かたいなか

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3/26/2024, 4:18:59 AM

「『大人には、好きだけど控える食い物と、好きじゃないのにやってる仕事がある』。
……去年書いたネタはコレだったわ」
塩分高いラーメン好きだけどさ。糖分いっぱいのケーキも好きだけどさ。「数値」よな。
某所在住物書きは低糖質チョコの栄養成分表示をじっと見て、ため息を吐いた。
1袋35g入り、糖質7gである。これは低い。

「……やっぱ美味は糖分と塩分よ」
コレの吸収を阻害するのが、糖分は■■■阻害薬、塩分なら市販品のサプリとかな。
物書きの視線はチョコから離れ、キューブタイプの鍋つゆの素、その成分表示へ。
1人前、食塩相当量約3gである。少し高い。

――――――

実は先日、6日くらい前、具体的には3月20日頃、枕とスプリングマットレスがあんまりにも合わなくて頭痛と頭の圧迫感とが酷い域だった。
眠気が酷いのに寝れなくて、ほぼ気絶したように短時間寝て、目が覚めてやっぱり眠い。
解決してくれたのが24時間営業の雑貨屋さんのオーダーメイド枕と、深夜対応可能の某病院の漢方医さんと、その漢方医さんの奥様が私のアパートに届けてくれたリラックスできるハーブティー。

昨日の帰宅時間の数十分は、お礼まわりに使った。
雑貨屋さんにはバチクソ深く感謝してきた。
漢方医さんの奥様がやってる、稲荷神社近くのお茶っ葉屋さんにも顔を出して、お礼と、旦那さんにもヨロシクお伝え下さいって言ってきた。
……そしたら稲荷神社のお茶っ葉屋さんからバチクソおっきいフキをおすそ分けされた(ナンデ?)

『お得意様のご実家から、どっさり頂きまして』
漢方医さんの奥さん、つまりお茶っ葉屋さんの店主さんが、紙で巻き包装したフキを持って私に言った。
『季節の初物には、福が宿ると申します。稲荷神社で招福のご祈祷も済ませてありますので、どうぞ、召し上がってください』
肉詰めが美味でしたよ。とのことだった。

それが、昨晩。
私はフキは、嫌いも好きも、どっちでもなかった。
厳密には、限りなく好き寄りの普通だった。

「――で、嫌いじゃない、好きじゃないのに、
『ザ・ビッグラブ!!』みたいなデカさのフキを、数本貰って来ちゃったワケ」
「それで今日の後輩ちゃんのお弁当、フキ三昧になったワケだ。おけ把握」

で、今日。昼休憩。
3月からお世話になってるバチクソにチルい支店。妙なお客さんも、怖いお客さんも来ないし、1日に10人も来れば「今日は忙しかったね」のそこ。
私と同じく3月にここに来た「自称旧姓附子山」の「謎の男」、付烏月さん、ツウキさんが、
私のフキの肉詰めと油炒めとおひたしと、ともかくフキ三昧なお弁当を見て、すんごく目をキラキラさせて自家製焼き豚とのトレードを申し出てきた。
「本物の旧姓附子山」、藤森先輩の故郷で肉詰めを食べて以来、大好きらしい。

嫌いじゃない、かつ好きじゃないのに食べるより、
付烏月さんがメッチャ幸せに食べる方が、きっとフキも山菜冥利だと思った。
で、「実はね」って経緯を説明したのだ。

「付け焼き刃附子山の〜、付け焼き〜Tipsぅー」
「フキの調理法ですか付烏月さん」
「附子山だよ後輩ちゃん。俺、ブシヤマ」
「で、なに、ツウキさん」

「『好きじゃないのに→好きになってた』ってパターンは、例外を除いて、回数をこなすことが重要だよ。
恋愛に関して言えば、その例外は『吊り橋効果』とか、『犯人相手に恋しちゃったんだ』とかだよ」
「それとフキと、どう関係が?」

「意外と後輩ちゃんも、別にフキが嫌いってワケじゃないなら、好きな人とお気に入りの場所で、回数こなしてフキ料理食べたら、『好きじゃないのに→好きになってた』するかも」
「はぁ」
「たとえば藤森と一緒に土曜のホテルビュッフェ」
「先輩とは恋仲じゃないし。ただの先輩後輩だし」
「なお、嗅覚はすごく記憶と直結しやすいよ。多分後輩ちゃんは、藤森の部屋の茶香炉の香りを覚」
「だから。ただの先輩後輩だし」

あーだこーだ、云々。
付烏月さんのイジリを聞きながら、付烏月さんのお弁当にフキの肉詰めを渡して、付烏月さんのお弁当から自家製焼き豚を貰って。
大好きなフキを、付烏月さんは幸せそうに食べた。

好きじゃないのに、好きになってた。
付烏月さんのトリビアなTipsが、別にフキとも何とも関係無いけど、心の片隅に引っかかる。
藤森先輩の「元恋人」、加元さんっていうんだけど、
先輩の心をズッタズタにしておきながら今更その先輩追っかけてウチに就職してきた加元さんも、
つまり、要するに、「好きじゃないのに→」のタイプだったんだろうか。

3/25/2024, 2:34:24 AM

「『ところにより雨』、『いつまでも降り止まない、雨』、『梅雨』に『雨に佇む』、それから『通り雨』と『柔らかい雨』。『雨』って確実にお題に明記されてるやつだけでも、少なくとも6個あるんだわ……」
「空が泣く」とかも追加すれば、もう少し増えるな。
某所在住物書きは過去投稿分から「雨」を検索しながら、窓の外を見た――東京は雨雲がかかっている。
記憶が正しければ、「雲」も「入道雲」が6月のお題として出題される筈であった。

「経験として、『ザ・雨!』を初手で出し過ぎると、後の方でネタに困る」
物書きは言った。
「……事実去年の11月頃ネタを探して頭抱えた」

――――――

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
ぐずぐず雨雲がかかっては、ポツポツところにより雨の降る、ちょっとしんみりな空模様、
某稲荷神社敷地内の広い広いお庭では、神社在住の子狐が、そこそこ大きめのフキの傘を、噛んでぶんぶん振り回して、楽しく遊んでおりました。
コンコン子狐は不思議な狐。人間に化ける妙技を持つ、化け狐の末裔でして、神社敷地内の一軒家に家族で仲良く住んでおるのでした。
住民票もあります。お母さん狐もお父さん狐も労働して納税しています。なんという申し訳程度のリアル。
まぁ、細かいことは気にしないのです。

ところで子狐、最近知ったハナシなのですが、
世の中には、子狐の神社に生えているそれより、もっともっと大きなフキがあるそうです。
アキタブキ、それから、ラワンブキというそうです。
背丈は人間に化けたお父さん狐より高く、茎は人間に化けたお母さん狐の手首くらいもあるそうです。

本当かなぁ。コンコン子狐、神社のフキをカジカジしながら首を傾けます。
なんで東京には生えてないんだろう。コンコン子狐、神社のフキをブンブンしながら頭で考えます。
そんな大きなフキがあれば、きっと子狐の大好きな、フキと油揚げとお肉の炒め物はどっさりできるし、
余った葉っぱなどは、傘にもピクニックの敷き物にもなるでしょう。

でも、東京には生えてないのです。
東京生まれの東京育ち、東京から一度も外に出たことのない子狐は、それを見たことがないのです。
「食べたいなぁ。たべたいなぁ」
コンコン子狐言いました。
「かかさんが作ってくれる、フキとお揚げさんとお肉の炒め物、どっさり、食べたいなぁ」
個人的にはお肉は鶏そぼろがマッチです。
でもお母さん狐は、豚ミンチと、たまにコロっと小さいサイコロお肉が有る方が、好きなようです。
まぁ、個々の好みは気にしないのです。

――「……私の実家では、炒め物より肉詰めがメジャーだった気がする」
ところにより雨のぐずつく空の下、今日は子狐の大好きな「おとくいさん」が、稲荷神社にご参拝。
神社のご近所でお母さん狐が店主をしている、お茶っ葉屋さんに寄った帰り、とのこと。
この雪国出身者はお茶っ葉屋さんの常連さん、お得意様なのです。

「ある程度の長さに切って、だいたい豚だったかな、ミンチを詰めてコトコト煮るんだ」
子狐のおとくいさん、あごに親指と人差し指そえて、ぐずつく空を見上げながら、言いました。
「醤油味だった。美味い」

「フキに肉詰めなんて、ちょっとしか入らないよ」
「そうでもない。フキの中に、丁度良い空洞があるんだ。そこに詰める」
「フキのクードーなんて、小っちゃいよ」
「そうでもないんだ。寒い地域だからなのか、あっちこっちのフキノトウが放ったらかしだからなのか、詳しい理由は知らないが、私の地元のフキとフキノトウは、そこそこ大きい」

「アキタブキだ!」
「えっ?」
「傘だ!ピクニックの敷き物だ!どっさりのフキとお揚げさんとお肉の炒め物だ!ちょーだい!」
「あのな子狐。私の故郷は雪国だ。多分向こうは、まだフキノトウのトウ立ちすらしていない」
「アキタブキ!ラワンブキ!ちょーだい!」
「こぎつね……」

コンコンコン、コンコンコン。
ところにより雨のぐずつく空とは正反対。キラキラおめめを更に輝かせて、子狐、困り顔のお得意様な参拝者さんに尻尾を振ります
お得意様はため息ひとつ。実家に、故郷のフキを「少しだけ」、時期になったら送ってほしいと連絡。

しばらくしまして子狐の住む稲荷神社に、雪国の大きく立派なフキが、田舎クォンティティーとして「少し」届きましたが、
やれ傘だ、ピクニックの敷き物だと楽しみにしていたフキの葉っぱは全部バッサリ除かれておりまして、
その点に関してだけは、ところによりどころか線状降水帯のごとく、子狐、わんわん涙を流しましたとさ。

3/24/2024, 3:38:24 AM

「去年もいったと思うけど、やっぱ俺には『特別な存在』っつったら某『彼もまた』から始まる某キャンディーなんよ……」
まぁ、年齢バレるし、ゆえに俺の執筆ネタの引き出しが固くて少ない理由も説明ついちまうけどさ。
ソレしか思いつかねぇっつったら思いつかねぇんだから、仕方ねぇよな。
某所在住物書きは昔々の動画を観ながら呟いた。
そういえば元ネタを食ったことが無い。

「キャンディーっつったら、ガキの頃ずっと食ってた、けど今はどこにも売ってねぇのど飴があってよ」
物書きは言った。
「EXじゃねぇ方の、かつ某UMAみたいな名前の会社から出てたやつ。……今でも味よく覚えてるわ」
物書きにとっての「特別なキャンディー」といえば、すなわちそれであった。

――――――

最近最近の都内某所、某特定の作品群に対する監督シリーズのファンが集うカフェ、夜。
その日の訃報ひとつが発端で、SNSにより急きょ非公式な「偲ぶ会」の開催が告知・拡散され、
席は個室から相席まで満員御礼、
巨大なスクリーンには、訃報届いた声優の出演作が、アニメのみならず、ジャンルもシリーズも超えた特撮まで引っ張り出して、映し出されている。
店主はわざわざ版権元に電話をかけ、許可をとりつけ、後日使用料の振り込みまで行うという。

客の誰もがほぼ初対面。
私のデビューは◯歳だった、僕のファーストコンタクトは◯◯だった、なんなら俺の自己紹介の鉄板はあのキャラの声真似だ、等々、等々。
それぞれが、それぞれの弔いを共有している。

店内に、特撮ファンでも某監督作品群マニアでもない、別のゲームに対する元二次創作作家、昔々物書き乙女であった女性が2人、紛れていた。
片や元夢物語案内人、片や薔薇物語作家。
薔薇の物書き乙女が夢の物書き乙女を誘ったのだ。

「私の作風の一番の転機が、『コレ』だったの」
二次創作の執筆と公開から離れて数年。かつての薔薇物語作家がスクリーンを観ながら、ポツリ。
「今でも覚えてる。父さんが根っからのファンだったの。アンタとの相互小説書いてる丁度その頃だった」
そうそう、ここ、このシーン。
薔薇乙女がスクリーンを指さす。
映っていたのは劇中のヒロインが飛空艇内の調理場を戦場として、料理を次々整えている場面。
この後の食事風景は飯テロで有名である。

「『美味しそう』って感想しか無かった」
「わかる」
「でも父さんがね、バチクソにドヤ顔で言ったの。
『必ず食事シーンがある』、『必ずコケる』、それから『歩き方だけでその人の年齢とおおまかな職業と、感情が分かる』って」
「はぁ」

「メインキャラ以外、数秒しか登場しない人にも、その映画の『前』と『後』がある。
本当の名作は、その世界だけでなく、世界に生きる人の生活や息遣いまで見える映画だってさ」
「完全にそっちのお父さんの解釈と感想だね」
「でも、なんかハッとしたの。
メインキャラにも子供時代が、モブキャラにも『その後』の生活があるんだって」

それから私の作風が変わったの。
それから、コレも含めてこの監督の映画が、私の執筆スタイルの目標として、理想として、
すごく、「特別な存在」になったの。
かつての薔薇物語作家はスクリーンを見つめたまま、視線を離さない。
劇中モチーフの木樽型コップに口をつけ、傾けて、中のジンジャーハイによって喉を湿らせるばかり。

「それじゃあ、私と相互してからそっちのサイトの小説にモブキャラが増えたのも、カプの子供時代とか食事風景とかのネタが増えたのも、」
「そっちの片思いリンク先の作風に引っ張られたんじゃなくて、父さんのドヤ顔トリビアが理由」
「見向きもしなかった例の厨二病ロボットっぽいアニメを観始めたのも、」
「『物語の中の日常風景がバチクソ丁寧に描かれてる』ってのが、すごく似てたから」

「特別な目標になったワケだ」
「そう。特別な存在になってた」

懐かしいね。
一緒に個人サイトで相互結んで一緒に小説書いて、なんやかんやで二次から離れて、
あれから、もう何年経ったろうね。
かつての物書き乙女ふたりは、互いにカフェの一角を、すなわちアニメ映画を上映しているスクリーンを見つめて、酒をあおる。
その後カフェの中は劇中飯の話題となり、どれが一番美味いかでモメにモメて、プチ騒動となったが、
詳細を記すと長くなるので、推して知るのみとする。

3/23/2024, 4:42:03 AM

「おろかなこと、無益なこと、度が過ぎることに用を為さないこと。……『バカ』にも色々あんのな」
ネット情報では、一部のセンダングサとかひっつき虫のオオオナモミとかを「バカ」って呼ぶ地域もあるのか。某所在住物書きはネットの検索結果を辿りながらひとつ閃き、数秒で諦めた。
「ひっつき虫とも呼ばれる『バカ』みたいに、近くを通るとピョンとくっついてくる子猫あるいは子犬」
物書きはため息を吐いた。猫犬カフェであろうか。

「『バカ』って通称の魚もいる」
植物を元ネタとした物語に困難を感じた物書きは、検索の幅を植物から食い物へ変更。
「調理法は、この地域で『バカ』って言われてる魚や貝『みたい』なカンジで大丈夫」
再度ため息。「バカ」の調理法が分からない。

――――――

東京の今日は、お昼過ぎまで雨だ。
そろそろ花粉症のピークはスギからヒノキに変わる頃で、でも雨だから飛散量は比較的少なくて、
私はさいわい、スギもヒノキも平気。

そのかわり天気と気圧とホルモンバランスが天敵。

スギでもヒノキでもなく、イネの花粉症持ちな前係長は、バカみたいに出てくる鼻水に対処しながら、
アナタ、別に毎年毎年箱ティッシュが半日で無くなるでもないんだから、マシでしょ、
なんてネチネチ言ってきたことがあった。
ティッシュにお金はかからないけど漢方とかお薬とかで生活費が消えるんだ。

ブタクサの花粉症持ちでスイカが食べられないって清掃員さんは、バカみたいに鼻がつまるらしくて、
キミは良いねぇ、花粉の時期にその花粉の飛散状況をいちいち気にしなくても、外に出られるんだから
なんて花粉対策用メガネを直しながら言ってた。
花粉の飛散状況はあんまり気にしてないけど、気圧配置とかは梅雨の時期バチクソ気になるんだ。

北海道でわりとメジャーなシラカバ花粉症が東京で猛威をふるうことはすごく少ないらしいけど、
その花粉症のせいでイチゴが食べられなくなったっていう相互さんは、バカみたいにでもないけど、
多分私達の苦労って、症状持ち同士、当事者同士でしか分かりあえないよね
なんて、ポロリため息を吐きながら言ってた。
……ホントそれ(共感と同意)

「付烏月さんはさ、何か、花粉症あるの」
「附子山だよ後輩ちゃん。俺、ブシヤマ」
「ヒノキとか大丈夫なのツウキさん」
「スギ持ちだったよん。舌下療法で完治したけど」

「そんな効くの?」
「運が良かっただけかなぁ。完治数割、改善大半、全然効果ナシも数割だってさ」

後輩ちゃんの体調不良も、いつか、舌下免疫療法みたいに完治できる時代が来ればいいね。
午前営業で終わった支店で、片付けと退勤の準備をしながら、付烏月さんが私に言った。
天気とホルモンバランスの関係で、体があんまり思うように動かない私に代わって、私が使ったコーヒーのマグカップとかお菓子の小皿とかは、付烏月さんが全部洗ってくれた。

「昼ごはん、どーする?作れる?出前?」
「今日はウバろうかなって」
「俺でよけりゃ作るよ?藤森からも、『あいつは苦しいとき、倦怠感で本当に体が動かなくなってしまうから』ってハナシは聞いてるし」
「ウバるんでホントにダイジョブです付烏月さん」

ぽんぽんぽん。タブレットの電源落としてデスクに置いて、ノートのタスクもAlt+F4の連打で強制終了。
支店の照明も全部消したら、最後に一度だけ店内を見渡して今日の仕事はおしまい。

「そういえば、例の稲荷神社の茶っ葉屋さん、ご近所の和菓子屋さんとコラボって、期間限定で桜スイーツと桜のお茶入れたらしいよん」
「マジ」
「藤森によると、『桜の花びらを仕込んだローシュガーのイチゴ大福が美味かった』らしいよ」
「情報あざすです附子山さん」

カギかけて、セキュリティーをオンにして、
じゃ、また月曜、また月曜。
ちょっとスマホいじってソシャゲのデイリーこなしてから、 さぁ、帰ろうって顔を上げて、
なお降り続いてる雨に対して、今更気づいた。

私、ロッカーから、傘持って来るの忘れた。
(まさしくバカみたい)

3/22/2024, 4:12:33 AM

「花にいくつか『二人』があるわ。
今の時期ならニリンソウとか、フタリシズカとか」
ニリンソウの花言葉は「友達」、「協力」、「ずっと離れない」等々、フタリシズカは「いつまでも一緒に」だとさ。某所在住物書きはネットで花の画像をスワイプしながら、他の「二人」を探していた。

ニリンソウが1株だけ、ふたつの花をつけてぽつんと朝日に当たっているのは、ノスタルジックであろう。
フタリシズカは見たことがない。ただ、某大ヒットオープンワールドゲーに登場する、例の名前が似ている「しずか」とは、まったくの別物らしい。
ぼっちか。物書きは呟いた。こちとら生粋の一人ぼっちだが、二人ぼっちへの憧れは無い――断じて。

――――――

都内某所、某職場の某支店、昼休憩。
かつての物書き乙女、元夢物語案内人の現社会人は、睡眠負債返済の一環として仮眠をとっている最中、
己の4日前の行動ゆえにひとつ、幸福なような、あるいは黒歴史のような夢を見た。

――すなわち、このような夢であった。
会員制レストラン、最高ランクの個室。
クリスタルのシャンデリアが、落ち着いた明度と彩度を伴って、真下の男女二人ぼっちに対し、
平等に、穏やかに、光を注いでいる。

『単刀直入に言う』
男性側が言った。それは乙女の架空の推しであった。
かつて個人開設のホームページが全盛であった頃、ハマったゲームに己の分身を付け足して、
主食の夢物語も、いわゆる非公式メジャーカップリングとされている薔薇物語も、この元物書き乙女は双方を楽しんだものであった。
『君の力を貸してほしい。私の地位と経済力の範囲であれば、報酬はいくらでも相談に応じる』

何故今更二次創作的な夢を見ているのだろう。
多分4日前投稿分の作品が理由です。
要するに発端は何であろう。
同人時代に配布されたという公式シークレットノベルが手に入り、それを読み倒したからです。
詳しいことは過去作参照が面倒なので気にしない。

で、夢の情景に戻る。
ダークブラウンの円卓に、向かい合って座るふたり。
片や黒、所属を示す制服にロングジャケット。
片や白、着慣れぬ様子のワンピースにストール。
芸術的に整えられた肉料理と魚料理が、エディブルフラワーのベジサラダをまとい、
スパークリングのグラスとデカンタ、それから3色のプチマカロンの隣に控える。
カチャッ、……カチッ。
フォークとナイフと料理皿の間で、つつましく心地よい接触音が、己の要求を静かに提示する男の声と、その背後で控えめにささやく弦楽四重奏に混じった。

わぁ。 私、昔こういうの書いてたんだ。
傍観者としての元物書き乙女は、夢の登場人物としての元物書き乙女をジト見して、口をパックリ開けた。

『金が必要であれば、管理局の平社員の給料10年分程度を、一括で。地位が欲しければ、私の口利きが可能な場所に限られるが、ある程度。世界一の宝石を手元に置きたければ、それも良いだろう。
……復讐や、仕返しをしたい相手が居るなら、君の望む範囲と程度で、君のシナリオに添えるように』
男の独白は続く。
今思えば「彼」は「こういうキャラ」ではない。
むしろ最近登場した別キャラがこれに該当する。
まぁ気にしない。
『どうしても探し出して、取り戻したいものがあるんだ。その探しものが終わるまでの間で構わない。その後の君の人生まで、拘束しようとは思わない。
どうか……どうか。私に、君の数年数ヶ月を、くれ』

たのむ。 二人ぼっちの室内で目を閉じ、うつむいて黙り、女性の良い返事を乞い願う彼は、
『え、っと』
彼女の戸惑いの声を、祈る心地で聞き、
『……あの、地位とか、仕返しとか、別に良いので』
続く言葉を悪く予想して、更に強く目をつぶり、
『ひとまず、普通の婚姻届と普通の指輪、欲しいんですけど。良いですか』

『えっ?』
予想外の要求に、ぱっ、と顔を上げ、驚きと困惑が差したそれで、彼女を見詰めた。
7、8秒間フリーズし、口が開きっぱなしになる。
過負荷の思考リソースを無理矢理働かせて、どうにかこうにか意味にたどり着くと――

「後輩ちゃーん、そろそろ休憩終わるよん」
夢の中の架空な推しが何か返事を寄越す前に肩をポンポン叩かれて起こされた。
「支店長は今本店だし、他の人も外回り中だから、二人ぼっちだよ。俺ひとりじゃお仕事困るよ」
起きて起きてー。
元物書き乙女の同僚たる彼は、彼女が何の夢を見ているか知りもせず、ただ乙女にコーヒーとプチマカロンの3色を差し出した。

「ふたりぼっち、」
「そう、二人ぼっち」
「もっかい寝たいような、ハズくて無理なような」
「ゴメンよく分かんない」
「だいじょぶ分かんなくていい……」

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