【世界線管理局 収蔵品
『対終焉 最終防衛機構「願い星」』】
元々は効率的に願いを集めて、防壁展開装置にエネルギーを供給するのが目的。
想定されていたのは、滅びゆく世界を食らいに来るという「終焉の獣」。
願いを束ねて星全体を覆うことで、少なくとも、展開宙域には多くの生命が残っていると、
獣に誤認させ、星の臨終を先延ばしにする目論見。
実際はその目論見はミリも機能していなかった
<<機能してなかった>>
――――――
「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織には、
管理局所有の、滅亡世界からこぼれ落ちて生き残ってしまった難民たちを収容しておく、とても大きなシェルターがありまして、
そこでは環境整備部難民支援課の局員が、収蔵部収蔵課とタッグを組んで、
時折、収蔵品を使ったイベントを開催します。
その日は今回のお題が「流れ星に願いを」ということもありまして、
流れ星を夜明けまで放ち続ける、美しいイベントが開催中。
電気設備のスペシャリスト、伝説もとい電設の局員・カモシカによる号令です。
「第17陣、ラストチェック完了」
事前公募や当日のイベント会場で集められた複数封入可の願い星、全5兆5億5千858個を、
全天、どこからどの方向の空を見上げていても十分な量、十分な密度が見られるように、
かつての昔、巨大防壁装置にエネルギーを供給していた、流れ星シューターを利用します。
「3、2、1、スタート。 第18陣スタンバイ。
ファーストチェックまで20分」
流れ星に願いを詰めて、詰めた願いが空を渡って、
空を渡った流れ星が、故郷たる世界を失った難民たちの心魂を慰めます。
「キレイだねー」
シェルター在住の子供が、空を見上げました。
「ボクのねがいごとが入ったやつ、どれだろー」
子供の友達も、一緒になって、空を見上げました。
流れ星は滅亡世界の難民の願いをのせて、空を渡り、尾を引き、輝いて、地平に消えてゆきました。
それをジト目で眺める経理部局員がおりまして。
『おうおう、こうして見る分にはキレイだな』
もっしゃもっしゃ、もっしゃもっしゃ。
経理部の天才エンジニア・スフィンクスが、
大きいミカンを食べつつ、モフモフ尻尾をピタピタ揺らして、空を見上げて、
そしてまた、もっしゃもっしゃ。美味しそうにミカンを食べました。
「スフィちゃん、この願い星、知ってるのぉ?」
モフモフにもたれかかって一緒に空を見ておるのは、スフィンクスの大親友、収蔵部のお嬢さん。
ビジネスネームをドワーフホトといいます。
お嬢さんは涼しい夜風のなか、モフモフ親友に守られて、温かいシトラスティーなど飲んでいます。
ドワーフホトの親友・スフィンクスは、世界と世界、宇宙と宇宙、星と星を渡り歩く習性をもつ、規格外に長寿なモフモフ。
ゆえにドワーフホトが知らない滅亡世界の、滅ぶ前のこと、滅んだ後のことを、
たまに、何個か、覚えておったりするのです。
『願い星っつーか、星で充電してた防護壁がさぁ』
スフィンクスが言いました。
『猫よけっつーか有刺鉄線つーか、うん、
俺様に来てほしくなかったんだろうな、っていう』
たまにな、あるんだよなぁ、そういう世界。
スフィンクスはもしゃもしゃ。ミカンを食べて空を見上げるだけでした。
「スフィちゃんが食べた、どこかの世界のこと?」
『食ったっちゃ、食ったんだけどな』
「うん」
『そこを食ったのが、防護壁が稼働開始してから、何百年も何千年も後のハナシでさ』
「うんー?」
『分かりやすく例え話をするなら「石橋を叩いて渡る」の石橋が、杭打ちも土留めも基礎床も付けてる新品の橋だったから、
ぶっちゃけ叩く検査なんて不要だろっていう』
「あちゃ〜」
『それをわざわざ、毎日毎日叩いてるっつー』
「どんまぁーい」
4/26/2026, 4:17:19 AM