かたいなか

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5/8/2025, 7:23:03 AM

「熱帯雨林気候の一部地域じゃ、あんまり木々が多層構造になり過ぎて、木漏れ日どころか地上に光がほぼ届かないってどこかで観た」
あれは何だったかな。テレビだったかようつべだったか。 某所在住物書きは車の中で、パチパチ、ぱちぱち。キーボードを叩き続けている。
街の中は木が少ない。だいたい街路樹程度しか見かけないので、「木漏れ日」を見つけるのが難しい。

自然公園も、どこそこでは木の老化が進んでおって、複数本の木が伐採予定と聞いた。
意外と「木漏れ日」とは、絶滅危惧種に近づいている概念なのかもしれぬ。
「こもれびねぇ……」
物書きは思う――ひとまず、最近暑い。

――――――

最近は5月でも容赦無く、20℃を超えて夏日など観測する地域が多くなってきました。
昨今の高温に森の木漏れ日と風は理想的な避暑。
ということで、今回はこんなおはなしをご紹介。

最近最近、「ここ」ではないどこか別の世界で、
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織が、
色々な世界の争い事の調停役として、あるいは他の世界と世界を安全に繋ぐ橋渡し役として、
そしてなにより、その世界が「その世界」として独自性を保ち、尊重されるための保全者として。
あんなことやこんなこと、滅んだ世界への渡航規制なんかも、しておるのでした。

そんな世界線管理局は、滅んだ世界からこぼれ落ちた、いわゆる「難民」の保護もしておりまして、
彼等を収容するシェルターは、管理局の異次元技術によって、バチクソに広くてドチャクソに快適。
管理局の建物内で、人工太陽が規則正しく運行し、
山に滝、森に湖、温泉人工火山によって温泉と豊富な鉱石資源とが、それぞれ点在しています。
今はシェルターに6個存在する季節の中の、日本でいうところの5月に相当するあたり。
森林エリアや沢エリアで、様々な世界の山菜が、暖かさを察知して芽吹き始めています。

で、その山林エリアの木漏れ日落ちる、小川がちょろちょろ気持ちよさそうなあたりで、
管理局のドラゴンが一匹、ぐーすぴかーすぴ。
気持ちよさそうに、昼寝などしておりました。

このドラゴンは、炎と光と雷のドラゴン。
このドラゴンは、絶対に太らないドラゴン。
ビジネスネームを、「ルリビタキ」といいます。
木漏れ日の下でぐーすぴかーすぴ、時折寝言を言ったり寝返り打ってヘソ天したりで寝ていると、
自分の中の、作り過ぎた余分なエネルギーを、周囲の土や草や水に分け与えるのです。

『んん……、食えん……もう、くえん……』
むにゃむにゃ、ぐーすぴ。どうやらドラゴンのルリビタキ、幸福な悪夢を見ているようです。
『食えん、もう、いらん……』
むにゃむにゃ、かーすぴ。ドラゴンのルリビタキは、昔々、管理局で「美味い食い物」という概念と遭遇した日を、追体験しているようです。

ルリビタキは光さえあれば、ぶっちゃけそれほど多くの食べ物を必要としないドラゴン。
管理局に身を売るまで、食うことを楽しむなんて、
少しも、ちっとも、してこなかったのです。
それが管理局に移送されて、三食おやつ付き生活がスタートすると、まぁ、食い物の美味いこと。

ほら、お食べ、おたべ、これもオタベ。
ルリビタキはそんな昔の、アレコレ幸福に食わされる夢を、木漏れ日の下で見ておったのです。

『むにゃ。 くえんと、いって、いるだろ……』
美味を知った日の夢を見るルリビタキ。
体がぼんやり、弱く、優しく光り、その光は落ちてきた木漏れ日と混ざります。
光を受け取った山菜は、木の芽は、じわじわ成長を始めまして、段々大きくなってゆきます。
ルリビタキは炎と光と雷のドラゴン。ルリビタキの光は森の花を、山の木を、沢の水草や草原のキノコを、少しずつ、元気にするのです。

が、どうやらその日は「悪夢」のせいで、なにより今朝大量に食わされたタコ焼きのせいで、
山菜たちに供給するエネルギーが云々、かんぬん。

ドラゴンのルリビタキの下に敷かれておった宇宙タラの芽が、ドチャクソに栄養供給を受けまして、
ぐんぐん、ぐんぐん、一気に宇宙タラの大木になり、宇宙タラの花を咲かせて、もっしゃあ!
ドラゴンを木漏れ日どころか日光そのものの直下まで、持ち上げてしまいました。

『んん、 ん? なんだ??』
突然光量が増えて、まぶしくなって、幸福な悪夢から目を覚ましたルリビタキは、
『ここは、どこだ? なぜ俺は木の上にいる?』
自分が木漏れ日の下ではなく、宇宙山菜の大木の上で寝ている事実に頭がついてこなくて、
数分、十数分、ポカン顔をしておったとさ。

5/7/2025, 4:07:40 AM

「『愛を注いで』、『愛言葉』、『秋恋』に『春恋』、『I Love』。そもそも恋愛ネタのお題が多いアプリではあると思う」
まぁ、いつか「愛を歌う」とか来るとは思ってた。
某所在住物書きは1986年リリースの「ラブソング」を、そのフランス語版を聴きながら、
パチパチ、ぱちぱち。キーボードに指を滑らせて、
何度目か知れぬ「愛」を書き終えた。

ひと昔前、中国語版をウーロン茶のCMで聞いた。
フランス語も聞き覚えがある。どこであったか。

「……それ言ったら『愛をささやくならフランス語』って、出典どこだっけ?小説?」
知らぬ。原典を未履修である。

――――――

最近最近、都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、遊び盛りの食いしん坊。
食べることも、遊ぶことも、頭やおなかを撫でてもらうことも大好きで、
特に人間が心や魂を込めて作ったお肉やお稲荷さんを、それはそれは幸福な顔して食べるのでした。

先日コンコン子狐の、お家の稲荷神社では、
ゴールデンウィークに合わせて、神社マルシェが開かれておりました。
美味しいお菓子に美味しいお肉、美味しい酒に美味しいお稲荷さん。神社は美味の香りでいっぱい。
子狐も食いしん坊仲間と一緒に、マルシェのごちそうを存分に堪能しました。

で、そんなコンコン子狐が、どこの何に対して「ラブソング」を歌ったかといいますと。

「おいしい、おいしい、おいしい!」
そうです。食べ物です。
大盛況のうちに終わった神社マルシェに、稲荷寿司風の味付けをした、さつまいもチップスが売られておって、それを子狐が大量購入したのです。
「さつまいもチップス、おいしい!」

稲荷神社のマルシェということで、「おキツネまっしぐら味」と名付けられたチップスは、
稲荷寿司をイメージした、いわゆる砂糖の甘さと醤油のしょっぱさ。すなわち、みたらし風味。
コンコン子狐、甘さとしょっぱさの無限ループを、
完全に、まさしく「おキツネまっしぐら」の商品名通りに、ドチャクソ愛してしまったのです。

「あまい、しょっぱい、あまい、しょっぱい」
かりかりかり、ぽりぽりぽり。
コンコン子狐、幸福に尻尾をぶんぶん振りながら、
なんなら体もちょっと揺らしながら、
「おいしい。おいしい」
稲荷寿司の、特にお揚げさんイメージなさつまいもチップスを、1枚、1枚、次は2枚。
器用につまんで、噛んで噛んで、堪能します。

子狐の美味コールはチップスへのラブソング、
子狐の尻尾ぶんぶんはチップスへのラブダンス。
かりかりかり、ぽりぽりぽり。
ああ、もう、1袋食べちゃった。
短期的に失恋して、もう1袋に恋をして、
さあ、御狐まっしぐら。子狐のラブソングを歌いましょう。子狐のラブダンスを踊りましょう。

ところで子狐が買い込んだ、稲荷寿司味のさつまいもチップス、どうやら残り3袋のようですが?

「おいしい!おいしい!あまじょっぱい!」
歌というのは、いつか終わります。
恋というのも、いつか終わります。
コンコン子狐はそのまんま、さつまいもチップスを食べ続けて、次から次へと、袋を開けます。

「もう1ふくろ!」
一気に2袋を食べ終えて、残りは最後の1袋。
それを開けようとして、はたと、
子狐コンコン、気付いたのです。
子狐コンコン、恋から目覚めたのです。
これを食べ終えてしまったら、御狐まっしぐらのさつまいもチップスとは、おわかれなのです。
「チップス、ちっぷす……!!」

ギャーン!ぎゃーん!
会えなくなる寂しさを、引き離される苦しさを、
子狐は狂おしく、吠えて吠えて歌います。
子狐のラブソングは一転、別離の悲恋歌。
恋はいつか、終わるのです。
「さつまいもチップス、おわかれしちゃう!」

ああ、ああ、愛しいあなた。残りたったの1袋。残りたったの50gになっちゃった。
子狐コンコン泣き倒して、でも食べたいので、
最後の1袋は大事に大事に、まさに楽しい恋から思いやりの愛に変わるように、
1枚1枚、よく味わって、よく噛み締めて、
それを、食べ終えたとさ。

5/6/2025, 4:55:30 AM

「2月3日のお題が『隠された手紙』で、19日付近が『手紙の行方』だった」
アレか、あの日とあの日のお題で書いた手紙の結末について投稿してくださいってお題か。
某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら、
ぽわぽわ、もわんもわん。
当時書いた手紙を開いた結果を想像した。

たしか2月の「手紙」では、神社の子狐が、手紙を自分のドテっ腹に敷いて昼寝をしてしまい、
ゆえに、行方不明になってしまった物語を書いた。
アレのその後を書けと?

「封筒は狐の体温でホカホカだろうけど、便箋ってこの場合、体温、伝わってんのかな」
物書きは更に想像する。
なお狂犬病やエキノコックスは対策済みとする。
「……別のハナシにしねぇか?」

――――――

まずは物語導入。
「ここ」ではないどこか、別の世界で、「世界線管理局」なる厨二ちっくファンタジー組織が、
その世界が「その世界」として尊重され、独自性と独立性を保持していられるように、
あるいは独自性を保ったまま他の世界と対等に交流し続けられるように。
為すべき仕事を、毎日、着実に、確実に。

管理局の法務部執行課には、特殊で不思議な、
鳥の名前をビジネスネームに持つハムスターだけで構成された部署があり、
その部署名を特殊情報部門といった。

「ムクドリからだ」
その特殊情報部門のオフィスに、「こっち」の世界の都内某所から、手紙が1通。
差出人、もとい差出ハムは「ムクドリ」といった。

前回投稿分の物語で、ネズミ車をカラカラ、からから。虚無顔で回していたハムである。

「どれどれ?」
カリカリ、ぴりぴり。
封をかじり、局員ハムが手紙を開くと、
ムクドリの弱々しい字体で、

『のびました』

「あー……、うん、そうか。なるほどな」
何が「のびた」のか。
ムクドリの東京滞在が「延びた」のだ。
何故「のびた」のか。
ムクドリが都内某所で「やらかした」のだ。

導入終了。ここからが本編。
以下は不思議なハムスターが魔女の喫茶店でしでかした、ケーブルかじりとその結果である。

――時刻は戻り、24時間前。
都内某所には「本物」の魔女の老淑女が店主をつとめる、不思議な不思議な喫茶店があり、
そこに手紙の差出者たるハムスターが、
とととと、とててて。裏メニューたる絶品ローストナッツのミックスを求めて来店していた。
ナッツミックスはメニューに無い。しかし、頼めば出てくるのだ。それが素晴らしく美味くて。

「うーん。最高だ」
手紙の差出ハム、ムクドリは日の当たるテーブルの上でミックスナッツを、すなわちしっとりクルミとカリカリアーモンド、それからやわらかマカダミアナッツとを、それぞれ堪能していた。
「おや。あそこにあるのは、なんだろう」

ムクドリは「ムクドリ」なんてビジネスネームのくせに、実際はハムスターなので、
本能として、硬いものをかじりたがるし、それらを求めたがる。歯が伸び続けるせいだ。
ゆえにナッツミックスのようなカチカチかりかりの食材を好んで食すのだが、
ハムスターの飼育経験がある読者であれば、想像がつく、あるいは経験済みかもしれない、

つまり家電のコードもかじるのだ。

「うぅ、かじりたい、きっと噛みごたえが良い」
うずうず、うずうず。
テーブルの上でナッツミックスを堪能していたハム、とっとこムクドリは、カウンターの影に隠された「何かのコード」を発見した。
黒く、掴みやすそうな直径で、かつ近くに家電が見つからないそれは、ムクドリには自分の歯を削るに丁度良い枝か何かに思えた。

ぼとっ、ぽてん。
テーブルから椅子へ、椅子から床へ下りたムクドリは、店員や店主の姿を探して、さがして、
どうやら付近には不在、と認識したので、
とたたたたたた!一直線に、コードへ突撃。
本能なのだ。仕方ないのだ。
人間だって、眠気を我慢できる者など居るものか。

「んん。これもまた、最高だ」
ガリガリ、がりがり。
何のコードか分からぬ黒を、ムクドリは己の本能に従って、つかみ、歯を当て、噛んだ。
「丁度良い。本当に、丁度良い……」
ガリガリ、がりがり。
ムクドリは固いコードカバーを削り、その下のカバーもかじり、もうすぐ絶縁ビニルというところで、

「あらあら、あら。 なにしてるの」
その喫茶店の店主、本物の魔女、
アンゴラに現行犯で見つかった。
「またコードをかじったのね。
お仕置きが、足りなかったのかしら」

老淑女な魔女アンゴラが、きっと何かの調理中であったのだろう、鋭い魔法の光をまとう包丁を片手にニッコリ穏やかに微笑んでいる。
「丁度良いわ」
アンゴラが言った。
「これから近くの稲荷神社で、神社マルシェがあるの。そこに出店する予定よ。
あなた、一緒に来て、手伝ってちょうだい」

ああ、のびた。延長だ。ムクドリは理解した。
ムクドリはこの喫茶店でナッツを食い終えたら、自分の職場に戻る予定であった。
戻る予定日が先延ばしになったのだ。
『のびました』
すなわち、冒頭の手紙の文章は、「帰りが日にち単位で遅くなります」の報告だったのである。
しゃーない、しゃーない。

5/5/2025, 3:57:32 AM

「すれ違う、スレ違う。ゴマを『すれ』、みたいな方なのか機密情報入りUSBを『スれ』、みたいな方の意味のすれ違いなのか。
距離ですれ違ったか心理的にすれ違ったか、言葉の意味が違ったって『すれ違う』もあるわな」
あとはなんだ。「すれ違い通信」?某所在住物書きは去年投稿分を確認しながら、ため息をひとつ。
去年は「スーパーですれ違った職場の先輩が、後輩のためにハロウィンスイーツの下見に来ていた」の話だった。 では今年は?

「……『すれ違う瞳の心理学』?」
突然ぽつり。物語のネタがあまりにも思い浮かばないので、本棚の所蔵タイトルに「すれ違う瞳」をつけて遊び始めたのだ――「すれ違う瞳の戦略図鑑」など、なんとあざとい香りのすることか。
「ふーん……」
意外と面白い。物書きは執筆そっしのけで……

――――――

前回投稿分の続き物。
最近最近の都内某所に、異世界組織から仕事に来ている食いしん坊、もといグルメさんがおりまして、
いろんな美味に触れてきたその女性は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいました。

ところでグルメな異世界職員のドワーフホト、
都内某所の某稲荷神社に住む食いしん坊な稲荷子狐と、食いしん坊という点から仲良し。
前回投稿分でも、前々回投稿分でも、1人と1匹で、美味しい美味しい物語を歩きました。

どうやら今回もドワーフホト、この世界の美味を堪能できるイベントに誘われたようで。

「まるしぇ!まるしぇ!」
それは、稲荷子狐のお家である稲荷神社で、ゴールデンウィークゆえに開催されたグルメマルシェ。
食いしん坊子狐が、ドワーフホトを誘いました。
「おいなりさん、おあげさん、おにく!」
コンコン子狐は狐なので、ジューシーなお肉も甘い野菜も、やわらかい山菜も大好き!
食いしん坊仲間のドワーフホトと一緒に、ぎゃぎゃん、ぎゃぎゃん!尻尾ぶんぶんです。

「縁日ケバブ、さつまいもチップスの稲荷寿司味、たこ焼きにアイスココア、スムージー!」
食いしん坊同盟の同志たる子狐を優しく抱いて、ドワーフホトもマルシェを楽しみます。
美しい花畑をよけて停車するキッチンカーは、全部で5台。テントを使った屋台も見えます。
「カップケーキもあるぅ!ミカンのチーズケーキは、お土産でど〜っさり、買ってかなきゃ!」
ドワーフホトは「その世界」が生み出した幸福と知恵の結晶、その世界の料理が大好き!
グルメ仲間の子狐と一緒に、これください、あれください!口角が上がりっぱなしです。

「むっ。 むむっ」
「あれ、どーしたの、コンちゃん」
「ネズミだ、ネズミだ! ネズミのニオイ!」
「そりゃ、深い森の中の稲荷神社だもん。
野ネズミの1匹も2匹も、いるよぉ」

「ちがう、ちがう!キツネ、しってる。
このニオイ、しらないとこから来たネズミ」
「知らないとこー?」

あー、はい、居るねぇ。
さつまいもチップスのきび砂糖味をポリポリしながら、焦がし醤油やバター等々の良い香りの中を歩いておるドワーフホト、
見知ったアンティークデザインのキッチンカーを視線でチラリ、なぞっておると、
まさしくお題回収、
カラカラ不思議なネズミ車型の専用コーヒー豆焙煎機の中を、無表情で走り続けているハムスターと、すれ違う瞳の虚無っぷりたるや。

ネズミです。たしかに、ネズミです。
実はドワーフホトの部署違いな同僚さん。ビジネスネームを「ムクドリ」といいます。
たしかに「知らない世界から来たネズミ」です。

カラカラ、からから。とっとこムクドリがネズミ車で、自分の能力を開放して、1杯ずつのコーヒー豆をじっくりローストしています。
すれ違う瞳は、何も映していないようです。
「ムッくん、どうしたの、何したの、
いや、『今回』は『何』をかじったの……」

しゅばばっ!
ドワーフホトの腕の中から、稲荷子狐が勢いよく、飛び出してゆきます。
てっきりムクドリに飛びかかると思ったら、別のハムスターを見つけた様子。すっ飛んでゆきます。
「ぎゃーーーー!!」
そのハムスターも、ドワーフホトの同僚でした。
そのハムスターは、ただ稲荷神社の美しい花を、単純に、楽しみたくて来ただけの、ハズでした。

「ネズミ、ネズミ!キツネとあそべッ」
「やめてとめてゆるして!たすけt
あっちょっホントにゆるしt あふん」

ぽぉん! 稲荷子狐の子狐ぱんちに、ハムスターが高くたかく宙を舞います。
この瞳とも、ドワーフホト、すれ違います。
「わぁー。カナリアくん、よく飛んだねぇー」
「感心してないで助けてホトさーん!」

今日も都内某所は平和です。
今日も都内某所は、お題とともに進みます。
ところで、おはなし後半の「ムクドリ」、虚無目でしたが、何があったのでしょう……?

5/4/2025, 3:02:35 AM

「去年『どこまでも続く青い空』ってお題を書いたから、ぶっちゃけ、それを再掲載することもだな」
他にはアレだ。青々とした緑がどうとか、青い青い顔がどうとか、未熟な誰かを青いとか。
某所在住物書きは「青」の用例を調べつつ、
しかし結局普通に「青い色」で書く方が早いと結論付けたあたりで、
ふと、テレビを観たところ、丁度、映像にブルーシートが堂々展開。たしかに、青い、青い……

「そうだ。青い青い緑か」
新緑を「青」と言う日本である。「青い青い」のお題で、そうだ、緑もネタにできるじゃないか。
物書きは考えたが、結局お蔵入り。
素直に「青」を書いた方が早い。

――――――

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所で、異世界から来た厨二ふぁんたじー組織の出先機関、通称「領事館」が、
領事館運営の資金を得る目的で、ゴールデンウィーク限定のヌン活専門店を開いたのですが、
都民から資金を吸い上げる目論見が完全破綻!
逆に大赤字を叩き出してしまったのでした。

お題が「青い青い」なのに大「赤」字。
大丈夫、大丈夫。これからお題回収。
今回のおはなしのはじまりです。

前回投稿分で異世界組織のヌン活専門店の大福の、美味さと甘さと素晴らしさを知ったお題回収役、
次の日も大福を堪能しようとしたところ、
ガッツリ、やっぱり、出禁を食らいまして。

「うわぁぁぁん!ひどい、酷いよぉぉ!」
気合を入れて、正装同然にヌン活専門店の内装にマッチするアンティークコーデをまとって、
清楚なアイラインに控えめアイシャドウをして、
さあ、今日もヌン活、ヌン活!
と、意気込んでいた彼女もまた、異世界の職員。ビジネスネームをドワーフホトといいます。
「すごく美味しい大福だったのに、紅茶との相性だって、バッチリだったのにぃ!
あんまりだよぉ、うわぁぁーん!」

その日もガッツリ、自分の職場とは別の異世界組織が運営する、美味しい美味しいヌン活専門店でヌン活する予定だったドワーフホトは、
その専門店から締め出されて、ガッツリ敵対され、
もはや失意と落胆。絶望のどん底です。

「『美味しいミカン大福見つけたからお土産に買ってくる』って、約束だってしちゃったのにぃ」
どうしよう、どうしよう。
せっかくの親友との大福タイムも、諦めなければなりません。ドワーフホトは大号泣です。
あんまり泣いて泣いて、涙が水たまりになりますので、いずれ青い青い海さえできるでしょう。

「おねーちゃん、おけしょーのおねーちゃん」
ドワーフホトの肩に乗った稲荷の子狐言いました。
「あのね、キツネ、知ってるよ。
おいしいおかし、いっぱい。知ってるよ。
キツネのおともだち、ワガシやさん」

「 え? 」
子狐のお友達が和菓子屋さん?

――数十分後、ドワーフホトと稲荷の子狐は、バスを乗り継いで少し歩いて、
化け狸が人間に化けて営業している、伝統的な和菓子屋さんに来ておりました。

「ありがとう、ありがとう!本当に助かるよ」
ドワーフホトの両手をとって、ずっと握手しておるのは、子狐の親友にして和菓子屋の見習いさん。
去年ようやく自分の作品を、限られたスペースですが、店に置いてもらえるようになりました。
「あのね、実は、初夏に向けてどういうお菓子を作るか、試作しなさいって言われてるんだ!」

いっぱい食べて、意見をちょうだい!
和菓子屋の子狸、目をキラキラさせて、言います。
今まで自分ひとりで作っておったので、アイデアというアイデアが枯渇しておったのです。

そこにお菓子をいっぱい食べていっぱい知恵のあるドワーフホトが来たもので、
ぽんぽこ子狸、それはそれは、もう、それは。
渡りに船、それも泥舟ではなく本当の大船です。
豪華客船が来たような心地でおるのです。

「まず、今まで作ったのを、見てよ」
ぽんぽこ子狸、ドワーフホトに今まで作った、初夏用和菓子の試作品を見せました。
青い波上のねりきり、青くて丸い大福、青い琥珀糖に青い水ようかん。 青い、青い、青い青い。
どうやら「夏」ということで、青い色によって海を表現したかった様子です。
「でも、海ってなかなか、表現しづらくて……」

「ふんふん。なるほど。なるほどぉ」
初夏。初夏ねー。
ドワーフホト、稲荷子狐と一緒に子狸の和菓子を食べながら、これまで食べた「初夏」を辿ります。
「琥珀糖と水ようかん、青すごーくキレイでカワイイと思う。せっかく『初夏』なんだから、この透き通った青でアジサイとかどうかなー」

初夏は海だけじゃないよ。
初夏はきっと、もっといろんなところにあるよ。
ドワーフホトが子狸の、凝り固まった認識を、優しく、穏やかに解してゆきます。
「アジサイはもう、作ったことあるんだ」
アジサイ。アジサイかぁ。
子狸も、これまで作った「初夏」を辿ります。
「でも、そうだな、琥珀糖とか水ようかんとかでは、アジサイ、作ったことなかった」

やってみよう。新しいものが、できるかも。
ぽんぽこ子狸は子狐と、そしてドワーフホトとも一緒になって、新しい試作品の準備を始めます。
「アジサイって、レモンとゆず、どっちだろう」
「うぅーん。白あんと少しのゆずとか、甘めのみたらしにレモンとかも、アリだと思うなぁ」

あーだこーだ、やいのやいの。
ドワーフホトがいっぱい食べて、いっぱい感想をくれるので、子狸の試作制作は絶好調!
そこから生まれた第一号は残念ながら、店主さんから不合格を食らったものの、
それでも、和菓子屋見習いの子狸は、その日の貴重で充実した経験を、いつまでも、いつまでも覚えておったとさ。 おしまい、おしまい。

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