かたいなか

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前回投稿分のおはなしでは、
あらゆる宇宙という宇宙、世界という世界から、価値ある兵器を標本としてコレクションしている、
ヘンタイ機械生命体「ヒバリ」をご紹介しました。

今回はそのヘンタイ、もといヒバリの標本庫の中に捕まってしまった盗っ人たちのおはなしを、
ひとつ、ご紹介します。

ここではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
お題回収役ヒバリは、この厨二組織の法務部所属。
休みの日には管理局権限を乱用して、
あっちのほぼほぼ滅んでる世界に行ったり、
そっちの航路封鎖真っ最中の滅亡世界に行ったり。
そこで価値ある霊剣、叡智詰まった本、技術の粋を結集したギミックに銃に機械等々、
価値の高い兵器を片っ端から、集めておりました。

というのもヒバリ、元々そういう軍事力的財宝を集めて保管して守護する目的で製造されまして。
なのにヒバリを製造した世界が滅んでしまったものですから、こうして新しいオーナーたる管理局のもとで、自分のプロンプトを実行しておるのです。

ところで
そういう兵器財宝が多数保管されてる宝庫なので
管理局に敵対する過激組織「世界多様性機構」から
ガッツリ、目を付けられておりまして。
何度か機構の構成員が、ヒバリの標本庫からチート級の兵器を強奪しようと潜り込んだものの、
ひとりも、機構に帰還できた者は居ませんでした。

「標本庫には行くな」と書かれたメモだけが、
ヒバリの寛大な許可によって、標本庫から出され、
機構の他の構成員の手に渡っただけ。
しかし皮肉ながら、このメモこそが、
まさしく「行かないで、と願ったのに」。
お題回収に繋がるのでした。

今回もまたひとり、標本庫に捕まった仲間たちを救出したくて、そう、機構の構成員がひとり。
兵器的財宝の保管庫たるヒバリの標本庫に潜入して案の定ヒバリに見つかって、捕獲されて、
標本庫の奥深く、下層も下層、夜も朝も海も湖も無い人口区画にぽいちょ、閉じ込められるのでした。

ただ人口区画にも水と土と草だけはありまして。

…——「あーあー、あぁーもう、
だから『標本庫には行くな』って言ったのによ。
なんで来るんだよ。これで何人目だよ……」

さて。収容された仲間を救出すべく管理局に潜入してきた機構の構成員です。
せっかくヒバリの標本庫まで辿り着いたのに、
案の定ヒバリに見つかりまして、
いわゆるミイラ取りがミイラになる、
もしくは狩人罠にかかる、
あるいは、行ったきりスズメ。

脱出方法と収容された仲間の手がかりを探して、土の匂いをたよりに進んでいくと、
だいたい何人、十何人、何十人くらいでしょう、
小さな村がありまして、
そこに、救出したかった仲間が全員集まって、暮らしておったのでした。

「行かないで、と願ったのに、その結果がコレか。
あーもう。あーもう。ぁああーもう。」
まぁ、来てしまったのは仕方無い。仲良くしよう。
脱出の希望を失って久しいらしい救出対象のひとりは、ポテチで新人をもてなしました。

「ポテチ?」
「土と水と、さいわい何故か、植物と花粉は有ったからよ。野菜と穀物を育ててるんだ」
「はぁ」
「いっとくが、肉も魚もミルクも卵も、チーズも生物由来のモンは一切無いぞ」
「は、はぁ」

「てことで、お前は今日から雑草取り担当な」
「いや、農業の前に、脱出」
「できてたら苦労しねぇっつーの。
あ、そうそう、動物みたいなやつを見かけると思うが、生物兵器だ。食えないから覚えとけ」
「ぇえ……」

あーあー、あーあー。
行かないで、と願ったのに、願った結果がこれだ。
先住囚人、機構の構成員たちはため息を吐きまして、これにて無事、お題回収になりましたとさ。
おしまい、おしまい。

11/4/2025, 6:42:22 AM