【世界線管理局 収蔵品
『月光酒』】
主に月の光の、魔力を加工し、酒類として抽出したもの。ならびにその抽出方法一式。
酒類と同様に飲用可能。
一般的な竜種、大古蛇種、幻想爬虫種が摂取すると、おおむね酩酊の後、酔臥を呈する。
補記:
一部の竜種は酩酊どころか泥酔・昏睡、爆睡して、20時間以上「ドラゴンとしての誇りを捨てたような体勢」のまま起きないので、
そのあたりを気にしている竜種は飲み過ぎ厳禁
<<気にしている竜種は飲み過ぎ厳禁>>
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前回投稿分に繋がるおはなし。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織があり、
その敷地内の原っぱで、「ドワーフホト」のビジネスネームを持つ女性局員が、
ぐでんぐでんに伏したドラゴンを揺すっている。
満月の光で仕込んだ魔法の酒、「月光酒」の全10ガロン、その一部をドラゴンに奪われたのだ。
「部長さぁん、ぶーちょぉさーん、
そろそろ止めないと、止めないとぉぉ、
泥酔して、昏睡して、ヘソ天で爆睡しちゃうよ〜」
なかなか興味深い収蔵品を見つけたので、
収蔵庫から引っ張り出して、満月の原っぱに抽出器を大量展開したドワーフホトである。
約4リットルで1ガロン、1ガロンで抽出器1個。
moonlightの静かな光を不思議な技術で液体に変換して、溜まった芳香の酒が「月光酒」。
わぁ、すてき、すてき。ドワーフホトは笑った。
10ガロンもあれば、大親友のスフィンクスと5ガロンずつ分け合っても十分な量である。
キンモクセイだかジャスミンだか、甘い花のような香りはドワーフホトを楽しませて、
たまたま近くに居たドラゴンの本能を強打した。
くんくん、くんくんくん、ふんすふんす。
合計10ガロン、約40リットルが一箇所に集められて、それぞれがそれぞれの香りを放つ。
キンモクセイだかジャスミンだか、甘い花のような香りはドラゴンに対して、
「俺は、この香りを取り込まねばならぬ」と、
ガッツリ、ひどく、強烈に、ドチャクソに、
抵抗できないほどの強度で思わせた。
しゃーない。要は猫へのマタタビである。
くんくん、くんくんくん、ふんすふんす。
ドラゴンは己の本能に従い、香りの道をたどり、
やがて1個1ガロン、合計10個の月光酒抽出器が一箇所で一斉に稼働しているのを発見。
ぺろぺろぺろぺろぺろ、ごくごくごく。
そのうちの1ガロンを、飲んだ。
ところでこのドラゴン、
月光酒を飲み過ぎると泥酔・昏睡、爆睡ののち、
「ドラゴンとしての誇りを捨てたような体勢」で20時間以上寝てしまうタイプのドラゴンである。
すなわちドラゴンの尊厳をお空の彼方、moonlightの果てまでぶっ飛ばして、ヘソ天キメてぐぅすぴするタイプの、ドラゴンである。
「部長さぁん!部長さぁん!ダメだよぉ!」
ドラゴンの尊厳を守ってやるべく、ドワーフホトはドラゴンをゆっさゆっさ。
「部長さん、ぜーったい、でろんでろんに、」
ぜったい、でろんでろんに、酔っ払っちゃうよ。
言おうとしたドワーフホトを、
時すでに遅し、完全に「出来上がっている」ドラゴンが、幸福そうなトロンお目々で、ぐるる。
数秒見つめて、またぺろぺろ、ごくごく。
月光酒の抽出器に顔を突っ込み、飲んでいる。
しゃーないのである。本能である。
なんなら酒に魂を操られているようなものである。
ぺろぺろ、ごくごくごく、ぐるるぅぅぉん。
moonlightを抽出した魔法の酒を、ドラゴンがそれはそれは、もう、それは。幸福に飲んでいる。
「ぶーちょーおーさぁ〜ん」
ぐぎゃ?ぐるる、るるぅ。 ぺろぺろごくごく。
「ダーメだってぇー。
部長さんのためだよぉ。その辺に、しときなよぉ」
ぐるる。ぐるるるる、るるぅ。 ぺろぺろごくん。
どーなっても、ホントに、本当に知らないよー。
ドワーフホトは最終的に、ドラゴンの尊厳救出を諦めてしまって、ため息からの更にため息。
ドラゴン自身はぐるるるる、更に幸福そうに喉を鳴らして、ぺろぺろ。1ガロンの抽出器の1滴も残すまいと、丹念に丹念に舐めている。
目は完全に泥酔のそれだ。
約4リットルを最後まで舐め取ったドラゴンは、器に顔を突っ込み寝てしまった。
ヘソ天だ。
おまたパッカンの鼻ちょうちんプゥであった。
ドラゴンのプニプニおなかは、moonlightに照らされて、至高のプニプニを表していた。
夜が明けたら、前回投稿分。
完全に爆睡しているドラゴンは、被写体として高画質に撮影されることになったとさ。
おしまい、おしまい。
10/6/2025, 9:59:37 AM