かたいなか

Open App
8/13/2025, 5:38:20 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、絶賛仕事中。

世界と世界を繋ぐ航路の運営をしたり、滅んでしまった世界からこぼれ落ちた難民を受け入れたり、
あるいは、先進世界が発展途上世界に侵略、入植、略奪なんかをせぬよう、取り締まったり、
いろんなことを、しておりました。

ところでその世界線管理局、
最近地球と、特に日本との接続が突然パッタリ!
ひょんなことから、断絶されてしまいまして。
しかも管理局側で、その理由が分からんのです。

いったい何がどうなったのでしょう?

「うぅー!むりぃ!分かんなぁい!!」
対処にあたっていた管理局のひとりは、ビジネスネームをドワーフホトといいまして、
ちょっと比喩的なハナシになりますが、
10の可能性を想定して、100の解決策を試行して、1000のデータを計測して
結局、何の成果も得られなかったのでした。

「不具合発生してるの、地球の日本だけだしぃ、
向こうで何があったのか、聞きたくても音声ひとつデータ1片、届かないっぽいしぃ、
もーー!発泡酒サガリ!!八方塞がりだよぉー!」

もう知らない!あたし、もう何もできない!
想定できるシチュエーションは全部試したドワーフホト。2〜3日くらいゲートに付きっきりで、
最終的に、疲れてしまいました。

こうなったら経理部に居る、スフィンクスというビジネスネームの大親友に、救援要請です!

「スフィえもぉーん!何か良い案出してぇー!」

「あー?お前があんだけ頑張ったのに、まだ例の不具合解消してねぇの?」
自作の超高性能コタツ、Ko-Ta2でミカンシャーベットなど食っておるスフィンクスです。
ドワーフホトが泣きついてきたので、すべてを理解して、あんぐり!開いた口が塞がりません。
「こりゃあ、俺様があの地球に直接出向いて、原因突き止めるのが、手っ取り早いかもな?」

手っ取り早いというより、それしかもう方法は無いんじゃないかねぇ。
コタツに一緒に入っておったノラばあちゃんが、他の局員から注文を受けた秋用レーヨンストールをせっせこ編みながら、言いました。
というのもスフィンクス、普段は人間の姿でコタツにインしてミカンなど食べていますが、
実はその本性は、科学の技術も魔法の呪文も必要とせず、生身で世界と世界を行き来できる、超強大なチカラと能力を持ったモフモフなのです!

ということでスフィンクス、人間形態からモフモフ形態へ、変身解除です。
フサフサふかふかなスフィンクスの体は、大人のクマよりは大きい猫のようで、
あるいは、ゾウの子供よりは小さいドラゴンのようでもありました。
『じゃ、ちょっくら行ってくるぜぇ』

不思議な不思議なネコドラゴンの本性に戻ったスフィンクスは、今回のお題を回収するように、
コタツの中からスイカを掘り出し、竹細工のかごと縄を掘り出し、コタツの上のミカンをがばちょ。
全部ぜんぶ、カゴに詰め込んで……??

「スフィちゃん、それ、どーするの」
『あ?決まってるだろ。冷やすんだよ。
真夏といえば井戸水でキンキンのスイカ!ミカン!
あっちの地球の映画で観たから間違いねぇ』
「危ないよ、寄生虫とか菌とかが居るかもだから、水道水とか氷水とかで冷やした方が、良いよぉ」

『ホトは心配性だなぁ』
「心配とかじゃなくて事実だよぉぉー!」

じゃ、行ってくるぜー。
ドワーフホトの忠告を全然聞かないネコゴンです。
んなぁぁぁああおう、んにゃあああおう、
ひと声ふた声、ドラゴンネコが鳴きますと、
モフネコゴンの目の前に、きらめく宇宙のような穴が出現しまして、真ん中に地球が見えています。

『いざ!真夏の記憶に出発〜!』
待ってろよ俺様の冷やしスイカ!冷やしミカン!
スフィンクスが穴の中に飛び込むと、穴はキレイな光の粒を残して、パン!消えてしまいました。

空を駆けて大気圏に侵入し、光の尾を引くスフィンクスは、日本めがけて絶賛加速中。
『えーと。どのあたりだったかな』
大気圏の上層、熱圏の高温など、スフィンクスはヘッチャラ。そういう体なのです。
ちょっとやそっとの「灼熱」など、スフィンクスには、ぬるま湯程度もないのです。

ただスフィンクス、寒いのは大の苦手です。
中間圏から対流圏あたりまで広がる酷い極寒を快適に通過するため、摩擦熱を稼ぐ必要があります。
中途半端な熱は意に介しません。
これこそスフィンクスの本性の、真のチカラの一端。はじっこ程度なのでした……

が、
ところでスフィンクス、真夏の記憶を堪能したくてスイカだのミカンだの持ち込んだようですけど
スフィンクス自身は灼熱ヘッチャラとして
持ち込んだカゴとスイカとミカンと縄って
大気圏上層の1000℃に耐えられるんですかね。

『あー!!のわぁぁー!俺様のミカン!!』
そうです。大事に持ってきたミカンもスイカも、それらを入れて冷やすためのカゴも、
全部ぜんぶ、大気圏の高温と摩擦熱とで発火して、
美しい光の尾として、散ってしまったのです。
『ウソだろ!ああ!俺様の真夏の記憶ぅぅ!!』

にゃああおぉぉぉぅ!!んなぁぁぁああおう!!
悲しい大声でひと吠えして、ふた吠えして、スフィンクスは日本に降りてゆきます。
熱圏の灼熱も、成層圏の極寒も、全部ぜんぶ通り抜けて、25℃前後の熱帯夜、東京の夜に着地です。
『うう、ううぅ……おれさまの……俺様の、夏……』
管理局が日本とのゲートを設置している、某稲荷神社の庭に到着したスフィンクスは、
その後十数分、しょんぼり落ち込んでおったとさ。

8/12/2025, 9:59:21 AM

日本の法律によるとアイスは4種類あるそうです。
なかでも「アイスクリーム」は「乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上」とか。
普段はぶっちゃけラクトアイスや氷菓の方を食ってる物書きが、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
たとえば、世界と世界を行き来するための航路を設置したり、密航を取り締まったり、
それから、別世界への侵略・入植・略奪行為なんかを、阻止したりなど、しておったのでした。

今回のお題回収役は、管理局の収蔵部局員。
ビジネスネームを「ドワーフホト」といいます。
諸事情によって数日前から、非常に不思議な不具合が見つかって、全然解消されませんので、
収蔵部の立場から、その不具合に対処中なのです。

というのも管理局が移動に使っているゲートの
何千何万と記憶・設定されておる移動先のうち
「こっち」の世界、日本への航路「だけ」が
何故か、プッツン、途切れてしまったのです。
再起動しても、再設定しても、ダンマリです。

まるで「今まで使っていたゲートの使用を神様が許さず、封印してしまったように」。

というのも過去作8月9日投稿分あたりから続くおはなしのせいでごにょごにょ、コンコン。

日本で仕事中のグループとも、連絡が付きません。
全部完全手探りで、管理局員ドワーフホトは、
収蔵部の立場から、不具合に対処中なのです。

で、そこからお題のアイスクリームと、どう絡んでくるかといいますと。
そうです。このドワーフホトが、長時間労働と睡眠不足を払うために、アイスを食っておるのです。

人間、睡眠が十分な方より睡眠不足な方が、
食欲を抑えるホルモンが減少してしまうそうです。

「うぅー……分かんなーい……原因なーにぃ……」
収蔵部が収蔵している管理局のアイテムで、ドワーフホトはゲートの情報を計測して、送信した情報が反射して来るかも調査します。
「他の世界は問題ないのに、なーんでぇぇー……」

アイスクリーミッシュなバニラをチューチューしながら、ドワーフホトは観測します。
管理局側のゲートから、日本のゲートをサーチします――【存在しないか、検知できません】。

アイスクリーゲンダッツなストロベリーをはむはむしながら、ドワーフホトは計測します。
管理局のゲートから、日本に向かう情報の流れを確認します――【存在しないか、検知できません】。

アイスクリームボーデン、アイスクリーミノ、えとせとら、えとせとら。
床にこぼれたアイスクリームは、抹茶味でしょうか、ヘーゼルナッツでしょうか。
ドワーフホトは何度も何度も、アイスクリームを相棒に、「日本だけ」に発生している不具合に向かい合って手を打って、アイスを食べて……

「うー……はっぽー、ふさが、り……」
ぱたん!
結果として集中力に対して、眠気と披露が勝ってしまいまして、こぼれたアイスと一緒に、床に倒れてしまったとさ。

8/11/2025, 9:46:47 AM

「やさしさなんて」。なんと悲壮なお題でしょう。
ガチャのピックアップという「やさしさ」にトンと報われない物書きが、こんなおはなしをご紹介。
最近最近、都内某所のおはなしです。
某本物の稲荷狐が住まう稲荷神社に、絶賛修行中の子狐がおりまして、
一人前の御狐となるべく、稲荷のご利益ゆたかなお餅を売り歩いたり、世界のピンチを救ったり。
いろいろ、やっておったのでした。

子狐が御狐の下っ端、見習いとして認められると、
証明として、子狐に名前が贈られます。
名前を貰えば子狐は、本物の御狐見習いとして、稲荷の神様に、認めてもらったことになるのです。

この日がまさに、子狐に名前が贈られる日。
神社に植えられた「名付けの桜」が、
真夏ながら、盛大に、それはそれは美しく咲いて、
子狐の修行が報われたことを、知らせました。

「さいた、さいた!」
子狐はお母さん狐から、「名付けの桜」のことを聞いておりました。
「キツネのさくら、さいた!」
名付けの桜は不思議な桜。子狐が名前を得たそのとき、パッと咲いて、サッと散ってゆく。
夏にせよ冬にせよ、咲く時は咲く桜なのでした。
その桜が、子狐の前で咲いたのです。

で、その桜から「やさしさなんて」にどう繋がるのかといいますと。

「んー、んん?」
子狐の目の前に、子狐が与えられた名前を知らせる小さな巻物が、ゆらりゆらり、降りてきました。
美しい墨字は読みやすい楷書体モドキで、
【奇鍵守美食銀杏狐】
と書かれていました。

読めない!!

自分が貰った名前を読めない子狐です。
仕方ないので、お母さん狐に聞きに行きました。
「かかさん、かかさん、これ読んで」

「それは、ああ、これは……!」
子狐が持ってきた巻物を見て、お母さん狐は全部理解しました。子狐の修行が認められたのです!
「ああ、ミケなんて、お前らしい名前を貰って。
よく頑張りましたね。よく、よくぞ……!」
お母さん狐は涙を流して、つよく、優しく、子狐を抱きしめてやりました。
「今日はお祝いです。ととさんにも、おじーじにも、おばーばにも、見せておいでなさい」

「む。」
コンコン子狐、ちょっと複雑な気分です。
そういう系のやさしさなんて、今は違うのです。
まず名前を、子狐の名前を読んでほしいのです。

仕方無いなぁ。子狐は早く名前を知りたいので、
今度はお父さん狐に、聞きに行きました。
「ととさん、ととさん、これ読んで」

「おお!おおお!とうとう、名前を貰ったんだね」
子狐が持ってきた巻物を見て、お父さん狐は全部理解しました。子狐が認められたのです!
「ととさんも、お前より少しだけ早かったけれど、お前くらいのときに名前を貰ったんだよ」
お父さん狐はとても嬉しそうに笑って、つよく、優しく、子狐を撫でてやりました。
「おじーじや、おばーばにも、見せておいで」

「むぅ。」
コンコン子狐、やっぱり複雑な気分なのです。
だから、そういう系のやさしさでは、ないのです。
子狐はまず、自分の名前を、教えてほしいのです。

ええい、3度目の正直だ!
子狐はやっぱり名前を知りたいので、
今度は教えてくれそうなオッサンに、聞きました。
「オッサン!タバコのオッサン!これ読んで!」

「どうした。随分イライラしているじゃないか」
子狐が持ってきた巻物を見て、子狐とよく遊んでくれるオッサンは、タバコを消して首を傾けて、
「どれ。……キ?……カギモリ?ビショク???」
やさしさなんてハナシじゃなく、完全に、額にシワを寄せて難しい顔をしました。
子狐の巻物が読めないのです。

「なんだこれは」
「キツネのなまえ!」
「難しい名前だな」
「むずかしい!よめない!」
「うん。 うん……そうだな」

なんだろな、なんだろな。
1人と1匹は一緒になって、首を傾けます。
「なんです、それ」
「こいつの名前だとさ」
「ふむ、 ふむ……?」

最終的に子狐が自分の名前を知ったのは、
日が暮れて、月がのぼって沈んで、また日が上がってきてからのこと。
やさしさなんて、これっぽっちも役に立ちませんでしたとさ。 しゃーない、しゃーない。

8/10/2025, 6:30:23 AM

最近最近、都内某所のおはなし。
某深めの森の中にたたずむ不思議な不思議な稲荷神社の、木漏れ日落ちる涼しめな前庭で、
稲荷子狐とその友達、すなわち化け子狸と化け子猫と、子猫又と子カマイタチとが、
サラサラ風を感じて暑さを追いやり、
わいわい、きゃんきゃん、会合を開いている。

稲荷子狐がこの世界の平和を守ったらしいのだ。

「それでね、キツネ、わるいやつに、つかまっちゃったの。だからキツネ、ほえたの!
『おのれ、わるいやつめ!このキツネがセーバイ、成敗してくれるぞ!』
そしたらキツネのしっぽが、ぶわわーって、チカラがバンバンわいてきたから、
キツネ、わるいやつを、ズバババーン!したの!」

子狐は目を輝かせて、尻尾をぶんぶんぶん!
おててを振り、あんよでステップを刻み、
それはそれは、もう、それは。
楽しそうに語っている。

友人たちは子狐の言葉に興味津々。
化け子狸などは完全に崇拝の領域にある。

「わるいやつを、やっつけてから、キツネ、あなをフーイン、封印したの。
キツネ、こう、フワーって上がってって、
キツネ、かぜ、きもちよかった」

おお……。 子狸が感嘆のため息を吐く。
穏やかで大人しく、怖がりな子狸である。その自分が悪者を、子狐が言うようにやっつけられたら!
その勇ましい姿を自分に重ねているのだ。

子狐と友人たちの会合を遠くから聞いておった異世界ハムスターは、子狐の「事実」を知っていた。
「実はけっこう誇張されてるんだ」

子狐は自分ひとりで「悪者」をやっつけたように話しているが、実際は少々違うのである。
「といっても、それを指摘しに行ったら……
ほら、僕、ハムスターだから」
ナイショ内緒。異世界ハムスターは口に指を当て、
しぃっ。子狐や子猫にバレる前に、退散してゆく。

…――不思議ハムが撤退した先に居たのは、
絶品和牛串のドチャクソに良い香りがする車、
車を必死に消臭クリーニングしている人間2名、
大きなあくびをして昼寝を始めるドラゴン、
そのドラゴンのそばに数株だけ植えられた、赤い彼岸花色したトリカブト。

「アカバナ エド トリカブト。サンヨウブシの変種で、東京の固有種。完全無毒な花さ」
車内の拭き掃除を為している2人のうちの、ひとりが不思議ハムに説明した。
藤森という名前の、雪国出身者である。
「数年前に、最後の群生地が潰されて、完全に絶滅した花だ。本来は秋に咲く花だよ」

条志さんが昼寝したら、途端に育って咲いてしまった。不思議なことだ。
そう付け足してドラゴンを見て、二度見して、
三度見あたりで気付いたのが、「花が増えた」。
「……ん?」

妙な経緯から「願いを叶える魔法」を得た藤森。
回数制限付きで、本来は3回使えるハズだったものの、稲荷子狐に1回使われ、稲荷子狐に1回使い、結果として借りたレンタカーが牛串まみれ。
残った1回の「魔法」を、
レンタカーの清掃ではなく、絶滅したハズの赤いトリカブトに使った。

赤花江戸附子の最後の花畑を守っていたのは優しい優しい老婆だった。

過去を覗いて絶滅前のトリカブトを採取し、
稲荷神社の厚意でそれを神社の庭に植えた。
藤森が持ってきた株はまだツボミであったが、
はて、いつのまに花を咲かせたのか。

「ほら藤森。気にしてる場合じゃないでしょ」
「えっ」
「最後の1回をトリカブトに使っちゃったんだ。
返す前に、レンタカー、原状回復しなきゃ」
「あっ。 そうだ」

脂と匂いは、なかなか取れないものだなぁ。
稲荷神社に拭く風を感じて、藤森は短く息を吐く。
「……ところで条志さん、ドラゴンの姿を他の人に見られでもしたら、どうするつもりだろう」
はぁ。忙しい忙しい。
藤森は不思議ハムから離れて車の方へ。
残って黙々作業していた方と一緒に、クリーニングの続きを始めたとさ。

8/9/2025, 9:33:42 AM

7月27日投稿分から続いた一連の物語も、今回でようやくのエピローグ。
異世界から来た組織その1、「世界多様性機構」の職員さんが、小物感ある負け惜しみを吐き捨てて、
前回までの物語の舞台であった夏の雪国から、都内某所に戻って来ておりました。

世界多様性機構は、発展途上であるところのこの世界を、他の世界の難民のために狙っておりました。
この世界を難民シェルターにしてやろうと思って、
日本の某雪国に存在する、大きな大きな大イチョウ、その下の「異世界に通じる黒穴」を、
封印から、解き放とうとしておったのでした。

なお、この世界の難民シェルター化計画ですが、前回投稿分のおはなしで失敗した模様。
せっかく異世界に繋がる黒穴の鍵を持ってきてもらえたのに、その鍵でもって黒穴を、
開けるんじゃなく、閉められてしまったのです。

「黒穴を閉められるとは、予想外だったぜ」
さて。多様性機構の支援拠点、「領事館」に戻ってきた小物さんです。
この世界の現地住民をそそのかして、せっかく良いところまで計画は進んだのに、
そそのかした現地住民本人に裏切られるとは。
小物さん、思わなかったのです。

「まぁ、良い」
しょせん、別世界とこの世界を繋ぐ穴の、鍵を閉められただけのハナシだ。小物さんは言います。
「黒穴の場所は分かった。あとは……」

あとは、閉められた鍵を壊すなり、ピッキングするなり、小物さんが所属する「世界多様性機構」のチカラを使えばどうとでも。
そう思っておった小物さんは、ひとまず本部に黒穴の情報を提供しようと思って、

こっちの世界の領事館と、向こうの世界の世界線管理局本部とを繋いでいるドアを、
くぐって別の世界に行こうと思ったのですが、
「あれ?」
何故でしょう、ドアのメンテナンス中でしょうか、
いつもは簡単に向こうの世界へ行けるのに、
今日はドアが向こうの世界に、ちっとも、少しも、繋がっていません。ドアが完全に閉じています。

「ウソだろ?」
小物さん、ここでお題回収です。
「夢じゃないのか? えっ? なんで??」

「不思議ですよね。あなたが帰ってくる数時間前から、ずっとその状態なんですよ」
領事館で一緒に仕事をしている、「アスナロ」というビジネスネームの女性が言いました。
「問い合わせてみたら、こちらの世界と向こうの世界の繋がりが、完全に封鎖されてしまってるとか」

なんなんでしょうね。まったく。
首を傾けるアスナロです。
小物さんは「自分が帰ってくる数時間前から」の異常に、心当たりがありました――…

…――いっぽう、この世界を別の世界と繋ぎたい「世界多様性機構」と反対に、この世界を別の世界から守るポジションの異世界組織もありまして、
そちらは名前を「世界線管理局」といいました。

世界多様性機構による侵略まがいの計画が、一時的に阻止されたのを見届けた法務部局員が、
報告書を作るため、こっちの世界から向こうの世界に、戻ろうとしておったのですが。

「そうなんですよ、戻ろうとしていたのですが、
私達がこっちの世界から、私達の世界へ行き来するためのゲートが、完全にフリーズしてまして」

そうです。
世界多様性機構の異世界ドアが使えなくなって、
この世界と別の世界が通行止めになったように、
世界線管理局の異世界ゲートも使えなくなって、
この世界と別の世界が通行止め状態なのです。

「最初は緊急メンテナンスかと思ったのですが」
この世界を守る方の局員、黒穴の封印を守る派の男性が、頭をガリガリ言いました。
「そもそも論として、どうも、世界と世界を繋いでいるゲートに、なにか協力な『封印』のようなものが為されてしまっているようでして」

多分というか十中八九、「このコ」の影響ですね。
そう続けて男性は、思い当たるフシを見ました。
「『この世界と別の世界を繋ぐ穴』を全部ぜんぶ封印してしまったんだろうな……」

男性の視線の先には、「大イチョウの下の黒穴」を封印した稲荷の子狐。
別世界からの侵略を阻止して、管理局から褒められて、ご褒美のジャーキーや稲荷寿司もどっさり!
「おいしい。おいしい」
その子狐は神秘のチカラで、異世界とこの世界を繋いでいる日本中の「穴」という「穴」を、
全部、閉じてしまったのです!

「え、じゃあ、これからどうするんですか」
管理局を推している女性が聞きました。
「こちらからは、どうにもなりません」
管理局の男性が秒で即答しました。

仕方ないのです。稲荷の御狐様が、高度かつ上位の秘術でもって、キツく扉を閉じてしまったのです。
解除するには相当の魔力なり、相応の代償なり、
ともかくドチャクソなコストがかかるのです。

「こちらの世界と私達の世界を、再度接続して、ゲートを再起動して、安全確認とチェック。
数日から数週間、場合によっては数ヶ月です」
「すうかげつ」
「さすがに無いとは思いますが、向こうの世界の同僚が、『この世界とのゲートが使えない』ということに気づかなければ、数年でも、数十年でも」
「すーじゅーねん」

「つまり私達はこの世界から出られない。
当分こっちの世界にご厄介です」
「ツー様と、ルー部長が、こっちの世界に。
夢じゃないよね」
「夢じゃないですね……」

ということで、よろしく。
管理局員が言いました。
管理局員推しの女性はただただ、カッチカチに固まって文字通り「フリーズ」してしまって、
その静寂を子狐の、ご褒美ジャーキーを食べる音だけが、ちゃむちゃむ、邪魔しておったとさ。

Next