かたいなか

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9/28/2025, 8:48:10 AM

あくび、タマネギ、カプサイシン等々。
一昔前から涙活なるものも出たと聞きます。
今回はドラゴンの涙のおはなしを、ひとつ、ご紹介しようと思います。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは様々な世界と世界を繋いだり、
その航路を保全したり整備したり、
あるいは、他の世界からの密入出によって、その世界が不当かつ過剰に開発されたり搾取されたり、植民地化したりしないように。
ともかく様々なことを、為しておりました。

そんな世界線管理局でしたので、
いろんな境遇、いろんな種族、いろんな世界出身の人間も、幽霊も、妖精も魔法生物も機械生命体も、管理局で仕事をしておりまして、
本日のお題回収役は、某世界で一番強いドラゴン。
ビジネスネームを「ルリビタキ」といいました。

ルリビタキはぶっちゃけ、食物を必要としません。
光と水と、ほんの少しの肉や果物さえあれば、自分の体の中でエネルギーを生成して、
それでもって、数日でも数週間でも動けるのです
が、
最強ドラゴン・ルリビタキ、世界線管理局に身を売ってからというもの、「食物を舌にのせて腹に収める」という娯楽を覚えまして。

つまり、美味いものの美味さを知ったのです。
それでいて、食ってもぜい肉にならんのです。
肥満という仕組み自体が存在しないのだから、本当にうらやましい限りなのです。

で、そんなルリビタキは、生まれてこのかた【ごにょごにょ】世紀、料理をしたことがありません。
食物を調理して摂取する必要が無かったし、
そもそもキッショク、喫食自体を、知らなかったのですから、仕方ないのです。
でもルリビタキ、管理局でそれを知ってしまったので、昼休憩には肉なり野菜なり、局内の局員専用食堂で頼んで、むしゃむしゃ。食べています。

再度、明言します。
料理をしたことがないのです。
で、今回のお題は「涙の理由」なのです。

さぁお題を回収しましょう。
ルリビタキをこの流れで泣かしましょう。
最強ドラゴン・ルリビタキに、タマネギを!

「で?これが、そのタマネギ?」
「いっぱい使いたいから、20玉用意した〜」
「本当にこれが、あの黄色いスープになるのか?」
「スープにもなるし、カレーにもなるぅ」

「信じられん」
「しんじなさぁい。しんじなさぁ〜い」

「こっち」の世界の東京で仕事をした際に、オニオンチキンスープを知ったルリビタキです。
穏やかな出汁の香りが好ましく、ちょっと一味を振れば面白く、なにより、優しい味だったのです。
市販品のコンソメ顆粒を使えば簡単だよと言われたので、自分の部下に振る舞ってやろうと、
管理局の料理上手、ドワーフホトにレクチャーを、さっそく頼んだのでした。

ドワーフホトも、美味しいものが大好き!
ルリビタキでも作りやすい、工程の少ないレシピでもって、オニオンスープを教えてくれます。

「じゃ、ルリビタキ部長さん、一緒に頑張ろ〜!」
えい、えい、おー!
ドワーフホトは可愛らしい、ウサギのエプロンとウサ耳キッチンハットで、丁寧かつ効率的に、
鶏肉の下準備と、野菜の皮切りを、始めました。
「部長さんは、包丁に慣れるのも兼ねて、タマネギを細かくみじん切りしといてー」

「ミジンギリ。分かった」
数日前の事前レクチャーとして、基本的な包丁の使い方を、丁寧に教えてもらったルリビタキです。
タマネギの皮をむいて、半分に切り、
トスン、トスン、とすん。
ドワーフホトの私物の包丁で、まだまだ不器用ではありますが、タマネギを切ってゆきます。

トスントスン、とすんとすん、
トントントン、とんとんとん。
20個のタマネギを反復して、皮をむいて半分に切って、小さく刻んでゆきますので、
ルリビタキのミジンギリは、少しずつ上達。

「良いよ良いよ、頑張って、部長さぁん」
ドワーフホトはルリビタキのスキルアップを、包丁の音で察します。なかなかスジが良いようです。
「とんとんとん、テンポよ〜く、焦らぁず」
ドワーフホトも順調に、鶏肉のスジを引き、タマネギ以外の野菜を切って、準備を進めます。

「がーんばれ、がーんばれっ。部〜長〜さん。
トントントンだよ、部〜長〜さぁん」

ところでさっきからルリビタキ、何もドワーフホトの言葉に、返事をしてくれません。
「部長さーん?」

どうしたのでしょう?
そうです、「涙」です。
ルリビタキ、ドラゴンだからか、そもそも身体的感受性が優れているのか、どっぱどっぱと落涙。
無事、お題を回収するのです。

「わぁぁー!部長さぁん!涙、なみだぁ!」
「涙が、どうした?」
「涙の量が、りょうが、ハンパじゃないよぉ!」
「そうだな。タマネギは切れているから問題h」
「大問題だよぉぉ!!」

「問題なのか?」
「ひとまずッ、部長さん、休憩ぃ!」
「そうか」

これが、涙の理由です。今回のお題です。
その後ルリビタキは全部のタマネギを切り終えて、それらは無事、美しいスープになりましたとさ。

9/27/2025, 9:05:06 AM

コーヒーといえば、この「かたいなか」のアカウントには、ちょうどコーヒーダイスキーな登場人物が1人おりまして、
その男は「ここ」ではないどこか、別の世界の、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織で法務部に勤務しておるのでした。

この局員、ビジネスネームをツバメといいまして、
なんということでしょう、あんまりコーヒーをジャンジャカじゃかじゃん飲みまくるため、
「こっち」の世界の某漢方医からも、「こっち」じゃない世界の医務官からも、カフェイン摂取を少しずつ減らしていくように言われてしまうほど、
いわゆる、カフェインジャンキーとしての地位を、確立してしまっておったのでした。

「まぁ、そうなった経緯にも、ちゃんと理由は存在するのですがね」

こちとらコーヒーで精神にブーストでもかけないと、やってらんないような仕事が、週イチというか2週イチというかでポンポコ来るんですよ。
タパパトポポ、とぽぽ。
ツバメは長く深いため息を吐いて、挽きたてのコーヒー粉に、静かに85℃程度のお湯を注ぎます。

キュピン!窓辺に置かれていた狐のぬいぐるみの、ふたつの目が眩しく一瞬、光りました。
ヒュィイーン!可愛らしくお座りしていた狐のぬいぐるみの、お鼻が小さく、動きました。

これぞツバメのカフェイン過剰摂取を取り締まる、
稲荷狐型、狐の秘術式、魔法生物にして魂人形。
見守り人形・コンコンくんです!
要するに狐のモフモフぬいぐるみです。
都内で漢方医として労働してる稲荷狐が、ツバメのカフェインドリンカーっぷりを抑制すべく、魂を持ったぬいぐるみをツバメに貸与したのです。

『ツバメさん。今、コーヒーを淹れましたね』
見守り人形コンコンくん、ぬいぐるみと思えない身のこなしで、ツバメのテーブルに飛び乗ります。
『むむむ。ふむ。ふむ。
カフェインレスコーヒーのようです』

目を光らせて、鼻を動かして、口をパクリ開けて、
見守り人形コンコンくん、ツバメが淹れたコーヒーのカフェイン量でも測定しておるのでしょう、
ツバメが淹れたコーヒーにカフェインがそれほど含まれていないことを検知すると、
おっかないお目々の輝きを消して、お鼻のヒクヒクもやめて、ゆっくり頷いて、
その場にちょこん、お座りしたのでした。

『良い心がけです、ツバメさん。この調子で少しずつ、カフェイン摂取量を減らしていきましょう』

ところで今回のお題、「コーヒーが冷めないうちに」ですね(お題回収開始の告知)

『良いですか。聞いて下さい、ツバメさん』
医療従事者の回し者、見守り人形コンコンくんが、
コーヒーカップを持つツバメの右手を右の前足もといお手々で制して、言いました。
『そもカフェインは、体に疲労感と眠気を自覚させるアデノシンの働きを、邪魔してしまうのです。過剰摂取すべき物質では、ないのです』

良いですね、ツバメさん。
見守り人形コンコンくんは、そう言って、ツバメの目をじっと、静かに見つめました。

『カフェインは、適度に、摂取すべきです』
ツバメがコーヒーカップを持ち上げようとすると、
コンコンくん、ツバメの手にお手々を置きます。

『カフェインは、過剰摂取さえしなければ、抗酸化作用の補助など、とても良い効能を持っています』
ツバメがコーヒーカップに口をつけようとすると、
コンコンくん、ツバメの胸にお手々を置きます。

『良いですね。ツバメさん。適量です』
「あの、」
『適量と、バランスこそ、大事なのです』
「そろそろ、飲ませてくれませんか」
『なによりコーヒーには、適切に飲めば、様々な恐ろしい病気のリスクを下げるデータが』
「あのですね、コーヒーが冷めないうちに……」

ツバメはコーヒーカップを持ったまま、
見守り人形コンコンくんの講義をじっと聞きます。
フルーティーで香ばしい香りは、湯気と一緒に少しずつ、ツバメの部屋に広がってゆきます。
温度も段々とツバメの部屋に、散っていきます。

コーヒーが冷めないうちに、そのコーヒーをツバメが堪能することは、できるのでしょうか。
その辺はお題とは関係ないので、
細かいことは、気にしない、気にしない。

9/26/2025, 8:39:13 AM

【世界管理局 収蔵品
『可能性の姿見』】

「映し出した者の、パラレルワールドに住まう『別の可能性としての自分』を見せる」
と、最後の最後まで思われていたアイテム。
実際は、たしかに「別の可能性」としての自分を映すスタンドミラーではあったものの、
特にパラレルワールドとは繋がっていなかった。

福利厚生部 医療・医務課の「愛の変態」、
ヤマカガシにオリジナルを貸与後、行方不明。
本人は返却済みと主張している。

「別の可能性」を複数出現させることから、
解釈違いを大量生産するため取り扱い注意。

<<解釈違いを大量生産するため取り扱い注意>>

――――――

世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織は、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムをたくさん収蔵しておりまして、
ゆえに、たまにその収蔵品のせいで、大なり小なりハプニングなどなど、発生するのでした。

たとえばそう、つまり、「パラレルワールド」みたいなお題が出題された日などは特に。

で、今回の管理局内で発生した、収蔵品によるハプニングはといいますと。
滅んだ世界では「これはパラレルワールドの自分を見せてくれるアイテムだ!」と、最後の最後までずっとずっと信じられていた、大きな鏡が原因。

鏡の対象具現化オプションが突然起動しまして。

「わぁぁ!どうしよう、コンちゃんがいっぱい!」
こやこや、こやこや!
パラレルワールドと繋がっている、と勘違いされておったスタンドミラーから、子狐が1匹、2匹!
オリジナルの子狐が鏡の前でポーズを決めるたび、
『子狐の別の可能性』が、鏡から出てきます。

「おねーちゃんも、いっぱい、いっぱい!」
こんにちは、こんにちはぁ。
パラレルワールドと繋がっている、と勘違いされておったスタンドミラーは、女性局員も1人、2人!
オリジナルの局員が鏡の前で慌てふためくたび、
『その局員の別の可能性』も、鏡から出します。

「おねーちゃんが、ひとり、ふたり!」
「コンちゃんが、いっぴき、にひき……」
スポポンポン、すぽぽんぽん。
大人になった子狐に、真っ黒くろすけの子狐。
男装してる女性局員に、ウサ耳付いてる女性局員。
あんな可能性、こんな可能性、そんな可能性と、
鏡からポンポン、出てきます。

「えぇぇ、どーやって止めるの、これぇ!」
「知らないよぉ。こっちの世界のアタシなら、分かるんじゃなーいぃ?」
「こっちの世界の私、どれぇ?どこぉ?」
「知らないよ!ボクじゃないよ!」
「こやぁ」

「ひとまず落ち着こうよぉ。
皆の分、お茶とココアとコーヒー淹れたよぉ」
「「賛成〜」」

ポンポン、ぽんぽん。
子狐が自分の「パラレルワールドモドキ」を大量生産して、皆で狐団子などしてる間、
この鏡をなんとか停止させようと、女性管理局員、ドワーフホトが「皆」で、知恵を合わせます。

「黒い布とか被せるのかな」
「その布が量産されたら、困るよぉ」
「生き物を量産するっぽいし、大丈夫だよぉ」

「じゃあなんで私たち、服着てるの?
生き物だけコピーする鏡なら、みんなスッp」
「わーわーだよ。ピーピーだよぉ」

「クッキーとマフィン置いとくぅ」
「「はぁーい」」

ねぇ、どうしよう、どうしよう。
ドワーフホトが話し合いをしておる間にも、あんな子狐、こんな子狐、そんな子狐が爆誕。
一部の子狐などは合体して、子狐キングになっておるかもしれません。

「スイッチあるんじゃなーい?」
パラレルワールドモドキの、ウサ耳ドワーフホトが、ココアを飲みながら言いました。
「きっと、スイッチかなんか、あるよぉ」

そうだ、そうに違いない!
男装ドワーフホトも、ボクっ子ドワーフホトも、頭に光の輪っかなど浮かべてるドワーフホトも、大多数が同意しましたが、

「どーやって鏡まで行くの?」
「うん……」

気が付けば部屋はぎゅうぎゅう、子狐だらけ。
子狐をどかしながら鏡に向かうにしたって、あっちもモフモフこっちもモフモフで、場所が無いのです。

「大丈夫だよ、まだ、なんとか……」
なんとか、なるよぉ。
犬耳ドワーフホトは言いますが、
はてさて、このあと、どうなることやら。

パラレルワールドのお題とパラレルワールドモドキ量産装置のおはなしでした。 おしまい。

9/25/2025, 9:58:56 AM

どこかの誰かが書いて、印刷して、そして、頒布した二次創作の中の1ページ。

「世界線管理局」なる架空の組織の、法務部執行課・特殊即応部門なる厨二部署のオフィスで、
左手の腕時計を、ルリビタキなるビジネスネームの部門長が、じっと見ている。
窓の外は斜陽。壁掛け時計の時刻表示は5時半。
ルリビタキの腕時計の針に関しては、
もうすぐ、11時58分0秒を示す。

「開始まで2分、59、8、7。
状況はどうだ。ツバメ」

『問題ありません……怖いくらいに』
ルリビタキの右耳には小さなイヤホンマイク。
部下で副部門長のツバメの声が聞こえてくる。
『先行のムクドリも、潜入のカナリアも、何のトラブルも動きも確認していません』

一応、「カラス」にもスタンバイを頼んでいます。
ツバメはそう付け足して、小さなため息を吐き、
ここまでで約30秒が経過。
ルリビタキの腕時計の針が、チッチッ、チッチ。
順調に「0時0分0秒」に向けて、進む、進む……

「……一応、話しておく」
『はい』
「何かあったら俺の指示よりお前の勘を優先しろ。
現場を見て、相手を見て、場合によっては、」
『そうならないことを、祈りたいですね』

チッチッ、チッチ。
斜陽のオフィスはただただ静寂。
ルリビタキがまた、残り時間を読み上げる。
「開始まで、1分、59、8、7」

カウントがゼロになって、
すなわち、「時計の針が重なって」、
その後は、ルリビタキも少しばかりは忙しくなり、
通信先のツバメも、あちこち動き回ることになる。

はぁ。
トントンと聞こえてくる脈動は少しテンポが早い。
あらためてルリビタキが腕時計に注目すると、
時計の針が、6の文字盤に重なって、離れて、
すなわち、0時0分0秒まで、残り30秒を切る。

少しばかり、窓の外に視線を向ける。
斜陽である。もうじき、太陽が落ちる。

――――――

「ってゆぅ二次創作、見つけたのぉ」
「へいへい」
「カウント!10から!9!8!
カッコイイよぉ、カッコイイよぉぉ」
「へいへい」

「スフィちゃん一緒にやろ」
「ごっこアプリ作ってやるからそれで我慢しろ」
「アプリじゃ、臨場感ってモンが無いよぉぉ!
スフィちゃん、ツルごっこ、ツルごっこー」
「本人に頼めよ同じ職場に居るんだから」

「いーもん。二次創作、提供してくれた提供者さんと一緒に、再現ごっこしてくるもーん」
「はぁ???」

9/24/2025, 5:21:05 AM

僕と一緒に、ちょっとオタクで厨二ちっくで、不思議な物語など、楽しみませんか。
ということでこんなおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなし。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、別世界間の航路を開設したり整備したり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムが他の世界で悪さをせぬよう、回収して、保管したり。
滅亡世界を生き延びた生存者のために、ドチャクソ規格外に大きい難民シェルターの運営なども、いろいろ、やっておる組織なのでした。

今回のお題回収役は、チートアイテムを管理する、収蔵部収蔵課の局員。
ビジネスネームを、ドワーフホトといいます。
「うぅー!うわぁ〜ん!
忙しくて、目が回っちゃうよぉぉー!」

ドワーフホトには全部で5体、ドワーフホトにそっくりで、ドワーフホトの仕事をサポートしてくれる、魂人形が居るのですが、
その日は5体の魂人形全員をフル稼働させてもなお、すごく忙しくて、すごく大変なのでした。

というのもドワーフホト、収蔵課局員1名の定年退職につき、担当する収蔵庫がひとつ増えまして。
収蔵品リストの照合とデータベースの統合が、
特にデータの統合と整理が!
すごく!非常に!あり得ないほどに!
それはそれはもう、大変なのでした。

「ドワーフホトさん!負けちゃダメにゃあ!」
経理部から借りてきた、書類・伝票・引き継ぎ物配膳……もとい、配達ロボットネコの「クロネコ」が、複数台、ドワーフホトを励まします。
「僕たちも、頑張るにゃあ!
僕と一緒に、このお仕事、終わらせるにゃー!」

この収蔵品はあっちの倉庫、
そのデータ結晶はこっちの倉庫、
データの同期は済んだっけ?
ああ、ああ。大忙しです。
実物の収蔵品の移動と一緒に、データベースもきちんと整理する必要があるのに、
ドワーフホトと5体の魂人形と、それから配送ロボットネコ数台では、限度があるのです!

「ドワーフホトさん、負けちゃダメにゃ!」
「僕と一緒に、この仕事をやり遂げるにゃあ!」
「ネバギブアップにゃぁぁ!」
「おまえら音声飛ばしてるヒマあったら収蔵品運べにゃあ!どけにゃああ!」
「じゅー でん、 して にゃ」

「このままじゃ、引き継ぎのデータだけ、完全に後回しになっちゃうよぉ!」
ドワーフホトは、叫びました。
「助けてぇ、スフィちゃーん!」
たすけて大親友、たすけて救世主!
ドワーフホトは、チカラいっぱい叫びました。

すると、バタン!!
「完成したぜホト!俺様と広報部企画課の合作!」
白く美しく輝くデータの結晶板を持って、
経理部の天才エンジニアにしてドワーフホトの大親友、スフィンクスが助けに来たのです!
「お前の魂人形の6号機!デジタル作業特化の、デジタル生命体エディションだぜぇー!」

『こんにちわぁ!』
スフィンクスがデータ結晶を、ドワーフホトの収蔵庫のメインコンピューターに装着すると、
ピピッ!たちまち電源が入り、モニターにドワーフホトそっくりで、かわいらしいドレスを着たアバターが、ものの数秒で出現しました。
『収蔵庫内のデータ同期とぉ、整理だね、
ボクがパパァっと片付けちゃうよ、まかせてぇ!』

作業中だよ!作業中だよぉ!
僕と一緒に、バックグラウンドで33個のタスクが実行中、1111個のデータが移動中だよー!
収蔵庫のモニターに、シークバーが表示されて、
デジタル生命体たる魂人形6号が、デジタル生命体ならではの高効率と高スピードでもって、データ作業を次々に、終わらせてゆきます。
『作業一旦停止まで、あと5分〜。
5分たったら、ボク、お茶するよ〜』

「わぁ……!」
停滞していたデジタル作業がすごいスピードで終わってゆくので、ドワーフホト、感激です。
「ありがとー、ありがとースフィちゃぁん!」

ところでドワーフホト、女性局員なのです。
いつも、「あたし」と自分を呼びます。
ドワーフホトの魂人形たち5体も、自分を、「あたし」と言います。……おやおや?
「あのねスフィちゃん、」
ドワーフホト、自分の魂人形の6号機の一人称が「ボク」なもので、不思議に思って聞きました。
「なんで『ボク』ぅ?」

まぁぶっちゃけ、お題が「僕」だからなのですが、まぁまぁ、そこは気にしない。
「あぁ、それな、」
スフィンクスが理由を言いました。
「共同開発で手ぇ組んだ企画課のやつの趣味」

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