かたいなか

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「『大人には、好きだけど控える食い物と、好きじゃないのにやってる仕事がある』。
……去年書いたネタはコレだったわ」
塩分高いラーメン好きだけどさ。糖分いっぱいのケーキも好きだけどさ。「数値」よな。
某所在住物書きは低糖質チョコの栄養成分表示をじっと見て、ため息を吐いた。
1袋35g入り、糖質7gである。これは低い。

「……やっぱ美味は糖分と塩分よ」
コレの吸収を阻害するのが、糖分は■■■阻害薬、塩分なら市販品のサプリとかな。
物書きの視線はチョコから離れ、キューブタイプの鍋つゆの素、その成分表示へ。
1人前、食塩相当量約3gである。少し高い。

――――――

実は先日、6日くらい前、具体的には3月20日頃、枕とスプリングマットレスがあんまりにも合わなくて頭痛と頭の圧迫感とが酷い域だった。
眠気が酷いのに寝れなくて、ほぼ気絶したように短時間寝て、目が覚めてやっぱり眠い。
解決してくれたのが24時間営業の雑貨屋さんのオーダーメイド枕と、深夜対応可能の某病院の漢方医さんと、その漢方医さんの奥様が私のアパートに届けてくれたリラックスできるハーブティー。

昨日の帰宅時間の数十分は、お礼まわりに使った。
雑貨屋さんにはバチクソ深く感謝してきた。
漢方医さんの奥様がやってる、稲荷神社近くのお茶っ葉屋さんにも顔を出して、お礼と、旦那さんにもヨロシクお伝え下さいって言ってきた。
……そしたら稲荷神社のお茶っ葉屋さんからバチクソおっきいフキをおすそ分けされた(ナンデ?)

『お得意様のご実家から、どっさり頂きまして』
漢方医さんの奥さん、つまりお茶っ葉屋さんの店主さんが、紙で巻き包装したフキを持って私に言った。
『季節の初物には、福が宿ると申します。稲荷神社で招福のご祈祷も済ませてありますので、どうぞ、召し上がってください』
肉詰めが美味でしたよ。とのことだった。

それが、昨晩。
私はフキは、嫌いも好きも、どっちでもなかった。
厳密には、限りなく好き寄りの普通だった。

「――で、嫌いじゃない、好きじゃないのに、
『ザ・ビッグラブ!!』みたいなデカさのフキを、数本貰って来ちゃったワケ」
「それで今日の後輩ちゃんのお弁当、フキ三昧になったワケだ。おけ把握」

で、今日。昼休憩。
3月からお世話になってるバチクソにチルい支店。妙なお客さんも、怖いお客さんも来ないし、1日に10人も来れば「今日は忙しかったね」のそこ。
私と同じく3月にここに来た「自称旧姓附子山」の「謎の男」、付烏月さん、ツウキさんが、
私のフキの肉詰めと油炒めとおひたしと、ともかくフキ三昧なお弁当を見て、すんごく目をキラキラさせて自家製焼き豚とのトレードを申し出てきた。
「本物の旧姓附子山」、藤森先輩の故郷で肉詰めを食べて以来、大好きらしい。

嫌いじゃない、かつ好きじゃないのに食べるより、
付烏月さんがメッチャ幸せに食べる方が、きっとフキも山菜冥利だと思った。
で、「実はね」って経緯を説明したのだ。

「付け焼き刃附子山の〜、付け焼き〜Tipsぅー」
「フキの調理法ですか付烏月さん」
「附子山だよ後輩ちゃん。俺、ブシヤマ」
「で、なに、ツウキさん」

「『好きじゃないのに→好きになってた』ってパターンは、例外を除いて、回数をこなすことが重要だよ。
恋愛に関して言えば、その例外は『吊り橋効果』とか、『犯人相手に恋しちゃったんだ』とかだよ」
「それとフキと、どう関係が?」

「意外と後輩ちゃんも、別にフキが嫌いってワケじゃないなら、好きな人とお気に入りの場所で、回数こなしてフキ料理食べたら、『好きじゃないのに→好きになってた』するかも」
「はぁ」
「たとえば藤森と一緒に土曜のホテルビュッフェ」
「先輩とは恋仲じゃないし。ただの先輩後輩だし」
「なお、嗅覚はすごく記憶と直結しやすいよ。多分後輩ちゃんは、藤森の部屋の茶香炉の香りを覚」
「だから。ただの先輩後輩だし」

あーだこーだ、云々。
付烏月さんのイジリを聞きながら、付烏月さんのお弁当にフキの肉詰めを渡して、付烏月さんのお弁当から自家製焼き豚を貰って。
大好きなフキを、付烏月さんは幸せそうに食べた。

好きじゃないのに、好きになってた。
付烏月さんのトリビアなTipsが、別にフキとも何とも関係無いけど、心の片隅に引っかかる。
藤森先輩の「元恋人」、加元さんっていうんだけど、
先輩の心をズッタズタにしておきながら今更その先輩追っかけてウチに就職してきた加元さんも、
つまり、要するに、「好きじゃないのに→」のタイプだったんだろうか。

3/26/2024, 4:18:59 AM