夏です。真夏日です。
舞台であるところの都内某所に、最高約30℃の初夏、もとい暑夏が来ました。
「よしよし。今年も、キレイにできたわ」
今回のお題回収舞台であるところの、都内某所にある喫茶店では、本物の魔女のおばあちゃんが、
美しい青空色をしたサイダーゼリーを仕込んで仕込んで、丁度、今日販売分を作り終えたところ。
「さぁ、ウルシ、ジンジャー、これを冷蔵庫に、全部持っていってちょうだい」
「はい、主人様。仰せのままに致します」
にゃー、にゃー!使い魔猫のウルシが人間に化けて、まず四半分のサイダーゼリーを運びます。
「任せてよ、ご主人!チョチョイのチョイだよ」
にゃー、にゃー!使い魔猫のジンジャーが人間に化けて、ウルシからゼリーを受け取って、冷蔵庫に次々ゼリーを並べてゆきます。
「急ぎましょう。早く。はやく」
使い魔猫のウルシとジンジャー、まだまだ喫茶店の開店ニャンニャン22分前ですが、
それでも、急いでゼリーを収容します。
「急がなきゃ、早く、はやく」
使い魔猫たちは知っておるのです。
どうしても……どうしても、今日はスイーツたちを、開店5分前には収容しておかねばなりません。
魔女のおばあちゃんの占いによると、今日は、異次元の食いしん坊もといグルメウサギが来店して、
喫茶店の開店早々、スイーツというスイーツを、すべて食べ尽くしてしまうのです!
わぁ、わぁ。なんと大変なことでしょう。
「大丈夫よ」
喫茶店の店主にして使い魔猫の御主人様、魔女のおばあちゃんが言いました。
「この日のために、パンもフルーツも生クリームもたっぷり、発注してあるもの」
それに、「今日」に限っては仕方ないわ。
望むまま、食べさせてやりましょう。
魔女のおばあちゃんは小さなため息ひとつ吐いて、
そして、お店のドアをチラリ見て、
「ほら」
ドアノブが少し動いたのを、はっきり、見ました。
「来たわ」
「アンゴラさーん、早いけど、お邪魔しまぁす」
チリンチリン、チリンチリン。
ドアベルの音とともに入ってきたのは2人の女性。
ひとりはまさしく「占い」の、「スイーツというスイーツをすべて食べ尽くすグルメウサギ」。
「うぅ……すいません。お世話になります……」
もうひとり、グルメウサギに付き添われてきたのは、おやおや?異世界から来て東京でお仕事している、「世界多様性機構」の職員さんです。
「なに拾ってきたんですか」
シャー!シャァー!多様性機構の職員に、使い魔猫のウルシが言いました。
「機構が建てた領事館の職員だろ?」
シャー!シャァー!予想外の敵対組織に、使い魔猫のジンジャーも言いました。
「あのねぇ、これには、深ぁいワケがあって〜」
なんでもぉ、大事に、こっちの世界の技術だけを使って育てようとしてた、こっちの世界の黄色いお花が、水のやり過ぎで全滅しちゃったらしい〜。
さーさー、座って座って。
意気消沈、ほぼ絶望の異世界人を喫茶店の席に座らせて、グルメウサギ、言いました。
「だからね、どうしても……どぉ〜ぅしても、
このコには、今、癒やしが必要なの〜」
だからアンゴラさん、食べさせてあげてよ。
美味しい美味しい、心の苦しいのを癒やしてくれる、スイーツをどっさり食べさせてあげてよ。
グルメウサギは魔女のおばあちゃんの、両手をひっしと包んでにぎって、お願いするのでした。
「今日ばかりは、仕方ないでしょう」
再度ため息を吐く魔女のおばあちゃんです。
「ただし、お店の今日の売上を全部短時間で持って行くつもりなら、お店貸し切りの別途料金か、
あるいは、あなたたち2人、今日はお店のお手伝いをしてちょうだい」
いいわね。分かった?
魔女のおばあちゃんはニッコリ。
別途料金が良いか、お店のお手伝いをするか、2人にとても良い笑顔で、問い詰めましたとさ。
5/20/2025, 6:22:53 AM