「ヒクイドリ、ペンギン、ダチョウ。『飛べない鳥類』は結構多いんだわ」
ニワトリも、「『あんまり』飛べない翼」の持ち主だったな。某所在住物書きは去年の投稿分を確認しながら、ずるずる、ちゅるり。
某チキンのラーメンなど、すすっていた。
個人的に卵は入れぬ。そのまま食いたい。
「クマバチは、『本来なら』、飛べないんだっけ」
でもアレは、翼じゃなく羽だもんな。と物書き。
クマバチは理論上飛べない、という話を聞いた――飛べない翼で、気合で飛んでいるらしい。
――――――
職場の同僚から、ススキまんじゅうってのを貰った。おまんじゅうの上に、白ごまのラインで3本線、ススキが描かれたおまんじゅうだ。
なかなか美味しかったんで、ちょっと貰って、長い仕事上の付き合いの先輩におすそ分け。
今年の2月まで一緒に本店で仕事してたけど、諸事情で、私は支店へ。先輩は本店の別の部屋へ。
ところでその先輩とは、
生活費および食費ならびに料理から生じる水道光熱費の節約を目的として
時折食材だの調理費だの持ち寄ってシェアランチ・シェアディナーなどしておるのですが。
私、値引き品獲得の戦場的時刻に、半額の手羽元と手羽先をゲットする大偉業を成し遂げまして。
早速、先輩のアパートへ、戦利品とススキまんじゅうを届けに向かうのです。
飛べない翼になってしまった鶏さんの、飛べない翼になってしまった手羽元と手羽先を、
ありがたく、美味しく、頂くのです。
「ご要望通り、材料は整えておいた」
私の注文を事前にチャットで聞いてた先輩は、コンソメの粉スープとクラッシュタイプのオートミールと、それから少しの野菜を揃えてくれてた。
「鶏肉を使った、オートミール入りのオニオンコンソメ。随分とピンポイントなオーダーだな?」
部屋には先輩の他に、「エキノコックス・狂犬病対策済」の木札を首からかけた子狐が居て、
先輩の髪の毛でかじかじ、遊んでた。
アパートの近所、稲荷神社の子狐だ。
ロックやセキュリティーはちゃんと整った部屋なのに、何故かそのロックもセキュリティーもスルーして、部屋に入ってくるらしい。
こやーん(コンコンかわいいです)
「去年の今日、そういえば食べたなって」
「『去年の今日』?」
「オニオンとレタスと、鶏と、オートミール入りのコンソメスープ。去年の今日。」
「はぁ」
「それ食べながら、先輩の『名字』と『名前』と、『加元さんとの最終決戦』のハナシをした」
「そうだったか?忘れてしまった」
結構重要な記念日、イベントでしょ。
あの日の手羽元、忘れたとは言わせないけど。
そう思いながら買い物バッグのチャックを開けて、手羽元と手羽先のパックと、それから同僚から分けてもらったススキまんじゅうを出す。
「『また会いましょう』発言から、1年だね」
しんみり。私がひとつ、ため息をついて先輩に、
手羽先のパックを手渡そうとしたら、
突然先輩の髪をかじかじしてた子狐ちゃんがせわしなくなって、鼻を忙しく動かし始めて、
その鼻が手羽先パックに付いた瞬間、
ばくっ!!
と手羽先パックに噛みつき、引ったくり、
バチクソにぶんぶん尻尾を回して遠くにダッシュ。
メッチャくぅくぅきゃうきゃう鳴きながら、
私達から離れたところで、ひとり手羽先(未調理)パーティーを始めてしまった。
「あっ、こら、コンちゃん」
ぎゃぎゃっ、ぎゃん!ぎゃん!!
お肉を取られて牙を立てられたのは、仕方無い。
でもせめて熱は一度通した方が良いと思って、子狐ちゃんからパックを取り上げようとしたら、
私がご馳走を横取りするとでも思ってるらしく、子狐ちゃんは私を威嚇して、後ろ向いて、がぶり。
バチクソ美味しそうに、手羽先に噛みついた。
「コンちゃん。鶏肉は、一度熱通した方が良いよ」
ぎゃぎゃっ、ぎゃぎゃっ!!ぎゃん!!
「ほら、数分焼いてもらって、冷ますだけだから」
ぎゃぁっ!!ぎゃぁっ!!ぎゃうぅっ!!
「コンちゃーん……」
がぶがぶ、かじかじ、くぅくぅ。
「仕方無い。手羽元だけで作ろう」
ああなってしまっては、もう放っておくしかない。
先輩は小さく首を振って、子狐ちゃんの注意が手羽先に向いてる間に、食材を全部キッチンの調理台に避難させて料理を始めた。
「元々のオーダーは、手羽元と野菜とオートミールのオニオンコンソメなんだろう。丁度良いさ」
ことこと、コトコト。小さな鍋の中でお湯が沸く。
手羽元が鍋に入れられて、段々色が変わっていく。
子狐ちゃんは必死に手羽先の、太い骨を噛み砕こうとかじかじしてたけど、
まだそれを砕けるだけの力が無いらしくて、最終的にアゴが疲れちゃったみたいで、
どちゃくそ悲しそうな声して、お耳ペタリで、手羽先のパックを引きずって先輩の足元へ。
食べれない翼を食べれるようにして欲しいんだろう。こやーん(しゃーない)
11/12/2024, 2:56:17 AM