かたいなか

Open App
10/10/2025, 7:42:42 AM

恋みどり、初恋、よさ恋美人に恋空、花恋の虹。
品種名に「恋」がつく農作物は、意外と多く、
なんなら「秋恋」ならぬ「冬恋」なるリンゴが存在するらしく、とっても甘いそうです。
ということで今回は、お題をもとに、こんなおはなしをご紹介。

最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家には、その週の水曜、10月8日の頃からずっと、
稲荷狐を頼って、伊豆諸島在住の人外が、
複数して、避難してきておりました。

忘れ去られた神社の御神体を背負ってきたり、
足の悪くなった老神使を若い衆が連れてきたり。
台風の猛威が過ぎ去るまで、都内のその神社の宿坊に、避難してきておりました。

なかなか多くの人外が、一気に宿坊に来ましたので、宿坊の調理場は大忙し!
避難人外が持ち寄った旬の伊豆諸島農産物と、
ベストタイミングで雪国出身の参拝者がおすそ分けしてくれた雪国特産品と、
それから宿坊の食料庫をやりくりして、
今日も、美味しい美味しい、伊豆諸島食材と雪国食材をメインにした晩ご飯が、作られました。

ところで避難所を提供しておる稲荷神社のおばあちゃん狐、昔の仕事の縁で、勤めておった職場の勤めておった部署から強引に人間の後輩を召喚。
【ピー】匹と【ピー】人、合計【ピー】分のごはんを作らせて、タダ働きとした模様。
後輩づかいが荒いのです。

酷いよな。 酷いですよね。
おばあちゃん狐大先輩OGに問答無用で召喚されてきた後輩2名は、大鍋振って火力を出して、大きな木べらでグツグツ、じゃんじゃん!
2時間ほど、ぶっ続けで肉体労働をして、
なんならその前から【ピー】時間の掃除と奉仕もさせられたので、へっとへと。

1時間程度の休み時間を貰ったので、
稲荷神社近くに店を出す大古蛇のおでん屋台で、お酒を貰っておでんも選んで、
しみじみ、休憩することにしました。

「そうかい。そりゃ、お疲れ様だったね」
おでん屋台の店主のおやじさん、稲荷神社のおばあちゃん狐のことはよく知っています。
後輩づかいが荒いのも、よくよく承知です。
「ほら、ちょっと奢ってやるから、元気出しな」

おでん屋台には後輩の2名と、それからもうひとり。なんだかコップをカラカラ鳴らしておでんをつまんで、たそがれておる様子でした。
「おまえ、たしか最近法務部に来た……奇遇だな」
「あっ、 どうも」

はい、今日のお給料。
おでん屋台の店主さん、味しみ大根に緑色のとうがらしを細切りにして、パラパラ。
それからひき肉のあんかけをして、重労働してきた2人に出してやりました。

「秋恋こしょう、って名前の在来とうがらしだよ」
面白いだろう。おやじさん、言いました。
「とうがらしなのに、こしょうって言うんだ。
甘さもあるし、辛さはちょいと控えめ。美味いよ」
天ぷらが食いたかったら200円、肉詰めチーズ揚げが食いたかったら300円だよ。
おやじさんはニヨニヨ、笑って言いました。

「コショウも、トウガラシの仲間なのか?」
「親戚ですらないよ。名前が名前なだけさ」
「何故だ?」
「しらんよ。ネットにでも聞きな」

「そうか」

秋恋こしょうの細切りを、ひき肉あんかけと一緒にぱりぽり、2人のうちの1人が食べました。
それは、赤いトウガラシとは少し違って、たしかに少し甘さがあるように感じました。
「ふむ」
2人のうちの1人、今度は秋恋こしょうの細きりと、大根を一緒に食べてみました。
「美味い」
醤油ベースの大根と、控えめな秋恋こしょうトウガラシの味は、なかなか、よく合っていました。

「秋恋トウガラシ?」
「秋恋こしょうだよ」
「天ぷらと、何だって?」
「肉詰め。セットでそうさな、400円」

「2セット」
「あいよ」

パチパチパチ、ぱちぱち。
おでん屋台に油の音が、静かに響きます。
「秋恋。 あきこいか」
緑色のとうがらしを気に入ったその人は、肉詰めと天ぷらをサクサク、もぐもぐ。
最終的に肉詰めが気に入ったらしく、
お夜食用として10個、お持ち帰りしたとさ。

秋恋の名がついたトウガラシのおはなしでした。
おしまい、おしまい。

10/9/2025, 9:38:26 AM

愛する、それ故にケンカすることは、殴り愛。
愛する、それ故に狩ってしまうのは、殺し愛。
騙し愛、イジり愛、叩き愛に潰し愛、
なかなか「それ故に」が付くと、重い愛しか思いつかなくなる気がする物書きです。
今日はそんな愛の中から、
「食べちゃいたいくらい愛してる」、
キュートアグレッションから始まるおはなしを、ふたつほど、ご紹介しようと思います。

まずひとつ目は、どこの世界とも、どこかの宇宙とも、何とも知れずともかく「どこか」。
滅びそうな世界をモグモグごっくん!本能に従って食べてしまう獣がおりました。
獣はモフモフドラゴンのようであり、モフモフネコのようでもあり、言葉を話しました。
『おーほほ、久しぶりに美味そうなの、めっけ!』

モフモフネコドラゴンの獣は、いわば世界のサイクルのひとつであり、世界を愛しておりました。
なによりよく育って、よく繁栄して、魂に満ちた世界は、とっても美味しいのでした。

魂に満ちた世界が滅びそうなら、その世界を愛でて、慈しんで、最後のときにモグモグごっくん。
モフゴン(仮)に食われた世界は、ネコゴン( )の毛づくろいによって毛玉、ゲホゲホ!……美しい輝きを放つエネルギーの宝石となって、
そして、新しい世界に生まれ変わるのでした。

世界を愛する、それ故に、モフネコゴンは、愛しい世界をペロリンチョするのでした。

ふたつ目は、そんな「食べちゃいたい(事実)」を地で行くモフモフ世界イーターの供述を聞いた、別のドラゴンのおはなし。
「愛おしくて愛おしくて、だから食うのだ」というモフモフネコゴンの証言を聞いて、
その心理状態と現象を大事な大事な部下の人間から、「キュートアグレッションというのだ」と聞いたドラゴンです。

『愛する、それ故に、食うのか?』

どういう心理状態だそれ?
食えば消えてしまうのに、何故食うのだ?
部下の人間の説明は、分かりやすいものでしたが、ドラゴンはモフゴンの気持ちが分かりません!
非常に不可解極まりないのでした。

「中にはそういう者も居る、というハナシです」
人間が言いました。
人間はドラゴンから言い渡された仕事が残っておったので、カフェインレスコーヒーを1杯、2杯。
デスクに向かって、仕事に戻りました。

『食うのか』
ドラゴンは人間の背中を見て、口を開けました。
『愛する、それ故に、食うのか……』
やはりドラゴンには、「食べちゃいたい」を実行に移す心が、分かりませんでした。

食ったら、消えてしまうのです。
食ったら、もう会えないのです。
それでもモフモフネコドラゴンは、食うそうです。

『真似事なら、しても大丈夫か』

愛ゆえに、あいゆえに。
ドラゴンは人間を牙で傷つけないように、十分な注意を払って、十数秒だけ、ぱこん!
口の中に愛する部下の顔から肩m

「コラ部長なにするんですか危ないでしょう!!」
『あっ、』
「出しなさい!!ステイ!!反省!!」
『あ……』
「あーあー、ヨダレでべちゃべちゃです。
制服洗濯とシャワー行ってくるので、部長、代わりにこの案件終わらせてください!良いですね!」
『う、わ、わかった……』

愛する、それ故にパックンチョれろれろされた人間と、しょんぼりドラゴンは、
それはそれは可愛らしい光景で、絵になりました。

実はそんな人間とドラゴン、別の世界ではゲームキャラクターとして人気でして、二次創作も多数。
主に掛け算文学として、熱烈に愛されており、
となるとイチバンの争いの種は「どちらが左」「どちらが右」、「反転は許容するか」でした。
ドラゴンと人間の交流を愛する、それ故に、「どのような関係の1人と1匹を愛するか」で以下略。

愛する、それ故に、争いが起こる。
これに関しては語ると長いので、今回はこのへんで、おしまい、おしまい。

10/8/2025, 9:46:45 AM

湿り気のあるそよ風が、すぐそこに台風が近づいてきていることを示しておりました。
このアカウントによく登場する、最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家には、
八丈島や青ヶ島から、避難を希望してきた人外ども、特に稲荷神社に連なる眷属が、
身を寄せて、それぞれがそれぞれの宝物や大事な物だけ持ち出して、集まっておりました。

中には小ちゃい狐の体で、忘れられた神社から、御神体が壊されないように背負ってきたモノも、
1家族、複数匹、おったのでした。

伊豆諸島にホンドギツネは居ませんが、
伊豆諸島の稲荷神社に、稲荷狐は居るのです。

避難してきた眷属たちは、人間に化けておるモノも、人間に化けられぬモノも、ただ子供を除いて、
皆みんな、無言で一点を、じっと見ていました。

静寂の中心で音声を発しておるのは、
稲荷神社の宿坊の、大きい2台のテレビモニタ。
大人たちは、ニュースを観ておるのです。
あるいはその隣で、気象庁の会見の配信やら、八丈島のライブカメラの配信やらを、
それぞれ、観ておるのです。

楽しそうにしておるのは子供だけ。
東京の大きな稲荷神社の宿坊で、今日と明日と明後日、みんなでお泊まりするのよ。
朝から準備して、船に乗るなり飛行機に乗るなり、
狐の秘術を使うなりして、酷く急かすお父さんお母さんに連れられて、
都内某所、某稲荷神社の宿坊に、チェックイン。

稲荷の眷属の子供たちは、皆で仲良くはしゃいで跳んで、狐ずもうをしたりして、
台風のことなんて、ちっとも知らぬのでした。

だって、これから3日間、自分の島の外の子狐たちと一緒に遊んで、一緒に寝て、一緒に美味しいごちそうを食べるのです。
噂では、それぞれの眷属たちがそれぞれの島の特産品を持ち寄って、しかも避難先の稲荷神社に雪国和牛がどっさり残っておるので、
今日は稲荷の神様に、たんと豪勢なお供え物ができるとのことでした。

稲荷神社の宿坊の、座敷の静寂の中心で、
伊豆諸島から避難してきた大人たちは、ライブカメラの配信映像に見入っています。
音を出しておるのは、テレビモニタだけです。
皆みんな、無口です。
大事なもの、宝物、場合によっては今現在所有している肉体より大事なものを全部持ってきて、都内の安全な宿坊まで避難は完了しておるものの、
やっぱり、心配なのです。

元気なのは子供だけ、子狐だけ。
今は狐ずもうから、別の遊びにチェンジの様子。

「世界線管理局」なる「ここ」ではないどこかの世界の厨二ふぁんたじー組織の法務部局員が
すごくベストタイミングで複数名来ておって
そのうち1名——もとい、「1匹」が
まさかの言葉を話す不思議なハムスターなのです!

「助けて!たすけて!くわれるッ!」
ぽふん、ぽふん。
目眩ましのようにキラキラ花粉パウダーを撒き散らして、法務部局員ハムスター、必死に逃げます。
「まて!」
「まてー!」
「つかまえろ、つかまえろー!」
避難組子狐ーズと避難所在住子狐は尻尾をピンとして、全速力で「ネズミ」を追います。

ハムスター以外の法務部局員たちは、今日の避難所ディナーの調理をお手伝い(ほぼ強制)。
だぁれも助けに来ません、もとい、来れません。

キノコの下処理だの肉の下茹でだの、あれよあれよと指示されて、いずれにも抵抗できないのです。
うーん。人づかいが荒いですね。
「えいやっ」
「ギャーーーー!!!」

とうとう法務のハムスターは、子狐ーズの狐パンチでノックアウト、からの吹っ飛び場外。
「り、りふじん……だ……」
大人たちがモニターを観続ける静寂の中心で、
ぽてっ、きゅぅ。満身創痍しておったとさ。

10/7/2025, 6:28:10 AM

葉っぱを燃やすか、燃えるような赤の葉っぱか、
それが問題だと言わんばかりのお題です。
ただ、このアカウントの過去投稿分、8月3日付近のおはなしに、ピンポイントで「葉月牛」なるブランド和牛が登場しておりまして。
丁度良いので、このジャパニーズ和牛ビーフを、
ボン!フランベ。燃やしてゆきましょう。

最近最近のおはなしです。都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、美味しい物が大好き!
今年の8月、雪国出身の参拝者さんの里帰りに、数泊数日で同行したその先で、
葉月牛なるブランド和牛の、和牛串を知りました。

葉月牛は、個人ブランドの少数和牛。
子狐が住む東京に出荷されることはなく、その地域だけで消費される、放牧の雪国和牛。
寒暖差多い雪国で、のびのび過ごし、肉の旨味を凝縮した和牛の牛串は、子狐を魅了しました。

そんな葉月牛を、たまたま子狐のおばあちゃんが稲荷神社の宿坊利用者の晩ご飯用に仕入れまして、
利用予定者がインフルエンザで予約をドタキャン!
「本当にごめんなさい」と、素直にキャンセル料を一括で、素早く、キッチリ、支払ったのでした。

しゃーないのです。
そいつの職場は数日前、熱が下がったばかりの従業員が、マスク無しで仕事をしておったのです。
これは、どうにもならんのです。

で、その利用予定者に振る舞われる予定だった葉月牛を、どうしたかといいますと。
そうです。今回のお題は「燃える葉」です。
フランベして、「燃える葉月牛」にしたのです。

「フランベですか。分かりました」
仕入れた葉月牛を消費するため、おばあちゃん狐が昔仕事をしていた職場の、遠い遠い後輩が、
問答無用で、ひとり、呼び出されました。
「まぁ、やるだけ、やってみます」

拒否権ナシです。無給です。高級和牛を一緒に食えるだけ、ヨシとしろ、とのお達しです。
おばあちゃん狐、後輩づかいが荒いですね。

じゅーじゅー、じゅーじゅー。
フランベに向かって葉月牛のブロックが、フライパンの上で適切に、温度を上げてゆきます。
じゅーじゅー、じゅーじゅー。
フライパンが十分に熱せられて、葉月牛もそろそろ仕上げ。そこにブランデーが注がれます。

さぁ、今こそお題回収。
おばあちゃん狐とおじいちゃん狐と、お母さん狐にお父さん狐、もちろん子狐も見守る中で、
ブランデーの入ったフライパンが、
さっと、傾けられました。

ボン! 一気に、一瞬、オレンジの炎が爆発。
それから先は静かな火の揺らめきが、葉月牛のブロックを包みました。

じゅーじゅー、じゅーじゅー。
燃える葉月牛と一緒に、良い香りが漂います。
じゅーじゅー、じゅーじゅー。
燃える葉月牛はゆっくり、良い香りをまといます。

「ふらんべ!ふらんべ!」
コンコン子狐は、燃える葉月牛を見るのも、そもそもフランベ自体を見るのも、はじめて。
覚えたての言葉を叫んで、大興奮です。
お目々をキラキラさせる子狐の目の前で、おばあちゃん狐のいわば後輩が、すっ、スッ。
燃える葉月牛から火が消えたのを見計らって、
ブロックを、切り分けました。

「どうぞ。見様見真似の、フランベステーキです」

子狐の前にも、芳醇な大人の香りをまとった和牛ステーキが、付け合せと一緒に供されます。
「ふらんべ!ふらんべ!」
当分、おそらく数時間、子狐のトレンドワードはフランベで固定されることでしょう。

特製のグレービーソースを添えて、一口サイズに切ってもらって、幸福な顔していただきます。
燃える葉月牛ステーキが、子狐の適温まで冷めたら、もぐもぐ、ちゃむちゃむ。
子狐のおなかに、収容されました。
燃える葉月牛のおはなしでした。 おしまい。

10/6/2025, 9:59:37 AM

【世界線管理局 収蔵品
『月光酒』】
主に月の光の、魔力を加工し、酒類として抽出したもの。ならびにその抽出方法一式。
酒類と同様に飲用可能。
一般的な竜種、大古蛇種、幻想爬虫種が摂取すると、おおむね酩酊の後、酔臥を呈する。

補記:
一部の竜種は酩酊どころか泥酔・昏睡、爆睡して、20時間以上「ドラゴンとしての誇りを捨てたような体勢」のまま起きないので、
そのあたりを気にしている竜種は飲み過ぎ厳禁

<<気にしている竜種は飲み過ぎ厳禁>>

――――――

前回投稿分に繋がるおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織があり、
その敷地内の原っぱで、「ドワーフホト」のビジネスネームを持つ女性局員が、
ぐでんぐでんに伏したドラゴンを揺すっている。

満月の光で仕込んだ魔法の酒、「月光酒」の全10ガロン、その一部をドラゴンに奪われたのだ。

「部長さぁん、ぶーちょぉさーん、
そろそろ止めないと、止めないとぉぉ、
泥酔して、昏睡して、ヘソ天で爆睡しちゃうよ〜」

なかなか興味深い収蔵品を見つけたので、
収蔵庫から引っ張り出して、満月の原っぱに抽出器を大量展開したドワーフホトである。
約4リットルで1ガロン、1ガロンで抽出器1個。
moonlightの静かな光を不思議な技術で液体に変換して、溜まった芳香の酒が「月光酒」。

わぁ、すてき、すてき。ドワーフホトは笑った。
10ガロンもあれば、大親友のスフィンクスと5ガロンずつ分け合っても十分な量である。
キンモクセイだかジャスミンだか、甘い花のような香りはドワーフホトを楽しませて、

たまたま近くに居たドラゴンの本能を強打した。

くんくん、くんくんくん、ふんすふんす。
合計10ガロン、約40リットルが一箇所に集められて、それぞれがそれぞれの香りを放つ。
キンモクセイだかジャスミンだか、甘い花のような香りはドラゴンに対して、
「俺は、この香りを取り込まねばならぬ」と、
ガッツリ、ひどく、強烈に、ドチャクソに、
抵抗できないほどの強度で思わせた。

しゃーない。要は猫へのマタタビである。

くんくん、くんくんくん、ふんすふんす。
ドラゴンは己の本能に従い、香りの道をたどり、
やがて1個1ガロン、合計10個の月光酒抽出器が一箇所で一斉に稼働しているのを発見。
ぺろぺろぺろぺろぺろ、ごくごくごく。
そのうちの1ガロンを、飲んだ。

ところでこのドラゴン、
月光酒を飲み過ぎると泥酔・昏睡、爆睡ののち、
「ドラゴンとしての誇りを捨てたような体勢」で20時間以上寝てしまうタイプのドラゴンである。
すなわちドラゴンの尊厳をお空の彼方、moonlightの果てまでぶっ飛ばして、ヘソ天キメてぐぅすぴするタイプの、ドラゴンである。

「部長さぁん!部長さぁん!ダメだよぉ!」
ドラゴンの尊厳を守ってやるべく、ドワーフホトはドラゴンをゆっさゆっさ。
「部長さん、ぜーったい、でろんでろんに、」

ぜったい、でろんでろんに、酔っ払っちゃうよ。
言おうとしたドワーフホトを、
時すでに遅し、完全に「出来上がっている」ドラゴンが、幸福そうなトロンお目々で、ぐるる。
数秒見つめて、またぺろぺろ、ごくごく。
月光酒の抽出器に顔を突っ込み、飲んでいる。

しゃーないのである。本能である。
なんなら酒に魂を操られているようなものである。
ぺろぺろ、ごくごくごく、ぐるるぅぅぉん。
moonlightを抽出した魔法の酒を、ドラゴンがそれはそれは、もう、それは。幸福に飲んでいる。

「ぶーちょーおーさぁ〜ん」
ぐぎゃ?ぐるる、るるぅ。 ぺろぺろごくごく。
「ダーメだってぇー。
部長さんのためだよぉ。その辺に、しときなよぉ」
ぐるる。ぐるるるる、るるぅ。 ぺろぺろごくん。

どーなっても、ホントに、本当に知らないよー。
ドワーフホトは最終的に、ドラゴンの尊厳救出を諦めてしまって、ため息からの更にため息。
ドラゴン自身はぐるるるる、更に幸福そうに喉を鳴らして、ぺろぺろ。1ガロンの抽出器の1滴も残すまいと、丹念に丹念に舐めている。
目は完全に泥酔のそれだ。
約4リットルを最後まで舐め取ったドラゴンは、器に顔を突っ込み寝てしまった。

ヘソ天だ。
おまたパッカンの鼻ちょうちんプゥであった。
ドラゴンのプニプニおなかは、moonlightに照らされて、至高のプニプニを表していた。

夜が明けたら、前回投稿分。
完全に爆睡しているドラゴンは、被写体として高画質に撮影されることになったとさ。
おしまい、おしまい。

Next