かたいなか

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10/29/2025, 4:44:24 AM

気温の乱高下のせいで、いつの間にか秋が来て、いつの間にか秋が終わる気がする昨今です。
なお東京の週間予報によれば、11月の最初頃に、まさかの夏日数歩手前の最高気温という予想。
今年も重ね着による管理テクが試されそうです。

さてそんな最近最近の都内某所、某不思議な稲荷神社は、そこそこ涼しくて良い天気。
稲荷神社に住まう稲荷狐の一家の中の、銀色に輝く2本尻尾のおばあちゃん狐が、
若くて美しい巫女の姿に化けて、抹茶一服。
狐千家の流派でもって、茶会を開いておりました。

そうです。おもてなしです。

おばあちゃん狐が昔勤務しておった「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織に、
世界と世界を繋ぐ航路上の交通事故ということで宇宙イカが搬送されて、治療を受けて、
そろそろ帰るそうなので、
宇宙イカの盟友たる宇宙タコ——世界線管理局法務部のトップが、最後のおもてなしとして、宇宙イカを「こっち」の世界に呼んだのです。

タコとイカが狐の茶会に招かれるってシュール。
はい、細かいことは、気にしてはなりません。
なおタコイカに同行して、別世界出身の人間と、人間に変身したドラゴン部門長も居ます。
更にシュール。はい、気にしてはなりません。

「ああ、なんて静かで、落ち着く空間かしら」
うにょんうにょん。3個くらい前のお題「揺れる羽根」の関係で、有翼種族な宇宙イカです。
「これがこの世界の、ワビサビという空間なのね」
どうやら一服貰う前から、静寂に整えられた空間を気に入った様子。
すべてを記憶に残すべく、足を広げてあっちこっち、おばあちゃん狐の邪魔にならない程度に、
正座の真似事しつつ、観測しておりました。

ところでドラゴン、正座なんて文化、ありません。
人間に変身したからって、正座も長時間耐えられるってワケじゃ、ないのです。
「……」
両足がピリピリ痺れておるのを、別世界出身人間に視線でチラリ、伝えます。
人間はすました顔して、穏やかにニッコリ。
事前に、藤森なる雪国出身者と高葉井なる東京都民から、正座のコツを聞いておったのです。

「なるほど。これが、抹茶」
うにょんうにょん、うにょんうにょん。
おばあちゃん狐から渡された、美しいキツネ色のお椀を2本の触腕で大事に持って、
おもてなしを受けた宇宙イカは、抹茶をよくよく観察します。抹茶を摂取するのは初めてなのです。

「この体で飲むのは、ちょっと、難しいわねぇ」
うにょんうにょん、うにょんうにょん。
おばあちゃん狐からおもてなしを受けた宇宙イカ、
お椀をどうやって口に持ってって、抹茶をどうやって摂取しようか、ひとしきり考えて考えて、
最終的に人間っぽいナニカに化けて、「よしよし。これで、良いわ」。
世界線管理局で治療を受けて、帰るまでの最後の思い出として、抹茶をよくよく、堪能しました。

「面白い……おもしろいわ。これが、この世界」
うにょうにょ宇宙イカ、よほど抹茶のおもてなしがお気に召したのか、シモベみたいな【みょんみょん】を周囲に召喚して大満足。
【ぎょんぎょん】は宇宙イカの周囲でピョコピョコ踊って、宇宙イカをたたえ、抹茶をたたえます。

「そんなに気に入ったんなら、そのお椀と茶菓子セット、記念の土産にもっておいき」
おばあちゃん狐が言いますと、宇宙イカの満足と幸福は最高潮!【うにょにょん】も光り輝きます。

「感謝します稲荷狐。ワタクシは今日のおもてなしを、決して、けっして忘れないでしょう」
「アンタ、世界と世界、普通に行き来できるんだろう?また飲みたくなったら、予約するんだよ。
その時は金額に応じて、良い茶を出してやるから」

うにょうにょ、コンコン。
それからだいたい1時間か2時間くらい、不思議なお茶会は続きまして、おもてなしも大成功。
宇宙イカは大満足で帰ってゆきましたが、
「ぐ……ぅうッ! ぐあぁ!!」
「駄目です部長、無理に立とうとしたら、」
「くぅうぅぅ!!」
正座にちっとも慣れてないドラゴン部門長は、足がすっかり痺れてしまって、コロン。
当分、立てませんでしたとさ。

10/28/2025, 9:57:22 AM

消えない焔のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこには、あらゆる知識と情報と、それから技術と法則とが収蔵された、大きな図書館があります。
その図書館の中央に、あらゆる記録と現在と可能性を映し出す、物語の焚き火があるのです。

それは、滅んだ世界の過去と、
生存している世界の現在、
やがて生まれる世界の可能性がすべて、
ごっちゃごちゃに混じり合って不思議な魔法の焔を燃やす、「どこかの事実」、物語の神様の焚き火。

名前は、タキビ・フシギ・ナンヤーカンヤー。
この焚き火こそ、「消えない焔」なのです。

で、そんな「消えない焔」が、図書室のド真ん中でパチパチぱきん、静かに燃えておりますと、
一部の世界線管理局員が考えるのは以下略。
そうです。レジャーです。
焼き魚はさすがに匂いがしますので、
焼きマシュマロに直火コーヒー、茶の焙煎です。
なんなら熱でドライフルーツの乾燥もできます。

消えない焔って便利ですね。

「ほーんと、便利、べんり〜ぃ」
んんー、おいしい!
魔法の焚き火でドライフルーツを熱風乾燥しておった管理局員が、
ひとつ、トパーズの乾燥リンゴをチョコのポットにくぐらせて、ふーふー、ぱくり!
味見をしてニッコリ、幸福に笑いました。
「魔法の焚き火のチカラかなぁ、この焚き火で乾かしたり、温めたりすると、他のより美味しいよぉ」

チチッ、ギーギー、ちゅーちゅー!
局員が「消えない焔」を使って、図書室でドライフルーツの乾燥などしておるので、
図書室で働く魔法のカピバラや機械仕掛けのハタネズミ、宝石でできた木ネズミ等々が、
羽ぼうきなり乾拭き雑巾なり、パタパタ振って局員に、猛抗議などしています。

ギャッギャ!ギーギー!
図書室は飲食禁止じゃい!出てけ出てけ!
魔法銀の針を広げているのはヤマアラシ。
ちゅーちゅー、ちゅーちゅー!
いい加減にしろ!これで何度目だと思ってる!
一生懸命鳴いているのは大理石のチンチラ。

ところで真面目な彼等に隠れて、魔法のリスがちゃっかりと、ワイロのキノコなど貰っています。
チチッ、チチチ、
へへっ、ありがてぇありがてぇ。
良さげに温かく、良さげに旨味と食感と【人間にはちょっとアブナイもの】が凝縮したキノコは、
数秒で、リスの頬袋の中に収納されました。

「あれぇ、ナッツ、いいの?ナッツあるよぉ?」
チチチ、チチチ。
「キノコで良いの?そーお?カナリアさんとか、ヒクイドリさんとかに、あげちゃうよ?」
チチチ、チチチ。
「チーチーされても分かんないよぉ。食べるー?」
ちゅー。

そんなこんなで今日も今日とて、消えない焔の魔法の焚き火の周囲はにぎやか。
完成したドライフルーツを焙煎したてのコーヒーと交換したり、ココアと交換したり。
そのたび、
真面目なげっ歯類に、ちゃっかりげっ歯類、それぞれがそれぞれチューチューぎーぎーして、
その近くで魔法のカピバラは、パチパチ暖をとって、局員渾身の干し芋を、もしゃもしゃ。
全部ぜんぶ、キレイに食べておったとさ。

10/27/2025, 9:53:22 AM

「終わらない問い」がお題とのこと。
前回投稿分と同じ職場、ちょっと別の場所を舞台に、こんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
航路の安全を保全したり、違反を取り締まったり、
あるいは、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを、他の世界に流れ着く前に回収したり。
まぁまぁ、いろいろ、仕事をしておりました。

前回投稿分では、どうやら取り締まりをしておった航路の中に、違法に交差点が作られて、
そのせいで宇宙イカが、ぬぞぞぞ、交通事故。
決裁も申請も全部飛ばして即時対応する部署、法務部の特殊即応部門と特殊情報部門が、
それぞれ、調査に乗り出しました。

で、すったもんだの管理局です。
事故って局内に搬送された宇宙イカは、ぬぞぞぞ、すぐに回復して元気になりまして、
管理局の中に作られた難民用のシェルターで、滅んだ世界から収容されてきた子どもたちの、遊びの相手をしてやっておったのでした。

「イカさんフカフカ!イカさんの滑り台!」
「イカさんリフトも、たのしい」
「イカさんもっとやって、もっと高い高いして」

うにょんうにょん、ぬぞんぬぞん、
有翼宇宙イカは大きくて、子どもたちにしてみれば、良い滑り台だしアスレチックだし、
なにより、宇宙イカのゲソ、もとい、足にしっかり掴まって、上下してもらうのが楽しい様子。

「イカさん、いつまで居るの!」
「イカさん、いつまでイカさんと遊べるの!」

難民シェルターの子どもたちの一部は、
有翼宇宙イカにお題回収、「終わらない問い」を何度も何度も、投げておったのですが、
「いつまでって、ワタクシ、いつまでかしらねぇ」
ぶっちゃけ、いつまで管理局内で療養すべきか、
宇宙イカ自身も、きかされていなかったのでした。

「イカさん、なんでイカなのに羽根あるの」
「あらぁ、イカが美しい翼を持ってちゃダメ?」
「イカさん、イカさんの下でなんかギョンギョンしてる!アレなあに?」
「アンタたちは生成しないの?不便ねぇ」

「イカメシさーん」
「誰よワタクシをイカメシ呼ばわりしたの」

うぞうぞ、ぬぞぬぞ。
管理局に搬送された宇宙イカは、まぁまぁ、リハビリの意味もあったのでしょう、
子どもたちのナンデナンデシャワー、終わらない問いを浴びながら、たっぷり遊んでやりました。

ところでその宇宙イカの近くで、もう1匹。
子どもたちからナンデナンデシャワーを食らっておったドラゴンが、昼寝をしたがっておりまして。

ドラゴンは子どもたちから「悪い竜神さま」、
わりゅーじんさまと、よばれておりました。

「わりゅーじんさま!わりゅーじんさま!」
「ねぇわりゅーじんさま、あのイカ、なぁに」
「あのイカ、わりゅーじんさまのお友達?」
「ねーねーわりゅーじんさま」

宇宙イカが怖かったり、宇宙イカよりドラゴンの方が好きだったり、ドラゴンの隣が落ち着いたり。
そんな子どもたちがドラゴンの、背中に登ったり尻尾に乗っかったりしています。
「わりゅーじんさま、ねぇわりゅーじんさま」
「わりゅーじんさまあのイカおいしい?」
「あのイカいつ食べるの?」
「わりゅーじんさまいつ遊ぶのー」

『しらん。分からん。寝かせてくれ』
「悪い竜神さま」と呼ばれているわりに、ドラゴンはちっとも怖くなくて、子どもたちにも大人気。
『そこのイカのことはイカに聞いてくれ』
おやおや、ドラゴンがあんまりおとなしいので、2人くらいの子供がドラゴンの尻尾を、枯れ葉を集めて埋めています。「だって寒そうだもん」

『何をしている』
「わりゅーじんさま、服着てないのに寒くない?」
『なんだって?』
「だって、わりゅーじんさま、すっぽんぽんだもん。葉っぱの布団をかぶせてあげるの」
『んん、……あのな??』

「わりゅーじんさまスッポンなの?!」
『スッポン??』
「わりゅーじんさまカメだったんだ……?」
『待て何がどうなって俺がカメだって?』

わいのわいの、やんややんや。
ドラゴンと子どもたちも、終わらない問いで賑やかに、数時間たっぷり遊びましたとさ。

10/26/2025, 6:49:43 AM

「書く習慣」と同じ運営がリリースしている交流アプリに、焚き火のアプリがありまして、
スレッド主の文章書き込み中を表すエフェクトが、そのまま「揺れる羽根」だったのを、
今更、なんとなく思い出した物書きです。
今回は羽根のお題ということで、こんな厨二ふぁんたじーのおはなしをご用意しました。

「こっち」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり整備したり、時には航路を封鎖したり、
滅んでしまった世界からこぼれ落ちたチートアイテムなんかが悪さをせぬよう収蔵保管したり、
ともかく、いろんな仕事をしておりました。

その日の管理局は大忙しで、
なんでも勝手に、違法に誰かが敷設した、航路と航路の不法不明交差点のせいで、
安全航行をつとめておったハズの宇宙イカが、密航船と正面衝突をカマしたとのこと。

そういえばこのアカウント、過去投稿分にオネェな宇宙タコがどこぞで大活躍してましたね。

「あらヤダちょっと!アンタ管理局の法務部?!」
まさかの打ち身で済んだっぽい宇宙イカです。
管理局内の医療機関に搬送されて、そこで宇宙タコと再会して、まさかの感動の対面です。
「何千年ぶりかしら、ちょっと、ちょっと!
覚えてる?!有翼のワタクシと無毛のアンタ!どっちがより美しいかでケンカしてたわ!」
なんということでしょう。この宇宙イカ、お題がお題なので、どうやら羽が映えている様子。
あんまり動くので抜けた羽根が、揺れる、ゆれる。

「忘れるもんですか!ああ、なんてこと!
種族の違いを超えて、アタクシと美の果てを追求した体に、こんなに傷が付いちゃって」
オネェの管理局法務部長、オネェ宇宙タコが宇宙イカの痛ましいタンコブに、涙を流します。
「処置が終わったら、アタシに連絡してちょうだい。久しぶりに思い出話しましょう、あぁああ……」

うねうね、うぞうぞ、みょんみょん、
シチュエーションだけ見れば、揺れる羽根が抜けて舞い踊る美しい場面なのですが、
なんせ、有翼宇宙イカと無毛宇宙タコです。
しかも双方、オネェです。
申し訳程度に踊り揺れる羽根だけが、今回のお題が「揺れる羽根」だと教えてくれます。

で、このオネェ宇宙タコ、管理局の法務部長が、
【ゴニョゴニョ】年ぶり盟友との再会を喜んでいる間、部下の皆様は何をしているかというと。

「時を殴るフライパン??」
「あのねー、イカさんの事故現場に、落ちてたぁ」

管理局法務部の、執行課実動班、特殊即応部門では、宇宙イカの交通事故に関する検証と調査が急ピッチで、為されておったのですが、
事故現場には密航船から落っこちた、とある滅亡世界のチートアイテムがひとつ。
それを収蔵部が回収して、調べてみたところ「時を殴るフライパン」と判明しました。

どういうことでしょう。
細かいことを気にしちゃいけません。

「温度と勢いで、時を進めたり戻したりするのぉ」
フライパンをぶんぶん!収蔵部から来たお嬢さんが、遺留品の説明をします。
「温めたフライパンで殴れば、熱と勢いを足した結果の分だけ時間を進めてー、
冷やしたフライパンで殴れば、冷気と勢いを足した結果の分だけ、時を戻すんだよー」

そ〜ぉれっ、えぃやー!
振りかぶってコォン!!氷水から出したフライパンをミトン手袋で強く握って、
ほくほくフライドチキン1ピースを、チカラいっぱい振り抜くと、コケェッ!!
滅亡世界の不思議パワーと不思議理論により、フライドチキンから黄金の、メスのニワトリが一羽。

「どういう原理だコレ」
「細かいことは、気にしちゃダメだよー」

コケコッコ、コケコッコ!
今回のお題に従って、管理局内で暴れるニワトリ。
飛んで跳ねて、揺れる羽根が舞い落ちて、
殴るチカラが不十分だったのか、フライパンの冷やしが足りなかったのか、
たった20分程度でニワトリ、羽根を残して1ピース、ほくほくのフライドチキンに戻ります。

「……どういう原理なんだコレ」
「だから、細かいことは、気にしちゃダメだよー」

ゆらゆら、ゆらゆら。揺れる羽根が舞い落ちます。
「時間制限があるのか?」
「単純に、エネルギー不足だった可能性もあるぅ」
法務部長がうねうねしている裏で、法務部の部下と収蔵部の教員は、フライパンを熱したり冷ましたり、ドラゴン種のパワーで振り抜いたり。
いろいろ、試しておったとさ。

10/25/2025, 7:30:35 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、キレイな物が大好き!

光るもの、輝くもの、それから美しいお花等々を、
秘密の箱、宝箱の中に詰めて、
時折それを開けて眺めては、楽しんでいました。

前回投稿分でコンコン子狐、無人島でジャーキー食べて焚き火して、キレイな石ころなんか見つけて、
たくさんたくさん、宝物を増やしてご満悦。
子狐の秘密の箱の中も、だいぶ充実してパンパンに
なったのはそれで良かったのですが、

「んーん」
ここで子狐、秘密の箱に問題が発生したのです。
「たからもの、ギッチギチ」
子狐が宝物を、あんまりいっぱい増やしたので、
秘密の箱の空き容量が、ほぼゼロになったのです。
「なやむ」

コンコン子狐は選択に迫られます。
今まで、大事な宝物は、全部ぜんぶ1個の秘密の箱の中。それで十分でありました。
だけど子狐、無人島で焚き火して、ジャーキー食べて、キレイな石ころなんか見つけて、
秘密の箱の中身が一気に増えてしまったので、
秘密の箱をもう1個増やすか、
秘密の箱の中身を整理するか、
秘密の箱をもっと大きいものに変更するか、
そろそろ、決断しなければなりません。

「オッサン!」
子狐は1匹の相談役に思い至りました。
「オッサンに、そーだん、行こう!」
子狐は先週、いや今週の最初だったかしら、
お母さん狐に絵本を読んでもらいました。
その絵本には強くて大きなドラゴンが描かれており、そのドラゴンは金銀財宝、たくさんの宝物と宝箱と、それから魔法の秘密の箱を、
洞窟に隠して、守っていました。

そういえばコンコン子狐、そこそこ優しいドラゴンのオッサンを知っておるのです。

「オッサン、オッサン!そーだん、行こう!」
子狐は尻尾をブンブン振って、宝物の箱を宝物のクロネコリュックに大事に入れて、
ドラゴンのオッサンが居るであろう世界の某草原に、とってって、ちってって、向かいました。
「オッサン、オッサン、いっしょに、かんがえて」

…——で、相談相手に選ばれたオッサンです。
『はぁ、それで、俺が大量の宝物のやりくりと保管をどうしてるか、聞きたいと?』
子狐がコンコン、増えた自分の宝物の整理方法について聞いてきましたので、
昼寝しておったのを起きてアクビして、ちょっと子狐の毛づくろいをしてやって、
そして、相談に乗ってやったのですが、

『たしかに俺にも、思い出の品への執着とか、所有意識とかってのは、無いこともないんだが、
おまえが絵本で見たっていうドラゴンほど、財宝の所有欲も収集欲もだな……』

多分俺より鬼畜猫のやつに、
ミカンの10でも20でも握らせて、便利で新しい宝箱を新調してもらった方が早く解決するぞ。
ドラゴンは言いました。
このドラゴンは財宝の強奪も収集も、保管も独占もしてないらしく、おとなしいドラゴンでした。

「オッサン、ひみつのばしょに、たからもの、かくしてるんだ。だから言えないんだ」
『そうじゃなくてだな。確かに隠しているものはあるが、特にそのお前が絵本で見たようなだな』
「オッサン、おしえてよ、たからもののベンリなかたづけかた、おしえてよ」
『時々整理整頓したらどうだ。要らないものを』
「やだ!たからもの、すてない!」

『なら宝物用の部屋を作るとか、宝箱を増やすとか、宝箱自体をデカいものにするとか』
「そのそーだん、したいの。オッサン、おしえて」
『それはお前次第だろう……』

オッサンいっしょに考えて。
コンコン子狐は尻尾を振って、ドラゴンのオッサンに秘密の箱を見せます。
一緒に考えてもらう報酬のつもりか、子狐の前には美味しそうな、稲荷寿司が5個ほど並んでいます。

『あのな子狐?』
「おねがい、おねがい!オッサンそーだんのって」
『こぎつね』

どうしたモンかなぁ。
ドラゴンは子狐に頼まれて、難しい顔して尻尾をゆっくりパタンぱたん。長考中。
けっきょくドラゴン1匹じゃどうにもならなかったので、ドラゴンと同じ職場の局員を何人か呼んで、
そして、子狐の相談に、律儀に乗ってやりました。

最終的に子狐の、宝物を入れる秘密の箱は、
応急処置でもう少し大きな箱に収容されて、
後日、再度相談会が為されることになったとさ。

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