【世界管理局 収蔵品
『可能性の姿見』】
「映し出した者の、パラレルワールドに住まう『別の可能性としての自分』を見せる」
と、最後の最後まで思われていたアイテム。
実際は、たしかに「別の可能性」としての自分を映すスタンドミラーではあったものの、
特にパラレルワールドとは繋がっていなかった。
福利厚生部 医療・医務課の「愛の変態」、
ヤマカガシにオリジナルを貸与後、行方不明。
本人は返却済みと主張している。
「別の可能性」を複数出現させることから、
解釈違いを大量生産するため取り扱い注意。
<<解釈違いを大量生産するため取り扱い注意>>
――――――
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織は、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムをたくさん収蔵しておりまして、
ゆえに、たまにその収蔵品のせいで、大なり小なりハプニングなどなど、発生するのでした。
たとえばそう、つまり、「パラレルワールド」みたいなお題が出題された日などは特に。
で、今回の管理局内で発生した、収蔵品によるハプニングはといいますと。
滅んだ世界では「これはパラレルワールドの自分を見せてくれるアイテムだ!」と、最後の最後までずっとずっと信じられていた、大きな鏡が原因。
鏡の対象具現化オプションが突然起動しまして。
「わぁぁ!どうしよう、コンちゃんがいっぱい!」
こやこや、こやこや!
パラレルワールドと繋がっている、と勘違いされておったスタンドミラーから、子狐が1匹、2匹!
オリジナルの子狐が鏡の前でポーズを決めるたび、
『子狐の別の可能性』が、鏡から出てきます。
「おねーちゃんも、いっぱい、いっぱい!」
こんにちは、こんにちはぁ。
パラレルワールドと繋がっている、と勘違いされておったスタンドミラーは、女性局員も1人、2人!
オリジナルの局員が鏡の前で慌てふためくたび、
『その局員の別の可能性』も、鏡から出します。
「おねーちゃんが、ひとり、ふたり!」
「コンちゃんが、いっぴき、にひき……」
スポポンポン、すぽぽんぽん。
大人になった子狐に、真っ黒くろすけの子狐。
男装してる女性局員に、ウサ耳付いてる女性局員。
あんな可能性、こんな可能性、そんな可能性と、
鏡からポンポン、出てきます。
「えぇぇ、どーやって止めるの、これぇ!」
「知らないよぉ。こっちの世界のアタシなら、分かるんじゃなーいぃ?」
「こっちの世界の私、どれぇ?どこぉ?」
「知らないよ!ボクじゃないよ!」
「こやぁ」
「ひとまず落ち着こうよぉ。
皆の分、お茶とココアとコーヒー淹れたよぉ」
「「賛成〜」」
ポンポン、ぽんぽん。
子狐が自分の「パラレルワールドモドキ」を大量生産して、皆で狐団子などしてる間、
この鏡をなんとか停止させようと、女性管理局員、ドワーフホトが「皆」で、知恵を合わせます。
「黒い布とか被せるのかな」
「その布が量産されたら、困るよぉ」
「生き物を量産するっぽいし、大丈夫だよぉ」
「じゃあなんで私たち、服着てるの?
生き物だけコピーする鏡なら、みんなスッp」
「わーわーだよ。ピーピーだよぉ」
「クッキーとマフィン置いとくぅ」
「「はぁーい」」
ねぇ、どうしよう、どうしよう。
ドワーフホトが話し合いをしておる間にも、あんな子狐、こんな子狐、そんな子狐が爆誕。
一部の子狐などは合体して、子狐キングになっておるかもしれません。
「スイッチあるんじゃなーい?」
パラレルワールドモドキの、ウサ耳ドワーフホトが、ココアを飲みながら言いました。
「きっと、スイッチかなんか、あるよぉ」
そうだ、そうに違いない!
男装ドワーフホトも、ボクっ子ドワーフホトも、頭に光の輪っかなど浮かべてるドワーフホトも、大多数が同意しましたが、
「どーやって鏡まで行くの?」
「うん……」
気が付けば部屋はぎゅうぎゅう、子狐だらけ。
子狐をどかしながら鏡に向かうにしたって、あっちもモフモフこっちもモフモフで、場所が無いのです。
「大丈夫だよ、まだ、なんとか……」
なんとか、なるよぉ。
犬耳ドワーフホトは言いますが、
はてさて、このあと、どうなることやら。
パラレルワールドのお題とパラレルワールドモドキ量産装置のおはなしでした。 おしまい。
9/26/2025, 8:39:13 AM