かたいなか

Open App
1/5/2024, 5:21:22 AM

「この時期にこのお題は、なかなか、根源的……」
たしか3月31日頃に、「幸せに」ってお題で書いた記憶があるわ。某所在住物書きはスマホに届いた通知文を見ながら、何をどう書くべきか悩んでいた。
いくつかネット等で集めたネタはある。「幸せは相対的」とか、「幸せは解釈次第」とか。
それをどう物語にしろというのだ。

「前回の『幸せに』では何書いたんだっけ」
過去投稿分確認用に、新しく入れたアプリを――ウェブ文章リーダーを見る。
どうやら、職場でチョコを食べる小さな幸せをハナシに落とし込んだらしい。

――――――

正月三ヶ日が終わって、1日過ぎて、今日の1日が終われば3連休という方も多かろうと思います。
今日は2024年最初の週末ということで、こんなおはなしをご用意しました。

都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家には、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
なんと、父狐も母狐も、東京都民として(年齢等々でいくつか嘘っぱちが書かれている)戸籍を持ち、労働し納税しておるのです。
昨日から、某病院で漢方医をしている父狐、2024年の初夜勤。今朝仕事を終えまして、午前10時頃、ヘトヘトになって帰ってきました。
仕方無いっちゃ仕方無い。父狐の勤める病院は土日も祝日も対応する病院ですが、それでも年末年始は人が混むのです。

「いま、かえった、よ……」
くぅー、くぅー。コンコン父狐、弱々しく一軒家の玄関で鳴いて、お靴を脱いで台所までトボトボ。
夜勤から帰ってくる父狐のために、茶葉屋を営む母狐が、ハーブティーを作り置きしてくれているのです。
おなかを空かせて帰ってくる父狐のために、おばあちゃん狐が、お正月のお餅を使ってリメイクおはぎ風を作り置きしてくれている――
筈なのですが、それはそれで、どうやら食いしん坊な末っ子子狐が、ぺろんちょ食べてしまったようです。
「あぁ。生き返る……」
温めたハーブティーから、少しだけ、ミントとベルガモットのスッキリした香りが咲きます。
ひとくち、ふたくち。母狐の気遣いを口に含んで、父狐に少しだけ、幸せが戻ってきました。

ちょっと回復した幸せを消費して、次は父狐、家事と家事と家事なのです。
コンコン父狐、料理スキルが絶望的で、お肉をことごとく炭に一括変換してしまう錬炭術師。
そのかわり、掃除洗濯、買い出しにゴミ出し、消耗品の補充まで、名の有る家事も、名も無い家事も、全部ぜんぶ、率先してテキパキな狐なのです。
狐の子育ては共同作業。母狐に任せっきりになんか、絶対、ゼッタイ、しません。

お賽銭箱の中身を整理して、硬貨を母狐の茶葉屋のお釣り用にまとめて、洗濯物を取り込んで畳んでしまって、ちょっと廊下と居間のお掃除なんかもして……
「がんばった。うん。がんばった」
コンコン父狐、正午前までにハーブティーで回復した幸せを、全部使い切ってしまいました。
「かかさん、私、頑張ったよ。褒めておくれ」
なんてったって夜勤明けからの家事三昧。コンコン父狐、眠くて眠くておなかが空いて、バッタンです。
すぐ補給できる幸せは、すぐ消費してしまうから、しゃーないですね。
「かかさん……」
くぅー、くぅー。コンコン父狐、弱々しく、愛しい愛しい母狐を呼びます。
居間のフカフカソファーの上に、父狐、倒れて横になって、ぐてん。目を閉じてしまいました。

と、その時。
ちょっと早いお昼寝から起きてきた末っ子子狐が、父狐の帰宅に気付いて走ってきました。
「ととさん、おかえりなさい」
小ちゃなお手々に白と小豆色。1個だけ、おばあちゃん狐が作り置きしてくれたスイーツを、おはぎ風を、父狐のために残していたのです。
「ととさん、おはぎもち、どーぞ」
コンコン子狐、自分が食べたいのを我慢して、1個残したおはぎ風を、つまり粒あんで包んだ焼き餅を、父狐の口元に近づけました。

わぁ。かかさん、かかさん。私達の末っ子は、こんなに優しく育ったよ。
父狐は一気に嬉しくなって、幸せになって、なんなら涙もちょっと出てくる心地です!
コンコン父狐、ほっこりじんわり、幸福にお礼を言って、子狐からおはぎ風を受け取りました。
一気にドカンと来る幸せは、じんわり、長〜く残りましたとさ。 おしまい、おしまい。

1/4/2024, 8:31:53 AM

「そうだ。正月だから、『初日の出』とか『日の出』とかは来るわな」
すっかり忘れてた。某所在住物書きは投稿の刻限をチラリチラリ確認しながら、しかし己の納得できる物語がサッパリ浮かばないので、頭をガリガリ葛藤に掻いていた。
物書きが主に連載風投稿の舞台としているのは東京だ。勿論山の上やビルの高層階、海見える公園等々、日の出の見える場所は無くもないが、
ぶっちゃけ、東京で、日の出そのものを見ることなど日常的にあるだろうか。

「……あと、ぶっちゃけ、クリスマス前に捻った足腰のせいで、今年日の出見に行ってねぇし」
ため息ひとつ。そもそも今年、元旦早朝の天気はどうであったか。

――――――

とうとう仕事が始まった。
ぶっちゃけ今年の三ヶ日、体は休んだ筈なのに、心が全然休めてない。唯一の癒やしは昨晩、職場の先輩が「ブリとサーモンが破格の値段だったから」って、おいしい鍋をシェアしてくれたことくらい。
あとアレだ。非公式だけど、私のアパートの近くのカフェの、お正月限定プチケーキセットだ。
個人経営で、具体的に「どの作品の誰と誰」って明記してない、でも実は◯◯を意識してますっていう、概念アクリルチャームがランダムで貰えるやつだ。
一回注文すれば後はアクリルチャーム代だけ払って、お一人様最大5回まで追加で引けるって、フードロスも減るし、この業界じゃ革命だと思うの。

「それで?」
「目当ての概念チャームが最後5回目で出たのが嬉しくて、神社行って初日の出風の画像撮ってきた」
「初日の出『風』?」
「実は夕暮れ。そもそも太陽が見えないから色と影だけ。ほら、先輩のアパートの近くの、あの稲荷神社」
「日の出が撮りたいなら、あそこに行けば良いだろう。海の見える例の」

「冬は朝が苦手でござる」
「はぁ」

昼休憩の休憩室、いつものテーブル。
お弁当広げてコーヒー持ってきて、誰が電源入れたか知らないテレビから流れてくるニュースをBGMに、私と先輩はランチを食べてた。
先輩は昨日の鍋の残りを、私はお弁当の準備が間に合わなかったから近所のコンビニのサンドイッチを。
それぞれ食べながら、別に何でもない話をしてる。

「先輩の故郷って、日の出見える?」
「は?」
「東京、昼でもないと、太陽見えないじゃん。先輩の帰省にくっついてったら、概念チャームと一緒に日の出フォト、撮れるかなって」
「朝は苦手、ではなかったのか」
「起こしてくれれば大丈夫」

画像の話、日の出とチャームの話、地震の募金箱の話、今日職場に来たお客さんとクレーマーの話。
色々話をして、ランチ片付けて、午後の仕事へ。
先輩が昨日アパートの近くのスーパーで、募金箱の中に諭吉さんが2枚入ってたって言ってたから、
仕事の終わりにちょっと寄って、見てきて、私もちょっとだけ入れてこようと思った。

1/2/2024, 1:42:54 PM

「わぁ。もう、なんか、今年は分からん……」
まだ2024年始まってから40時間程度だってよ。
某所在住物書きは今日の通知を見ながら、めまぐるしく動きに動く正月2日目の状況にため息を吐いた。
「現在投稿している一連の物語を、1年でキッチリ終わらせる」のが、物書きの目標のひとつであった。
ここまで大事件が続いてしまっては、「自室の防災備品を充実させる」、「防震対策を再点検する」等々も抱負に相応しかろう。

「ひとまず、今の連載風を終わらせた2月29日以降の投稿をどうするかは、決めとかねぇと」
アプリをインストールしてから、もうすぐ366日。
367日目から何を投稿するか、投稿をやめるかを、そろそろ抱負として決める必要がある。

――――――

最近最近の都内某所、某アパート。夕暮れ。
部屋の主を藤森というが、雪国出身の生真面目で、
ニュースの音声を聴きながら、防災アプリから断続的に届く強震モニタの通知を、じっと見ていた。
「3.11」の際、実家も揺れた地域であったのに、東京に居た藤森。小さな傷が心の奥に残っていた。
よって随時、なるべくリアルタイムに、情報だけでも追い続けようと気を張っていたのだが、

「もうこんな時間か」
24時間でとうとう、集中力も底を尽いた。
「晩飯の買い出しに行かないと」
テレビの電源を切り、ニュースを黙らせる。自分がどれだけ「心」を砕いても、被災地には何ひとつ届かぬ。それより少しの現金を持って、コンビニかどこかで義援金の受付を見たら、1枚2枚突っ込もう。
藤森はマネークリップと、それからコインケースとスマホを手に、近場のスーパーマーケットを訪ねた。

独り身の夕食は、買うべきものが少ない。
特に買い物カゴも持たず、店の前のチラシをしばし見て(その下の募金箱で既に諭吉が2人招集済みであることに軽く驚き)、
野菜、カットサラダ、果物に少しのナッツ類……値引きシールの状況を確認しながら、精肉コーナーへ。
チラリ見た限り、オニオンサラダが半額で90円税込みだった。鶏肉に値引きが貼られていれば、オニオンコンソメスープで温まるのも良かろう、
と、思っていたら。

「さかな?」
店員の気配に肉の棚から目をそらした藤森。
鮮魚コーナーで値引き処理をしている者がある。

「すいません、一番美味いのは、どれですか?」
養殖ブリの柵――150g程度のブロックだ。珍しい。脂とろけるフィッシュカツ候補である。
消費期限当日ゆえの半額シールをペタペタ貼る青年に、藤森が尋ねた。
「見方を知らないので、よく分からなくて」

研修中の名札の青年は藤森の目を見ると、
「魚は全体的に、頭に近いとこが美味いですけど、」
少し考える風に視線を外して、それから、唇の片端をわずかに上げた。
「イナダとワラサ買ってたお客さんですよね?」

「えっ?」
「いわゆるマグロで言うところの大トロみたいな部分と、頭に近い部分、場所違うんですよ。だから脂と味の好みでオススメするもの変わってくるんで」
「あの、どうして」
「割引きの肉と魚買ってくれるお客さんでしょ?」
「あぁ、まぁ……」
「結構もう、ある程度どれ美味いってご存知でしょうけど、個人的にはコレとコレ、オススメですね」

今日はサーモンも安いんで、そっちも気になったら遠慮なく呼んでください。
研修中の名札を付けた店員は、濃灰な太めのブリの切り身と、白銀な薄めの脂身をサッサと選び出して、次の商品の値下げ処理作業へ。
「どこかで会った?」
あの店員への声がけは、これが初めての筈だが。
白銀の柵のパックを手に取りながら、藤森はシールをテキパキ貼り続ける青年を確認する。
「……何故私なんかの購入傾向を?」

「研修中」って、なんだっけ。藤森は首を大きく傾けて、額にシワを寄せる。
今年は値引き品以外も少し購入すべきだろうか。
小さなため息を吐き、せめてここの店員に煙たく思われたり、嫌われたりはせぬようにしようと、それをひとまずの今年の抱負とした。
「サーモン、確かに安いな。
少し多めに買って、後輩でも呼ぶか……?」

「鍋に使えるカット野菜ありますよ」
「わっ?!」
「持ってきます?」
「は、……はぁ……」

1/1/2024, 10:48:15 AM

「『どうせこのアプリの傾向から、今日のお題は「新年」とか「正月」とかなんだろ』と思って投稿の準備してたけどさ……」
うん。みなまでは言わん。某所在住物書きはテレビとアプリで情報を追いながら、今日投稿分の予定だった文章に修正を加えている。
時折手を止め「お気に入り」を確認するのは、そこに登録している面々の安否・無事を確認したいから。
さすがにまだ、投稿は少ないらしい。

「……明日投稿分どうしよう」
三ヶ日、今年の目標、初詣、初夢。年間行事ネタの多数登場するこのアプリで、新年直後のお題は予想がしやすい。が、
「今年のこの状況」で、明日、何が書けるだろう。


――――――

都内某所の某アパート、新年の朝。
部屋の主を藤森といい、近所の参拝客少ない稲荷神社で早々にお参りを済ませて、
防音防振設備の整った比較的静かな自室で、1月1日を過ごしていた。
テーブルの上のスマホからは、グループチャットアプリのメッセージ受信通知が吐き出され、
すなわち、藤森の職場の後輩が某カフェの正月限定メニュー(にランダムで添えられる非公式概念アクリルチャーム)を一緒に楽しもうと誘ってきたり、
職場の同僚が儀礼として新年の挨拶をしてきたり。

ひいきにしている茶葉屋からは、三ヶ日限定で使用できる10%引きクーポンが。
つまり、「消費税分を負担するので、急須だの湯冷まし器だの、買い替えませんか」の誘いであろう。
「……去年買い替えたばかりだが」
茶器と茶葉を置いている棚を見て、藤森がポツリ。
諸事情あって、一度部屋の家具家財のほとんどを手放したのだ。その諸事情が予想外に「解決」してしまい、藤森は再度、多くを買い直すハメになった。
去年の11月、16日頃のことである。
「宇曽野に茶香炉でもくれてやれば良いのか?」
宇曽野とは藤森の親友、既婚の野郎のことである。

戸棚から茶筒を出し、賞味期限を迎えた分を取り出して、香炉用を保存している容器へ。
空になった方の筒の中に、新しく封切ったものを――香りたかく余韻の甘い川根茶を詰める。
スンスン、すん。
鼻を近づければ確かに感じる緑茶の甘香に、その優しく穏やかな清涼感に、藤森はsh

ピンポンピンポンピンポン!!
『おとくいさん、こんにちは、こんにちは!』

「なんだ。元旦の朝っぱらから、騒々しい」
雰囲気急転。ぼっちで茶葉の詰替えをしていた藤森の部屋に、インターホンの連打が響き渡った。
「あけまして、おもち、買ってください!」
ドアを開ければ藤森の予想どおり。
去年3月からの付き合いの、稲荷神社在住な餅売りが、年齢一桁後半か10代前半あたりの子供が、
それはそれは、目をキラキラさせて、「狐の尻尾など高速でブンブン振り回して」、藤森を見上げている。
「おいしいおいしい、ウカノミタマのオオカミサマのご利益ゆたかな、正月おもち、今ならご利益ぞーりょーちゅー!」

一部非現実的なトンデモ描写が挟まったが、気にしない。どうせフィクションである。

「すまない。今日は結構だ」
藤森が訪問販売を断ろうとすると、子供は「耳と尻尾を絶大な驚愕にピンと立てて」、目を見開いた。
「お正月におもち、たべないの……?」

「『今日は』、結構だ、というだけだ。ともかく、まぁ、今年もよろしく」
「明日おしるこお持ちしますか?明後日おしるこお持ちしますか?しょっぱい方がいい?」
「あのな」
「海のおそとの、アニョハセヨな9本尻尾おばちゃんは、『ハツキムチとかレバーキムチとかと一緒に炒めてチーズ入れるのも、意外と美味しいのよ』って」
「待て。それ、『何』のハツとレバーだ」

「おばちゃん、『ただ無言でニッコリ笑って、相手を見て、相手が顔面真っ青になってから、ブーブーブヒブヒって、正解を教えてあげなさい』って」
「あのな……?」

12/31/2023, 2:25:56 PM

「『良いお年をお迎えくださいの挨拶は、12月中旬から大晦日の前まで』……?」
マジ?……え、まじ?妙なマイルール・マイマナー作家さんが勝手に言いました、とかじゃなくて?
某所在住物書きは「良いお年を」の、そもそもの意味をネットで検索していたところ、サジェストキーワードから衝撃的な記事に辿り着いた。
「良いお年を」を言うタイミングである。某ページによると、それは大晦日当日に言うべき挨拶ではないという。 事実かどうかは分からない。

「……大晦日当日の挨拶は?」
思い浮かばねぇから、結局「良いお年を」って言うだろうな、と物書き。
所詮その大晦日も残り数時間。日付が変われば「あけまして」である。

――――――

大晦日の昼少し前、都内某所、某オープンテラスのカフェ。ホールスタッフが己の年末の数時間を、平日同様、さして変わりなく提供している。
今もひとりのアルバイトが、コーヒーと紅茶、ピザ風オープンサンドとクロックムッシュをトレーにのせて、所定のテーブルへ。
良いお年を、良いお年を。待てその挨拶は「今日」じゃない。他の客の会話を聞き流しながら、愛想よく笑って会釈して、飲み物と料理をそれぞれ置き、キッチンへ戻っていく。

「『良いお年を』は『今日じゃない』?」
コーヒーとオープンサンドを頼んでいた男性、宇曽野が客の声を拾い、驚きとともに、チラリ振り返った。

「相変わらず耳が良いな。うらやましい」
宇曽野の親友、紅茶とクロックムッシュを頼んだ方、藤森は構わず紅茶をひとくち。
好ましい後味と余韻が鼻を抜けたのだろう。穏やかに、唇の両端を上げた。
「で、わざわざ私をここに呼んだ理由は?嫁に愛想でも尽かされたのか」

「そうなったら俺も改姓改名して、遠くにバックレてみるかな。どこかの誰かみたいに」
「嫁がお前を置いて帰省した?」
「婿取りだから、『帰省』するとすれば俺だ。お前も知ってるだろう」

「じゃあ何だ」
「別に。何も」

理由が無けりゃメシが食えない間柄でもないだろう。浮気相手でもあるまいし。
宇曽野の表情はただ淡々としている。ジト目でカップに口をつける藤森とは対象的だ。
「本当に何でもないよ」
宇曽野は言った。
「ただ……先月お前の例の恋愛トラブルが解決して、お前自身やっと吹っ切れて、夜逃げの計画も白紙撤回になっただろう。そのハナシをしたくなってな」
それを「理由」と言うんじゃないのか とは、ジト目継続中な藤森の胸中である。

「そこから、改めて『来年もよろしく』、と言うのも何だし。ならメシでも一緒に食えばいい」
「よく分からない」
「少しは『特に理由の無いメシ』を覚えろよ。お前のところの後輩に飽きられるぞ」
「何故彼女の話題が出てくる。無関係だろう」

お前は相変わらず堅物だなぁ。宇曽野は小さく息を吐き、藤森を見る。
憐れんでいるのか、呆れているのか、
ともかく何か子供を見る親のような視線を感じた藤森は、やはり目が細い。
「で、私の既に解決済みなトラブルの、特に何の話をしたいって?」
紅茶の2杯目をポットから注ぐ藤森の斜め向かい側で、食事を終えた男女がまた、
良いお年を、良いお年を
と、定番の挨拶を繰り返した。

Next