かたいなか

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11/12/2024, 2:56:17 AM

「ヒクイドリ、ペンギン、ダチョウ。『飛べない鳥類』は結構多いんだわ」
ニワトリも、「『あんまり』飛べない翼」の持ち主だったな。某所在住物書きは去年の投稿分を確認しながら、ずるずる、ちゅるり。
某チキンのラーメンなど、すすっていた。
個人的に卵は入れぬ。そのまま食いたい。

「クマバチは、『本来なら』、飛べないんだっけ」
でもアレは、翼じゃなく羽だもんな。と物書き。
クマバチは理論上飛べない、という話を聞いた――飛べない翼で、気合で飛んでいるらしい。

――――――

職場の同僚から、ススキまんじゅうってのを貰った。おまんじゅうの上に、白ごまのラインで3本線、ススキが描かれたおまんじゅうだ。
なかなか美味しかったんで、ちょっと貰って、長い仕事上の付き合いの先輩におすそ分け。
今年の2月まで一緒に本店で仕事してたけど、諸事情で、私は支店へ。先輩は本店の別の部屋へ。

ところでその先輩とは、
生活費および食費ならびに料理から生じる水道光熱費の節約を目的として
時折食材だの調理費だの持ち寄ってシェアランチ・シェアディナーなどしておるのですが。
私、値引き品獲得の戦場的時刻に、半額の手羽元と手羽先をゲットする大偉業を成し遂げまして。

早速、先輩のアパートへ、戦利品とススキまんじゅうを届けに向かうのです。
飛べない翼になってしまった鶏さんの、飛べない翼になってしまった手羽元と手羽先を、
ありがたく、美味しく、頂くのです。

「ご要望通り、材料は整えておいた」
私の注文を事前にチャットで聞いてた先輩は、コンソメの粉スープとクラッシュタイプのオートミールと、それから少しの野菜を揃えてくれてた。
「鶏肉を使った、オートミール入りのオニオンコンソメ。随分とピンポイントなオーダーだな?」

部屋には先輩の他に、「エキノコックス・狂犬病対策済」の木札を首からかけた子狐が居て、
先輩の髪の毛でかじかじ、遊んでた。
アパートの近所、稲荷神社の子狐だ。
ロックやセキュリティーはちゃんと整った部屋なのに、何故かそのロックもセキュリティーもスルーして、部屋に入ってくるらしい。
こやーん(コンコンかわいいです)

「去年の今日、そういえば食べたなって」
「『去年の今日』?」
「オニオンとレタスと、鶏と、オートミール入りのコンソメスープ。去年の今日。」
「はぁ」
「それ食べながら、先輩の『名字』と『名前』と、『加元さんとの最終決戦』のハナシをした」
「そうだったか?忘れてしまった」

結構重要な記念日、イベントでしょ。
あの日の手羽元、忘れたとは言わせないけど。
そう思いながら買い物バッグのチャックを開けて、手羽元と手羽先のパックと、それから同僚から分けてもらったススキまんじゅうを出す。
「『また会いましょう』発言から、1年だね」
しんみり。私がひとつ、ため息をついて先輩に、
手羽先のパックを手渡そうとしたら、

突然先輩の髪をかじかじしてた子狐ちゃんがせわしなくなって、鼻を忙しく動かし始めて、
その鼻が手羽先パックに付いた瞬間、
ばくっ!!
と手羽先パックに噛みつき、引ったくり、
バチクソにぶんぶん尻尾を回して遠くにダッシュ。
メッチャくぅくぅきゃうきゃう鳴きながら、
私達から離れたところで、ひとり手羽先(未調理)パーティーを始めてしまった。

「あっ、こら、コンちゃん」
ぎゃぎゃっ、ぎゃん!ぎゃん!!
お肉を取られて牙を立てられたのは、仕方無い。
でもせめて熱は一度通した方が良いと思って、子狐ちゃんからパックを取り上げようとしたら、
私がご馳走を横取りするとでも思ってるらしく、子狐ちゃんは私を威嚇して、後ろ向いて、がぶり。
バチクソ美味しそうに、手羽先に噛みついた。

「コンちゃん。鶏肉は、一度熱通した方が良いよ」
ぎゃぎゃっ、ぎゃぎゃっ!!ぎゃん!!
「ほら、数分焼いてもらって、冷ますだけだから」
ぎゃぁっ!!ぎゃぁっ!!ぎゃうぅっ!!
「コンちゃーん……」
がぶがぶ、かじかじ、くぅくぅ。

「仕方無い。手羽元だけで作ろう」
ああなってしまっては、もう放っておくしかない。
先輩は小さく首を振って、子狐ちゃんの注意が手羽先に向いてる間に、食材を全部キッチンの調理台に避難させて料理を始めた。
「元々のオーダーは、手羽元と野菜とオートミールのオニオンコンソメなんだろう。丁度良いさ」

ことこと、コトコト。小さな鍋の中でお湯が沸く。
手羽元が鍋に入れられて、段々色が変わっていく。
子狐ちゃんは必死に手羽先の、太い骨を噛み砕こうとかじかじしてたけど、
まだそれを砕けるだけの力が無いらしくて、最終的にアゴが疲れちゃったみたいで、
どちゃくそ悲しそうな声して、お耳ペタリで、手羽先のパックを引きずって先輩の足元へ。

食べれない翼を食べれるようにして欲しいんだろう。こやーん(しゃーない)

11/11/2024, 3:27:17 AM

「ススキって、ススキ茶とかいうの、あるのな」
マジかよ。お茶……? 某所在住物書きは「ススキ 食べ方」で検索した結果を見て、ぽつり。
よもや食えるとは思わなかったのだ。
なんなら効用・効能が存在するとも、オマケ情報として秋の七草であったことも。
「まさか食えないだろう」、「よもや◯◯だろう」の先入観でも、調べてみる価値はあるらしい。

「だいたい見頃が9月下旬〜11月上旬らしくて、今頃は見頃の最盛期からは外れてるかもしれない、ってのは、事前情報として持ってた」
それでも「お題」には、向き合わなければならぬ。
「そもそもススキ、最近見たっけ……?」
都会には少々少ないかもしれない。

――――――

今年の3月から一緒の支店で仕事してる付烏月さん、ツウキさんってひとが、
去年か今年のあたりからお菓子作りがマイトレンドになってるらしく、たまに自作のスイーツ持ってきて、小さな支店内でシェアしてくれる。
プチシュー、プチカップケーキ、最近はスイートポテトにバター塩など振ってオシャレ。
支店の常連さんにも好評で、わざわざ私達の昼休憩に、「お菓子と一緒にお茶いかが」って、高価なおティーなど、あるいはおコーヒーなど。

今日の付烏月さんがシェアしてくれたのは、上に白ごまが3つのラインを描いて飾られた、全3種類とおぼしき、ひとくちサイズのおまんじゅう。
菓子折りみたいな箱に並べて、お昼休憩に、
こんなこと言いながら、それをテーブルに置いた。

「すすき〜コウ。すすき〜コウ!」

ススキーコウ is なに……?(素っ頓狂)

「ススキ講っていうの」
俺の父方の、ばーちゃんの集落にあった会合だよ。
付烏月さんは菓子折りモドキから、ぽんぽん、おまんじゅうを取り出して小皿にのせて、言った。
「無礼講とか恵比寿講みたいなやつ。11月のススキが終わる頃、丁度寒くなる時期だから集落の皆で集まって、ススキまんじゅう食べたんだって」

「ススキまんじゅう?」
「ススキまんじゅう」
「コレがススキまんじゅう?」
「きなこ砂糖と、ごまあずきと、栗」

「ススキ味無いの」
「ススキ味は無いよ……」

「ススキまんじゅう」を貰って、見てみる。
言われてみれば、まんじゅうの上に飾られた白ごまのラインの3本線は、微妙にカーブを描いて、
なんとなく、ススキの穂に見えなくもない。

ひとくちで食べられそうだから、食べてみた。
「ススキじゃない」
「ごまあん。こしあんだよ」
すられたゴマの風味が、こしあんを押しのけて香ってきて、バチクソに素朴。シンプル。
できたてホヤホヤだったのか、じんわりした温かさが、口の中に広がった。

「ばーちゃんの、ダムに沈む前の集落では、」
きなこをまとったススキまんじゅうを食べながら、付烏月さんが言った。
「ススキが枯れる時期が近づくと疑心が湧き、心魂の病がはやる、って俗信があったらしくてね。
多分その頃ってゆーと、丁度寒さと寒暖差が顔出してくる頃合いだから、自律神経だのホルモンバランスだのが不安定、ってハナシだろね。
だから集落の皆で集まって、『甘いススキ』を食べて、心の栄養を補充したんだってさ」
面白い風習だよね。 付烏月さんが笑った。

「寒暖差大きくなると落ち込むの、わかる」
「女性は特に、ホルモンバランスに左右されやすいし、統計としてツラい人が多いもんねー」
「ススキ食べると元気になる?」
「ススキ食べても元気になんない……」

「ススキの効能の講義が必要かな?」

ニヨリ。通称「教授支店長」の支店長が、バチクソに良い笑顔して、受講案内のアナウンス。
民俗学系統の、特に民話や俗信のハナシになると、支店長は「教授」に変貌して、
バチクソ長いけど分かりやすいけど、なんなら少し面白いけど、「本ッ当にバチクソ長い」講義を、
ガラガラガラ、支店の物置からホワイトボードを引っ張り出してきて、始めることがある。
「ススキは解毒に効果があるとされているほか、魔除けとして用いられているハナシがあってだな」

起立(昼休憩が短くなります)
礼(教授支店長のハナシをやめさせましょう)
着席(ススキまんじゅう渡して座らせましょう)

「ほら教授。教授支店長。お茶冷めるよ」
「むっ、」
「私、ススキまんじゅう、全部食べちゃうよ」
「むむ……」

はいはい、休憩、休憩。
私と付烏月さんとで、ウチの支店長の長話にシズマリタマエーして、はい講義終了。
お弁当囲んで、新人ちゃんにもススキまんじゅう配って、お茶飲んで。その日はすごく久しぶりに、「ススキ」の概念をたっぷり摂取したと思う。

11/10/2024, 3:48:21 AM

「脳裏をよぎる、脳裏にひらめく、脳裏に焼き付く。……脳裏に『秘める』と言わないんだろうな」
頭の中、心の中。「心に秘める」は言うだろうけれど「脳裏に秘める」は聞かない気がする。
某所在住物書きはネット検索の結果を見ながら、ふと閃いた――まぁニュアンスの関係であろう。
要は、登場人物に何かを閃かせれば、あるいは記憶に刻み込ませれば、それでお題回収完了なのだ。
「で、どうやって?」

良い香り、美味い味、凄惨な光景に事故の瞬間。
「強烈に残る記憶」は多種多彩ながら、物書き本人としては、どれも縁が遠い気がしてならぬ。
「初めて自作した水炊きモドキの味とかどうだ?」
それは最後に七味を入れ過ぎて地獄であった。

――――――

脳裏に浮かんだ物体「A」の名前が、どうしても出てこなくて、ネット検索しても分からない。
そういう経験ありませんか、物書きは「A」に「タオル」が代入されたことがあります。
という脳裏は置いといて、今回は前回投稿分からの続き物。こんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所と、ここではない「どこか」のおはなしです。
「どこか」サイドの方に、「世界線管理局」なんていう厨二設定爆盛りな機関がありました。

そこは異世界間の渡航申請を受理したり、
世界同士の交流や交易なんかを調整したり、
密航・密輸組織や悪質な侵略者を取り締まったり、
滅んだ世界のアイテム・結晶が他の世界に漂着して妙なことになる前にアイテムを収容して回ったり。
つまり世界線管理局は、世界と世界の円滑かつ秩序だった運行のための、歯車だったのでした。

世界線管理局は、すべての世界線に対して、公正公平、平等かつ中立でなければなりません。
世界線管理局に収容された物は一切の偏見無く適切な方法で保管されなければなりませんし、
世界線管理局に迷い込んだ者は一切のヒイキ無く迅速に「在るべき世界」へ送還されねばなりません。
殺伐としてるのです。仕事に癒やしが無いのです。

そんな癒やし無き荒野の職場に先週あたりからモフモフキュートな子狐が巡回を始めまして。

「子狐ちゃん!また勝手に来ちゃったんですか!」
管理局の窓口係、受付対応局員一同は、ジャーキー持ってきたり写真を撮ったり。
「けしからん、実にけしからん!何度も『来てはいけない』と言ったのに。悪い子だ!」
猫吸いならぬ狐吸いをしてる局員も、猫じゃらしで遊んでやる局員も居るありさま。
「僕達が責任持って、全力で接待するからね〜」

ソッコーで上の部署から指導が入りました。
世界線管理局は、すべてに対してヒイキ無く、公平であるよう心がける必要があるのです。
モフモフに心を乱されては、ならぬのです。
数日で子狐巡回の入口には「鍵」が実装され、
管理局の受付は癒やし無き荒野に戻りました、

で終わってしまっては今回のお題が回収できぬ。

「ふふふ。法務の鳥頭め。我等受付を甘く見たな」
管理局の受付に、「コリー」というビジネスネームの女性職員がおり、受付いちのモフモフキュートジャンキー。癒やしに超絶飢えておるのです。
「『就労規則で子狐を接待してはならぬ』というなら、規則およばぬ休日があるじゃないか」

休日を利用して、管理局の懲罰部門にバレぬよう、「完璧な」変装をして都内某所に休日訪問。
ペットショップでジャーキーを買ったり、道行く人間に稲荷神社の場所を聞いたりして、
受付職員コリー、子狐のおうちであるところの、不思議な不思議な稲荷神社に辿り着きました。
「ははは、ふはははは!」

法務部敗れたり! 私達窓口係、受付の局員から癒やしを奪うなど、100天文単位早いのだ!!
受付職員コリー、脳裏で勝利のBGMを盛大に流しながら、稲荷神社の石の階段を、

「よぅ。遅かったな駄犬」

上がりきったところで、赤い鳥居に、自分の職場の上の部署、法務の局員が寄りかかっているのを、
ガッツリ、ばっちり、見かけたのでした。
「世界線管理局、法務部執行課、実働班特殊即応部門、ルリビタキだ。……分かってるよな?」
不敵に笑う法務部局員の顔を見て、コリーの脳裏に、ひとつ閃いたものがありました。
天文単位は時間じゃない。
それは、距離でありました。

法務部局員の隣では、穏やかな微笑した子狐のお母さんが、美しい姿でコリーを見つめておりました。

11/9/2024, 3:22:17 AM

「少し違うが、『積み重ねた努力は裏切らない』に対して、『縦に積み重ねるな。平面に並べろ』っつった人なら知ってるわ」
今日も今日とて難題続き。なんなら自分は実は執筆自体が苦手じゃないか。連日の超苦戦に対し、某所在住物書きは己の得意不得意を疑い始めた。
実は俺、そもそも他人からのお題でハナシ書くの、バチクソ苦手?

「一点突破で努力を積むと、その一点が崩れたら全部やり直しだけど、意味ある努力も意味ない努力も等しくズラッと並べておけば、崩れる心配ないし、いつか『意味ない努力』が役立つ日が来るかも、だったか」
懐かしいな。あの先生、今何してるだろう。
物書きは自室の窓から、空を見上げため息をつく。

――――――

職場で長いこと一緒に仕事してる先輩のアパートに向かってたら、なんか私の推しゲーセンサーにバチクソ反応する妙なひとを見かけた。
「すいません」
黒メガネに白マスク、猫耳帽子ならぬ犬耳帽子。
茶色いオータムコートに手を突っ込んで、
怪しい、あきらかに、あやしい。
「このあたりに、言葉を話す子狐の居る稲荷神社がある筈なのですが、ご存知ありませんか」

「ことばをはなす、こぎつね……?」
その怪しいひとは私が推してるゲームの、
だいたい二次創作界隈でも公式のギャグパートでも、私の推しカプのうちの片方、ルリビタキっていう男性キャラと喧嘩してる、
モフモフキュートが大好きで、モフモフキュートなら敵でも味方でも密航者でも接待しちゃう
組織の受付さんと同じ声で、私に話しかけてきた。
「稲荷神社ならこの道まっすぐ行った先にありますけど、言葉を話す狐はちょっと知りませんね」

「ありがとう。行ってみます」
声が私の推しゲーのキャラに似てる不審者は、私に軽く会釈して、とことこ神社の方に歩いてった。
声しか似てなさそうな不審者に、なんで私の推しゲーセンサーが反応したのか意味不明だ。

誰だったんだろう。あの変人。
「意味ない。考えても、多分、意味ないや」
忘れよう。そうだ、わすれよう。
私は小さく首を振って、先輩のアパートに急いだ。

――「言葉を話す子狐の神社の場所を聞いてくる女性なら、私もつい1時間前、会った」
先輩のアパートに到着すると、先輩は相変わらずの手際の良さで、シェアランチの準備をしてた。
「服装が服装で、質問が質問だったから、知らぬ存ぜぬで通したら、今度は『この近辺に美味いペットフードを取り扱っている、可能ならジャーキーの店は無いか』だとさ。本当に意味がわからない」

私と先輩は、食費と調理費とガス光熱費の節約を目的に、たまにこうしてシェアランチをする。
私が食材だのお金だの持ってきて、先輩がそれと自分の冷蔵庫の中身で料理をする。
『1人分作るのも、2人分作るのも、光熱費だけ見ればほぼ一緒』と、先輩は言う。
おかげで私は今日みたいな、給料日前でお金使いたくない日とか、自律神経等々の影響でガチで体が動かない時なんかは、ラクをさせてもらってる。

今日は100均の鍋キューブを使った、鶏塩そば。
私が買ってきた半額の刻みねぎと半額の刻み柚子が、良い味出します(多分)。
「先輩、ニンニク無いの、ニンニク」
「にんにく?なぜ?」
「味変するときに入れたい。にくにく」

「当店ガーリックの在庫はございません」
「ちぇっ」
「めんつゆか胡椒か七味あたりで我慢してくれ」

おててをパッチン、いただきます。
温かいそば茶と一緒に、鍋キューブの鶏塩味で整えられたおそばを、ちゅるちゅる、ずるずる。
「稲荷神社といえば」
「なぁに」
「妙な男が神社に入っていくのを見た」
「みょーなオトコ?」
「黒いスーツに黒いネクタイ。胸ポケットに青いスズメかシマエナガのようなモチーフのブローチ」

「ルリビタキ。その青い鳥、ルリビタキ」
「るりびたき?」
「ツルカプの、ルの方、私の推しのコスプレ」
「はぁ」

「ちょっと神社行ってくる」
「そば伸びるが?」

ツの方で即興合わせできるかな。
まだその人、神社で撮影してるかな。
私、受付さんに声が似た不審者じゃなくて、ルリビタキ部長コスの人の方と遭遇したかった。
あーだこーだ、云々。
私は先輩と、特に先輩が見たコスプレの人がゲーム内でどういうことをしてる人か話しながら、
ちゅるちゅる、ずるずる。鶏そばを食べた。

何かの関係で、ルリビタキコスのひと、まだ稲荷神社に居るかなって、お昼ご飯の後の散歩を兼ねて先輩と一緒に神社に行ったけど、
参道にも、拝殿にも、お守り売り場にも居なくて、
結局、ルリコス捜索は意味がないことで終わった。

11/8/2024, 3:50:08 AM

「……栗の木の童謡しか思い浮かばねぇ」
大きな栗の木の下?栗拾いのハナシでも書くか?某所在住物書きは、今日も今日とて、難題に挑む受験生の心地でスマホと向き合っている。
あなたとわたし、出題者と回答者。せめてもう少し難易度を下げた出題が欲しいところ。
「まぁ頭のトレーニングにはバチクソ丁度良いけど」

つまり、物語には「あなた」と「わたし」の2名以上が必要というワケだ。物書きはガリガリ頭をかきながら、基本設定を詰めていく。
「……いや『多重人格』だったら1人で事足りる?」
物書きはふと、変わり種だの、からめ手だのを思いつき、しかしその書きづらさに結局挫折した。

――――――

最近最近の都内某所、某アパートの一室、夜。
部屋の主を藤森といい、非常に神妙な顔つきで、
コロコロ、ころころ。ベッドに粘着ロールクリーナーをかけている――前回投稿分に似た構図だ。
部屋の床には一旦退けられて、クリーナーの順番を待っている某アタタカイウォームの毛布。
複数箇所にくっついているのは獣の毛。稲荷寿司の黄土色と白米の白を連想させる狐の夏毛。

毛布の隣では子狐がスケッチブックを首から下げて、マンチカン立ちで静止している。
スケッチブックには桔梗色のクレヨンでぐりぐりされた、判読困難ながらこのような文言。

『いつも あそんでくれて ありがとう』

――今回もさかのぼること、数十分前。
その日も藤森は己の居城であるところのアパートで、翌日の仕事の準備をしていたが、
遅々として進まず、いっそ進み具合について諦めの境地に達しており、その理由が前述の子狐。
どだだどだだ、ばびゅん!
子狐は己の前あんよと後ろあんよでもって、風のように全力疾走し、床を蹴り、跳躍。
藤森の膝の上に1〜2kg程度の己の体重を、
もふん!綺麗に着地させて即座に反転。
藤森に背中を向けて、尻尾をびたんびたん。
前方へ投げてほしいのだ。

藤森は虚無の目で、ぽぉん!子狐を放り投げる。
夏毛の抜けきらぬモフモフは美しい弧を描き、毛布で温かく整えられたベッドに着地。
子狐がまた全力で、藤森の膝に戻る。
藤森は子狐を再度、再度、さいど。ベッドへ放る。

ベッド、膝、ベッド、膝。
「もっかい、もっかい!」
あなたとわたし、わたしからあなたへ。
前回投稿分で「人の部屋のクッションを破壊しても、良いことは何も無い」と学習した子狐は、
物を破壊しない方法であれば、この部屋の主は己と問題無く遊んでくれるだろうと認識。
「もっかぁあい!!」
ベッドに放り投げられる浮遊感と、ベッドに着地する弾力性を、ことさらに気に入ったのだろう。
子狐は藤森に何度も、何度も、なんども。この浮遊と落下のアトラクションをせがんだ。

これで20回目である。

「こぎつね。そろそろ、私も仕事をしたい」
21、22、23。
投げて、戻ってきて、投げて、戻ってきて。
あなたとわたし、あなたがわたしのもとへ。藤森のルームウェアは夏毛の抜け残りでいっぱい。
ベッドも同様の惨事である――寝る前にコロコロの往復が必要となるだろう。
今回はクッションを破壊されて中から柔らかい雨を降らされているワケではないので、前回の掃除よりは、まぁまぁ、ラクでは、あるかもしれない。

「しごと」
くわわっ。くわぅ。
日本語を話すコンコン子狐、こっくり首を傾けて、
「しごとは、ショクバ、職場でするものだって、ととさん言ってた。ここ、ショクバじゃない!
だから、しごとない。しごといらない」
最強の子狐論理で、藤森を論破してしまった。
「もっかい、もっかい!ベッドに、なげて!」
子狐の2個の真ん丸宝石が、コヤンと光った。

藤森は深い、長いため息を吐いたが、表情は穏やかで、そこには少しの微笑があった。
反論を断念したのだ。 子狐の遊びざかりに藤森自身の幼少期を――田舎の山野で駆け回っていた頃のやんちゃを見て、懐かしんだ結果でもあった。

「そうだな」
再開される「あなたとわたし」、ベッドと膝。
「そうだ。 ここは、職場ではない」
防音防振の床を、子狐が駆け抜け、藤森の膝に戻ってきて、ベッドへと離陸――着地。

最終的に藤森が子狐を30回ベッドに投げて、子狐が満足したところで、物語は冒頭へ。
コロコロ、ころころ。粘着ロールクリーナーによる掃除が開始されることになる。

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