前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某深めな森の中の稲荷神社には、本物の稲荷狐が家族で住んでおりまして、
そのうち末っ子の子狐に、最近、異世界の技術で作成された魔法生物、陽キャドッグの友達が爆誕。
拝殿のガラガラ鈴緒で2匹して、ぶらぶらスイングして遊んで、子狐のお母さんが作った絶品お肉料理と稲荷寿司を分け合いっこして楽しんで、
そして、お母さんから丁寧に抜け毛取りとブラッシングとを、してもらったのでした。
陽キャドッグも子狐も、5月は丁度換毛期。
すっぽすっぽ冬毛が抜けて、それはそれは、もう、それは。気持ち良いったらありません。
「さぁ。そろそろ今日は、おしまいですよ。
この犬の飼い主も、この犬の帰りを待っていることでしょう。送っていっておやりなさい」
「はい、かかさん、いってきまーす」
東京の独特な、夕陽の見えない夕暮れと一緒に、
コンコン子狐は陽キャドッグの、お家が存在する世界へ渡ってゆきました。
「おかえり。向こうの世界は楽しかった?」
「あら、その子狐とお友達になったの?」
「ちゃんと家に戻る前に、ジャーキー、貰っていくんだぞ。ああ、良い子良い子」
わふ!わふ!わうわう!わをん!
飼い主が勤務している異世界の組織に戻ってきた陽キャドッグは、歓喜で尻尾を高速ぶんぶん!
帰ってきた証拠として、飼い主の職場の受付係さんから撫でてもらい、遊んでもらい、
そしてなにより、ジャーキーを貰うのです、
が、 どうやらその日に限って、受付係さん、ジャーキーの在庫が尽きておったようで。
「すまない。丁度、さっき補充の注文をしたんだ」
わふわふ。わうわう。
陽キャドッグ、いっつもジャーキーのパックをくれる犬耳のお姉さんに突撃します。
「明日には届く。だから今日は、すまないが直接、工場に行って、できたてを貰ってきてくれ」
工場にはちゃんと、ハナシを付けておいたよ。
犬耳お姉さんはそう言うと、陽キャドッグと子狐に、
工場までの単発往復セキュリティーパスを、それぞれ首から下げてやりました。
「ジャーキー……できたて……!」
子狐のまだ知らない、できたてジャーキーの世界!
ああ、なんと甘美で、なんと幸福な世界でしょう!
コンコン子狐はキラキラと目を輝かせて、
陽キャドッグの先導に、ついてゆきました。
え?ナレーションが男性で脳内再生?
オネェ?火曜日?テーマ曲が英語?
さあ。ナンノコトデセウ。
ということで、子狐のまだ知らないできたてジャーキの世界です。さっそくお題回収です。
飼い主の職場のエントランスから、あっちの自動扉を通り、そっちの職員専用食堂を通り、
食堂に食品を供給している、大きなおおきな、屋外・屋内両対応の、食料製造プラントへ。
「やぁやぁ。まいど」
食料プラントのエントランスフロアでは、小さなカゴに入れられたホカホカのジャーキーが、
2個並んで、子狐と陽キャを待っておりました。
「完全にできたてのジャーキーや。持って行きぃ」
ニセ関西弁の二足歩行ニホンホンドタヌキが、
緑の腰巻きエプロンして、子狐と陽キャドッグの口にそれぞれ、ジャーキーのカゴを差し出します。
ジャーキーは、まだ少しの熱をもって、まさについさっき温風乾燥を終えたのだと分かります。
ジャーキーは、まだ少しのフワフワをもって、確実に柔らかくホロホロ解ける肉だと分かります。
「これがッ、これが、できたて、ジャーキー」
子狐のまだ知らない、できたてジャーキーの世界!
コンコン子狐はカゴから咲く、かぐわしい干し肉の匂いに、どうしても我慢できません!
だって、目の前にご馳走です。お肉です。
コンコン子狐は狐なので、お肉、大好きなのです。
「あんな、おばちゃんな」
緑のエプロンのホンドタヌキ、すごく悪い顔して子狐と、陽キャドッグに言いました。
「実は今、試作品持って来とってん……」
どない? おばちゃんのこと、手伝ぅてくれへん?
緑腰エプロンのホンドタヌキが、次に取り出したのは、試作ジャーキーの味見アンケート。
「ちょこーっと、舌、貸してほしいんよ。タダで」
食料プラントのおばちゃんが、また笑いました。
2匹のまだ知らない、試作品の世界!
陽キャドッグと子狐も、2匹して顔を見合わせて、
そして、目を幸福に輝かせたのでした。
5/18/2025, 3:11:24 AM