「原作読んだり観たりしたことないけど、そのネタだけは知ってる。……結構多いと思うんよ」
たとえばそれこそ、「時よ止まれ」の漫画とか。某所在住物書きはネットで某漫画の某能力を検索しながら、今回の題目に何で立ち向かうか画策していた。
午後3時。次回分配信まで、残り4時間である。
時間が止まればどれだけ助かるだろう。
「『メンテが終わればメンテが始まる』の元ネタも、読んだことは無いが原作の名前も絵も知ってるし。
『だったら漕げばいいだろ!』なんて、語録大量に覚えてるが本編観たことねぇし。……あと他は?」
銀河鉄道にヒンナヒンナ、「お手伝いをね」の主任。
思い出にふけるのも良いが、執筆はどうしよう。
――――――
3連休が終わって、1日経った。
夏の台風でどこにも行けなかった分、この連休で遠くに行ってきたって人は、結構多かったみたいで、
昔の創作仲間なんかは、「涼しい北海道に行って海鮮丼食べてきた」って言ってた。
「イナダって、なに」
かく言う私は、そんな3連休明けの、水曜日の夜、何をしているかと申しますと。
「ブリの出世前だ。安かったから」
5:5の割り勘想定で、先輩のアパートにお金を持ち込んで一緒にディナーしております。
食費&光熱費の節約術として。なにより先輩の作る料理を、一品でも多く食べときたくて。
それから先輩の、東京を出ていくまでの砂時計か何かの時間を、少しでも止めたくて。
低糖質&低塩分のメニューが得意で、かつ、防災用備蓄食を使ったアレンジ料理も少しやる先輩。
今日は知らない名前のお魚使ったクリームパスタだ。
「だから、イナダだ。ブリの煮付けとか、フライのタルタルソースがけとか。それの成長前だよ」
要するにお魚だ。すごく久しぶりに食べるお魚だ。
だって高いもん(若者には金が無い)
「先輩とこうやってランチとかディナーとかシェアするようになって、何年だろうね」
熱を通して、白く、ホロホロになった魚の身が、オニオンクリームポタージュの粉スープで代用されたソースに絡んで、そこそこ、美味しい。
「お前が職場に来て私が教育係になった翌年からだ」
粉とか、フリーズドライとか、レトルトなんかでスープ作る手間を省くテクは、先輩から教わった。
すぐ味が決まるし、煮込む手間も省けるから、楽だ。
「10年?」
「サバ読むにしても長過ぎやしないか」
「20年?」
「3年。お前自分と私を何歳にしたいんだ」
そんな先輩と、もしかしたら、本当に「もしかしたら」な女の勘でしかないけど、
もう、会えなくなるかもしれなかった。
「意外と短い」
「そうだな」
原因は先輩の、8年越しだっていう恋愛トラブルだ。
先輩の心を昔々、自分でズッタズタにしたくせに、その先輩を追っかけて見つけて、先輩の初恋さんが、私達の職場にまで突撃してきた。
その人が、住所特定のために探偵まで雇ったって知ってから、先輩は少し顔が変わった。
何か決心してそうな。何か、必死に隠してるような。
実際、ただでさえ家具の少なかった先輩の部屋は、アニメか漫画でしか見たことないくらい、「何も無い部屋」になっちゃった。
別に、私は初恋さんみたいに、先輩に対して恋してるワケじゃない。
でも食費節約と何かの記念と、体調不良のヘルプと、悩み相談もあったと思う、
ずっとご馳走になってきた先輩のごはんを、先輩のこと傷つけた初恋さんのせいで食べられなくなるのは、バチクソにイヤだった。
「明日も食べに来て良い?」
「何を?イナダか?」
「今食べてるお魚。ホロホロのやつ」
「だからイナダだと言っている」
だから、先輩が突然離職して、遠く離れちゃう前に、先輩の作る料理を、一品でも多く食べときたくて。
理想としては先輩の、東京を出ていくまでの砂時計か何かの時間を、少しでも止めたくて。なんなら早戻しにしたくて。
「時間よ止まれ」の精神で、私は先輩の部屋に迷惑にならない程度に押し掛けて、
頑張って、ちょっかいを出し続けてる。
「月夜」、「真夜中」、「夜の海」、「夜明け前」。
お前とも随分長い付き合いだな。某所在住物書きは過去投稿分を辿りながら、ぽつり、ぽつり。
そもそも「夜明け前」は先週書いたばかりだと、ため息を吐き、ネタを探す。
やがてメモ帳アプリを呼び出し、簡単そうなひとつを閃いて書き始めると、
「都市部や観光地の夜景は大抵高地から低地を見下ろして人口の光を見るけど、
田舎や山間部の夜景はそもそも人口の光がバチクソ少ないから、天を見上げて星の光を見る、
……とか考えたけど、確実に、前回投稿分とネタが被ってるわな」
そもそも己の今書こうとしている風景を、前回の物語で使っていたことに気付き、
文章をタップして、範囲指定して、再度タップして白紙に戻した。
――――――
3連休最終日だ。
「月曜日」ってカンジがしない月曜日だ。
明日になれば、また仕事。嫌いな上司の顔色伺って、ブラックスレスレの業務をこなして、自分のAPとMPをやりくしながら、次のお休みまでHPを削る。
推しとごはんと、呟きックスと昼寝とお酒と等々が、ポーションでキズぐすりで回復薬。
明日からまた頑張りましょう。
きっと相変わらず上司はクソで仕事もクソだろうけど、乗り越えていきましょう。
ということで、職場の長い付き合いの、先輩のアパートで、半々にお金と食材出し合って、ちょっと贅沢なディナーとデザートを、シェアすることになった。
「明日も明日で、34℃予報だってさ」
先輩の部屋は、ある程度の高さの階にあって、防音防振対策完備な部屋で、
ワーストでもベストでもなく、まぁまぁ、窓の下にそこそこの夜景が見える。
「酷いよね。9月って何だっけ、っていう」
コンビニとか、カフェとか、他のビルの階下とか。
防音設備のおかげで、外の騒音なんて全然聞こえないけど、
光の洪水は、夜の営業と生活の過程と結果は、カーテン開ければ問答無用で入ってくる。
「先輩大丈夫?明日溶ける?」
そこそこの階に住んでる人なら、誰でも見てるような、別に10万ドルも1000万円も無さそうな、どこにでもある夜景を見る。
ちょっとまぶしい中での水炊きモドキは最高だし、その出汁を少しかけたたまご雑炊もおいしかった。
先輩は雪国出身だった。
寒いのは氷点下だって気にしないけど、暑いのはバチクソ弱い。
実際、いつかの35℃は職場でぐねんぐねんに溶けてたし、一度熱中症で倒れたこともあった。
懐かしいな、いつだったっけ。
「また倒れたら、私に構わず例の案件、進めてくれ」
答える先輩は他人事。
おかわりのお肉とスープを私によそって、渡して、それから私の空っぽになったカップをお花の工芸茶で満たして。
「私が居なくても、お前なら、なんとかなるだろう」
私と、私の奥に光る夜景を、
何か、思うところが有りそうな、心に1個か2個決意した事が在りそうな、
目の奥に小さい、強い光を秘める視線で、それとなく、見てた。
心当たりはある。
何を考えてるか、多分私も知ってる。
先輩自身の恋愛トラブルだ。
先輩を追っかけて私達の職場にまで突撃してきた、
先輩の住所を特定するために私に探偵を付きまとわせた、あの人。
例の初恋相手兼ストーカーさんだ。
先輩はこのアパートを引き払うつもりだ。
これ以上初恋さんが、私や先輩の周囲に迷惑かけないように、東京から離れるつもりだ。
いわゆる「女の勘」だけど、きっと、多分、そうだ。
ストーカーさんの暴挙を止めるために先輩が東京から出てくのは何か違うと思う(個人の感想)
「私、先輩居なかったら、バチクソ仕事サボるから」
良いよ。自分の口で、ハッキリ話してくれるまで、気付いてないフリしてあげる。待っててあげる。
水炊きモドキのお肉かじって、お茶飲んでジト目で先輩を見る私を、
「それは……困るな」
先輩は一生懸命に頑張った苦笑で、自分の本心を、必死に誤魔化してそうだった。
「お題としては『花』は4回目だけど、花をネタにした投稿は、他にも複数回書いてるのよな……」
今回ばかりは、「花」ひとつのモチーフに今まで頼りすぎてきた自分のせいだな。
某所在住物書きは、今回ばかりは物語の書きづらさを、己の失態によるものと認めた。
桜吹雪を流れ星に見立てたり、ポットの中に工芸茶の花を咲かせたり、名字に埋め込んだ花とその花言葉を連動させたり。
フクジュソウ等々、季節の「花畑」を物語に登場させたこともあった。
「花畑を星空に例えたこともあった、かな?」
そういえば。物書きは苦し紛れに、ひとつ物語を仮組みする。
「逆に星空を花畑に例えるとか」
つまり、こういうことなんだがな。物書きはメモ帳アプリを呼び出し、投稿文の下書きを打ち始めて……
――――――
「花」のモチーフを何度も使いまわして、段々花ネタの尽きてきた物書きがお送りするおはなしです。
困った時の、童話頼みなおはなしです。
せっかくの3連休に、それでも特別な予定無き物書きの、以下は、いわばちょっとした、イジけ節です。
最近最近の都内某所、某稲荷神社に、不思議なお餅を売り歩く、不思議な子狐が住んでおりました。
子狐は、時折神社の参拝客の、過去の祈りや現在の思い出、未来の願いなんかを夜の夢に見るのですが、
連休だったり、夏休みだったり冬休みだったり、行楽シーズンの丁度終わった頃合いに、
たまに、それはそれは、美しい夢を見るのでした。
『光害、こうがい、と言うんだ』
昔々父狐が、子狐に言ってきかせました。
『お外が暗いと、お空の星がよく見える。お外が明るいと、お空の星は見えづらい。
ここから遠い、とおい、人間も明かりも少ない田舎には、そういう夜空を、毎日見られる所もあるんだよ』
それは、子狐の知らない夜の空。子狐の知らない土地の風景。
東京から地方へ旅行なり帰省なりした面々が、主に子供たちが見た、田舎や里山の星空の記憶。
高層ビル無き広い広いお空に、キラキラ小ちゃな星がいっぱい輝いて、お月さまが満月だったり三日月だったり、いつもより明るく見えるのです。
子狐はその美しい空を、誰かの思い出を、彼等が東京に戻ってくる頃夢に見るのです。
『お花畑だ!』
東京から一歩も出たことのないコンコン子狐。
広い空も、満点の星も、ましてや天の川や、LED照明無き真っ暗な夜など、絵本の中でしか見たことがないのです。
『お空に、お花畑がある!』
そんなコンコン子狐です。なにより想像力豊かなガキんちょ子狐です。おまけに、今日のお題が「花畑」なのです。
旅行や帰省から戻ってきた子供たちが持ち帰ってくる星空を、
その星空知らぬ子狐は、空の草原にカスミソウかワスレナグサか、アキカラマツかもしれません、
ともかく大きな花畑ができたと、かわいらしく、想像するのでした。
子狐は夜空の夢を見るたび、お肉もおやつもお餅も全部忘れて、ぴょんぴょんぴょん、飛び跳ねます。
お空に咲くあの花々が、コンコンコン、どうしても欲しいのです。
だけどお空のタニギキョウだかスズランだかは、遠くて遠くて、掴めず触れず、
ゆえに子狐は、心をモニョモニョさせるのでした。
『お花、おはな!』
ぴょんぴょんぴょん。
今日の夜も子狐は、知らない誰かの思い出の中で、一生懸命飛び跳ねて、小ちゃい両手を伸ばします。
『今日こそは、あのお花で花束作るんだ!』
ぴょんぴょんぴょん。
その美しい勘違いと努力は、リアルの朝日がのぼって、母狐が子狐を優しく愛しく起こすまで、ずっと、ずっと、続きましたとさ。
「雨のお題はこれで5回目なんよ……」
過去の雨ネタで何書いたかは、8月27日投稿「雨に佇む」のお題冒頭でまとめてあるから、気になったら確認してくれや。某所在住物書きは今日も頭を抱え、重複ネタにどう立ち向かうか思考を巡らせた。
ここで折れてはいられない。きっと、あと2〜3回は対峙することになる「雨」である。
筆投げて、「もう雨は書けません」して、ではいずれ来るであろう次の雨を、どう乗り切るのか。
「……つっても思いつかねぇものは思いつかねぇわ」
秋雨、氷雨、通り雨に豪雨。まだ書いていない「雨」はどこだろう。物書きは思いつく限り、泣く空を表す言葉を挙げ続けた。
――――――
3連休2日目。東京は晴れて相変わらず気温が高い。
太陽が無駄にニッコリご機嫌で、9月中旬って何だっけって暑さをしてる。
もうちょっと落ち着いてくれて良いのよ(懇願)
ただ、ずっとずっと西の方、九州の一部では、空がギャン泣き、大雨が降ってるらしくて、
職場の先輩がスマホの防災アプリで、該当地域の情報をチェックしてる。
先輩がちょこちょこ淹れて飲んでる緑茶、その産地のひとつが朝、ギャン泣きの空の下だったんだって。
「これが、その産地の茶っ葉だ」
先輩が住むアパートの一室。
先輩が食材仕入れて、料理して、私が食費とガス代を半分現金で出すっていう、節約術としてのシェアランチの後。
食後のお茶タイムで、カラリ、氷とお茶の入った白いカップを出してくれた。
「今日は暑いし、冷茶……アイスティーにしてみた」
ちなみに今日はクラッシュタイプのオートミールでとろみをつけた、辛さ控えめの麻婆豆腐だった。
片栗粉使うより、こっちの方が糖質は少ないらしい。覚えた。
「明るい若草色してる」
「私が普段飲んでいる黄色い方より、確実に渋みが少ない。味も優しいから、飲みやすいと思う」
「先輩はどっち好き?黄色い方?」
「お前は、どっちが好きなんだ」
「『両方好きだから答えられない』ね。おけ把握」
お茶飲んで、先輩からお茶菓子としてのチョコチップクッキー貰って、ぱくり。
ペットボトルのお茶とは少し違う、鼻に抜けるお茶の甘さと、爽やかさが、クッキーのチョコに混じる。
「……生クリームどら焼き食べたくなってきた」
このお茶っ葉作ってるところが、今、大変なんだ。
今まさに、空が泣いて、大降りになってる最中だろう地域のあたりを思いながら、私はもうひとくち、お茶を含んだ。
「生クリームどら焼き?」
「どら焼きのあんこの甘さをね、お茶のサッパリがサッパリにしてくれるの。で、お茶のサッパリを生クリームがラテにしてくれるの」
「はぁ、……うん、想像は、できた。同意する」
「ちょっと買ってくる」
「は?」
「生クリームとチョコと、栗と苺あたり買ってくる。先輩お茶、リットルで淹れといて」
「待て。確実に糖質過多だ。ひとつにしておけ。
おい、待てと言ってる、待、おい……
……『お茶、リットルで』……?」
「『LINE』はこれで今年3回目なんだわ……」
7月11日の「1件のLINE」、9月1日か2日付近の「開けないLINE」。そして「君からのLINE」。
さすがに4度目のこのアルファベット4文字は無いだろう、多分。某所在住物書きは配信された題目に対して、昨日に続き今日も、頭を抱えた。
ネタの枯渇である。加齢で固くなった頭で、そうそう何度もグループチャットアプリの物語を書けようか。
「『1件のLINE』は、普通にちゃっと風景書いたわな。『開けないLINE』は『開けない、既読を付けない』って話を書いた。……次は……?」
これ、次回のお題も難題だったら、どうしよう。
物書は悩みに悩み、何か突破口は無かろうかと、スマホの中のチャット履歴をそれとなく辿った。
――――――
3連休初日だっていうのに、心の中が嵐だ。
理由は2個ある。ひとつは金曜の昼休憩。私が読んでた推しの二次創作、「書きかけ」タグが付けられたやつの完結編が、推しの死ネタで幕を下ろしたこと。
なんか涙出そうになったけど、コレはコレで別に良い。二次創作だし、なにより物語そのものは感動できる終わり方だったから。
もうひとつがクソだ。職場のゴマスリ上司、後増利係長が、その日の夜に私達の仕事の成果を盗んでった。
コレのせいで、せっかくの土曜の、先輩のアパートでの美味しいシェアランチが、
ランチが、
……でも美味しい。
後増利係長。課長にその名のとおり、ゴマスリばっかりしてるエロクソ上司。
面倒な仕事は全部部下に丸投げして、その成果だけ横取りしてく、悪い上司の見本その2。
ちなみにその1はゴマスリの前任。今年の4月に成敗されたオツボネ係長だ。
ゴマスリは、私と先輩が、頑固なお客さん相手にコツコツ信頼関係結んで、何度も足運んで修正して、そうやって契約間近まで持ち込んだ仕事を、
最後の最後、あとは契約書にサインするだけって段階になって、「本来は自分の仕事だから」って。
うん(言葉にならない憤り)
「茶が入った。飲むか」
どちゃくそ頑張ったのに、その頑張ったのが、全部全然頑張ってないゴマスリの物になった。
それが金曜日。3連休前日の夜。
「おちゃ……」
私はもう、二次創作の感動と、悲しみと、色々かきむしりたくなる仕事の怒りとで、情緒がぐっちゃぐっちゃのまま土曜日に突入して、
朝ごはんも、昼ごはんも作る気無くて、そのぐっちゃぐっちゃを先輩に心配されて、チャットアプリのメッセでランチに誘われた。
『飯を作り過ぎたから食いにこないか』って。
「ごめん。機嫌悪いから、貰っても飲めない」
「そう言うな。ミント入りの、台湾烏龍だ。スッキリするぞ」
「無理ったら、無理。気持ちだけ」
「連休明けに赤っ恥確定のゴマスリをツマミに飲む茶は美味いと思わないか?」
「へ?」
「先方のご意向だ。大分お怒りになられてる」
火曜まで内緒だぞ。軽く人差し指を唇に当てて、スマホのチャット画面を見せながら、先輩が言った。
「金曜日、後増利係長に、仕事の成果を取られただろう。つまりあの件の担当者が、私とお前から、後増利係長に移るわけだ。
よって『担当が変わる』と、金曜の夜すぐ、あの客に連絡を入れたら、『お前らだから話を進めたんだ』、『担当を戻せ』とお叱りを受けてな」
ほら、コレだ。
先輩が見せてくれたチャット画面には、担当が私と先輩から、ゴマスリ係長になるって事実に対して、荒れに荒れまくってるお客さんのメッセが怒涛の勢いでブチ込まれてた。
わお(言葉にならない浄化)
「火曜日、朝イチで、電話によるご連絡を先方から」
氷の入った薄琥珀色、それで満たされたカップを、先輩が私に差し出した。
「スッキリするぞ。きっと」
しっとり汗かいたカップを受け取って、例のお客さんから来たメッセを見ながら飲んだお茶は、
確かにミントが鼻に抜けて、すごく、すっごく、スッキリした。