かたいなか

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3/8/2026, 8:32:18 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
局内に作られた地球規模に広い難民シェルターの、
幅広く膨大に存在する様々な世界の飲食店の中の、
「月夜グリル」なる店は、
その区域の難民たちから、大事なイベントのときに行きたい高級店として愛されておりました。

「ようコそ、ようコそ。こんばンは」
月夜グリルの営業日と営業時間は、「月夜」グリルの名前らしく、月が見える夜の間。
予約必須のお店のドアを開けると、かつて昔に滅んだ世界からの難民宇宙アンモナイトが、満月の貝殻を光らせて、お客さんを迎えます。
「コードを拝見いタします。
はい、はい。結構デござイます。
初めてゴ来店の、ドワーふホと様」

さぁさぁどうぞ、こちらです。
不思議なチカラで浮く宇宙アンモナイトの、案内のとおりに進みますと、
予約した種族それぞれの「快適」に調節された個室に通されて、
そこは誰にとっても、暑過ぎず、寒過ぎず、丁度良い環境なのでした。

「おお。さすが月夜グリル。寒くない」
3人1匹で1組のお客様、規格外な寒がりさんが、防寒装備を全部取っ払います。
「ね〜。便利便利ぃ」
予約で名前を使ったお嬢さんも大満足。
扉の前に控えて周囲を警戒したがる彼女の専属執事を引っ張って、席に座らせます。

唯一1匹だけ獣の稲荷子狐は、寒がりさんにナプキンスカーフを結んでもらって、ご機嫌。
尻尾をぶんぶんぶん、超絶高速回転です。

予約の個室に到着して、お客が席についたら、宇宙アンモナイトのお仕事はそこで終了。
あとはその個室のルームマスター兼ルームシェフ、宇宙タコと交代です。

「今夜の料理は、ワタクシたちいわゆる宇宙軟体頭足類宇宙タコが客をもてなすときに振る舞う伝統料理を、アレンジしてご用意いたしました」
満月の頭を光らせる宇宙タコです。
タコだけに、ウデには自信があるそうです。

「もちろん、フォークもナイフも、スプーンもスティックスも用意はございますが、
我々宇宙タコは、料理の香りや味だけでなく、手触りも温度も楽しむ種族。
ご不快でなければ、手づかみでのご飲食も、ぜひ一度お試しください」

ではどうぞ。ごゆっくり。
大きく豪華なサーブワゴンでもって、いろんなご馳走がテーブルに、ところ狭しと並びまして、
ようやく、月夜グリルのディナータイム。

「パンが温かぁい」
「少し裂いて袋にして、具材詰めて食うらしいぜ。
俺様が入れてやるよ どれ詰める」

ナンに似た丸パンモドキを手にとって、パンナイフでモフモフ切れ目を入れたら、
あっちのチキン、こっちのディップ、そっちの謎花に不明野菜を挟んで、いただきます。
前菜サラダパンは、前菜のわりにボリューミーで、
ドワーフホトのお嬢さんも、食べ盛りの稲荷子狐も、もぐもぐ大満足!
なにより人間の料理と違う不思議な美味で、好奇心も一緒に満たされます。

「おいしい。おいしい」
「ね〜コンちゃん。おいしいねぇ」
「おい、このワゴン果実酒完備だぜ。ミカンの酒ねぇかなミカンの酒」

「おさけキツネものむ おさけちょうだい」
「おめぇは多分飲んじゃダメだろ」
「やだのむキツネおさけのむおさけ!ちょうだい」
「成人っつーか成獣になるまで我慢しろ」

「……」
「祟るな。 パンを油揚げにするな。 こら。
コンコンじゃねえわい。ダーメ。」

コンコンこやこや。ダメったらダメ。
月夜グリルの月夜ディナーは、明るく楽しくなごやかに、2時間くらい続きました。
「まタのお越しヲお待ちしてヲりまス」

稲荷子狐もお嬢さんも、寒がりさんも、おなかいっぱい––
ところでお嬢さんの専属執事が見当たりませんが、
そのへんはお題とは無関係なので、まぁまぁ、
次回のお題で明かされるか、ずっと放っとかれるか、気にしない、気にしない。 おしまい。

3/7/2026, 3:08:54 AM

明日投稿分のおはなしに、続くかもしれない物語。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
都内在住の稲荷子狐が、立派な稲荷狐となるため、今月の1日から修行に出されておりました。

週休完全2日制。日本でいう土日は修行も休み。
その日はちょうど、修行に来て最初の休日です。
コンコン子狐は管理局員専用の、食堂の使い方もだいぶ慣れた様子で、滋味深い朝食AセットとBセットとCセットを注文。
尻尾をぶんぶん振り倒しながら、幸福にそれらを胃袋へ、ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
大好きな味の順番に、収容しておりました。

そんな
ちゃむちゃむ食事中の子狐の
よく聞こえる耳にパッと入ってきたのが
まさかの東京で毎週毎週観ておった特撮風アニメ、
「管理局戦隊アドミンジャー」に関する館内放送。

『本日 午後1時から 管理局戦隊アドミンジャー最新話の 公開収録をおこないます。
最新話タイトルは 「分断の罠! キングマンダリン 絆の統合合体」です
観覧を ご希望のかたは 正午に 広報部企画課 企画・運営班 アニメ部門へ お集まりください』

世界線管理局で管理局戦隊アドミンジャーなるアニメの館内放送。
そうです。この厨二ふぁんたじー企業、広報の一環としてアニメ制作もしておったのです。
「あどみんじゃ!あどみんじゃーだ!」
しかもこのアニメ、普通に日本で放送されておりまして、子狐はアドミンレッドとブルーのファン。
「あどみんじゃー!」

公開収録が何を意味するのか、コンコン子狐知りませんが、ともかく管理局でアドミンジャーのイベントが開催されるそうです。
アドミンジャーが大好きな稲荷子狐としては、断じて見過ごすワケにはいきません
が、

コウホウブキカクカ キカク・ウンエイハン アニメブモンとは何でしょう?

「おねーちゃん! おねーちゃんに、聞こう!」
コンコン子狐はガツガツガツ!
大急ぎでAからCセットの朝食をたいらげて、
子狐のことを修行の前から知っている管理局員、収蔵部収蔵課のお嬢さん、ドワーフホトのもとへ飛ぶように、走ってゆきました––…

…––「あ〜!」
「なんだ。どうしたホト」
「そうだぁ、今日、アドミンジャーの公開収録!」

その頃の収蔵部収蔵課です。
持ち運び可能な高性能コタツ、Ko-Ta4の中でもにゅもにゅと、オレンジハニーナッツピザを堪能しておったお嬢さん・ドワーフホトです。
コタツの主・経理部のスフィンクスは、ドワーフホトが放送を聞いて、珍しく慌てますので、
こいつ、アドミンジャーファンだったっけ?
と首をかしげます。

「違うよー、コンちゃんだよぉ!
コンちゃんね〜、アドミンジャー、大好きなの」
「コンちゃん、ああ、ゆたんぽ!」
「スフィちゃん、温かいコンちゃん好きだもんね」

ピッピのピ。
クリスタルタブレットをドワーフホト公認執事、カモに繋ぎまして、メッセージを送信です。
カモはとっても優秀で、ハイスペックで、しかもドワーフホトのことをドチャクソに推しておるので、
ドワーフホトの頼みを全力で、聞いてくれます。

カモさんなら、コンちゃんの分の公開収録観覧優先チケットを、ゲットしてくれる。
ドワーフホトはカモより、大親友のスフィンクスの方が大好きでしたが、
しかし間違いなく、カモへの信頼と絆は、確固として持っておるのでした。

『カモさんおねがい』
『ご安心ください。既にホト様とスフィンクス様と、余分2枚のチケットを確保済みです。
観覧後は近くのレストラン・月夜グリルで、月夜ディナーをご堪能ください』
ほら見たことか(信頼と絆)

「おねーちゃん!」
ズザッ! ベストタイミングで子狐が、ドワーフホトとスフィンクスの居る収蔵部収蔵課に到着です。
「おねーちゃん!」
子狐にも、ドワーフホトとの確固たる信頼と、なにより絆が、存在しました。

「コンちゃん、おはよ〜」
ドワーフホトは全部ぜんぶ仕込み終えて、にこり。
飛び込んでくる子狐を受け止めて、頭も、背中も、優しく撫でてやりましたとさ。

3/6/2026, 3:57:48 AM

偶には、玉には、多摩には、田間仁は。
全部ひらがなのお題は漢字変換が容易で、いろいろイジれるというものですが、
結局、たまの贅沢とか、たまに見つかるとか、オーソドックスな物語をご紹介する物書きです。
「多摩には2羽ニワトリがいる」なるネタを置いておきますので、ご自由にお持ちください。
と、いう前書きは置いといて。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこに都内在住の稲荷子狐が、今月1日から修行に出されておりました。

ところでその稲荷子狐
修行にあたって管理局員のための
アパートモドキないし寮モドキの個室1部屋を提供されたのですが、
まさかのその1部屋に先日、自称子狐の前に部屋を使っていた先代ルリビタキなる幽霊が出まして。
なんならその日もドロンドロン、子狐がご利益たっぷりの稲荷餅を作ってる最中、
部屋の隠しキッチンに、入ってきまして。

「オバケさん、オバケさんだ」
ぺったん、ぺったん、もひとつぺったん!
稲荷神社に伝わる由緒正しい臼と杵で、コンコン子狐が餅をつきます。
「オバケさん、キツネ、今おもちをこさえてるの」
まだまだ子供の子狐です。なにより幽霊なんて、見飽きている子狐です。
死人が突然現れたって、怖くありません。
「ダメだよオバケさん。今日は、遊ばないの」

『いや、遊びたくて戻ってきたのではないんだよ』
先住民の野郎幽霊は、自分が作った隠しキッチンの機能だの道具だのの、案内をしたかったのです。
『子狐ちゃん、きみ、お料理が好きなんだろう。
僕も生前、料理が大好きだったんだ。だから』
だから、同じ料理好きの子狐ちゃんに、僕の秘密キッチンを使いこなしてほしいんだ。
幽霊は丁寧に説明しますが、
コンコン子狐、ちっとも聞きません。

『子狐ちゃん。 子狐くん。こぎつね』
「だめ、ダメ!キツネ、おもちこさえてるの」
『あのね。ちょっとだけで良いから、話を』
「ダメ!キツネ、いま、おててはなせないの」

『ほんのちょっとで良いんだ。
ほら、たまには自分以外の料理人の視点を』
「オバケさんキツネのハナシきかない。おしおき」

くわっ!コンコン子狐は一声吠えると、
狐の瞬発力でもって、がぶーっ!
野郎幽霊のおしりに、全力で噛みつきました!
「おしおき。おしおき」
『わぁわぁわぁ!やめて!とめて!ゆるして!』
そのまま子狐はブンブンブン、ぶんぶんぶん!
うるさい幽霊を高速で振り回して、ぽーん!
部屋の外に、放り飛ばしてしまいました。

「よし!」

たまには、自分以外の料理人の視点を。
飛んでった野郎幽霊のアドバイスは、その辺にひとまずポイチョです。
まずはお餅を作るのです。
「ぺったん、ぺったん、もひとつ、ぺったん!」
五穀豊穣商売繁盛、諸願成就に病魔退散、稲荷のご利益は多種多様。素晴らしいご利益なのです。

『あの……こぎつねくん』
「むっ」
『分かった、分かったから。待つから。
終わったら、言って……』
「よろしー」

ぺったん、ぺったん、もひとつぺったん。
コンコン子狐はホカホカつやつや、まんまるお餅にいろんな具を詰めます。
オーソドックス・スイーツのあんこから、惣菜お餅の可能性を追求したチーズまで。
いろんなお餅をこさえて最後に、稲荷のご利益をひと振り、ふた振り。

「できた!」
『そうか、良かった。じゃあ僕の話を』
「売ってくる!」

『こぎつねくん……』

いってきます。コンコン子狐は尻尾をぶんぶん。
お餅をカゴに入れて、キッチンからログアウト。
隠しキッチンには先住民であった野郎の幽霊が、ひとりポツンと約3時間、取り残されましたとさ。

3/5/2026, 6:51:53 AM

今回のお題が「大好きな君へ」とのことなので、
大好きな物を追い求める不思議なハムスターのおはなしを、ひとつご紹介します。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの法務部執行課、実動班特集情報部門は、まさかの全所属局員が、ハムスターという部署。
なのに法務部自体のビジネスネーム貸与規則が付与規則であるせいで、
ハムスターたちが貸与されておるビジネスネームは、全部ぜんぶ、鳥の名前だったのでした。

ハムスターなのに鳥とはこれいかに(しゃーない)

さて。そんなこんなの特集情報部門です。
情報部門所属のハムスター・カナリアは、ハムスターらしくナッツが大好き!
その日は非常に品質の良いミックスナッツが、ゴロゴロ3袋も手に入ったので、
1袋を部署の差し入れに、
1袋を自分のミックスナッツパーティーに、
そして最後の1袋を、人間女性の収蔵部収蔵課局員・ドワーフホトへのプレゼントに、
それぞれ、使うことにしました。

ドワーフホトは、とっても優しいお嬢さん。
近くに行っても、ちっとも危険がありません。
別に人間女性に、恋してるワケではないのですが、
カナリアはドワーフホトのことも大好きで、
ドワーフホトは美味しいものが大好き。

「よし。大きいピザを作ろう」
とっとこカナリアは小さな体で、大きくて美味しいハニーナッツピザを焼くことにしました。

よいしょ、よいしょ。
とっとこカナリアは一生懸麺、大好きなドワーフホトのために、ピザの生地を広げます。
よいしょ、よいしょ。
大好きな大好きな君へ、君の笑顔が見たくて、ピザの生地を広げます。
「こんなモンかな?」

もっちりピザ生地がよく広がったら、ピーナッツバターとフレッシュチーズの混ぜものを塗って、
さらさら、ざらざら。上等なナッツを散りばます。
「まだチーズが足りないかな」
カナリアはナッツがイチバン大好きですが、ネズミらしくチーズも好物。
ナッツの上にナチュラルチーズを振りかけました。
「よし!あとはオイルだ」

オリーブオイルを適量注いだら、焼く前にピザを丁寧に、紙箱に詰めて収蔵課へ内線。
「やあ、こんにちは、ホトさん」
とっとこカナリア、大好きな君へ連絡です。
「美味しいナッツピザが、ちょうど仕込み終わったんだ。お昼ご飯がまだだったら、どうだろう?」
とっとこカナリア、大好きな君へアピールです。

というのも収蔵部収蔵課の局員・ドワーフホトは、
昔々の特殊即応部門長・通称「先代ルリビタキ」が局内に実費で作った隠しキッチンの場所を、
諸事情で、知っておりまして。
しかもその隠しキッチンのうちの複数個には素晴らしい火力の上等な窯があるのです。

『ごめんカナリアくん、今日のお昼は、スフィちゃんと一緒に食べる約束なのー』
「経理部のスフィンクス?店は、決めてあるの?」
『まだぁ』

「まだ焼いてないからミックスナッツピザにトッピングでスライスみかん追加できるよ」
『スフィちゃんに相談してみr
スフィちゃんミカンピザ食べたいって〜』

ミカン!ミカン!マジか!
内線の奥からドワーフホトではない声が、すごくすごく嬉しそうに、漏れてきます。
カナリアはドワーフホトのことも大好きで、
ドワーフホトは経理部のスフィンクスが大好きで、
スフィンクスはドワーフホトとみかんが大好き。

「よし、そっちにすぐ行くよ!」

とっとこカナリアは嬉しくて嬉しくて、
さっそく、箱に詰めたピザをドワーフホトが居る収蔵部収蔵課に向けて、運びます。
ミカンは敢えて、付けません。ミカンが大好きなスフィンクスは、間違いなく、とても良いスライスミカンをストックしているのです。
「しゅっぱつ!」

局内の物資配達ロボット「クロネコ」を1匹つかまえて、とっとこカナリアは上機嫌。
大好きなドワーフホト(とスフィンクス)のもとへ、意気揚々と、向かうのでした。

3/4/2026, 3:00:03 AM

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
ここに今年の3月1日から、都内在住の稲荷子狐が、週休完全2日のスケジュールで、御狐修行に出されておりました
が、
実はこのコンコン子狐、まだまだガチモンの子供でして、初めて親元から離れて独りぼっち。
「さびしいなぁ。さびしいなぁ」

前回投稿分で、そんな子狐の寂しい夜に丁度良い、
優しくて噛み心地が良くてブンブン振り回せる楽しいオバケおもちゃが爆誕。
今回のおはなしでは、更に寂しさを解消すべく、
子狐ルームに何故か存在しておった隠し部屋のキッチンを使って、ご近所挨拶用のお餅を作ります。

そうです。「ひなまつり」です。
菱餅ヨモギ餅さくら餅。柏餅も作る予定です。

「うんしょ。うんしょ」
コンコン稲荷子狐は、五穀豊穣が大好きな狐。
稲荷狐となるために、お餅の修行もするのです。
東京の実家たる稲荷神社から、もち米とキネとウスとを持ってきて、お餅をつきます。

「ぺったん、ぺったん!もひとつ、ぺったん!」
稲荷子狐には、稲荷狐の餅つき歌がありました。
「このもち、子ぎつねつくもちにあらず、ぺったん!
みけの神、とこよにいますウカサマの、ぺったん!
かむほき、ほきくるほし、とよほきもとほし!」
母狐から教わった難しい言葉を、ぺったんぺったん歌いながら、由緒正しいらしいウスとキネで、お供物として貰ったお米をつくのです。

味を整えて、色を整えて、形も整えて箱にポン!
ひなまつりのお餅を4時間かけて作りまして、
最後に稲荷狐の御利益をコンコン少し振りかけて、
さあ、出発!
子狐がこれからお世話になるであろう、管理局アパート(仮称)のお隣さんに、ご近所さんに、
お餅を配りに、行きました。

「こんばんは!こんばんは!」

ピンポンピンポン!
コンコン子狐がアパートの、左隣の部屋のドアの、インターホンを鳴らします。
「となりに、ひっこしてきました!
菱餅ヨモギ餅さくら餅、どうぞ」

「あれ、俺、いつの間に奥多摩に帰ってきたっけ」
子狐ルームの右隣は、きっと、ここが隠しキッチンに改造されておるのでしょう、
しっかり施錠されておって、入れませんでした。
子狐ルームの左隣は、きっと、子狐と同じく東京から管理局に通勤しておるのでしょう、
寝ぼけたような様子をして、ドアを開けました。

「そうか。今日は、ひなまつりか……」
「ひなまつり!ひなまつり!
ウカノミタマのオオカミサマの、ごりやくたっぷり!キツネのおもち、どうぞ」

「俺、女じゃないんだよ」
「さくらもち!かしわもち!ごりやく、たっぷり」
「そうかそうか。うんうん。1個ずつください。
色違い厳選のオトモに丁度良いや」

おいくらですか。 おだい、いりません。
稲荷子狐の部屋のお隣さんは、最後まで頭がポワポワで、確率がどうとか御利益頼んだぞとか、
なにやら、最後まで言っておりました。

「こんばんは!こんばんは!」
ひなまつりのお餅をコミュニケーションツールに、
コンコン稲荷子狐は、次のお部屋へ向かいます。
「となりのとなりに、ひっこしてきました!
菱餅ヨモギ餅さくら餅、どうぞ」
御利益たっぷりのお餅は大盛況。
寂しさ解消を目的にお餅を作った子狐は、目的どおり、ちょっとだけ、寂しくなくなりましたとさ。

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