かたいなか

Open App
8/24/2023, 5:57:32 AM

「先週15日あたりのお題が『夜の海』だった」
前回のお題もお題だったが、今回のお題も相変わらず、手強いわな。某所在住物書きは己の記憶を辿りながら、困り果てて頭をガリガリ掻いた。
これといって海の思い出が無いのである。
「『海へ行ってボーッとする』、『海へ行くより俺はインドア派』、『ゴミ拾いと環境整備で海へ恩返し』、『台風接近中は海へ行くな』、『ソシャゲの夏イベは大抵海へ行って水着』。他は……?」
そういや、海での海難事故より、川での水難事故の発生数が云々って聞いた気がするが、デマだったかな。
物書きはふと気になり、ネット検索を始めた。

――――――

まさかの前回投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、対岸に高層ビルのLED照明溢れる海浜公園で、
エキノコックスも狂犬病もしっかり駆虫予防済みの子狐1匹にリードとハーネスをつけた若者、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、
親友ひとりと一緒に、夜の散歩をしておりました。

「こぎつね?!子狐って、おまえ、何がどうした」
「こいつが『黒歴史をこれ以上暴露されたくなければ海へ連れて行け』と」
「は?」
「信じる信じないは任せる」
「はぁ」

捻くれ者は名前を藤森といい、親友は宇曽野といいました。同じ職場の隣部署同士、時に笑い合い、時に語り合い、たまに冷蔵庫の中のプリンひとつでドッタンバッタン喧嘩したりして、
それはそれは、仲良くしておったのでした。

「ところで藤森」
くっくぅーくぅー、くっくぅーくぅーくぅ。
夜の海へ来て、散歩して、コンコン子狐はご機嫌。
鼻歌かわいらしく、尻尾もびたんびたん。前のめりになってトテトテ、ちてちて。
元気な子犬のそれと、ちっとも変わりません。
時折ピッタリ止まっては、砂浜スレスレに鼻を近づけ、何か匂いをかいでいます。
「先日無断欠勤した例の中途採用、進展があったぞ」

「『例の中途採用』、」
「突然『辞める』とダイレクトメッセージよこして、既読無視に通話不通のだんまりだった、例の」
「覚えている。何かの未遂でもしたか」
「総務課の尾壺根が動いた。持ち前のオツボネスキルで、根気強く『手続きだけはしに来い』と」
「それで?」
「終業時刻丁度に来て、離職のために必要な書類を尾壺根とふたりで整えて、課長の机に提出して帰った」

「オツボネの言うことは素直に聞くのか」
「なんだかんだ言って、中途に話しかけていたのはオツボネひとりだったからな。『こいつは味方だ』とでも思ったんだろうう」

あとは中途の部署で処理して、やることやって、中途が正式に辞めてそれで終わり。
何も特別なことは無い。いつも通り、ブラックに限りなく近いグレー企業の通常営業だ。
宇曽野はため息ひとつ吐き、ちょっと笑って、散歩を楽しむ子狐を見ました。

コンコン子狐はブラックだの、離職だのは全然知らない風に、浜辺で見つけたカニにちょっかいを出し、海へ帰ろうとする進路を塞いで鼻をくっつけ、
ぎゃぎゃぎゃっ!きゃんきゃん!
案の定鼻をハサミでバッチン。はさまれて十数秒、ドッタンバッタン暴れまわっておりました。

海へ行った人間ふたりと子狐1匹が、お散歩するだけのおはなしでした。
その後子狐は藤森に抱かれてヨシヨシされ、カニは無事、奇跡的に無傷で海に帰っていきましたとさ。
おしまい、おしまい。

8/23/2023, 7:34:13 AM

「俺の投稿スタイルなら簡単なお題だと思ったんよ」
それがまさか、16時までかかるとはな。某所在住物書きはため息をつき、スマホを見つめた。
「『裏返し』だ。俺は前半の『ここ』で300字程度の無難な話題入れて、『――――――』の下に長々連載風の小話書いてるからさ。これを単純に、裏返しにすりゃ良いと思ったわけよ。
つまり前半でバチクソ短い小話書いて、後半で長々『ここ』で書いてるような話題1000字程度」

試した結果が酷かったワケ。
物書きは再度息を吐いた。
「300字程度の短い小話は普通に読めるが、後半で長々校長のスピーチレベルのハナシされるとか、何の拷問だよっていう」

――――――

最近最近の都内某所、某アパートでのおはなしです。
人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、家具最低限の寂しい部屋に、ぼっちで住んでおりまして、
そこには何故か、リアリティーガン無視の子狐が、時に二足歩行で、時にしっかり人間に化けて、1週間に1〜2回、不思議なお餅を売りに来るのでした。
ファーストコンタクトは3月3日のひな祭り。
1個たったの200円。主食から主菜、低糖質、甘味までなんでもござれのラインナップ。おまけに食べると少しだけ、心の毒を抜いてくれる、現代人の懐にも精神衛生にも優しいお餅なのです。

今日もコンコン子狐が、防犯意識強化の叫ばれる昨今、唯一扉を開けてくれる捻くれ者の、子狐にとってのお得意様の部屋にやって来ます。
右手に透かしホオズキの明かりを、左手に葛のツルで編んだカゴを持ち、
ドアを開けて、狐を部屋の中に招き、お餅を売って買ってそれでおしまい、
だった、筈なのですが。

「お花さん、こんばんは」
鼻の良い子狐、捻くれ者がその毒性ゆえに隠していた花の底面給水鉢を、くんくん見つけ出し、引っ張り出して、コンコン、おしゃべりを始めたのでした。
「お花さん、なんていう名前ですか」
それはそろそろ見頃を終える、捻くれ者の故郷の花。
毒にも薬にもなる、白いキンポウゲ科の花でした。

「子狐、こぎつね」
「おとくいさんとは、長いの? そっか。お花さん、ずっとずっと、おとくいさんと一緒に居るんだねぇ」
「何をしてる、花が喋るのか」
「たまに、お部屋が暑くなる?光が無くなってから?きっと深夜エアコン切ってるんだよ。『暑いからエアコンつけて』って、伝えてあげる」
「エアコン?」
「そろそろ窮屈?根っこ?うん分かった。伝える」
「おい、まさか本当に、」

「おとくいさん、昔々初恋のニンゲンの毒にやられて、一晩だけお花さんを抱えて泣いたことがある?」
「待て、何が望みだ、取り引きしようこれ以上私の黒歴史暴露するのやめてくれ頼む」

「『自称人間嫌い』は優しさの裏返しで、『自称捻くれ者』も実は真面目の裏返し?」
「こ ぎ つ ね」

コンコンコン、コンコンコン。
今回のお題が「裏返し」なばっかりに、藤森の部屋ではその後10分程度、捻くれ者の「捻くれ者」である由縁と、その裏返しの大暴露大会が、続いたとか、いくらかの賄賂で穏便に収まったとか。
不思議な子狐と捻くれ者による、「裏返し」をお題にした苦し紛れのおはなしでした。
おしまい、おしまい。

8/22/2023, 4:07:11 AM

「基本、生き物系のお題、少ない気がする」
猫だの犬だの兎だの、これまで約5ヶ月、お題で見た記憶無いもんな。
某所在住物書きは今回配信分の題目の、ちょっとした珍しさに数度小さく頷いた。
「『鳥かご』ってお題は有った。『鳥かごの中の鳥は、大抵かごから出されて、最終的に自由になるのが物語のお約束な気がする』ってネタ書いた気がする」
鳥のように。……とりのように、ねぇ。
物書きは長考して、ふと某呟きの青鳥を思い出し……

――――――

雨降って、空が灰色で、ジメジメして、最高気温が猛暑手前予報。今日も相変わらず東京は残暑が酷い。
「晩夏」っていつだっけ、どんな気温の頃のことだっけって、思う程度には暑さがバグってる。
きっと職場の、長い付き合いの先輩の、故郷だっていう雪国は、もう涼しくて快適なんだろうな、
って北海道とか東北とかの気温調べたけど、今日の札幌市の予想最高気温が東京と同じ34℃だって分かって、心の中で道民さんに猛烈に土下座した。
十分雪国の筈の秋田県も、今日35℃超えだって。
なにそれ季節感ホントに仕事して(嘆願)

そんな今日の、私の職場の朝は一部騒がしかった。

「中途採用の、若いのがいただろう」
職場に来たら、私の隣の隣の部署が、朝から少しだけ慌ただしくて、
係長か主任か知らないけど、数人が課長の席に集まってたし、他の人はスマホで連絡取ったりしてたし。
「無断欠勤のうえ、電話もグループチャットも、全部連絡つかずの既読無視、だとさ」
どしたの、何があったの。
隣部署の宇曽野主任と話し込んでるウチの先輩に、会話の横槍で聞いたら、「実はな」って、情報提供してくれた。

「始業時刻丁度にダイレクトメッセージで、『辞めます』の4文字だけ、送ってきたそうだ」
先輩が言って、
「部署内で、『例の突然解雇された青鳥のようだ』と騒いでる最中さ」
宇曽野主任が補足した。
「『突然の告知で、何の事前相談も無く消えた』。『向こうは解雇でこっちは離職。正反対だけど青鳥のように消えた』と」

突然辞めるのはどうかと思うけど、そうしたくなった理由は、だいたい把握してた。
先日の「デカいミス未遂」だ。
メタいハナシをすると、詳しくは今月の18日。
中途採用君は、書類をファイルから抜いて整理する仕事を任されたんだけど、
中途採用君の上司が「この書類は抜かないで」って、伝えるべき「例外」を伝えなかったせいで、抜いちゃいけない書類まで抜いちゃった。

情報伝達の不備。それによる仕事のミス。なのに責任は全部自分が被るっていう理不尽。
私も5ヶ月前、3月18日頃に、似た状況で上司から責任を押し付けられて、心をちょっと病んだ。
私には先輩がいて、先輩が私の話を聞いて寄り添ってくれたから、乗り越えられた。
中途採用君には誰も居なかったのかもしれない。

「まぁ、鳥なら鳥として、鳥のように、自由に今頃次の就職先でも探してるんじゃないか?」
運が悪かった、場所が良くなかった。それだけさ。
宇曽野主任はそう付け足して、先輩と一言二言会話して、自分の部署に戻ってった。
「うん……」
場所が悪かったら、鳥もうまく、飛べないもんね。そうだよね。
隣の隣の部署の、まだ静まってない騒動をちょっと見てから、
私もそろそろ自分の鳥かごの中で飛ばなきゃ、鳴かなきゃって、自分の止まり木であるところのデスクに戻った。

8/21/2023, 5:53:54 AM

「過去の似たお題は、5月23日頃の『昨日へのさよなら、明日との出会い』、それから5月20日か19日あたりの『突然の別れ』が該当するのかな」
前者は「昨日にさよならして、『今日』じゃなくて『明日』と出会うって、『今日』はどこに置き去りにされてんだ」って切り口で童話風のハナシ書いて、
後者は、前回&前々回等々で丁度書いてた「捻くれ者の初恋と失恋話」にも繋がってるハナシ書いてたわ。
某所在住物書きは遠い遠い過去作を辿り、スワイプに疲れてため息を吐いた。

「過去作辿るの本当にダルいから、呟きックスに鍵垢作って自分専用にまとめてやろうかと思ってた矢先、例の『2014年以前の短縮URL』だろう?」
まとめ作っても、さよなら告知される前に仕様変更なり不具合なりされちゃ、ねぇ。物書きは再度ため息を吐き、ぽつり。
「結局いにしえの個人サイトが比較的安全なのか?」

――――――

最近最近の都内某所、某アパートの一室。
人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、腕を組み、人さし指を唇に軽くあて、
ぼっち用の小鍋の中でコトコト揺れる、鶏肉とキャベツと玉ねぎと、コンソメスープに浮かぶ脂を見つめながら、長々考え事をしている。
名前を藤森という。
元々少なかった藤森の部屋の家具は、先月下旬から更に減って、最低限最小限しか残されていない。

まるで、すぐにでも部屋を引き払い、どこへでも逃げて行けるようである。
事実それを想定しての少なさである。
詳しくは過去作品7月20日投稿分あたりに丸投げするが、要するに藤森は諸事情によって、
昔あるひとに恋をし、執着強いそのひとに心を傷つけられ、ゆえに区を越え今まで逃げ続けてきたものの、
先月、ふたりバッタリ道端で、出会い見つかってしまったのだ。

(早めに、離れた方が良いだろうな)
部屋の退去に必要な書類も、費用も、どの移動手段を用い何処まで逃げるかも、藤森はある程度、準備とシミュレーションが整っていた。
(都内で恋して都内で失恋して、都内に逃げたんだ。向こうが私を探すなら、いずれ必ず、見つかる)
もう、逃げるのは「これきり」にしよう。
今度こそ、あのひとの手の届かない場所へ。己の故郷であるところの雪国へ逃げよう。
そこまで決心しておきながら、なお己のアパートに留まるのは、ひとえに今の生活が幸福であったから。

(誰にもバレないように、悟らせないように、準備して手配して、手続きも終わらせて、
……宇曽野とあの後輩に、さよならを言う前に、さよならも言わずに、東京を出ていく?)
ブラックに限りなく近いグレー企業、クソ上司とクソ業務に追われる毎日。あらゆる物価が高く、騒音も光害も故郷に比べればただ酷い。
その東京で、藤森は真の友情を誓い合う親友ひとりと、食いしん坊で少々おてんばで時に頼り頼られる後輩ひとりを得た。
週に1〜2度部屋に来る、不思議な不思議な餅売りとも、思い返せば約5〜6ヶ月の付き合いとなった。
彼等との別れが、ただただ惜しいのだ。

(どうしよう)
決められない。踏ん切りがつかない。
藤森は己の優柔不断な脆弱さに長いため息を吐き、腕を組み直す。
(あのひととは、もう会いたくない。だが宇曽野と後輩は惜しい。私は、どうするべきだろう)
失恋相手との絶対的距離をとるか、己の交友関係を固持するか。
どっちつかずが一番困るのだと、自分自身よく理解しているくせに、
結局のところ、その両端から最も離れた位置で、どちらが正しいだろうと途方に暮れている。

「分からない。 わからないよ。宇曽野」
誰にも聞こえないのを良いことに、藤森はぽつりと己の弱さを開示して、
「……、っ、あッッつ!!」
ピチャリ沸騰で跳ねた水滴ひと粒に、しっかりしろと腕をつつかれた。

8/20/2023, 1:20:22 AM

「『星空の下で』、『遠くの空へ』、『あいまいな空』、『星空』、『空を見上げて心に浮かんだこと』、それから今日の『空模様』……」
そろそろ『空』のネタが枯渇しそうですが、まだ空のお題来そうですか、そうですか。
某所在住物書きは過去の投稿分を辿りながら、「これの他に何が書けるだろう」と苦悩した。
「『くもり空の夜のテラス席』、『遠い空=遠い場所』、『晴れ雨あいまいな空を背景に日常ネタ』、『星空に見立てた、白い雨粒と青い池』、『空模様から連想する夏の食い物』。……コレの他だ」
で、何を書く?どう組み立てる?物書きはため息を吐き、明日こそは書きやすい題目が来るよう祈った。

――――――

最近最近の都内某所、某深夜営業対応のカフェ。
人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者、つまり前回投稿分で初恋相手にディスられ、心をズッタズタにされていた雪国出身者が、
己の親友であるところの、宇曽野という男と共に、窓の外を見ながら、
片や氷入りのコーヒーとサンドイッチ、片や自家製アイスクリームを溶かしてミルク量を調整するタイプの紅茶を、それぞれ楽しんでいる。
容赦ない残暑は引き時を知らず、16時付近に発表された雷注意報を伴い、空模様はぐずついて、斯くの如しであった。

「惜しいなぁ。藤森」
「なにが」
「お前、昔なら雨も雷もそりゃ喜んで、今の10倍くらい幸せそうに音を聴いてたのに」
「そりゃ、例のあのひとに、呟きックスで『雨好きなの解釈違い』だの、『雷好きだって、おかしい』だの言われたから。心の傷にもなろうさ」

詳細は過去作6月4日と7月30日投稿分参照ではあるものの、
8年前、恋破れて、大きなキャリートランクひとつで区を越え逃げて、流れ着いた藤森が最初に立ち寄ったのが、このカフェ。
当時ボロボロに壊れた心のまま、「もう恋などしない」、「もう人の心など信じない」と泣いた厭世家は、上京初日に出会った宇曽野との真の友情に救われて、重傷だの致命傷だのから生還した。

都会と田舎のギャップ、初恋と失恋の落差、鋭利で利己排他的な言葉等々。
擦れて刺されて打ちのめされた心と魂の傷に、親友の手と、声と、強い瞳が、どれだけ善良な薬として機能したことか。

「俺は好きだぞ。雨の音を、目を閉じて聴くお前」
「はいはいウソ野ジョーク」
「お前があの失恋相手から、本当の意味で自由になるのは、一体いつになるんだろうな」
「もう十分自由だ」
「いいや。お前はまだ、がんじがらめのグルグル巻きだよ。そろそろ雲に捕まってるゲリラ豪雨じゃなくて、虹連れてくる天気雨にでも転職したらどうだ」
「すまない。比喩が独特過ぎて分からない」

ゴロゴロゴロ。
どこかで遠雷の聞こえた気がしないでもないカフェスペースは、心なしか窓からの光量が減じて、ひと雨来るか気のせいかの様子。
「そういえば宇曽野」
アイスクリーム浮かべた紅茶を僅かに揺らし、藤森が尋ねた。
「お前、傘持ってきてるか?」

「かさ?」
今日は別に雨の予報でもなかった……筈だよな?
ポカン顔の宇曽野は藤森の質問の意味を勘繰り、首を傾けて、
途端はたと己のスマホを取り出し、周辺の雨雲レーダーの状況を調べ始めた。

Next