「!」のマークは、びっくりマーク、あるいはエクスクラメーションマークと言うそうですが、
ネット検索いわく、
「He exclaimed.」で「彼は叫んだ」、
「A exclamation of amazement」で「驚きの叫び」を意味する、とのこと。
大学の言語学で「日本人が英語を苦手とするのは言語学的にしゃーない」と学んだ物書きです。
感嘆符じゃ足りないナニカとのことで、今回はこんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。現実世界軸ベースのくせに、ドチャクソ不思議なおはなしです。
都内某所、某本物の稲荷狐が住まう稲荷神社の鎮守の森に、まさかのドラゴンが期間限定で出現中。
このドラゴンは、光と炎と雷のドラゴンで、
そのドラゴンが昼寝をすると、近くの花や草木は元気になって、よく伸びるし、よく種をつけるし、
あるいは、よく球根を太らせるのでした。
ところでこのドラゴン、おなかがプニプニでして。
非常に触り心地がよろしく、弾力もありまして。
稲荷神社に住まう稲荷子狐とその親友たちは、
木に登り、ドラゴンのおなか目がけて飛び降り、
ひゅぅー、ぽぉん!!!!!
びっくりマーク1個じゃ足りない弾力でもって弾かれて飛び上がり、地面に着地するという遊びを、
それはそれは、もう、それは。楽しんだのでした。
ヘソ天で昼寝中のドラゴンとしては良い迷惑。
だけど子供が為すことなので、我慢してやります。
……それにしたって高所から飛び降りるので衝撃が。
「いくよ、いくよ、いくよッ!」
ぎゃっぎゃっぎゃ、ぎゃーぎゃっぎゃ!
尻尾をばんばか振り倒す子狐は大興奮!
飛び降りる前からもう楽しいのです。
それこそ「!マークじゃ足りない感情」なのです。
「おりゃーー!!」
子狐なりに一生懸命、枝の上で助走して、えいっ!
「わー! わー! わぁぁ!」
丁度良いところで枝から落ち、自由落下でドラゴンの、高弾力にして美しいおなかへダイブ!
ぽぉん! おなかに子狐が降ってきます。
「ぎゃっ!! ぐわぅ」
衝突の衝撃はドラゴンのプニプニおなかが吸収して、適切な反発力でもって、子狐を跳ね上げます。
「ぐるる」
ドラゴンの不満そうな唸り声は、「お前たちもう少し低い枝から飛び降りてくれないか」と、静かに、穏やかに、抗議しているようでもありました。
まぁ子供はそんな要望聞きやしません。
「つぎ、あたしよ!」
んにゃあ!んにゃああ!
化け子猫が、子狐のダイブに続きます。
子猫も尻尾をピンと立てて、とっても楽しそう。
まさしく「!マークじゃ足りない感情」です。
「見てなさい、真ん中に着地するから」
化け子猫も一生懸命、枝の上で助走して、えいっ!
「きゃー! たのしい!」
猫ならではの美しい身のこなしで枝から落ち、自由落下でドラゴンの、おなかの真ん中にダイブ!
ぽぉん! おなかに子猫が降ってきます。
「ぐぎゃ!! ぐわぅ」
今回の衝撃もドラゴンのプニプニおなかが吸収。
適切な弾力でもって、子猫を跳ね上げます。
「ぐるるるる、ぐわぅぅぅ」
ドラゴンの唸り声は、やっぱり不満そうです。
どうやら「爪を立てるな」と言っているようです。
まぁ猫にそんなこと言っても聞きやしません。
『おうおう、楽しそうなことしてるじゃねぇの』
なぁお、んなぁぁおう。
最後のぽんぽんダイバーは、通りすがりの……何でしょう、大きなモフモフ猫のようでもあり、少し小さめのモフモフドラゴンのようでもあります。
『ヒヒヒ、行くぜー』
不思議モフモフドラゴンネコは、上部な木を選んで登ります。枝に移っては折れそうなので、幹から直接ドラゴンのおなかを狙います。
ところでこのモフネコゴン、子狐たちより比較的大きいようですが、お昼寝ドラゴン大丈夫かしら?
『おりゃっ! くらえ!』
モフネコドラゴンは木の幹から体を離し、えい!
「ひゃー! こりゃ良いぜぇ!」
最後のお題、「!マークじゃ足りない感情」目指して、ネコゴンがドラゴンの腹の上に、
どぉん!!勢いよく、衝突しました。
反発だの弾力だの言ってられません。
そこそこの質量のモフネコゴンが、ドラゴンのおなかに、相当の落下速度と質量で衝突したのです。
「ぎゃおおおおおん!!!!ぐぎゃおおおお!!」
『ありゃ。思ったよりポンポンしねぇな。ちぇっ』
「ぐぎゃぁああああおおぅ!!! ぎゃーす!!」
お昼寝しておったドラゴン、そうとう痛かったのでしょう、秒でモフゴンにどんがらがっしゃん。
『おーおー、やるか?俺様強いよ?』
「ぎゃお!!ぎゃーす!ぎゃーす!!」
ドラゴンとネコゴンがケンカを始めると、子狐や化け子猫、子猫又に子カマイタチも、楽しそう。
化け子狸だけが「こりゃタイヘンだ」と、大人の稲荷狐に救助要請で走ります。
結果、子狐のお母さんが来て、ドラゴンとネコゴンを(物理的かつ秘術的に)鎮めるまで、
稲荷神社はそれはそれは、賑やかであったとさ。
おしまい、おしまい。
半年前、だいたい3月22日近辺に、「君『と』見た景色」なるお題が配信されていたようです。
「君が」に当たる他者、すなわち恋人や親友等々に該当するリアルの相手が思い当たらぬ物書きが、
今回は、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなしです。
「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、世界と世界を繋ぐ航路を運営したり、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを回収・保存したり。様々な仕事をしておりました。
管理局の仕事の中には、先進技術を持つ世界から発展途上世界への、侵略だったり、入植だったり、資源の略奪や過開発だったりを取り締まるという、
いわば、警察のようなものもありました。
異世界渡航技術が存在しない「こっち」の世界、日本を含めた地球は、いわば途上世界。
管理局は地球が「地球」として、独自性を尊重され、ずーっと独立して存在できるように、
他の世界からの干渉や、異世界組織からのアプローチなんかを、よくよく監視しておったのでした……
が。
先日、この地球の日本と接続していたハズのゲートだけが、何故か不具合を起こしまして。
現在、ゲート無しでも「向こうの世界」へ行ける局員が現地に急行して、原因を調査中。
完全な復旧には、数週間、数ヶ月かかりそうです。
で、このハナシと「君が見た景色」のお題が
一体どこで、どのように繋がるかと言いますと。
この「管理局と日本を繋ぐゲート」、都内某所の某不思議な稲荷神社に設置されておるのです。
稲荷神社に住まう稲荷子狐が
管理局と日本とを繋ぐゲートを伝って
稲荷のご利益ゆたかなお餅を売りに来まして。
このモフモフこんこんが大人気なのです。
その大人気モフモフこんこんが、原因不明のゲートの不調で、数日突然の訪問途絶です。
ごくごく一部のモフモフ依存症局員から、程度に差こそあれ、だいたいは軽微なものですが、
子狐欠乏症だの、コンコン禁断症状だのが、
段々と、報告され始めておりまして。
イチバンの重症な子狐欠乏症を、お題回収役の収蔵課職員、ドワーフホトが、見てしまったのです。
「うおぉぉぉぉ!!
最近、心の栄養が、コギツネウムが、モフミンが、コンコントテン酸が足りないッッ!!」
ドワーフホトが見つけたのは、稲荷子狐とは違う狐を、代わりに抱いてスーハースーハー、
喫煙ならぬ喫狐しておる、受付職員でした。
受付職員は、ビジネスネームをコリーと言いまして、稲荷子狐をそれはそれは、もう、それは、かわいがってモフモフして、餌付けしておりました。
稲荷子狐はコリーのことを、「ジャーキーのおねえちゃん」と言って、それはそれは、もう、それは、よく懐いておったのでした。
その子狐がここ1週間+αの長期間、パッタリ。
片耳も、尻尾の先も、姿を見せないのです。
急性の子狐欠乏症を呈したコリーは、早急にモフモフ要素を摂取しなければなりません!
そこでコリー、管理局内に存在する難民シェルターの、その中で難民向けのレストランを経営しておるコンコンズの中の1匹を拉致ってきて、
スーハースーハー、スーハースーハー!
モフモフ成分の摂取を始めたのです。
それを、お題回収役のドワーフホト、見たのです。
「やめろコン!離せコン!」
「もう少しだもう少し!ああああああ、心の健康が回復してゆく、モフモフで魂が満たされる」
「おまえの心の健康なんて、知らねぇコン!
レストランの営業妨害で法務部にチクるコン!!」
「ポンポンおなかも吸っておこう」
「こやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
じたばた激しく暴れる狐を抱く同僚を見て、ドワーフホト、開いた口が塞がりません。
「わぁぁ。タイヘンなことになってるぅ……」
ああ、ああ。ドワーフホト。
君が見た景色こそ、お題です。
君が見た景色こそ、今回のおはなしです。
「スフィちゃん、早く、ゲート直してねー……」
暴れる狐と吸う同僚、双方を見なかったことにして、ドワーフホトは自分の仕事に戻りました。
「ここ」ではないどこかの職場の、局員が見た景色のおはなしでした。 おしまい、おしまい。
言葉にならない、物、者、藻の、英単語としての「mono-」。色々あるとは思います。
あるいは「言葉に『なら』、無いもの」とお題を区切るならば、たとえば言葉には無いけれど別の媒体としてなら存在するものとか……
と、いうハナシは遠くにでも置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。
最近最近、都内某所のおはなしです。
前回投稿分が続くおはなしです。
某アパートの一室の、主の名前を藤森といいまして、風吹き花咲く雪国の出身。
つい先日まで、近所の稲荷神社に住まう稲荷子狐と一緒に、故郷の雪国に帰省しておったところ。
東京に戻ってきて数日、実家からトウモロコシとスイカがクール便で、どっさり届きました。
子狐の神社におすそ分けしたところ、子狐コンコン、どっちもたいそう気に入りまして。
雪国の夏の寒暖差を一身に受けた赤や黄色を、
しゃくしゃく、むしゃむしゃ、ちゃむちゃむ!
一気に全部、胃袋に収容してしまいました。
そのときの子狐の極上な幸福といったら。
まさしくお題どおり、「言葉にならないもの」。
ドチャクソに狐尻尾をぶん回し、
バチクソに耳をペッタン倒し、
ギャッギャーギャッ、くぁーくぁーく!!
言葉レスな興奮を、言葉にならないものを、体全体でもって表現しておったのです。
狐は肉食寄りの雑食。野生は畑の、茹でても焼いてもいないトウモロコシをむしゃむしゃ食べます!
そんなトウモロコシを藤森が、焼いたのと茹でたのと、どっちも持ってきたのだから、
それはそれは、もう、それは。
言葉にならぬのです。
で、子狐のお母さんとお父さんにもトウモロコシとスイカをおすそ分けして、
稲荷狐のお母さんから狐の御札とお茶を貰い、
稲荷狐のお父さんから狐の粉薬と薬菓子を貰って、
とことこ、自分のアパートに戻ってきて、
ガチャリ、一人暮らしの部屋のドアを開けて――
「……ん?」
――「何か」2匹のモフモフと目が合ったので、
ぱたん、静かに、早急に、ドアを閉めました。
「え、 ……んん??」
何だろう。
自分は、「何」と目が合ったのだろう。
藤森はとっても混乱していましたが、
ひとまず、状況を整理することにしました。
「何か」居ました。それはモフモフでした。
2匹居たどちらもモフモフで、
1匹は小さく、1匹は大きく見えました。
小さい方は稲荷神社の子狐に見えました。
じゃあ大きい方は?
「ねこ? いや、 ドラゴン?」
そうです。前回投稿分でミカンとスイカとカゴと縄を燃やして光の尾にしてしまったネコゴンです。
が、そんなこと、もちろん藤森は知りません。
「見間違いか?」
一度、小さく、ゆっくりドアを開けてみます。
隙間から自分の部屋を、確認してみます。
「……子狐しか居ない」
藤森に見えたのは子狐だけ。
モフモフネコゴンは消えておりました。
「なんだったんだ。いったい」
パタン、再度閉めて、大きなため息を吐いて、
心を落ち着けてから再度ドアを開けて――
「いる」
――やっぱり「何か」2匹のモフモフと目が合い、
ぱたん、やっぱり、静かにドアを閉めました。
「なんだ、アレは。 『何』だアレは」
まるで、観測するたびに結果が変わる、
いや、観測するまで居るか居ないか分からない、
リアルシュレディンガーのネコだ。
藤森は「言葉にならないもの」を感じました。
恐怖とは、ちょっと違います。
でも、怖さはちょっと、ある気がします。
確実に混乱しています。
それらをごっちゃごちゃに混ぜて固めて、目の前にドンと置いたようなその感情を、
藤森は、何と言うのか分かりません。
「疲れてるんだ。疲れているだけだ。そうだ」
3、2、1で突入だぞ、良いな藤森、いくぞ。
決心した藤森は再度ドアを、パンと開けて、
そして、今度は「子狐と大きなドラゴンネコ」ではなく、「子狐と人間」を見つけましたとさ。
おしまい、おしまい。
前回投稿分からの続き物。
最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、絶賛仕事中。
世界と世界を繋ぐ航路の運営をしたり、滅んでしまった世界からこぼれ落ちた難民を受け入れたり、
あるいは、先進世界が発展途上世界に侵略、入植、略奪なんかをせぬよう、取り締まったり、
いろんなことを、しておりました。
ところでその世界線管理局、
最近地球と、特に日本との接続が突然パッタリ!
ひょんなことから、断絶されてしまいまして。
しかも管理局側で、その理由が分からんのです。
いったい何がどうなったのでしょう?
「うぅー!むりぃ!分かんなぁい!!」
対処にあたっていた管理局のひとりは、ビジネスネームをドワーフホトといいまして、
ちょっと比喩的なハナシになりますが、
10の可能性を想定して、100の解決策を試行して、1000のデータを計測して
結局、何の成果も得られなかったのでした。
「不具合発生してるの、地球の日本だけだしぃ、
向こうで何があったのか、聞きたくても音声ひとつデータ1片、届かないっぽいしぃ、
もーー!発泡酒サガリ!!八方塞がりだよぉー!」
もう知らない!あたし、もう何もできない!
想定できるシチュエーションは全部試したドワーフホト。2〜3日くらいゲートに付きっきりで、
最終的に、疲れてしまいました。
こうなったら経理部に居る、スフィンクスというビジネスネームの大親友に、救援要請です!
「スフィえもぉーん!何か良い案出してぇー!」
「あー?お前があんだけ頑張ったのに、まだ例の不具合解消してねぇの?」
自作の超高性能コタツ、Ko-Ta2でミカンシャーベットなど食っておるスフィンクスです。
ドワーフホトが泣きついてきたので、すべてを理解して、あんぐり!開いた口が塞がりません。
「こりゃあ、俺様があの地球に直接出向いて、原因突き止めるのが、手っ取り早いかもな?」
手っ取り早いというより、それしかもう方法は無いんじゃないかねぇ。
コタツに一緒に入っておったノラばあちゃんが、他の局員から注文を受けた秋用レーヨンストールをせっせこ編みながら、言いました。
というのもスフィンクス、普段は人間の姿でコタツにインしてミカンなど食べていますが、
実はその本性は、科学の技術も魔法の呪文も必要とせず、生身で世界と世界を行き来できる、超強大なチカラと能力を持ったモフモフなのです!
ということでスフィンクス、人間形態からモフモフ形態へ、変身解除です。
フサフサふかふかなスフィンクスの体は、大人のクマよりは大きい猫のようで、
あるいは、ゾウの子供よりは小さいドラゴンのようでもありました。
『じゃ、ちょっくら行ってくるぜぇ』
不思議な不思議なネコドラゴンの本性に戻ったスフィンクスは、今回のお題を回収するように、
コタツの中からスイカを掘り出し、竹細工のかごと縄を掘り出し、コタツの上のミカンをがばちょ。
全部ぜんぶ、カゴに詰め込んで……??
「スフィちゃん、それ、どーするの」
『あ?決まってるだろ。冷やすんだよ。
真夏といえば井戸水でキンキンのスイカ!ミカン!
あっちの地球の映画で観たから間違いねぇ』
「危ないよ、寄生虫とか菌とかが居るかもだから、水道水とか氷水とかで冷やした方が、良いよぉ」
『ホトは心配性だなぁ』
「心配とかじゃなくて事実だよぉぉー!」
じゃ、行ってくるぜー。
ドワーフホトの忠告を全然聞かないネコゴンです。
んなぁぁぁああおう、んにゃあああおう、
ひと声ふた声、ドラゴンネコが鳴きますと、
モフネコゴンの目の前に、きらめく宇宙のような穴が出現しまして、真ん中に地球が見えています。
『いざ!真夏の記憶に出発〜!』
待ってろよ俺様の冷やしスイカ!冷やしミカン!
スフィンクスが穴の中に飛び込むと、穴はキレイな光の粒を残して、パン!消えてしまいました。
空を駆けて大気圏に侵入し、光の尾を引くスフィンクスは、日本めがけて絶賛加速中。
『えーと。どのあたりだったかな』
大気圏の上層、熱圏の高温など、スフィンクスはヘッチャラ。そういう体なのです。
ちょっとやそっとの「灼熱」など、スフィンクスには、ぬるま湯程度もないのです。
ただスフィンクス、寒いのは大の苦手です。
中間圏から対流圏あたりまで広がる酷い極寒を快適に通過するため、摩擦熱を稼ぐ必要があります。
中途半端な熱は意に介しません。
これこそスフィンクスの本性の、真のチカラの一端。はじっこ程度なのでした……
が、
ところでスフィンクス、真夏の記憶を堪能したくてスイカだのミカンだの持ち込んだようですけど
スフィンクス自身は灼熱ヘッチャラとして
持ち込んだカゴとスイカとミカンと縄って
大気圏上層の1000℃に耐えられるんですかね。
『あー!!のわぁぁー!俺様のミカン!!』
そうです。大事に持ってきたミカンもスイカも、それらを入れて冷やすためのカゴも、
全部ぜんぶ、大気圏の高温と摩擦熱とで発火して、
美しい光の尾として、散ってしまったのです。
『ウソだろ!ああ!俺様の真夏の記憶ぅぅ!!』
にゃああおぉぉぉぅ!!んなぁぁぁああおう!!
悲しい大声でひと吠えして、ふた吠えして、スフィンクスは日本に降りてゆきます。
熱圏の灼熱も、成層圏の極寒も、全部ぜんぶ通り抜けて、25℃前後の熱帯夜、東京の夜に着地です。
『うう、ううぅ……おれさまの……俺様の、夏……』
管理局が日本とのゲートを設置している、某稲荷神社の庭に到着したスフィンクスは、
その後十数分、しょんぼり落ち込んでおったとさ。
日本の法律によるとアイスは4種類あるそうです。
なかでも「アイスクリーム」は「乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上」とか。
普段はぶっちゃけラクトアイスや氷菓の方を食ってる物書きが、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
たとえば、世界と世界を行き来するための航路を設置したり、密航を取り締まったり、
それから、別世界への侵略・入植・略奪行為なんかを、阻止したりなど、しておったのでした。
今回のお題回収役は、管理局の収蔵部局員。
ビジネスネームを「ドワーフホト」といいます。
諸事情によって数日前から、非常に不思議な不具合が見つかって、全然解消されませんので、
収蔵部の立場から、その不具合に対処中なのです。
というのも管理局が移動に使っているゲートの
何千何万と記憶・設定されておる移動先のうち
「こっち」の世界、日本への航路「だけ」が
何故か、プッツン、途切れてしまったのです。
再起動しても、再設定しても、ダンマリです。
まるで「今まで使っていたゲートの使用を神様が許さず、封印してしまったように」。
というのも過去作8月9日投稿分あたりから続くおはなしのせいでごにょごにょ、コンコン。
日本で仕事中のグループとも、連絡が付きません。
全部完全手探りで、管理局員ドワーフホトは、
収蔵部の立場から、不具合に対処中なのです。
で、そこからお題のアイスクリームと、どう絡んでくるかといいますと。
そうです。このドワーフホトが、長時間労働と睡眠不足を払うために、アイスを食っておるのです。
人間、睡眠が十分な方より睡眠不足な方が、
食欲を抑えるホルモンが減少してしまうそうです。
「うぅー……分かんなーい……原因なーにぃ……」
収蔵部が収蔵している管理局のアイテムで、ドワーフホトはゲートの情報を計測して、送信した情報が反射して来るかも調査します。
「他の世界は問題ないのに、なーんでぇぇー……」
アイスクリーミッシュなバニラをチューチューしながら、ドワーフホトは観測します。
管理局側のゲートから、日本のゲートをサーチします――【存在しないか、検知できません】。
アイスクリーゲンダッツなストロベリーをはむはむしながら、ドワーフホトは計測します。
管理局のゲートから、日本に向かう情報の流れを確認します――【存在しないか、検知できません】。
アイスクリームボーデン、アイスクリーミノ、えとせとら、えとせとら。
床にこぼれたアイスクリームは、抹茶味でしょうか、ヘーゼルナッツでしょうか。
ドワーフホトは何度も何度も、アイスクリームを相棒に、「日本だけ」に発生している不具合に向かい合って手を打って、アイスを食べて……
「うー……はっぽー、ふさが、り……」
ぱたん!
結果として集中力に対して、眠気と披露が勝ってしまいまして、こぼれたアイスと一緒に、床に倒れてしまったとさ。