題が「流れ星に願いを」ということもありまして、
流れ星を夜明けまで放ち続ける、美しいイベントが開催中。
電気設備のスペシャリスト、伝説もとい電設の局員・カモシカによる号令です。
「第17陣、ラストチェック完了」
事前公募や当日のイベント会場で集められた複数封入可の願い星、全5兆5億5千858個を、
全天、どこからどの方向の空を見上げていても十分な量、十分な密度が見られるように、
かつての昔、巨大防壁装置にエネルギーを供給していた、流れ星シューターを利用します。
「3、2、1、スタート。 第18陣スタンバイ。
ファーストチェックまで20分」
流れ星に願いを詰めて、詰めた願いが空を渡って、
空を渡った流れ星が、故郷たる世界を失った難民たちの心魂を慰めます。
「キレイだねー」
シェルター在住の子供が、空を見上げました。
「ボクのねがいごとが入ったやつ、どれだろー」
子供の友達も、一緒になって、空を見上げました。
流れ星は滅亡世界の難民の願いをのせて、空を渡り、尾を引き、輝いて、地平に消えてゆきました。
それをジト目で眺める経理部局員がおりまして。
『おうおう、こうして見る分にはキレイだな』
もっしゃもっしゃ、もっしゃもっしゃ。
経理部の天才エンジニア・スフィンクスが、
大きいミカンを食べつつ、モフモフ尻尾をピタピタ揺らして、空を見上げて、
そしてまた、もっしゃもっしゃ。美味しそうにミカンを食べました。
「スフィちゃん、この願い星、知ってるのぉ?」
モフモフにもたれかかって一緒に空を見ておるのは、スフィンクスの大親友、収蔵部のお嬢さん。
ビジネスネームをドワーフホトといいます。
お嬢さんは涼しい夜風のなか、モフモフ親友に守られて、温かいシトラスティーなど飲んでいます。
ドワーフホトの親友・スフィンクスは、世界と世界、宇宙と宇宙、星と星を渡り歩く習性をもつ、規格外に長寿なモフモフ。
ゆえにドワーフホトが知らない滅亡世界の、滅ぶ前のこと、滅んだ後のことを、
たまに、何個か、覚えておったりするのです。
『願い星っつーか、星で充電してた防護壁がさぁ』
スフィンクスが言いました。
『猫よけっつーか有刺鉄線つーか、うん、
俺様に来てほしくなかったんだろうな、っていう』
たまにな、あるんだよなぁ、そういう世界。
スフィンクスはもしゃもしゃ。ミカンを食べて空を見上げるだけでした。
「スフィちゃんが食べた、どこかの世界のこと?」
『食ったっちゃ、食ったんだけどな』
「うん」
『そこを食ったのが、防護壁が稼働開始してから、何百年も何千年も後のハナシでさ』
「うんー?」
『分かりやすく例え話をするなら「石橋を叩いて渡る」の石橋が、杭打ちも土留めも基礎床も付けてる新品の橋だったから、
ぶっちゃけ叩く検査なんて不要だろっていう』
「あちゃ〜」
『それをわざわざ、毎日毎日叩いてるっつー』
「どんまぁーい」
最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
最近コンコン子狐は、修行の頑張りが認められて、
ちょうど先月に最短1年の期間限定で、新しい修行場所へ送り出されたところ。
「おもち、おもち!いなりのおもち!」
稲荷狐の子狐が、稲荷神社の御利益ゆたかなお米でお餅をついて、とってって、ちってって。
葛の葉っぱのぷらぷらアクセントと、稲荷宝珠と宝鍵のイラストが可愛らしいサービスワゴンに、
お餅を積んで、売り歩きます。
「ウカノミタマのオオカミサマの、ごりやくいっぱい!ごこくほーじょ、しょーばいはんじょ!」
送り出された修行先、世界線管理局なる厨二組織には、獣人も人間も、精霊もいっぱい。
ドラゴンや宇宙タコなんかもおりますので、子狐のお餅の中身は多種多様ですが、
事前複数注文は、人気10種限定のルールです。
というのも
再現なく全種類で予約を受け付けますと
コンコン55種類も対応しなけりゃなりません。
「はい、まいど、まいど!
おもち、いっこ200えん」
これでも子狐、10種類は厳選した方なのです。
「おもち!おもち!キツネのおもち!」
とってってちってって、とってってちってって。
その日も子狐は御利益たっぷり、稲荷お餅をどっさり積んで、どっさり売りさばくのです。
ところで子狐のお餅販売ですが
まだまだ3月に始まったばかりなので
販売ルートと販売日以外の詳細なルールが
ほぼほぼまだまだ固まってないのが現状でして。
「むっ。 ここ、おきゃくさんいっぱい」
サービスワゴン、子狐号を押して歩いて、
子狐は世界線管理局、法務部執行課を巡回中。
施錠済みの部屋の中から、5人6人、最低10人、
間違いなく、管理局員がおるのを感知しました。
「おもち!おもち!ごこくほーじょ!」
タシタシタシ、かりかりかりかり!
餅売り子狐は施錠ドアを、何度も何度も引っ掻きますが、聞こえないのか誰も開けてくれません。
開けてくれないなら、子狐が開けるのです。
「おもちっ」
稲荷狐の4つの宝のひとつ、稲荷狐の鍵は、
あらゆる秘密を守り、あらゆる鍵を開けるのです。
「おもち!」
解錠済みドアをテシッと開けると、部屋の中では子狐の予想通りに、複数の局員がおりました。
「部長」
「一旦、構うな。こっちが先だ」
おやおや。なんだか良くない空気です。
とってもピリピリしています。
「カラス。状況」
「被害者は総務部総合案内課の受付係、ラブラドール1名。発生場所と誘拐経路は特定済み。
経理部の自律ドローン・しらぬいのファインプレーで、誘拐そのものは未然に阻止されてるよん」
なんだなんだ。むつかしい言葉ばっかりだ。
子狐はまだ子供なので、局員たちの話し合いの言葉がサッパリ分かりません。
「おもちっ」
まぁ、いいや! 子狐は自信たっぷり!
尻尾を上げて、サービスワゴンからお餅をカゴに移して、さっそくお餅販売に移りました。
「事案発覚から41分後、当該組織から法務b」
「おもち!おもち!おいしいおもち!
ウカサマのごりやくいっぱい、ふしぎなおもち!」
「tの影響はどうだ」
「今のとk」
「おはなみおもち、さんじゅっぱ!
しょーばいはんじょ、しょがんじょーじゅ!」
「k」
「ポイントカードフェアかいさいちゅ」
「子狐ちょっとケージに入ってなさい」
「ぎゃっぎゃ。」
なにするんだやい。なにするんだやい。
もしかしてキツネとあそんでくれるの。
とうとう子狐は優しく抱きかかえられて、すなわち捕まってしまいまして、
結果、神使を鎮座させとくための、ケージにぽんと、入れられてしまいました。
「この会議が終わってから、」
子狐の頭を撫でてくれた局員が言いました。
「餅販売のルールをちょっと一緒に考えましょう」
いらないいらない、キツネ、るーる、いらない。
コンコン子狐は尻尾ぶんぶん。
会議が終わるのを待っておりましたとさ。
【世界線管理局 収蔵品
『ドラゴンプリンメーカー』】
元々はドラゴンの卵とドラゴンの乳とを主原料としてプリンを作る機械。
管理局にドラゴン牧場は無いため、
本品を稼働する場合はニワトリの卵と牛乳で代用することになる。
なお
16リットルの牛乳と80個の卵、
5キロの砂糖に約1リットルの水を使って
一度に20リットルのプリンが
実測値として爆誕した
<<実測値として爆誕>>
――――――
「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織があって、
ここの収蔵部収蔵課には、滅びてしまった世界から、様々なアイテムが、回収されてきておりました。
収蔵課の仕事は、滅んだ世界からこぼれ落ちてきたアイテムが、他の世界に落ちてゆく前に、
それらを未然に回収すること、
そしてそれらを管理局で適切に保管すること。
その日も収蔵部の回収課が、滅亡世界のアイテムを回収してきて、収蔵課に引き継ぎます。
本日のアイテムはプリンメーカー。
ドラゴンを高級食材と見なしていた世界から漂流してきたプリンメーカーなので、
大きいドラゴンの卵を、たくさんのドラゴンの乳と一緒に投入して、
結果として、高級スイーツ、ドラゴンプリンを大量に作り出すことができます。
これに目をキラキラさせたのが収蔵課の局員、
ドワーフホトというビジネスネームのお嬢さん。
度肝を抜かれたのが法務部執行課の局員、
ルリビタキというビジネスネームのドラゴンです。
『ドラゴンのプリン?!』
ぎゃお!ぎゃお!ぐぅぅぁあおう!
ルリビタキ・ドラゴン、本能的に良くないものを感じとったらしく、尻尾を隠して体をちぢこめて、
大きいプリンメーカーに威嚇などしています。
『俺は男だ!女じゃない!卵も乳も出ない!』
ドラゴンの今日の心模様は、完全に大荒れ。
西高東低、爆弾低気圧、スーパーセルの積乱雲、
同胞の卵をガシュガシュ破壊し続けたであろうプリンメーカーに、ごうごう吠え立てます。
「大丈夫だよぉ、ルリビタキ部長さん。
ドラゴンの卵じゃなくても〜、これ、使えるよぉ」
カッカぱかっ、カッカかしゃっ。
ドワーフホトのお嬢さん、一生懸命に卵を割って、プリンメーカーの卵投入口に入れます。
「でも、ホントに、いろんな世界があるんだねぇ。
ドラゴン牧場からの、ドラゴンプリンだって〜」
ドワーフホトの今日の心模様は、完全に晴天。
小春日和、晴天爛漫、晴れわたる澄み切った空、
巨大プリンの生成という偉業に、挑戦しています。
『局員の卵は使うなよ』
「始祖鳥法務部長さんは、乗り気だったぁ」
『やめろ!』
「あとねぇ、福利厚生部のー、医療・医務課のー、
アオダイショウさんが〜」
『だから、やめろ!』
「部長さんのたまご〜」
『俺は男だ!』
かたや大荒れ、かたや晴天。
プリンメーカーを巡る会話はその後20分か30分くらい続きまして、
その間にドラゴンプリンメーカーは、チン!
バケツプリンもビックリ、20リットルの美味しい美味しいプリンを、完成させましたとさ。
「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織はビジネスネーム制を敷いておって、
経理部は猫の名前、そしてその経理部に、マンチカンなる入局2〜3年の、ボクっこがおりました。
ボクっこマンチは去年の冬、管理局を敵視しておる組織の世界多様性機構に襲われて、
「非力」と、ストレートに言われました。
『僕は、強くなりたい!』
非力認定が悔しくて悔しくて、
管理局内の精鋭部隊、法務部執行課、実動班特殊即応部門の、優しくて強いツバメ副部門長に、
自分を鍛えてほしいと相談したのが3〜4ヶ月前。
『どんな「強さ」が欲しいのですか?』
ツバメ副部長、ボクっこマンチに聞きました。
『どんな、』
マンチは、ただただ、強くなりたいだけでした。
『どんな……強さだろう?』
マンチは、ただただ、自分を「非力」とバカにした敵対組織の連中を、見返したいだけでした。
たとえ間違いだったとしても、
たとえ、それが自分の仕事でないにしても、
ボクっこマンチは非力ではなく、
敵を追い払える、強いマンチになりたいのです。
そんなボクっこマンチですが
副部長は思うところがあったのか
まずマンチに瞬発的な発想力と道具の応用力と
それから危険予知能力とを鍛えるために
まさかのキャンプ演習を提案しまして。
強くなるための訓練がキャンプ演習って
やっぱり何かの間違いな気がするマンチなのです
(お題回収)
たとえ間違いだったとしても
せめて例として、護身術とかを先に知りたいのです
(回収完了)
…––「マンチカン。今日は、自分で飲料水を集めて、その水でコーヒーやお茶でも淹れましょう」
さて。
週にだいたい1〜2回目安のキャンプ演習の、その日はちょうど、最終日です。
「近くに川や泉はありますが、敢えて、そこを使わないでください。
いくつか道具を用意してあります。それを、自由に使って構いません」
せっかく良い川があるのに、
せっかく間違いなく安全な泉もあるのに、
ツバメはそれを、禁じます。
代わりにツバメはシートにナイフ、重しのブロックにガスコンロ、
様々な道具を並べて、それで水を得ろと言います。
「うう、分からない」
マンチは困ってしまいました。
「どうすれば どうすれば良いんだろう」
ああ、こんな弱気だから、自分は「非力」と言われたんだ。そうに違いない。
マンチはうつむいて、頭を抱えてしまいました。
「応用力です。マンチ」
ツバメが言いました。
まず、何でも、間違っても良いから、行動してみろと提案したのです。
「間違えたら、そこから『何故間違えたか』を考えることができる。
大丈夫。まず、最初に、やってみるのです」
「おうようりょく」
マンチは繰り返しました。
「応用、力」
マンチは再度、繰り返して、
そもそも水とは何か、どうやって集まるか、
まず、たとえ間違いだったとしても、
考えてみることに、したのでした。