かたいなか

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12/31/2023, 2:55:51 AM

「この1年で変わったことと言えば、アプリの『♥』に対する価値観よな」
最初は1投稿に1個来るだけで舞い上がってたわ。某所在住物書きは1年を振り返って、ぽつり。
「1投稿に1反応で嬉しかったのが、段々3個欲しくなって、5個来なけりゃ不安になって。それが『自分の好きなように書けばそれで良いや』になるまで、10ヶ月かかったわ」
ところで約1年間、ずっと思ってきたけど、広告スキップオプションはいつ実装されるの?
物書きはポテチをかじりながら、アプリ内の成人向け広告がただ煩わしいので――

――――――

今年も残り数時間。
今回のお題が「1年を振り返る」でしたので、
今年3月1日から始まったこの現代軸連載風アカウント、305日のダイジェストでも、
振り返って、ご覧に入れたいと思います。

3月、2022年度末の東京某所、某アパートの一室に、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者がぼっちで住んでおりまして、
このぼっちには、職場の後輩がおりました。
後輩に、「遠くの街へ」のお題にのっとって、自分の故郷、雪国の田舎のハナシをするところから、連載投稿は始まりました。
『私の故郷はね。雪が酷くて、4月直前にならなければ、クロッカスも咲かなくて』
『いつか、おいでよ。遠い、何も無い、花と山野草ばかりの街だけど』

その後3月3日「ひなまつり」のお題で、
何がどうトチ狂いましたか、ぼっちのアパートに不思議なお餅を売る子狐が押しかけまして。
『このゴジセーなの、誰もドア開てくれないし、おもち買ってくれないの』
『1個でもいいから、おねがい、おねがい』
ここから妙な子狐とぼっちの交流が、300日にわたって、ゆるゆる、始まってしまうのです。

4月、2023年度が始まりまして、それから7月あたりまで、例のぼっちと後輩のタッグは、職場の上司が持ってくる困難に立ち向かっておりました。
というのも、このふたりの職場、ブラックに限りなく近いグレー企業だったのです!
オツボネ係長が仕事のチェックを怠って、その結果出てきたミスを後輩に全部押し付けたり、
ゴマスリ係長が課長にゴマスリばっかりして、自分の仕事を全部ぼっちに押し付けて、その結果ぼっちが体調不良を起こしたり。
まぁまぁ、いろいろありましたが、ぼっちとその後輩は、ふたりして全部乗り越えてきたのです。

7月。「私だけ」→「視線の先には」→「私の名前」の連続したお題で、物語が動きます。
なんと、人間嫌いで寂しがり屋なぼっちに、「私の名前」のお題がくっついて、旧姓旧名持ちの設定が爆誕したのです!
未婚のぼっちが旧姓持ち。随分ぶっ飛んでますが気にしない。だいたいお題の影響です。
『ブシヤマさん!ブシヤマさんでしょ?!』
ある日ぼっちは道端で、旧姓で呼び止められまして、それに驚いたのがぼっちと一緒に歩いていた後輩。
『人違いだよ、先輩ブシヤマじゃないもん』
ぼっちは名前を、藤森といいました。
悪しき理想押しつけ厨、藤森の心をズッタズタに壊した元恋人、加元から逃げるために、名前を「附子山」から「藤森」に8年前、変えておったのです。

8月と9月は、ぼっちの名前がようやく「藤森」と判明して、元恋人の加元から逃げる期間となりました。
藤森の現住所を特定したくて、一時期加元が探偵を雇ったり、藤森が住所特定を警戒して、親友の宇曽野という既婚な親友の一軒家に転がり込んだり、
その一軒家に転がり込んだのを、例の餅売り子狐が、「お得意様が家を持った」と勘違いして新築祝いしたり、新婚旅行のパンフレットを持ってきたり。
なんやかんやありまして、藤森と元恋人の恋愛トラブルは、11月に決着を迎えるのです。

『あなたと、ヨリを戻す気は無い』
7月からの不穏を終わらせたお題は「また会いましょう」でした。
『それでも私と話をしたいなら、どうぞ。恋人でも友達でもなく、「附子山」でもなく、 赤の他人として、いつか、どこかで。また会いましょう』
10月頃、元恋人から逃げるために、夜逃げの準備までしていたぼっち。もとい藤森。
後輩の説得で、逃げるのではなく、はっきりバッサリ……とはいきませんでしたが、
元恋人をフッて、縁をようやく断ち切ったのでした。

そんなこんなで、約10ヶ月が過ぎまして、
投稿した文章は300以上、消えていったキャラクターも数知れず。
6月27日投稿分にポンと出てきて、それから8月13日の「君の奏でる音楽」だの9月15日の「命が燃え尽きるまで」だのにリピート出演してたウサギ、今頃どうしてるんでしょうね。忘れられていますね。

物語の区切りになるであろう2月末まで、約2ヶ月。
ざっと1年を振り返って思うのは、
このアプリ、1年前を振り返るには、バチクソにスワイプしなきゃいけないから、クッソ面倒というハナシでした。
しゃーない、しゃーない。

12/30/2023, 4:07:59 AM

「みかんといえば、『陳皮(ちんぴ)』とかいうミカンの皮を乾かした生薬と、『オレンジフラワー』だの『オレンジピール』だののハーブティーか?」
昔スーパーで試食配ってたねーちゃんが、カマンベールにオレンジマーマレードのせて渡してくれて、それは美味かったわ。
某所在住物書きは賞味期限間近なマーマレードの瓶を眺めながら、これをどう処理すべきか思考していた。
「『ミカン科』のグループで言えば、レモンもミカンで山椒もミカン。カレーリーフもミカン科だとさ」

意外と仲間は多いようだが、で、その「みかん」で何書けっていうんだろう。物書きは相変わらず途方に暮れて、ため息を吐く。
「『マーマレード 活用法』で調べたら、照り焼きとかマーマレード焼きとか出てきたわ。……パンだのチーズだのに使うだけじゃねぇのな」

――――――

今年も残すところあと少し。皆様、大掃除等々、進んでいますでしょうか、そうですか、失礼致しました。
今回は「みかん」のお題に苦戦した物書きが、こんな苦し紛れをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち賢く美しい母狐は近所の茶葉屋で店主として、優しく穏やかな父狐は某病院で漢方医として、
それぞれ労働して、納税して、コンコン、人の世を見続けてきたのでした。

今日は漢方医の父狐、自宅の庭に作っているハーブガーデンだか、薬草園だか、ともかく不思議な不思議な「狐の薬」の材料をどっさり植えている場所に、
ひとつ、病院のお給料で買った苗を、それはそれは大事そうに植える作業をしておりました。
ミカン科ミカン属、ウンシュウミカンです。
冬の寒さに負けぬよう、ちょっと大きめの苗木です。
それは漢方「陳皮」を実らせる木であり、ハーブティーに用いられるオレンジピールとオレンジフラワーの木でもあり、
すなわち、これが元気に育って実をつければ、茶葉屋の母狐もきっと喜んでくれるのです。

温暖化により、ミカン栽培の北限が段々変化してきて、今では宮城県なんかでも栽培されている、なんて言われている昨今。
都内でも何件か知りませんが、それでもミカン園があるというウワサ。
宮城や都内で育つのです。なんなら父狐が育てられぬ道理は無いのです。
『まぁ、なんて素晴らしい!』
コンコン父狐、母狐が喜んで自分をグルーミングしてくれるのを、想像してひとりニッコリ。
『さすが私の夫です。花が付いたら花を摘んで、実が付いたら皮を丁寧に干しましょう』

わぁ、わぁ。君がそんなに喜んでくれると、私もお小遣い、頑張って奮発した甲斐があるよ。
みかんの実がどっさり付いたら、あまずっぱい果汁で鶏肉を焼いて、照り焼きたくさん作ろうね。
ぶんぶんぶん、ぶんぶんぶん。コンコン父狐は嬉しくって嬉しくって、頭の中が幸福で、化けて隠してた尻尾がコンニチハ。
猛烈な勢いで、わんこのように振っています。
だってコンコン父狐、1■■■年に母狐と結婚してから■■年、ずっと母狐を愛しているのです。
まさしくこの、みかんの花言葉のひとつのように、純粋に、ただただ純粋に、家族の幸せと平和を願っているのです。

「何やってらっしゃるの?」
ほら、尻尾をビッタンビッタン振りながら苗木を植えている父狐のところに、母狐が音を聞きつけて、やってきました。
「あら、みかん?」
とうとうペッタン狐耳まで幸福に畳んでしまった父狐に、母狐、冷静に言いました。

「植え付け時期確認なさった?」

一般的に、みかんの植え付けは、3月中旬から4月中旬が適期とされているそうです。

12/29/2023, 8:51:38 AM

「仕事納めの後、年末年始がいわゆる、社会人の冬休みみたいな部分はあるのかな」
まぁ、ぶっちゃけその「冬休み」も、取れる職業と取れない職業があるし、俺のことも「みなまで言うな」だけどさ。
某所在住物書きはポテチをパリパリ噛みながら、遠い遠い昔に過ぎた数週間、あるいは1ヶ月程度かもしれない期間を思い返す。
ぶっちゃけ、これといった思い出は無い。その冬休みをどう物語にせよというのか。

「……正月太りは冬休みの季語?」
ぷにぷに。ネタに事欠き、物書きは己の腹を押す。

――――――

仕事が納まった。
例のアメちゃんサイドな商店街は、買い物客でごった返してて、数年前の東京がようやく戻ってきた、って印象だった。
3年前だか4年前だか、もう記憶が曖昧になっちゃったけど、ともかくガラッガラの、「ちゃんと道の先が見えてる商店街」がただ衝撃で、激レア過ぎて、
スマホでいっぱい、呆然と撮ってたのは覚えてる。
今日は仕事納め。
明日から、数日だけの、社会人の冬休みが始まる。

なお別に予定は無い。お金はいつもキッツキツだし、なるべく貯蓄したいから、海外とか地方とかへ旅行に行くワケでもない。
「里帰り」?東京がお里です(既に帰郷済み)
ちなみに雪国出身の先輩は、「つまり、単独逆参勤交代の旅費が不要ということだ」って言ってた。
今年は3〜4年ぶりに、時期をズラして、3月最初頃に帰省する予定らしい。

で、その雪国出身の先輩、自宅のアパートで今一体何やってるかと言いますと。
ご近所の稲荷神社の多分ペット、ちょこちょこ先輩の部屋に出没する子狐に、何故かウールの毛糸と防水生地で、小さい手ぶくろと足ぶくろ作ってます。
「ナンデ?」
「私が聞きたい」

先日捻挫して、治って、仕事納めもリモートワークだった先輩の部屋を訪ねたら、ぎこちない手でせっせとかぎ針してた先輩。
「湯ならポットに沸かしてある。適当に茶でもコーヒーでも、好きなやつを淹れてくれ」
そのかぎ針から伸びた毛糸の先の、比較的大きめなウール毛玉に、「エキノコックス・狂犬病対策済」って木札を下げた子狐が、乗っかってゴロンチョ転がって、たまにあむあむ、糸だの玉だのを噛んでる。
くっくぅくぅ、くっくぅくぅ。
ご機嫌らしく、鼻歌まで歌ってた。

「先輩、手芸スキル持ってたっけ」
「無い」
「バチクソに初期初期の初期ってか、1個目編み始めたばっかりに見えるけど、何分前から編んでる?」
「1時間前から」

「完成予定は?」
「未定だな」

このままじゃ、先輩の冬休み、編み物で終わるな。
と、思う程度の進捗状況な編み作業。
それでも、一生懸命なこと「だけ」は伝わってくる。
「先輩?」
子狐ちゃんを毛玉から引っ剥がして、おなかをワチャワチャ撫でながら、私は提案した。
「多分ペットショップの子犬用手袋の既製品買ったほうが、何百倍も早いし確実だと思うよ」
先輩は「それができれば苦労しない」って顔で、でもすごく、同意して頷いてた。

12/28/2023, 5:39:26 AM

「某値段以上だか異常だかの家具屋と……今は某無印なブランドにも、どこでも結構『着る毛布』って普及してきたじゃん」
手ぶくろ。手袋か。某所在住物書きは一度、ため息を小さく吐いてスマホの通知文を見た。
「その生地で、『着る毛布』の手ぶくろ版とかインナーコート版とか、あったら需要あると思うんだ」
今年は暖冬とのことだが、それでも何でも、冬の手足は冷えやすい。
某〼ウォーム級の保温性を持つ手ぶくろは、どこかに需要があるのでは。それが物書きの持論であった。

「理由?」
ぽつり。物書きがひざ掛けのズレを直しながら言う。
「だって寒いもん」

――――――

例年より、比較的、ある程度、そこそこ微妙に暖かいらしい年末の昨今、いかがお過ごしでしょうか。
「手ぶくろ」がお題ということで、都内の稲荷神社に住む子狐と、手ぶくろの童話にまつわるこんなおはなしを、ご用意しました。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、そのうち末っ子の子狐は、まだまだホントの、ガキんちょ子狐。
いっちょまえの化け狐、善良な御狐となるべく、不思議なお餅を作って売って、人間の世を学んでいる真っ最中です。
そんなコンコン子狐は、お花や、お星さま、キラキラしたものにフワフワあったかいものが大好き。
人間の世界でそういうキラキラフワフワしたものを見つけては、しっかりお耳と尻尾を隠して、ばっちり人間の姿に化けて、餅売りで貯めたお駄賃握りしめ、これください、と集めておったのでした。
あるいはマナー悪い人間が神社に捨てていくのを、ちょいと失敬しておったのでした。

そんなガキんちょなコンコン子狐、お家の本棚の蔵書で、気になっている絵本がありました。
狐童話の傑作のひとつ、『手袋を買いに』です。
雪積もった森に住む子狐が、夜の町にやってきて、人間からあったかい手袋を買うおはなしです。

「手袋、手ぶくろ、ほしいなぁ」
子狐コンコン、自分の小ちゃい小ちゃい前足をまじまじ見つめて、ポツリ言いました。
子狐は都内から出たことが一度もありません。
深い深い積雪も、しもやけの冷たさや痛さも、あんまりよく知らないのです。
「きっと、フワフワで、あったかいんだろうな」
でも子狐、絵本の中の子狐の、町で買い求めた温かい手ぶくろが、羨ましくて羨ましくてたまりません。

「まねっこしたら、売ってくれるかな」
幸福な嫉妬、善良な羨望が積もりに積もって、とうとう我慢が限界突破の完凸な子狐。
いつもお餅を買ってくれるお得意様な人間に、「『手袋を買いに』ごっこ」を敢行しようと、
トテトテ、ちてちて。移動を開始しました。
小ちゃい子供って、「自分は◯◯だ!」と思ってごっこ遊びの世界に入り込むこと、ありますよね。
この子狐も結局はガキんちょ。いっちょまえの子供だったのです。

――で、困ったのがこのコンコン子狐に、「手袋を売ってくれる人間」の役を勝手に割り振られてしまった人間です。

「……こぎつね?」
ピンポンピンポン。
コンコン子狐の稲荷神社の近く、某アパートの一室の、インターホンが鳴りました。
「何がしたい?何を私に期待している?」
モニターを見ると、いつもの、例の不思議な餅売り子狐が、ちょこん、カメラの前におりましたので、
ドアを開けてやりますと、
何故かそのドアの後ろに、ピョイッ!すっかり隠れてしまって、
小ちゃな小ちゃな右手だけ、すなわち子狐の肉球かわいらしい右前足だけ、部屋の主に見せるのです。

「このお手々に、」
コンコン子狐、絵本で覚えたセリフを言います。
「ちょうどいい手袋ください!」
部屋の主、ここでやっと、ピンときました。
アレだ。自分が小学生の頃、たしか国語の教科書に掲載されていた。『手ぶくろを買いに』だ。
何故手袋を売る帽子屋役をやらされているのだろう。

チラリ。ドアの向こうの、隠れているつもりな子狐を、部屋の主が確認します。
いつも不思議なお餅を売りにくる不思議な子狐は、それはそれは幸せにお耳をペッタンして、尻尾をブンブン振り回しておるのでした――

「子狐。非常に申し訳ないが私に手芸スキルは無い」
「おかね、有ります」
「……ペットショップの子犬用既製品は許容範囲か」
「やだ」

12/27/2023, 8:05:32 AM

「まぁ、まぁ。ベタなハナシよな。『不変は無い』」
伝統工芸とか郷土料理とか、「変わらないように」を目標にしてそうな分野の方々のことは、どうなるんだろう。某所在住物書きは配信の通知文に8割9割賛同しつつ、残る1割2割の「変わらないものはない『わけではない』」を探してネットをさまよっている。
ことに、菓子や料理の世界では、「味変わったね」より、「いつもと同じ美味しさだね」を尊ぶ界隈も、ありそうで、そうでもなさそうで。

「……無いと断言されると反例探したくなるやつ」
何か無いかな。物書きは諦め悪く、ネットの中を探し続ける。

――――――

職場の先輩が、なんでも年末に捻挫だか肉離れだかを起こして自宅のアパートで在宅ワークしてる、
って聞いたから、日頃の恩だの借りだのもあるし、私もちょっと急だけど、リモートの申請出して先輩のアパートに様子を見に行ってみたら、
先輩は普通にお昼ご飯の準備してるし、歩く時どっちかの足をかばってる様子も無いし、ベッドの上では「エキノコックス・狂犬病対策済」の木札を首からさげてる子狐がヘソ天してるし、
本人に「どしたの」って聞いたら、「治った」、「多分気のせいだった」って言われた。

捻挫と肉離れって簡単に治るもんじゃないと思う。
どしたの。何があったの。

「そもそもお前、どこから私が『足を捻った』なんて情報拾ってきたんだ」
せっかく見舞いに来てくれたからって、先輩はお得意の、ちょっと低糖質なパスタを出してくれた。
「隣部署の宇曽野か?まさかこのアパートの管理人じゃないだろうな?稲荷神社の狐とか冗談はよせよ」
元々は、100g食べたって糖質30gにも満たない、バチクソ優秀な低糖質のやつを使って作ってくれてたやつだ。
3週間くらい前、たしか12月9日近辺のことだと思うけど、製造元がその乾燥パスタを「おいしくリニューアル」して、塩分量がバチクソ多くなっちゃったから、今は、他のパスタよりは糖質少なめって程度の、全粒粉パスタが、代用品として使われてる。

低糖質麺の、低塩分なパスタ。需要はニッチ。
売るためには時々「おいしくなってリニューアル」をしなきゃいけない。
相当「いや、ウチはこの味で/この形で/この方法でずっと通すんだ」って強い信念が無きゃ、
商業品で、変わらないものは、無いんだと思う。

「宇曽野主任が、『お前の先輩、昨日の夜、俺の目の前で足腰捻って、痛そうにしてたぞ』って」
わかめスープの素と小さくされたミンチ肉、それから少しの大葉とアマニ油で、たらスパみたいな風味になってるパスタを、くるくる。
「てっきり私も主任も、捻挫とか、肉離れとかだと思ってたのに。来てみたらコレだもん」
プリン体少ないし、塩分ちょっとで済むし。たらスパモドキはなかなかにアリだと思う。
「うん。先輩の料理、変わんないね。おいしい」

「これでも色々、変更箇所は有るんだがな」
野菜じっくり煮込んだらしいベジスープをよそいながら、先輩が言った。
「ところでお前、油揚げ食うか?諸事情で大量に手に入ったんだが」

「油揚げ is なんで」
「お前と同じく見舞いに来たやつが、昨日居てな。約200年、変わらない製法で、伝統を守って作られているそうだ。炊き込みご飯が美味かった」
「新人ちゃん?」
「『稲荷神社の狐』と言ったら、お前どうする」
「はいはい冗談冗談。で?」

「子狐触るか?」
「さわる」

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