かたいなか

Open App
5/10/2025, 9:49:56 AM

私、後輩こと高葉井の推しゲーの公式様が、
まさかの団体とコラボして、まさかのイベントの開催を告知して、参加者を募集し始めた。
それはすなわち、医療と健康、それから少し美容。
来る夏に備えて、なにより体重減少により糖尿病と腎臓病と高血圧のリスクを下げるために、
某キャンプ施設で良質なタンパク質と水分を摂取してから、つまりバーベキューを楽しんでから、
某自然公園まで、皆で歩いて筋肉を作りましょう、
っていう、完全に運動特化のイベント。

イベント名は「みなぎる活力で夢を描け!ドワーフホトのウォーキングチャレンジ」。
「ドワーフホト」っていうのは、私の推しゲーのキャラで、食いしん坊というかグルメというか、ともかく食べるのが大好き。

キャラの背景と設定から、コスメアイテムとのコラボグッズに何度も顔を出してるけど、
今回は、彼女の「一応減量の努力はしてる」っていう設定に、スポットが当たったらしい。
ガイドラインを守って申請を出せば、コスプレ参加も可能。SNSには早くも「ドワーフホトで行きます」とか、「あわせしましょう」とかチラホラ。

ガイドラインにガッツリ書かれてるから、推しカプや推しシチュの解釈違いによる衝突はご法度。
皆で互いを尊重して、互いの独自性を保って。
楽しく、全力で、運動しましょう。
と、いう趣旨らしい。

特別ゲストは、ドワーフホトの声優さんと、「キリン」っていうマッチョキャラの声優さん。
キリンさんは比較的マイナーで、ドワーフホトっていうキャラとの絡みは少ないんだけど、
自分の理想、自分の夢を描けるイラストレーターさんの中には、「キリホト」っていうジャンルで、ほんわか筋トレエピソードを物語化してる人も居る。

何度も言うけど、ドワーフホトとキリンの絡みは少ない(大事なこと二度宣言)

『さぁ、高葉井ちゃん!一緒に行くよぉー!』
本当に推しゲーの、ドワーフホトっていうキャラが私と一緒にダイエットウォーキングするなら、きっとこんなカンジなんだろう。
私は自分の頭の中に、イベントの舞台を設置して、
私とドワーフホトと、それから推しキャラの「ルー部長とツー様」、ルリビタキとツバメっていうキャラを配置して、よーい、どん。
『目指せ、夏に向けたスッキリボディー!
いっちにぃ、いっちにぃー!』

頭の中で、夢を描け、夢を撮れ。
イベントに当選してないし、応募もまだだけど、
二次創作で鍛えられた脳内では、もう私と(ルー部長とツー様と)ホトさんとで、
青空の下、互いにおしゃべりを楽しみ(つつ、ルー部長とツー様のタッグをスマホ撮影し)ながら、
歩いて、たまに走って、時折休んで。

『あのねぇ、ホントはスフィちゃんも、一緒に走ろって呼んだんだよぉ』
ああ、ホト様、あいかわらずおっとりしてて。
『なのにねー、スフィちゃん、直前になってぇ、「行けなくなった」って、かわりにルリビタキ部長とツバメさんと、キリン主任連れてきたのぉ』
そうなんですね。そうなんですね。
ありがとうございます(主に妄想)

「ああ、よき……」
ドワーフホトのメジャーな相棒さんは、きっと、急なお仕事が入っちゃったんだね。
私は想像に浸って、幸福に脳内の推しを追っかけて、ため息なんかひとつ、ふたつ。
「ガチでツー様とルー部長も、一緒に来ないかな」

ああ、ツー様、ルー部長、ええよ、ええよ。
私の脳内で描く夢は、それから十数分、あるいは数十分くらい続いた。

5/9/2025, 4:51:31 AM

「点数が届かない、身長が届かない、声が届かない。あとは何だろな、規定や規格に届かない?」
届かないっつっても、まぁまぁ、色々。
某所在住物書きは未消化のネタ保存ボードを見渡して、ぽつり、ぽつり。
今年に入って設置したホワイトボードには、付箋とマグネットを利用して、複数個保存されている。

1個ネタを思いついたら、1個ネタを消化すれば良い。それで保存ネタは溢れない。
この1個/1個ペースに、事実として、物書きの消化率は届いていないのである。
「どうすっかな」
物書きは考える。
「どうすっかな……」
届かない。 物書きはただ、ため息を吐く。

――――――

イチバン痩せていた頃の体重に、届かない……!
と、いう物書きの魂の絶叫は置いといて、さっそく今回のおはなしの始まり、はじまり。

最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなしです。
「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、あっちで世界AからBへの異世界渡航申請処理、こっちで世界CとDの仲裁、そっちで世界Eの崩壊による世界渡航禁止措置等々、
ともかく色々、世界同士が安全に、安定して、なにより双方が尊重されてお付き合いできるように、
あらゆる仕事を引き受けておったのでした。

滅亡した世界の難民を収容する、バチクソ広大なシェルターなんかもある組織のわりに、
管理局に勤める人間だの獣人だの、竜だの宇宙タコだのは数百、数千、その程度。
この数百数千の局員たちと、それから滅亡世界からの「大勢の」難民たちの、
胃袋を支えている二足歩行のキツネと二足歩行のタヌキが、今回のおはなしのお題回収役。

キツネは赤いスカーフ巻いて、個々のお店を持ち、難民シェルターの職員・難民共用レストランを。
タヌキは緑の腰巻きエプロンつけて、皆でひとつの巨大食堂に集まり、職員専用フードフロアを。
コンコン、ぽんぽこ、任されておりました。

で、そのキツネとタヌキが、今回何に立ち向かっておるかといいますと。
前回投稿分で突然難民シェルター内に爆誕した、大きな大きな、宇宙タラの芽の大木です。

炎と光と雷のドラゴンから多くの栄養を受け取って、人工太陽からたっぷり光を浴びて、
可愛らしい花火のような花と極上の若芽とを同時に生やした宇宙タラの芽の木は、
それはそれは、もう、それは。
天ぷら、ごまあえ、肉巻きに料理の飾り等々、
ありとあらゆる料理にどっさり使えるだけの量を、
バチクソ高いところに、生やしておるのです。

「届かないね」
赤いスカーフの二足歩行ホッキョクギツネが、宇宙タラの芽の大木を見上げて言いました。
ホッキョクギツネは宇宙タラの芽をどっさり採るための、山菜用小刀が握っておりました。

「届かない……」
緑の腰巻きエプロンの二足歩行コウライタヌキが、同じく宇宙タラの芽の大木を見上げて言いました。
コウライタヌキは宇宙タラの芽をどっさり入れるための、山菜用リュックを背負っておりました。

「どないしよう」
「どすべの」
「荷物持ちならするとよ」
「荷物たて、まず登らねば」
「ひとまずお茶とコーヒーでよろしい?これはもう、作戦会議しはるでしょ?」

「異議なし」
「異議なし」

届かない、とどかない。
ニホンホンドギツネもキタキツネも、ニホンホンドタヌキもエゾタヌキも、普段うどんと蕎麦の話題に関しては抗争級のケンカをする間柄ですが、
共通の「宇宙タラの芽を得る」という目的に向かって、一致団結、作戦会議です。

「高所作業用の機材で、上まで、」
「無理だびょん……。ドローン、どんだ?」
「高いところまでは届くだろうけど、問題は、ドローンでどうやってタラの芽を採取するの?」
「お揚げさん炊けましたえ」

「食べる」
「まんじぇ」
「まんじゃーれ」

あーでもない、こーでもない。
パンパスギツネもセチュラギツネも、ウンナンタヌキもウスリータヌキも、皆みんな、突然爆誕した山菜を自分たちの料理に使いたくて、
知恵を出し合い、妖術を提案したり、魔法を紹介したり。一致団結、作戦会議です。

「あれ」
と、ドローンで宇宙タラの大木上空を撮影しておったフェネックが、解決の糸口を見つけました。
「このタラの芽の大木の上で、ドラゴンが寝てる」

それだ! それだ!!
キツネもタヌキも大喜び!
上に誰か居るなら、その誰かにタラの芽を、採ってきてもらえば良いのです!
「さっそくドラゴンに、コンタクトを取ろう!!」

ドラゴンさん、ドラゴンさん。
あなたが寝てるそのあたりの、宇宙タラの芽の若芽をどっさり、採って落としてくださいな。
ぶーん、ブーン。 フェネックはドローンをあやつって、昼寝中のドラゴンに近づきます!
「よし!もう少しだ!」
ぶーん、ブーン。 あと少し、もう少し。
あと少しでドラゴンに、ドローン内蔵の小型マイクからの音声が届く、という距離まで来たところで、

ビタン!ばしん!

ブンブン駆動音が耳障りだったらしいドラゴン、寝ぼけて尻尾でドローンを、叩き落としたのでした。
「ああぁぁぁ!!!」
ああ、ああ。届かない……とどかない。
作戦会議はやり直し。
管理局の調理担当、スカーフのキツネと腰巻きエプロンのタヌキは、それから数十分、1時間、
それぞれ悩みに悩んで知恵を出して、先に晩ごはんの仕込みの時間が無情にも来てしまったので、
一旦、諦めざるを得ませんでしたとさ。

5/8/2025, 7:23:03 AM

「熱帯雨林気候の一部地域じゃ、あんまり木々が多層構造になり過ぎて、木漏れ日どころか地上に光がほぼ届かないってどこかで観た」
あれは何だったかな。テレビだったかようつべだったか。 某所在住物書きは車の中で、パチパチ、ぱちぱち。キーボードを叩き続けている。
街の中は木が少ない。だいたい街路樹程度しか見かけないので、「木漏れ日」を見つけるのが難しい。

自然公園も、どこそこでは木の老化が進んでおって、複数本の木が伐採予定と聞いた。
意外と「木漏れ日」とは、絶滅危惧種に近づいている概念なのかもしれぬ。
「こもれびねぇ……」
物書きは思う――ひとまず、最近暑い。

――――――

最近は5月でも容赦無く、20℃を超えて夏日など観測する地域が多くなってきました。
昨今の高温に森の木漏れ日と風は理想的な避暑。
ということで、今回はこんなおはなしをご紹介。

最近最近、「ここ」ではないどこか別の世界で、
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織が、
色々な世界の争い事の調停役として、あるいは他の世界と世界を安全に繋ぐ橋渡し役として、
そしてなにより、その世界が「その世界」として独自性を保ち、尊重されるための保全者として。
あんなことやこんなこと、滅んだ世界への渡航規制なんかも、しておるのでした。

そんな世界線管理局は、滅んだ世界からこぼれ落ちた、いわゆる「難民」の保護もしておりまして、
彼等を収容するシェルターは、管理局の異次元技術によって、バチクソに広くてドチャクソに快適。
管理局の建物内で、人工太陽が規則正しく運行し、
山に滝、森に湖、温泉人工火山によって温泉と豊富な鉱石資源とが、それぞれ点在しています。
今はシェルターに6個存在する季節の中の、日本でいうところの5月に相当するあたり。
森林エリアや沢エリアで、様々な世界の山菜が、暖かさを察知して芽吹き始めています。

で、その山林エリアの木漏れ日落ちる、小川がちょろちょろ気持ちよさそうなあたりで、
管理局のドラゴンが一匹、ぐーすぴかーすぴ。
気持ちよさそうに、昼寝などしておりました。

このドラゴンは、炎と光と雷のドラゴン。
このドラゴンは、絶対に太らないドラゴン。
ビジネスネームを、「ルリビタキ」といいます。
木漏れ日の下でぐーすぴかーすぴ、時折寝言を言ったり寝返り打ってヘソ天したりで寝ていると、
自分の中の、作り過ぎた余分なエネルギーを、周囲の土や草や水に分け与えるのです。

『んん……、食えん……もう、くえん……』
むにゃむにゃ、ぐーすぴ。どうやらドラゴンのルリビタキ、幸福な悪夢を見ているようです。
『食えん、もう、いらん……』
むにゃむにゃ、かーすぴ。ドラゴンのルリビタキは、昔々、管理局で「美味い食い物」という概念と遭遇した日を、追体験しているようです。

ルリビタキは光さえあれば、ぶっちゃけそれほど多くの食べ物を必要としないドラゴン。
管理局に身を売るまで、食うことを楽しむなんて、
少しも、ちっとも、してこなかったのです。
それが管理局に移送されて、三食おやつ付き生活がスタートすると、まぁ、食い物の美味いこと。

ほら、お食べ、おたべ、これもオタベ。
ルリビタキはそんな昔の、アレコレ幸福に食わされる夢を、木漏れ日の下で見ておったのです。

『むにゃ。 くえんと、いって、いるだろ……』
美味を知った日の夢を見るルリビタキ。
体がぼんやり、弱く、優しく光り、その光は落ちてきた木漏れ日と混ざります。
光を受け取った山菜は、木の芽は、じわじわ成長を始めまして、段々大きくなってゆきます。
ルリビタキは炎と光と雷のドラゴン。ルリビタキの光は森の花を、山の木を、沢の水草や草原のキノコを、少しずつ、元気にするのです。

が、どうやらその日は「悪夢」のせいで、なにより今朝大量に食わされたタコ焼きのせいで、
山菜たちに供給するエネルギーが云々、かんぬん。

ドラゴンのルリビタキの下に敷かれておった宇宙タラの芽が、ドチャクソに栄養供給を受けまして、
ぐんぐん、ぐんぐん、一気に宇宙タラの大木になり、宇宙タラの花を咲かせて、もっしゃあ!
ドラゴンを木漏れ日どころか日光そのものの直下まで、持ち上げてしまいました。

『んん、 ん? なんだ??』
突然光量が増えて、まぶしくなって、幸福な悪夢から目を覚ましたルリビタキは、
『ここは、どこだ? なぜ俺は木の上にいる?』
自分が木漏れ日の下ではなく、宇宙山菜の大木の上で寝ている事実に頭がついてこなくて、
数分、十数分、ポカン顔をしておったとさ。

5/7/2025, 4:07:40 AM

「『愛を注いで』、『愛言葉』、『秋恋』に『春恋』、『I Love』。そもそも恋愛ネタのお題が多いアプリではあると思う」
まぁ、いつか「愛を歌う」とか来るとは思ってた。
某所在住物書きは1986年リリースの「ラブソング」を、そのフランス語版を聴きながら、
パチパチ、ぱちぱち。キーボードに指を滑らせて、
何度目か知れぬ「愛」を書き終えた。

ひと昔前、中国語版をウーロン茶のCMで聞いた。
フランス語も聞き覚えがある。どこであったか。

「……それ言ったら『愛をささやくならフランス語』って、出典どこだっけ?小説?」
知らぬ。原典を未履修である。

――――――

最近最近、都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、遊び盛りの食いしん坊。
食べることも、遊ぶことも、頭やおなかを撫でてもらうことも大好きで、
特に人間が心や魂を込めて作ったお肉やお稲荷さんを、それはそれは幸福な顔して食べるのでした。

先日コンコン子狐の、お家の稲荷神社では、
ゴールデンウィークに合わせて、神社マルシェが開かれておりました。
美味しいお菓子に美味しいお肉、美味しい酒に美味しいお稲荷さん。神社は美味の香りでいっぱい。
子狐も食いしん坊仲間と一緒に、マルシェのごちそうを存分に堪能しました。

で、そんなコンコン子狐が、どこの何に対して「ラブソング」を歌ったかといいますと。

「おいしい、おいしい、おいしい!」
そうです。食べ物です。
大盛況のうちに終わった神社マルシェに、稲荷寿司風の味付けをした、さつまいもチップスが売られておって、それを子狐が大量購入したのです。
「さつまいもチップス、おいしい!」

稲荷神社のマルシェということで、「おキツネまっしぐら味」と名付けられたチップスは、
稲荷寿司をイメージした、いわゆる砂糖の甘さと醤油のしょっぱさ。すなわち、みたらし風味。
コンコン子狐、甘さとしょっぱさの無限ループを、
完全に、まさしく「おキツネまっしぐら」の商品名通りに、ドチャクソ愛してしまったのです。

「あまい、しょっぱい、あまい、しょっぱい」
かりかりかり、ぽりぽりぽり。
コンコン子狐、幸福に尻尾をぶんぶん振りながら、
なんなら体もちょっと揺らしながら、
「おいしい。おいしい」
稲荷寿司の、特にお揚げさんイメージなさつまいもチップスを、1枚、1枚、次は2枚。
器用につまんで、噛んで噛んで、堪能します。

子狐の美味コールはチップスへのラブソング、
子狐の尻尾ぶんぶんはチップスへのラブダンス。
かりかりかり、ぽりぽりぽり。
ああ、もう、1袋食べちゃった。
短期的に失恋して、もう1袋に恋をして、
さあ、御狐まっしぐら。子狐のラブソングを歌いましょう。子狐のラブダンスを踊りましょう。

ところで子狐が買い込んだ、稲荷寿司味のさつまいもチップス、どうやら残り3袋のようですが?

「おいしい!おいしい!あまじょっぱい!」
歌というのは、いつか終わります。
恋というのも、いつか終わります。
コンコン子狐はそのまんま、さつまいもチップスを食べ続けて、次から次へと、袋を開けます。

「もう1ふくろ!」
一気に2袋を食べ終えて、残りは最後の1袋。
それを開けようとして、はたと、
子狐コンコン、気付いたのです。
子狐コンコン、恋から目覚めたのです。
これを食べ終えてしまったら、御狐まっしぐらのさつまいもチップスとは、おわかれなのです。
「チップス、ちっぷす……!!」

ギャーン!ぎゃーん!
会えなくなる寂しさを、引き離される苦しさを、
子狐は狂おしく、吠えて吠えて歌います。
子狐のラブソングは一転、別離の悲恋歌。
恋はいつか、終わるのです。
「さつまいもチップス、おわかれしちゃう!」

ああ、ああ、愛しいあなた。残りたったの1袋。残りたったの50gになっちゃった。
子狐コンコン泣き倒して、でも食べたいので、
最後の1袋は大事に大事に、まさに楽しい恋から思いやりの愛に変わるように、
1枚1枚、よく味わって、よく噛み締めて、
それを、食べ終えたとさ。

5/6/2025, 4:55:30 AM

「2月3日のお題が『隠された手紙』で、19日付近が『手紙の行方』だった」
アレか、あの日とあの日のお題で書いた手紙の結末について投稿してくださいってお題か。
某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら、
ぽわぽわ、もわんもわん。
当時書いた手紙を開いた結果を想像した。

たしか2月の「手紙」では、神社の子狐が、手紙を自分のドテっ腹に敷いて昼寝をしてしまい、
ゆえに、行方不明になってしまった物語を書いた。
アレのその後を書けと?

「封筒は狐の体温でホカホカだろうけど、便箋ってこの場合、体温、伝わってんのかな」
物書きは更に想像する。
なお狂犬病やエキノコックスは対策済みとする。
「……別のハナシにしねぇか?」

――――――

まずは物語導入。
「ここ」ではないどこか、別の世界で、「世界線管理局」なる厨二ちっくファンタジー組織が、
その世界が「その世界」として尊重され、独自性と独立性を保持していられるように、
あるいは独自性を保ったまま他の世界と対等に交流し続けられるように。
為すべき仕事を、毎日、着実に、確実に。

管理局の法務部執行課には、特殊で不思議な、
鳥の名前をビジネスネームに持つハムスターだけで構成された部署があり、
その部署名を特殊情報部門といった。

「ムクドリからだ」
その特殊情報部門のオフィスに、「こっち」の世界の都内某所から、手紙が1通。
差出人、もとい差出ハムは「ムクドリ」といった。

前回投稿分の物語で、ネズミ車をカラカラ、からから。虚無顔で回していたハムである。

「どれどれ?」
カリカリ、ぴりぴり。
封をかじり、局員ハムが手紙を開くと、
ムクドリの弱々しい字体で、

『のびました』

「あー……、うん、そうか。なるほどな」
何が「のびた」のか。
ムクドリの東京滞在が「延びた」のだ。
何故「のびた」のか。
ムクドリが都内某所で「やらかした」のだ。

導入終了。ここからが本編。
以下は不思議なハムスターが魔女の喫茶店でしでかした、ケーブルかじりとその結果である。

――時刻は戻り、24時間前。
都内某所には「本物」の魔女の老淑女が店主をつとめる、不思議な不思議な喫茶店があり、
そこに手紙の差出者たるハムスターが、
とととと、とててて。裏メニューたる絶品ローストナッツのミックスを求めて来店していた。
ナッツミックスはメニューに無い。しかし、頼めば出てくるのだ。それが素晴らしく美味くて。

「うーん。最高だ」
手紙の差出ハム、ムクドリは日の当たるテーブルの上でミックスナッツを、すなわちしっとりクルミとカリカリアーモンド、それからやわらかマカダミアナッツとを、それぞれ堪能していた。
「おや。あそこにあるのは、なんだろう」

ムクドリは「ムクドリ」なんてビジネスネームのくせに、実際はハムスターなので、
本能として、硬いものをかじりたがるし、それらを求めたがる。歯が伸び続けるせいだ。
ゆえにナッツミックスのようなカチカチかりかりの食材を好んで食すのだが、
ハムスターの飼育経験がある読者であれば、想像がつく、あるいは経験済みかもしれない、

つまり家電のコードもかじるのだ。

「うぅ、かじりたい、きっと噛みごたえが良い」
うずうず、うずうず。
テーブルの上でナッツミックスを堪能していたハム、とっとこムクドリは、カウンターの影に隠された「何かのコード」を発見した。
黒く、掴みやすそうな直径で、かつ近くに家電が見つからないそれは、ムクドリには自分の歯を削るに丁度良い枝か何かに思えた。

ぼとっ、ぽてん。
テーブルから椅子へ、椅子から床へ下りたムクドリは、店員や店主の姿を探して、さがして、
どうやら付近には不在、と認識したので、
とたたたたたた!一直線に、コードへ突撃。
本能なのだ。仕方ないのだ。
人間だって、眠気を我慢できる者など居るものか。

「んん。これもまた、最高だ」
ガリガリ、がりがり。
何のコードか分からぬ黒を、ムクドリは己の本能に従って、つかみ、歯を当て、噛んだ。
「丁度良い。本当に、丁度良い……」
ガリガリ、がりがり。
ムクドリは固いコードカバーを削り、その下のカバーもかじり、もうすぐ絶縁ビニルというところで、

「あらあら、あら。 なにしてるの」
その喫茶店の店主、本物の魔女、
アンゴラに現行犯で見つかった。
「またコードをかじったのね。
お仕置きが、足りなかったのかしら」

老淑女な魔女アンゴラが、きっと何かの調理中であったのだろう、鋭い魔法の光をまとう包丁を片手にニッコリ穏やかに微笑んでいる。
「丁度良いわ」
アンゴラが言った。
「これから近くの稲荷神社で、神社マルシェがあるの。そこに出店する予定よ。
あなた、一緒に来て、手伝ってちょうだい」

ああ、のびた。延長だ。ムクドリは理解した。
ムクドリはこの喫茶店でナッツを食い終えたら、自分の職場に戻る予定であった。
戻る予定日が先延ばしになったのだ。
『のびました』
すなわち、冒頭の手紙の文章は、「帰りが日にち単位で遅くなります」の報告だったのである。
しゃーない、しゃーない。

Next