かたいなか

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5/22/2025, 7:16:14 AM

最近最近、都内某所のおはなし。
お題回収役を藤森といい、花咲き風吹く雪国出身。
このごろの東京は気温が高く、5月というより7月か8月の様相。なんといっても30℃である。
30℃で弱り、35℃でデロンデロンに溶け出す藤森には、ギリギリ平静を装って失敗する気温帯
――要するにこの時期の「sunrise」はエモーショナルな光ではなくジリジリの灼熱地獄なのだ。

と、簡素なお題回収はこのへんにして、本題。
その日も藤森は朝早い時期に職場の私立図書館へ入り、なるべく故意に残業して、
そして、涼しくなってから帰宅したところ。
「はぁ。酷いものだ」
パチン。 部屋の照明を付ける。
故郷から一緒に状況してきた「騎士道」の花言葉、シロバナのトリカブトのために、彼女が弱らない程度の冷房は既に使っている。
「明日も夏日。月曜も夏日一歩手前。
はぁ。 もう、夏じゃないか……」

今日はもう、暑さで疲れてしまったから、
適当に災害用備蓄の缶詰からタレ味の焼き鳥でも出して、それにタマゴなど割って親子丼モドキあたりにしてしまおう、そうしよう。
暑熱披露のため息を吐いた藤森がリビングに、足を進めると、 おや、まさかの来客の影。

「……条志さん?」

藤森のリビングの、壁にもたれかかってチカラなく、見覚えある男性が足を投げ出し、座っている。
背中から肩にかけて包帯など巻いて、腕にもバンドエイド代わりの白が1巻き、2巻き。
準満身創痍とはこのこと。浅く呼吸している。

スパイ映画だの刑事ドラマだの、負傷もののフィクションから抜け出してきたような彼は、かつて昔、名前を「条志」と名乗った。
実際は他にビジネスネームを持っているらしい、
が、あんまり藤森のベランダからチュンチュン進入してくることが多いので、
藤森の印象としては、スズメかカラスである。
実際は何だったか。 ルリビタキ??

「条志さん、」
藤森が条志に近づき、声を掛けると、
条志は条志でスズメかカラスのわりに、視線など鋭利にして、少々記憶がバラバラなのだろう、
低い息遣いで、威嚇などしている。
「条志さん。私です」

あー。混乱してる。あるいは寝ぼけている。
藤森が「自分」を条志に示すために、条志の鼻に自分の右手を差し出すと、
スン、すん。 条志は二度、匂いをかいで、
敵ではないと理解したのだろう、威嚇をやめた。
(ポチかコロ助)
藤森は思った――条志さんはスズメというより、オオカミか柴犬あたりかもしれない。
(でもベランダから勝手に入って来るから、
そこは確実に、スズメなんだよな)

「いつもの『腹減った、メシ』ですか」
だいたい条志が藤森の部屋に不法侵入してくるのは、彼の「妙な仕事」の後であり、だいたい空腹であり、藤森と夕食をともにして、それで少し多めの「お礼」をテーブルに置き帰ってゆく。
理由は敢えて明示しない。条志の仕事とメシの好みと、今回のお題とは無関係である。
「暑くて疲れてしまったので、簡単に親子丼モドキですけれど、それで構いませんか。
条志さん、

条志さん?」

あれ。返事がない。 条志を見れば藤森が来て安心したのか、コテン、寝てしまっている。
「あとで『柚子胡椒茶漬けの方が良い』とか言っても、聞きませんよ、本当に構いませんか」
すぴぃ、すぴぃ。条志は完全に夢の中。
「 はぁ。 」

仕方無い、仕方無い。 ここでお題回収。
小さなフライパンに少しのマヨネーズを落として、油脂がフツフツ溶けたらそこに、生卵を1個。
パカン。 割れば料理界の「sunrise」が、
黄色い太陽と、白い雲とをセットに、コンニチハ。
「タマネギくらいは入れるべきだったかな」

いいや。面倒くさい。 くるくるくる。
藤森は黄色い日の出をトロトロ半熟に崩して、
そこにコケコッコ、タレ味の焼き鳥缶詰めをブチ込んで……やはり色が単調なので、
結局条志に食わせる分では、冷蔵庫のオニオンサラダを炒めて混ぜて、藤森のものより解像度の高い親子丼モドキにしてやったとさ。

5/21/2025, 9:54:58 AM

ちょっと昔のおはなしです。
だいたい■■年くらい前のおはなしです。
あるところに、魔法と科学・工学を同時に発展させて、資源という資源を発掘・抽出しまくり、
結果として、破滅に傾いた世界がありました。

なお最終的に、「空に溶ける」します。
それは、文字通り、そのまま、地面も建物も生きとし生けるものの多数も、
重力異常の異常だの、構造崩壊だのを起こして、
結果、バラバラになり、空に溶けていったのです。

その世界は、とても美しい世界でした。
その世界は、まだ自分たちで議論と工夫と改善改良の努力を為せば、傾きを正せる世界でした。

「大変だ、大変だ!」
その世界は、面白い技術を独占しており、
それはすなわち、「特定の病気にかかった人から膨大な魔力エネルギーを継続的に抽出する技術」。
その特殊で珍しい病気の患者が5人も居れば、20年はその町の財政が無条件に潤うのです。
「患者から潤沢に得た魔力で世界を開発していたら、この世界のこの星から、ほとんど資源をとり尽くしてしまったかもしれない!!」

「独占」は強力なアドバンテージです。
それは交渉の材料にもなり、
それは防衛の武器にもなります。

「こうなったら、私達の技術を交渉材料に、
別の世界の技術で私達の世界を助けてもらおう」
そうだ、そうだ。それしかない。
最終的にお題回収役となるその世界は、
自分たちのチカラで自分たちの世界の問題を解決することを諦めて、別の世界に救援を求めました。

それが良くなかったのでした。
それが、別世界からの過干渉の始まりでした。

「ああ、これは、よろしくない」
その世界が頼った組織、「世界多様性機構」は、
破滅に傾いた世界を見て、すぐに状態改善パッケージを策定。実行を「勧告」しました。
「まず、あなた方が独占していた技術の研究をすべて停止しましょう。これが全部の元凶なのです」

さぁ、これをしなさい。それを止めなさい。
多様性機構が為したのは、完璧な手順、完璧なレール、完璧な指示であって、つまり過干渉。
多様性機構の状態改善パッケージは、日を追うごとに確実な成果を出しまして、
1ヶ月後には「特定の病気の患者」に依存しない、省エネルギーな世界へと生まれ変わった、
ハズでした。

ここからがようやくお題回収。
そうです。完璧な過干渉は、その世界の右に傾いた天秤の、左皿に1トンの重りをドンして、ばん!
右側の皿に乗るすべてを、吹っ飛ばしたのです。

一気に急速に、完全にバランスを崩されたその世界は、ゆえに自分のカタチを保てなくなり、
さらさら、サラサラ。ぐちぐち、バリバリ。
崩れて、空に溶けて、昇っていってしまいました。

「なんてことだ、なんてことだ」
他の組織、他の世界に頼るのではなく、自分たちでなんとかすべきだった。
その世界の人々は、世界が「空に溶ける」のを見ながら、深く深く後悔しましたが、
こうなってしまってはもう、どうにもなりません。

「次こそは、次があったら、今度こそは……!」
そんなもの、ありません。世界が滅んだら、それで全部、ぜんぶ、おしまいなのです。
「どうして、 こんなことに」
そりゃお題がお題だからです。しゃーない。

結果としてその世界の住民は、なんとか残っていた資材を使って、異世界に脱出する船をこさえて、
集められるだけの人を片っ端からかき集めて、
そして、空に溶け続ける世界から、脱出しました。
その後のことは敢えて詳しく書きませんが、
脱出できた人々は、皆それぞれ、調和とバランスを大事に、新しい人生を歩んでおるそうです。
おしまい、おしまい。

5/20/2025, 6:22:53 AM

夏です。真夏日です。
舞台であるところの都内某所に、最高約30℃の初夏、もとい暑夏が来ました。

「よしよし。今年も、キレイにできたわ」
今回のお題回収舞台であるところの、都内某所にある喫茶店では、本物の魔女のおばあちゃんが、
美しい青空色をしたサイダーゼリーを仕込んで仕込んで、丁度、今日販売分を作り終えたところ。
「さぁ、ウルシ、ジンジャー、これを冷蔵庫に、全部持っていってちょうだい」

「はい、主人様。仰せのままに致します」
にゃー、にゃー!使い魔猫のウルシが人間に化けて、まず四半分のサイダーゼリーを運びます。
「任せてよ、ご主人!チョチョイのチョイだよ」
にゃー、にゃー!使い魔猫のジンジャーが人間に化けて、ウルシからゼリーを受け取って、冷蔵庫に次々ゼリーを並べてゆきます。

「急ぎましょう。早く。はやく」
使い魔猫のウルシとジンジャー、まだまだ喫茶店の開店ニャンニャン22分前ですが、
それでも、急いでゼリーを収容します。
「急がなきゃ、早く、はやく」
使い魔猫たちは知っておるのです。
どうしても……どうしても、今日はスイーツたちを、開店5分前には収容しておかねばなりません。

魔女のおばあちゃんの占いによると、今日は、異次元の食いしん坊もといグルメウサギが来店して、
喫茶店の開店早々、スイーツというスイーツを、すべて食べ尽くしてしまうのです!
わぁ、わぁ。なんと大変なことでしょう。

「大丈夫よ」
喫茶店の店主にして使い魔猫の御主人様、魔女のおばあちゃんが言いました。
「この日のために、パンもフルーツも生クリームもたっぷり、発注してあるもの」

それに、「今日」に限っては仕方ないわ。
望むまま、食べさせてやりましょう。
魔女のおばあちゃんは小さなため息ひとつ吐いて、
そして、お店のドアをチラリ見て、
「ほら」
ドアノブが少し動いたのを、はっきり、見ました。
「来たわ」

「アンゴラさーん、早いけど、お邪魔しまぁす」
チリンチリン、チリンチリン。
ドアベルの音とともに入ってきたのは2人の女性。
ひとりはまさしく「占い」の、「スイーツというスイーツをすべて食べ尽くすグルメウサギ」。
「うぅ……すいません。お世話になります……」
もうひとり、グルメウサギに付き添われてきたのは、おやおや?異世界から来て東京でお仕事している、「世界多様性機構」の職員さんです。

「なに拾ってきたんですか」
シャー!シャァー!多様性機構の職員に、使い魔猫のウルシが言いました。
「機構が建てた領事館の職員だろ?」
シャー!シャァー!予想外の敵対組織に、使い魔猫のジンジャーも言いました。

「あのねぇ、これには、深ぁいワケがあって〜」
なんでもぉ、大事に、こっちの世界の技術だけを使って育てようとしてた、こっちの世界の黄色いお花が、水のやり過ぎで全滅しちゃったらしい〜。
さーさー、座って座って。
意気消沈、ほぼ絶望の異世界人を喫茶店の席に座らせて、グルメウサギ、言いました。
「だからね、どうしても……どぉ〜ぅしても、
このコには、今、癒やしが必要なの〜」

だからアンゴラさん、食べさせてあげてよ。
美味しい美味しい、心の苦しいのを癒やしてくれる、スイーツをどっさり食べさせてあげてよ。
グルメウサギは魔女のおばあちゃんの、両手をひっしと包んでにぎって、お願いするのでした。

「今日ばかりは、仕方ないでしょう」
再度ため息を吐く魔女のおばあちゃんです。
「ただし、お店の今日の売上を全部短時間で持って行くつもりなら、お店貸し切りの別途料金か、
あるいは、あなたたち2人、今日はお店のお手伝いをしてちょうだい」

いいわね。分かった?
魔女のおばあちゃんはニッコリ。
別途料金が良いか、お店のお手伝いをするか、2人にとても良い笑顔で、問い詰めましたとさ。

5/19/2025, 5:41:54 AM

とうとう火曜日から最高30℃予想の東京である。
今回のお題回収役は藤森といい、花咲き風吹く雪国の出身であったので、
東京が本格的な初夏もとい「暑夏」を迎える前に、
水出し日本茶のティーバッグをストックしようと、
休日を利用して、馴染みの茶葉屋へ来店。

藤森は某私立図書館の職員であった。
すなわち、月曜は休館日。休日であった。

「こんにちは」
くもり空の影響か、その日は先日に比べて涼しく、
藤森としては、そこそこ過ごしやすい気温帯。
「水出し用の茶葉は、もう……」
しかしこれが、24時間後には30℃を超えるのである。完全に真夏日である。
氷をたっぷり入れた水出し茶の1杯でもなければ、
でろるん、藤森は溶けてしまうのだ。
「……飲食スペース? バーカウンター?」

まって、待って。
藤森の視線が、少しの好奇心でもって固定された。

「あら。こんにちは」
黒髪の美しい女店主は、相変わらず穏やかな笑顔。
藤森が興味津々に、テイクアウトブースを取っ払って作られたスペースを見ているところで、抱えていた看板子狐を床に降ろし試飲の準備。
「今までテイクアウトだけであったものを、ティースタンドも兼用にしましたの」

それは、先週までは存在しなかった、立ち飲み形式の飲食スペースであった。
元々この茶葉屋には、常連専用の個室が複数個、飲食スペースとして用意されていたものの、
テイクアウトを別として、非常連客に向けた飲食サービスは、これが初めて。
「盛況ですよ」
女店主はにっこり笑った。
「突然寒くなったり、暑くなったり。
そういうときに1杯でも、2杯でも」

さぁ今年の水出し緑茶と水出しほうじ茶をどうぞ。
女店主は小さなコップに、キンと冷やされた翡翠色と、べっこう色とを注ぐ。
詰まっておるのは、前者は緑茶的な甘さ、後者はほうじ茶的なすっきり感。
「今年は、去年の柚子風味緑茶とレモン風味ほうじ茶が、更に改良されたそうですよ」

何袋お買い求めなさる?コンコン、5袋?
店主は特にそんなことを、言うでもなく、強制するでもなく、ただ藤森の紙コップが空になる様子だけを見つめていたものの、瞳は正直。

「緑茶2袋と、ほうじ茶3袋で」
店主の静かな視線などいつものことなので、藤森は気にしない。ただ好ましかった方を多めに、必要と思った分だけを、少しずつ手に取った。

くぅー、くっくぅ。くわぁ。こやん。
床に降ろされた看板子狐と目が合って、尻尾を振る子狐が「もっと買って」とアイコンタクト。
強まっていく瞳の輝きは、藤森が子狐を見つめ返しつつ、もう1袋、水出し緑茶に手を伸ばしたから。

くわー、くわぁ。 まいど、まいど。
追加お買い上げ、ありがとございます。コンコン。

「1袋だけだぞ」
こやん。もっと買って、おとくいさん、もっと。
「3と3。今日はこれだけだ」
こやん。あと2コずつで、コンコン、キツネだよ。
「店主さん。これで、会計をお願いします」
ぎゃぎゃっ!まって!もっと!かって!もっと!

「来週には、水出しハーブティーも増えます」
ぎゃぎゃん!買って買ってぇ! 藤森のリネンのサマーコートに、がぶちょ、噛みついて離さない子狐を、一旦置いといて会計に入る。
「梅雨の低気圧にともなう不調にオススメな水出しも出ますので、ぜひ、ご友人にも」
情報提供、お願いしますね。
穏やかに笑う店主がレシートを藤森に、
渡して、子狐を抱いて、ポンポン、ぽんぽん。
コートを放すよう、おしりを叩く。

「ほら。お得意様を、放しておやりなさい」
うーうー!やだ!お買い物おわったら、おとくいさん、キツネとあそべ!あそべっ!
「良い子だから」
うぅぅ!やだ!おとくいさん、もっと、ショーバイハンジョ!もっと、おさいせん!

ふーん。そう来るか。
店主と藤森は視線を交わして、軽く会釈しあって、

藤森が近くの茶っ葉缶に手を伸ばしたのを
子狐が瞳キラキラ輝かせて、口を開き、
サマーコートから牙が離れたのを見計らって
店主が サッ! と子狐を、藤森から引き剥がす。

「では。また来ます」
藤森が茶葉屋から出ていくのを、看板子狐は寂しそうに、くぁー!くぁー!ここココンコンコン!!
待って待ってと大音量で、鳴いておったとさ。

5/18/2025, 3:11:24 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某深めな森の中の稲荷神社には、本物の稲荷狐が家族で住んでおりまして、
そのうち末っ子の子狐に、最近、異世界の技術で作成された魔法生物、陽キャドッグの友達が爆誕。

拝殿のガラガラ鈴緒で2匹して、ぶらぶらスイングして遊んで、子狐のお母さんが作った絶品お肉料理と稲荷寿司を分け合いっこして楽しんで、
そして、お母さんから丁寧に抜け毛取りとブラッシングとを、してもらったのでした。
陽キャドッグも子狐も、5月は丁度換毛期。
すっぽすっぽ冬毛が抜けて、それはそれは、もう、それは。気持ち良いったらありません。

「さぁ。そろそろ今日は、おしまいですよ。
この犬の飼い主も、この犬の帰りを待っていることでしょう。送っていっておやりなさい」
「はい、かかさん、いってきまーす」
東京の独特な、夕陽の見えない夕暮れと一緒に、
コンコン子狐は陽キャドッグの、お家が存在する世界へ渡ってゆきました。

「おかえり。向こうの世界は楽しかった?」
「あら、その子狐とお友達になったの?」
「ちゃんと家に戻る前に、ジャーキー、貰っていくんだぞ。ああ、良い子良い子」

わふ!わふ!わうわう!わをん!
飼い主が勤務している異世界の組織に戻ってきた陽キャドッグは、歓喜で尻尾を高速ぶんぶん!
帰ってきた証拠として、飼い主の職場の受付係さんから撫でてもらい、遊んでもらい、
そしてなにより、ジャーキーを貰うのです、
が、 どうやらその日に限って、受付係さん、ジャーキーの在庫が尽きておったようで。

「すまない。丁度、さっき補充の注文をしたんだ」
わふわふ。わうわう。
陽キャドッグ、いっつもジャーキーのパックをくれる犬耳のお姉さんに突撃します。
「明日には届く。だから今日は、すまないが直接、工場に行って、できたてを貰ってきてくれ」

工場にはちゃんと、ハナシを付けておいたよ。
犬耳お姉さんはそう言うと、陽キャドッグと子狐に、
工場までの単発往復セキュリティーパスを、それぞれ首から下げてやりました。

「ジャーキー……できたて……!」
子狐のまだ知らない、できたてジャーキーの世界!
ああ、なんと甘美で、なんと幸福な世界でしょう!
コンコン子狐はキラキラと目を輝かせて、
陽キャドッグの先導に、ついてゆきました。

え?ナレーションが男性で脳内再生?
オネェ?火曜日?テーマ曲が英語?
さあ。ナンノコトデセウ。

ということで、子狐のまだ知らないできたてジャーキの世界です。さっそくお題回収です。
飼い主の職場のエントランスから、あっちの自動扉を通り、そっちの職員専用食堂を通り、
食堂に食品を供給している、大きなおおきな、屋外・屋内両対応の、食料製造プラントへ。

「やぁやぁ。まいど」
食料プラントのエントランスフロアでは、小さなカゴに入れられたホカホカのジャーキーが、
2個並んで、子狐と陽キャを待っておりました。
「完全にできたてのジャーキーや。持って行きぃ」

ニセ関西弁の二足歩行ニホンホンドタヌキが、
緑の腰巻きエプロンして、子狐と陽キャドッグの口にそれぞれ、ジャーキーのカゴを差し出します。
ジャーキーは、まだ少しの熱をもって、まさについさっき温風乾燥を終えたのだと分かります。
ジャーキーは、まだ少しのフワフワをもって、確実に柔らかくホロホロ解ける肉だと分かります。

「これがッ、これが、できたて、ジャーキー」
子狐のまだ知らない、できたてジャーキーの世界!
コンコン子狐はカゴから咲く、かぐわしい干し肉の匂いに、どうしても我慢できません!
だって、目の前にご馳走です。お肉です。
コンコン子狐は狐なので、お肉、大好きなのです。

「あんな、おばちゃんな」
緑のエプロンのホンドタヌキ、すごく悪い顔して子狐と、陽キャドッグに言いました。
「実は今、試作品持って来とってん……」

どない? おばちゃんのこと、手伝ぅてくれへん?
緑腰エプロンのホンドタヌキが、次に取り出したのは、試作ジャーキーの味見アンケート。
「ちょこーっと、舌、貸してほしいんよ。タダで」
食料プラントのおばちゃんが、また笑いました。

2匹のまだ知らない、試作品の世界!
陽キャドッグと子狐も、2匹して顔を見合わせて、
そして、目を幸福に輝かせたのでした。

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