かたいなか

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11/8/2025, 9:42:28 AM

今年のだいたい5月頃、「光り輝け、暗闇で」なんてお題なら、配信されてた気がする物書きです。
ちょうど同じジャンル、同じ照明系、灯光系のお題の中に、自分から光を発する陽キャドッグ、魔法わんこを登場させておりましたので、
今回はその、陽キャドッグのおはなしをご紹介。

最近最近の都内某所、某キャンプ場で、
某稲荷神社の稲荷子狐と
陽キャドッグと同じ職場に居る男女2人ずつが、
陽キャドッグの魔法の光、もとい、灯火を囲んで、
明るく温かく、キャンプディナーしておりました。

陽キャドッグは魔法の犬。
「ここ」ではないどこかの世界で、人間の生活を豊かにするために作られた、魔法生物。
ワンコをワンコと考えぬ、非情で冷血な研究員が、人間のためだけを考えて作り出した犬
だったのですが、

その魔法生物、今の職場に引き取られまして
良いジャーキー、良いクッション、良い遊び道具に新しい飼い主たる職員を与えられて、
かつ、稲荷神社の子狐とも、半年くらい前、たいそう仲良くなりまして、
今では悲しき魔法生物から、しあわせな陽キャドッグに大成長。
それはもう、幸福に犬生を謳歌しておるのでした。

で、その陽キャドッグ、今日は職場、世界線管理局の局員に、キャンプに連れ出してもらいまして。
もちろん陽キャドッグの友達、都内在住の稲荷子狐もキャンプに招待されまして。

夜はパチパチ、近くで小さな焚き火を焚きつつ、
陽キャ照明ドッグの柔らかい照明、もとい灯火を囲んで、温かいお肉やスープを楽しむのでした。

「わんわんさん、わんわんさん!ましまろ!」
照明・灯火係をしている陽キャドッグの代わりに、
友達のコンコン子狐が、焚き火でマシュマロを焼いてきて、陽キャドッグの前に座りました。
「キツネが、やいたんだよ」
子狐が尻尾をぶんぶん振ると、陽キャドッグもぶんぶん、ぶんぶん!つられて振り返します。

「正しくは俺様がほぼ手伝ったけどな」
「まーまー。コンちゃんも、頑張ったよぉ」
マーマレードチョコソースでマシュマロをコーティングするのは、陽キャドッグの職場の女性陣。
陽キャの光の輪に戻って、子狐や陽キャドッグを撫でながら、一緒に焼きマシュマロを楽しみます。

「部長もマシュマロ、焼きますか?」
「甘過ぎるものは好かない」
「意外と焼肉のタレや一味と」
「合うのか?!」
「ふと考えただけです」
バーベキューの炭火の世話をするのは、陽キャドッグの職場の男性陣。
時折陽キャの光の輪に戻って、取り皿に肉を補充したり、コーヒーやココアのおかわりを足したり。

陽キャドッグの照明、もとい灯火を囲んで、
マシュマロ、お肉、スープにコーヒー。
陽キャドッグも職員からお肉を貰って、子狐と一緒にマシュマロを食べて、とっても楽しそう。

「便利だな……」
「どーしたのぉ、ツバメさん?」
「いや、照明用として、彼が優秀なものだから。
彼が気に入れば、またキャンプに連れ出そうかと」

「ワンちゃん、彼『女』かもしれないよぉ」
「え?!」
「メスだったら、ツバメさんとじゃなくて、
あたしたちと一緒に女子会キャンプしようねぇ。
ね、ワンちゃーん」

わいわい、わんわん、こんこん。
不思議な灯火を囲んで為されるキャンプは、
マシュマロ焼いて、お肉も焼いて、
自分から光り輝ける魔法の陽キャドッグは上機嫌。
楽しく、仲良く、夜を過ごしましたとさ。

11/7/2025, 9:57:24 AM

冬囲い、おこた、ストーブ準備にプランターの冬越し。冬支度にも様々、あろうかと思います。
今回は不思議な、言葉を話すハムスターの、冬支度のおはなしをご紹介。

最近最近の都内某所、某アパートに、藤森という雪国出身者が住んでおりまして、
藤森が時折つまんでいるミックスナッツのボトルの中に、ハムスターが1匹。
「ああ、藤森、やっぱり君が買ってくるナッツは、
最高だ、良いロースト加減、至福……」
ももも、むもももも。
恍惚な面持ちで、頬袋を膨らませておりました。

「自分で買ってくれば良いでしょう」
「僕を騙そうったって無駄だよ藤森。
きみ、市販のミックスナッツに、なにかブレンドしてるだろう。僕には分かる」
「何もしてませんが?」

言葉を話すハムスターの名前は、カナリア。
カナリアは「ここ」ではない別の世界の、世界線管理局という厨二ふぁんたじー組織で、
法務部の執行課、特集情報部門に所属し、とっとことっとこ働いている、高給取り。
要するに、情報収集のエージェントなのです
が、

どれだけとっとこカナリアが、
インテリジェンスなエージェントワークをしても、
ハムスターは、ハムスターなのです。

寒くなるとフカフカモフモフを集めたり
冬に向けてナッツを貯蔵したり
とっとことっとこ、冬支度を始めるのです。

カナリアは藤森の部屋に、
上質で美味で香りの良いミックスナッツと
最高の配合の多種ナッツ入りグラノーラと
なにより雪国出身の藤森が信頼している、保温性バツグンな某最高級〼ウォーム毛布があることを
バッチリ、知っておったのでした。

「ナッツも良いけど、んんん、この〼ウォームダブルスーパー毛布も、持っていきたい」
「自分で買ってください」
「分からないやつだなぁ藤森。
ハムスターが、お店に行って、『コレください』って毛布を買えると思うかい?

それに、僕が君の毛布をズッタズタにすれば、君も毛布を新調する口実ができるじゃないか」
「そもそもほぼほぼ新品なので結構です」

なんだいっ。つれないなぁ。
とっとこカナリアはぷいぷい、ぷくぷく。
ミックスナッツのボトルの中で、自分の冬支度を続けます。頬袋にナッツを詰め込みます。
「あっ、藤森、そこのハニーナッツも、美味しそうじゃないか。ちょっと僕におくれよ」
「ハニーナッツ??」
「あるじゃないかハニーナッツ。ほらそこ」
「え? えっ??」

ハニーナッツなんて、買ったおぼえ無いが?
カナリアが見ていた場所を確認しますが、やっぱりそれらしき物は見当たりません。
「カナリアさん?」
どれを見てハニーナッツと思ったんです?
藤森が振り返ると、
「 カナリアさん 」
おやおや、
ミックスナッツのボトルの中身がごっそり減って
藤森お気に入りの最高級〼ウォーム毛布も1枚
双方、キレイに、消えておったのでした。

「……」

あのな。カナリアさん。
藤森は大きなため息をひとつ、吐きました。
冬支度にしても、だな。
ナッツは諦めが付くけれど、最高級ウォーム毛布は、一応、いちおう、そこそこ、まぁまぁ、
いちおう、値段が値段、ではあったのでした。

「買ってくるか」

それにしても、カナリアさんはハムスターの小さな身体で、どうやって毛布を持ち出したのだろう。
藤森は気になりましたが、答えは出ません。
仕方が無いので外出の、準備をして再度息を吐き、
外に出ようとしたところ、

「まてっ、待て、ネズミ!」
「ぎゃあああ!!たすけて藤森、フジモリ!!」

因果応報かこれも冬支度か、
藤森の部屋にちょうど遊びに来た稲荷神社の稲荷子狐に、とっとこカナリア見つかったらしく、
逃げ回って、藤森に救援を要請して、
バシン、あふん。
最終的に、キツネパンチを食らって頬袋の中身を、
盛大に、ぶちまけてしまったとさ。

「ふじ もり」
「先に毛布を返してください」
「かえす かえす たすけて ふじ……」

11/6/2025, 9:53:26 AM

時間が止まれば物体も止まるのに、
物体が止まっても、時間の全部は止まらない。
ちょっと不公平な気がします。
つまり、物体としての私がベッドで毛布にくるまって静止していても、
朝はちっとも待ってくれないし、遅刻スレスレは遅刻スレスレ。
時は、時を止めてくれないのです。
と、いう理不尽は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

昔々、約40から100年くらい前のおはなし。
「ここ」ではないどこか、妖精や魔物が普通に存在している世界の某国で、
誰よりも強く、誰よりもその世界を愛する、優しいドラゴンが住んでおりまして、

今回のお題回収の関係で、
まさかの脱皮をする習性を持つドラゴンでして、
なんと、このドラゴンの脱皮した皮に、
その国の人々は、「時を止めて」、あるいは時を戻して若返らせてくれるような、
不思議な、神秘的な、金銀財宝にも代えがたい薬としての用途を、見出しておったのでした。

『ああ、身体がダルい。そろそろ脱皮の時期だ』
ぽりぽりぽり、かりかりかり。
老化の時を止めてくれる(と人間に信じられている)ドラゴンは、36年に一度のサイクルで、
古い皮膚を脱ぎ捨てて、新しくそれを再生します。

『あの場所へ、 いつもの場所へ向かおう』
のしのし、のしのし。
死に向かう時を止めてくれる(と人間に期待されている)ドラゴンは、自分の本能に従って、
敵に攻撃される心配の無い、静かなお気に入りの洞穴を目指して、翼を畳んで歩いて行きます。

洞穴に誰も、何も居ないことを匂いで確認すると、
ドラゴンは穴の奥底で丸くなって、うずくまって、
そして、脱皮が始まる「その瞬間」を、
静かに、待つのでした。

ところで大勢の人間は不死不老健康長寿をだいたい求め続ける傾向にあるものでして。
老化の時を、死に向かう時を止めてくれる神薬があれば——それを授けてくれるモノが居れば、
そのモノを神として祀り、祭りを為して神薬を頂き、人間の最高権力者に、神薬を奉るのです。

36年に1度の脱皮サイクルをちゃんと覚えておった、祭祀の関係者数十人は、
ドラゴンが脱皮のために、いつもの洞穴に入ると、
別にドラゴンがそれを望んだでも、頼んだでもありませんが、洞穴の入口を飾り付けて結界を張り、
トンテンカン、とんてんかん!
舞を奉納するための舞台だの、音楽を奏上するための舞台だの、なにより屋台と屋台と屋台を、
手際よく、4時間で建ててしまいました。

「我等の死への時を、止めてくださるドラゴン様」
ドラゴンが昼寝をしようとしておった頃に、
洞穴の入口の真ん前から、権力者の声がしました。
「どうぞ今年も、我等に、時を止めてくれる神薬を授けてください。 どうぞ今年も我等に、あなたのチカラを分けてください」

権力者の形式上の懇願が終わると、
ピュイーほろろ、ピュイーほろろろ。
祭司長が笛を吹いて、なにやら曲を奏でました。

『俺の脱皮した皮など、勝手に持っていけ』
あふわわ。 ドラゴンは脱皮の前なので、身体がダルくて、眠くて眠くて、 コテン、すぴぃ。
だいたい2日かけて脱皮して、
脱皮したてのドラゴンの身体は、鱗は、皮膚は柔らかくてプニプニなので、
5日ほど洞穴の中にこもって、皮膚が硬さを取り戻すのを待つのです。

で、その間、人間たちは時を止めてくれるドラゴンの洞穴の前で、歌って踊って、見張りをして、
そして、時を止めてくれると信じられているドラゴンの脱皮した皮を、ドラゴンから貰うのでした。

「ぐるる ぐぅ すぴぃ ぐぅ ぷしゅるる」
なお、ドラゴンが脱皮した皮に、本当に時を止めてくれる薬としての成分や魔力があるかどうかは、
まぁまぁ、そこは、文字数、文字数。 おしまい。

11/5/2025, 9:06:11 AM

樹木や草花の名前をビジネスネームに使っている厨二ふぁんたじー組織の構成員のキンモクセイが、
鳥や動物の名前をビジネスネームに使っている厨二ふぁんたじー組織、世界線管理局に、
潜入して、見つかって、捕まってしまうおはなし。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界多様性機構」という厨二組織がありまして、
機構は世界線管理局がとっても大嫌い!
というのも管理局は機構の活動を、酷く、ことごとく、毎度毎度監視しては邪魔に来るのです。

機構の活動内容は、
困っている世界に手を差し伸べること、
滅亡間近の世界の人を別世界に密航させること、
貧しい世界に先進世界の技術を違法伝授すること、
そして、低い文明レベルの世界を勝手に開拓して、
滅亡世界の住民が安心して不法滞在できる、避難シェルターにすること。

要するに機構は違法な活動をしておるのです。
だけど機構の活動のおかげで、本来の運命より長く生きられる者も居るのです。

それを取り締まり、邪魔してくる世界線管理局が、
世界多様性機構はただただ、大嫌いなのです。

で、そんな世界多様性機構の構成員には、
不思議な香水の香りと精油そのものを使って行使される、香水魔術の使い手がおりまして、
この香水魔術の使い手こそ、キンモクセイ。
今回のお題回収役だったのでした。

『ゆけ、キンモクセイ!
憎い管理局に捕まった同胞たちを救出するのだ』

前回投稿分のおはなしで、キンモクセイの仲間が、
管理局内の標本庫に捕まった機構職員を救出しようと潜入して、最終的に見つかって捕まりまして。
キンモクセイは彼等をまとめて救出すべく、
機構の3番くらいに偉い人から指示を受けました。

『はっ! おまかせください。
私の香りに生身で抵抗できる者は居ません。
かならずや、同胞たちを忌々しい管理局から、救い出してご覧にいれましょう』

ふわり、ふわり。
不思議な香水の魔法をまとって、
秘密の香水の香りを散らして、
キンモクセイが管理局に潜ります。

ふわり、ふわり。
不思議な香水の魔法で一般局員を眠らせて、
秘密の香水の香りで一般局員を痺れさせて、
キンモクセイが標本庫に向かいます。

「ふふふ。とるに足らない」
やがて機構の構成員・キンモクセイは、機構の同胞が複数人捕まっているという、
様々な世界から集めた財宝的兵器、兵器的財宝の個人用収蔵空間、標本庫に辿り着きました。
「誰も、何人も、私の香りの前には無力なのだ」

ふわり、ふわり。ふわり、ふわり。
キンモクセイが散らす、不思議な魔法の香水の魔法に、生身で抵抗できる人間は居ません。
余裕で標本庫の奥の奥、機構の同胞が捕まっているという下層の下層に辿り着き、
標本庫の主、管理局員のヒバリに遭遇しました。

ところでこのヒバリ、生身の人間ではなく、
香水魔術の香りがあんまり効かないとされる
機械の鼻に機械の身体、つまり機械生命体でして。
しかも、あらゆる美しい武器、強力な武器、財宝的武器を集めて飾るヘンタイでして。

要するにキンモクセイ、標本庫の主たるヒバリと、ドチャクソに相性が悪いのでした。

「ほほぅ。兵器としての香水ですか。美しい」
ハァハァ、ハァハァ!
キンモクセイの香りをものともせず、機械生命体のヒバリ、ガンギマリした目で言いました。
「美しい武器は私の収集対象。
魔法の香水を、私のコレクションに加えましょう」
ハァハァ、ハァハァ!ふおぉぉぉ!
キンモクセイの絶望を気にも留めず、機械生命体のヒバリ、ヘンタイ的咆哮を鳴らして言いました。

結果——……

…——「あーのーさぁ。あーーのーーさぁぁぁ」
香水をヒバリに取り上げられて、キンモクセイは他の犠牲者と同じ区画へ、ぽいちょ。
キンモクセイもまた、他の機構の人と同じく、管理局の標本庫に捕縛されてしまったのでした。
「これで何人目だよ。あーもう。ああーもう」
「面目次第も無い……」

世界多様性機構の構成員・キンモクセイは、ただただ、しょんぼりしておったとさ。

11/4/2025, 6:42:22 AM

前回投稿分のおはなしでは、
あらゆる宇宙という宇宙、世界という世界から、価値ある兵器を標本としてコレクションしている、
ヘンタイ機械生命体「ヒバリ」をご紹介しました。

今回はそのヘンタイ、もといヒバリの標本庫の中に捕まってしまった盗っ人たちのおはなしを、
ひとつ、ご紹介します。

ここではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
お題回収役ヒバリは、この厨二組織の法務部所属。
休みの日には管理局権限を乱用して、
あっちのほぼほぼ滅んでる世界に行ったり、
そっちの航路封鎖真っ最中の滅亡世界に行ったり。
そこで価値ある霊剣、叡智詰まった本、技術の粋を結集したギミックに銃に機械等々、
価値の高い兵器を片っ端から、集めておりました。

というのもヒバリ、元々そういう軍事力的財宝を集めて保管して守護する目的で製造されまして。
なのにヒバリを製造した世界が滅んでしまったものですから、こうして新しいオーナーたる管理局のもとで、自分のプロンプトを実行しておるのです。

ところで
そういう兵器財宝が多数保管されてる宝庫なので
管理局に敵対する過激組織「世界多様性機構」から
ガッツリ、目を付けられておりまして。
何度か機構の構成員が、ヒバリの標本庫からチート級の兵器を強奪しようと潜り込んだものの、
ひとりも、機構に帰還できた者は居ませんでした。

「標本庫には行くな」と書かれたメモだけが、
ヒバリの寛大な許可によって、標本庫から出され、
機構の他の構成員の手に渡っただけ。
しかし皮肉ながら、このメモこそが、
まさしく「行かないで、と願ったのに」。
お題回収に繋がるのでした。

今回もまたひとり、標本庫に捕まった仲間たちを救出したくて、そう、機構の構成員がひとり。
兵器的財宝の保管庫たるヒバリの標本庫に潜入して案の定ヒバリに見つかって、捕獲されて、
標本庫の奥深く、下層も下層、夜も朝も海も湖も無い人口区画にぽいちょ、閉じ込められるのでした。

ただ人口区画にも水と土と草だけはありまして。

…——「あーあー、あぁーもう、
だから『標本庫には行くな』って言ったのによ。
なんで来るんだよ。これで何人目だよ……」

さて。収容された仲間を救出すべく管理局に潜入してきた機構の構成員です。
せっかくヒバリの標本庫まで辿り着いたのに、
案の定ヒバリに見つかりまして、
いわゆるミイラ取りがミイラになる、
もしくは狩人罠にかかる、
あるいは、行ったきりスズメ。

脱出方法と収容された仲間の手がかりを探して、土の匂いをたよりに進んでいくと、
だいたい何人、十何人、何十人くらいでしょう、
小さな村がありまして、
そこに、救出したかった仲間が全員集まって、暮らしておったのでした。

「行かないで、と願ったのに、その結果がコレか。
あーもう。あーもう。ぁああーもう。」
まぁ、来てしまったのは仕方無い。仲良くしよう。
脱出の希望を失って久しいらしい救出対象のひとりは、ポテチで新人をもてなしました。

「ポテチ?」
「土と水と、さいわい何故か、植物と花粉は有ったからよ。野菜と穀物を育ててるんだ」
「はぁ」
「いっとくが、肉も魚もミルクも卵も、チーズも生物由来のモンは一切無いぞ」
「は、はぁ」

「てことで、お前は今日から雑草取り担当な」
「いや、農業の前に、脱出」
「できてたら苦労しねぇっつーの。
あ、そうそう、動物みたいなやつを見かけると思うが、生物兵器だ。食えないから覚えとけ」
「ぇえ……」

あーあー、あーあー。
行かないで、と願ったのに、願った結果がこれだ。
先住囚人、機構の構成員たちはため息を吐きまして、これにて無事、お題回収になりましたとさ。
おしまい、おしまい。

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