「すれ違う、スレ違う。ゴマを『すれ』、みたいな方なのか機密情報入りUSBを『スれ』、みたいな方の意味のすれ違いなのか。
距離ですれ違ったか心理的にすれ違ったか、言葉の意味が違ったって『すれ違う』もあるわな」
あとはなんだ。「すれ違い通信」?某所在住物書きは去年投稿分を確認しながら、ため息をひとつ。
去年は「スーパーですれ違った職場の先輩が、後輩のためにハロウィンスイーツの下見に来ていた」の話だった。 では今年は?
「……『すれ違う瞳の心理学』?」
突然ぽつり。物語のネタがあまりにも思い浮かばないので、本棚の所蔵タイトルに「すれ違う瞳」をつけて遊び始めたのだ――「すれ違う瞳の戦略図鑑」など、なんとあざとい香りのすることか。
「ふーん……」
意外と面白い。物書きは執筆そっしのけで……
――――――
前回投稿分の続き物。
最近最近の都内某所に、異世界組織から仕事に来ている食いしん坊、もといグルメさんがおりまして、
いろんな美味に触れてきたその女性は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいました。
ところでグルメな異世界職員のドワーフホト、
都内某所の某稲荷神社に住む食いしん坊な稲荷子狐と、食いしん坊という点から仲良し。
前回投稿分でも、前々回投稿分でも、1人と1匹で、美味しい美味しい物語を歩きました。
どうやら今回もドワーフホト、この世界の美味を堪能できるイベントに誘われたようで。
「まるしぇ!まるしぇ!」
それは、稲荷子狐のお家である稲荷神社で、ゴールデンウィークゆえに開催されたグルメマルシェ。
食いしん坊子狐が、ドワーフホトを誘いました。
「おいなりさん、おあげさん、おにく!」
コンコン子狐は狐なので、ジューシーなお肉も甘い野菜も、やわらかい山菜も大好き!
食いしん坊仲間のドワーフホトと一緒に、ぎゃぎゃん、ぎゃぎゃん!尻尾ぶんぶんです。
「縁日ケバブ、さつまいもチップスの稲荷寿司味、たこ焼きにアイスココア、スムージー!」
食いしん坊同盟の同志たる子狐を優しく抱いて、ドワーフホトもマルシェを楽しみます。
美しい花畑をよけて停車するキッチンカーは、全部で5台。テントを使った屋台も見えます。
「カップケーキもあるぅ!ミカンのチーズケーキは、お土産でど〜っさり、買ってかなきゃ!」
ドワーフホトは「その世界」が生み出した幸福と知恵の結晶、その世界の料理が大好き!
グルメ仲間の子狐と一緒に、これください、あれください!口角が上がりっぱなしです。
「むっ。 むむっ」
「あれ、どーしたの、コンちゃん」
「ネズミだ、ネズミだ! ネズミのニオイ!」
「そりゃ、深い森の中の稲荷神社だもん。
野ネズミの1匹も2匹も、いるよぉ」
「ちがう、ちがう!キツネ、しってる。
このニオイ、しらないとこから来たネズミ」
「知らないとこー?」
あー、はい、居るねぇ。
さつまいもチップスのきび砂糖味をポリポリしながら、焦がし醤油やバター等々の良い香りの中を歩いておるドワーフホト、
見知ったアンティークデザインのキッチンカーを視線でチラリ、なぞっておると、
まさしくお題回収、
カラカラ不思議なネズミ車型の専用コーヒー豆焙煎機の中を、無表情で走り続けているハムスターと、すれ違う瞳の虚無っぷりたるや。
ネズミです。たしかに、ネズミです。
実はドワーフホトの部署違いな同僚さん。ビジネスネームを「ムクドリ」といいます。
たしかに「知らない世界から来たネズミ」です。
カラカラ、からから。とっとこムクドリがネズミ車で、自分の能力を開放して、1杯ずつのコーヒー豆をじっくりローストしています。
すれ違う瞳は、何も映していないようです。
「ムッくん、どうしたの、何したの、
いや、『今回』は『何』をかじったの……」
しゅばばっ!
ドワーフホトの腕の中から、稲荷子狐が勢いよく、飛び出してゆきます。
てっきりムクドリに飛びかかると思ったら、別のハムスターを見つけた様子。すっ飛んでゆきます。
「ぎゃーーーー!!」
そのハムスターも、ドワーフホトの同僚でした。
そのハムスターは、ただ稲荷神社の美しい花を、単純に、楽しみたくて来ただけの、ハズでした。
「ネズミ、ネズミ!キツネとあそべッ」
「やめてとめてゆるして!たすけt
あっちょっホントにゆるしt あふん」
ぽぉん! 稲荷子狐の子狐ぱんちに、ハムスターが高くたかく宙を舞います。
この瞳とも、ドワーフホト、すれ違います。
「わぁー。カナリアくん、よく飛んだねぇー」
「感心してないで助けてホトさーん!」
今日も都内某所は平和です。
今日も都内某所は、お題とともに進みます。
ところで、おはなし後半の「ムクドリ」、虚無目でしたが、何があったのでしょう……?
5/5/2025, 3:57:32 AM