かたいなか

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7/29/2023, 6:02:53 AM

「お祭りに、参加するハナシかお祭り自体の関係者か、そういうのを準備する立場からのハナシか、なんなら露店視点のハナシも、書けるっちゃ書けるか」
最近は真夏日猛暑日の報道ばかりだから、ぶっちゃけ俺は夏祭り行けてねぇけどさ。某所在住物書きは今回分の題目を見ながら、最後に祭りで飲食したのは何年前だったろうと回想した。
「あと、祭りであれば良いワケだから、春の花見だろうと冬の雪祭りだろうと」
そういや某雪まつり、2024年の雪像のラインナップ、どうなるんだろうな。物書きは暑さの逃避として、遠い約半年後の祭りを思い、アイスをかじった。

――――――

最近最近の都内某所は、相変わらずの最高気温。
雪国出身という、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者は、外出すれば秒で溶けてしまう。
よってもっぱら某アパートの己の部屋で、防音防振の静寂を享受しながら、ひとり来週の仕事の整理と準備をしていた。

『今日花火大会だって!』
ピロン。そんな捻くれ者のスマホに、グループチャットアプリでメッセージを寄せる者があった。
『19時から!花火!クレープ!たこ焼き!』
捻くれ者の知らぬアニメキャラのスタンプが、ハイテンションで連打して添えられている。
長い付き合いであるところの、職場の後輩である。
メッセージを読み、思案に短く息を吸い、吐いて、
画面を変え17時から21時近辺の天気予測と気温を確認して、小さく首を横に振った。

16時で35℃の予測である。
大会開始時点で31℃である。
後輩は無事であっても、捻くれ者は確実に途中でダウンしてしまうだろう。

『私などと一緒に行っても楽しくないだろう』
遠回りな表現でお断りの返信をして、捻くれ者が資料の作成に戻ろうとすると、

『行くんじゃないの。見るの』
ピロン。すぐスタンプとメッセージが返ってきた。
『先輩の部屋静かじゃん。涼しいじゃん。そこそこの高層階だから、焼きそばとかチキンとか、チョコバナナとか持ち込んでお祭りごっこ、みたいな』
そうくるか。
捻くれ者の目は秒で点になった。

『見えるかどうか、保証できない』
『ケバブと焼き鳥があれば雰囲気は出る(断言)』
『それはただの飲み会だ』
『じゃあ例の稲荷神社のおみくじと御札買って、お祭り要素追加しとくから。あとアイスとかき氷』

『何かあったのか。やけ食いのように、食べ物の名前がポンポン出てくるようだが』
『昨日ゴマスリ係長に捕まって不要不急のサビ残と上司接待させられた』
『了解。把握した』

要するに、花火や祭り云々より、心の緊急デトックスが本音本題らしい。
後輩の言う「サビ残と上司接待」を用意に想像できる捻くれ者は、少しの同情を寄せ、ため息をひとつ。
延々無駄な話を聞かされ、ぐずぐず己の管轄外を、書類なり掃除なり整理なり、やらされたに違いない。
『串焼き程度は用意できる。他に食いたいものがあれば、手間だろうが自分で買ってきてくれ』
冷蔵庫の中の肉と野菜を確認して、捻くれ者が降参のメッセージを送信すると、

『りょ!宇曽野主任も行くってさ。先輩の親友の』

「は?」
すぐに返信が来て、その文面は、再度捻くれ者の目を点にさせた。

7/27/2023, 3:23:19 PM

「神様ァ!3回目だぜ神様……」
拝啓神様。4月に「神様へ」で1度目、今月頭に「神様だけが知っている」を書きました。そろそろネタ切れそうですが大丈夫でしょうか。某所在住物書きは、19時着の通知画面を見た途端、目を閉じ、上を向きため息を吐いた。
「4月は神様のお告げのハナシ書いて、今月最初は御『神』木だけが知っている、ってネタにしたわ。
二番煎じだが、お告げネタもう1回出すか……」
もう1回神様ネタあるよ、とか託宣貰ったら、俺、「無理ぃっ!」てダイス振って宇宙規模の冒涜系深淵物語でも書くのかな。物書きはため息とともにいあいあし、ふんぐるいむぐるうなふであった。

――――――

片や現実ベースのネタが多い連載風アカウント、
片や完全非科学の信仰・神秘系なお題。
なかなかに水と油、混ぜるのが難しそうな組み合わせですね。こんなおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所、某アパートに住む人間嫌いで寂しがり屋な捻くれ者、藤森と言いますが、
この藤森のアパートには、稲荷神社に住む子狐、不思議な不思議なお餅を売り歩く御狐見習いが、週に1〜2回やってくるのでした。

「茶香炉さん、ちゃこーろさん、おはなし聞かせてくださいな」

今日もコンコン子狐が、葛のカゴ持ちホオズキの明かりを担いで、ピンポンピンポン。藤森の部屋までやってきて、インターホンを鳴らします。
部屋に入れて、少しお話をして、いつもならお餅を買ってハイおしまい、なのですが、

「茶香炉さん、いともかしこき、ハヤスサノオのミコトの子、ウカノミタマのオオカミサマの、しもべがコンコンゆるします。おはなし聞かせてくださいな」

何を察したかコンコン子狐、藤森の部屋の床に置きっ放しになっている、焙じ茶製造器もとい茶香炉の、匂いをくんくん嗅ぎまくり、クワァッ!とひと声鳴いてから、くるくるとてとて。周囲を回り始めたのです。
「くださいな、くださいな……」
子狐が人の言葉を話すのは棚に上げておくとして、
茶香炉が、話などするものか。藤森は思います。
それとも、大切に使った物に魂が宿るとかいう、「つくもがみ」か何かだろうか。藤森は考えます。

くるくるくる、くるくるくる。
何十周回ったともしれぬ子狐。突然ピタリ足を止め、その場にちょこんと座り込むと、
なんということでしょう。
『いや、付喪神は100年を経た器物に宿る精霊であって、お前に大事にされた「ワタシ」は厳密には、何だろうな……』
今回のお題どおりか別の物の怪か、ともかく「何か」が茶香炉に「舞い降りて」きて、藤森の声と抑揚で、真面目に堅苦しく話し始めたではありませんか!

「おまえ、だれだ?」
これには藤森もびっくり仰天。SAN値チェックのお時間です。0/1D6と思われます。

『誰って。今回のお題を知らないのか。お前が前回投稿分で売っ払おうとしていた茶香炉だ。今お前の目の前に在るだろう』
「前、なんだって?」
『にしても困るじゃないか。ワタシに今、お役御免など。12月のクリスマス近辺で後輩の手に渡る予定なのだから、それまではだな。そもそも、』
「12月、クリスマス……?」

ぺらぺらぺら、ぺらぺらぺら。
藤森の声した「何か」の話は、子狐が掛け合いで途中参加して、なんやかんやの座談会。
話のペースについていけない藤森は、ただただポカンで、開いた口が塞がらず、
ハッ、
と気が付いたら、何故か早朝のベッドの上。

夢オチだったのでしょう。あるいは微粒子レベル程度は可能性が残されているのでしょう。
ともかく茶香炉は以降ウンともスンとも言わず、いつもどおり、完全にただの茶香炉であったのでした。
おしまい、おしまい。

7/27/2023, 3:42:27 AM

「誰か、そのひとのためになるならって、やった行動で自分が傷ついた事例なら複数個あるわ」
今日も今日とて手強いお題がやってきた。某所在住物書きはガリガリ頭をかき、どう物語を組むべきか、相変わらず途方に暮れている。
「何年も昔のハナシだけど、一番困ったのがコレよ。『こういうハナシが読みたいのか』って、コメントそのままの物語書いたら、コメントよこした本人から『それ私地雷です』って。……あのさぁ」
意外と、『そのひとのためになるなら』って行動を何もしないのが、そのひとのためになる説。
物書きは昔を想起し、うつむいて床を見た。

――――――

職場の後輩に、アパートの自室で使っていた私の焙じ茶製造器……茶香炉をせがまれた。
「私にとっては、結構、大事な思い出なの」
後輩は言う。無償譲渡が不満であれば買い取る、とまで提案してきた。
フリマアプリにネットショップ、専門店、100均の代用品等々、自分の好みに合致するデザインなら、いくらでも探せるものを。
それでも、後輩は「その」茶香炉が欲しいという。
茶葉から淹れて茶を飲む習慣の無い後輩に、茶葉を消費して香るそれは、無用の長物のように感じた。

きっかけは職場だった。
『先輩、焙じ茶製造器まで処分しちゃうの?!』
室内の余分な家具だの小物だのを、理由あって、整理し片付けている最中だった。
『他人に売っちゃうくらいなら私欲しい、なんなら私買ってもいい』
今日も、仕事の帰りに小物を売り払おうと、小箱3個を職場に持ち込んでいた。
その中に茶香炉が含まれていて、後輩に見つかり、「処分しちゃうの」、に繋がったワケだ。

茶香炉は、プチプライスショップ等のアロマポットでも代用可能な香炉で、オイルの代わりに茶葉を熱し、その過程で焙じ茶の茶葉と香りを作り出す。
緑茶、紅茶、ハーブティー。遊びで山椒の葉をブチ込んだこともあった。
たまに私の部屋に来る後輩は、この香炉の香りがひとつの癒しになっていたという。

「記憶が間違ってなかったら、直近だと多分6月25日とか、5月10日とか」
後輩は具体例を挙げた。
「私が精神的にバチクソ疲れて、先輩の部屋に厄介になったとき、先輩、部屋で焚いてくれたじゃん。
先輩には小さい気遣いだったかもしれないけど、私、その気遣いがメッチャ嬉しかったの」
だから、処分しちゃうくらいなら、欲しいなって。
相当思い入れがあったらしく、後輩は私がイエスともノーとも言わないうちに、茶香炉を大事そうに、両手で包み抱えて、自分の机に置いてしまった。

「茶香炉には、茶葉が必要だ。お前わざわざ茶香炉用に、淹れる習慣の無い茶葉を買うつもりか」
「買うもん。淹れるもん」
「淹れた後の片付けが面倒だぞ」
「お茶出しパック使うもん」
「あのな」
「お願い。処分しないで」

「……」

お願い。
後輩は再度呟き、私を見て、香炉を遠ざけた。
こうなったら後輩は譲らない。テコでも動かない。キャンドルと茶葉の出費も、黒いスス取りの手間も、後輩には何の説得効果も無い。
「私の負けだ。認めよう。参った」
茶香炉を自室に留めておくことで、誰かの、後輩のためになるなら、無理に手放す必要も無いだろう。
「それは処分しない。香りが欲しくなったら、これまでどおり、私の部屋に来ればいい」
ため息ひとつ吐いて茶香炉を取り上げると、後輩は安心したような、嬉しそうな笑顔で、私を見た。

7/25/2023, 3:09:00 PM

「『鳥かご』、……とりかご……!?」
前回が前回で今回も今回。難題去ってまた難題。某所在住物書きは19時着の題目を見て、今日も天井を見上げ途方に暮れた。
「『いわく付きの鳥かごがひとつありました』と、『鳥かごの中の鳥は幸福でしょうか不幸でしょうか』と、『◯◯さんはまるで、鳥かごに囚われた鳥みたいでした』と?あと何だ……?」
うんうん恒例に悩んで複数個物語のネタを書くも、「なんか違う」と頭をかいては白紙に戻す。
妙案閃かぬ苦悩の顔はチベットスナギツネである。
「ダメだわ。頭固くて思いつかねぇ」
次回はもう少しイージーなお題でありますように。物書きは祈り、ため息を吐いたが……

――――――

最高気温がほぼ人肌だった都内某所、某アパートの一室。人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が、職場の後輩と一緒に、穏やかな白の甚平とラムネで涼をとっておりました。

「ただの、私個人の、いち意見なんだけどね」
「なんだ」
「先輩、なんか加元さんのせいで、鳥かごの鳥みたいにされちゃってる気がして」
「とりかご?」

捻くれ者は名前を藤森といい、やむを得ず、自分の初恋相手から8年間、ずっと逃げ続けておりました。
初恋相手は加元といいました。元カレ・元カノで、「かもと」。単純ですね。
藤森はこの加元に、呟きアプリで一方的にこき下ろされ、心を傷つけられたために、みずから縁を切り姿を消したのでした。

なのに先日自分をボロクソにディスった筈の加元とバッタリ会って、向こうが「待って」「話を聞いて」と追っかけてきたからどうしよう。
藤森はアパートの家具を整理して、減らして、
加元に居住地がバレた時にすぐ逃げられるよう、着々と、粛々と、準備をし終えてしまったのでした。

それが悔しくて悔しくて、ちょっとだけ困るのが藤森の後輩。
数年、長い間一緒に仕事をしてきたのです。なによりちょこちょこアパートに来て、一緒にリモートワークをしたり、ついでに自炊ランチをご一緒したりしていたのです。
藤森がこのまま逃げてしまったら、後輩は藤森の作る低糖質低塩分メニューと、藤森が淹れる優しいお茶を、きっともう口にできなくなってしまうのです。

「縁切ってからも、ずっと『加元さんと会わないように』、『会ってもすぐ逃げられるように』って、加元さん中心の考えで生きてきたってことでしょ。それじゃあ先輩、どれだけ逃げても遠くに行っても、加元さんの鳥かごに閉じ込められっ放しの鳥だもん」
「つまり?……何が言いたい?」
「そろそろ加元さんから自由になろうよ。鳥かごの中の鳥はさ、おはなしの中では、大抵そこから出てくのがお約束だもん。
加元さんにキッパリ言うの。『追ってこないで』って。『あなたとヨリを戻す気は無い』って」

ホントにただの、私個人の意見でしかないんだけどね。でも、ちょっとだけ、言うだけ言ってみようかなって。
後輩はそう付け足して、「ぶっちゃけもう低糖質冷製パスタとかチーズリゾットとかが食べられなくなるのはたえられない」なんて食欲はこっそり隠して、
先輩を、藤森をまっすぐ見つめたのでした。

藤森は寂しそうな、苦しそうな目で後輩を見つめ返し、たまらなくなって視線を下げました。
「……ありがとう」
藤森は言いました。
「要するに、私のメシはお前に好評だったんだな」
いかな透視を使ったか、後輩のじゅるりな食欲は、隠した筈の嘆願は、藤森にがっつりバレてしまっていましたとさ。

「あのね、先輩、私は先輩のことを思って、」
「顔に書いている。『シェフを手放したくない』と」
「過去の鳥かごにとらわれるより、私ともう少し一緒にパスタ食べてください」
「検討はする。……検討はな」

7/25/2023, 5:08:24 AM

「友情っつー友情でもないが、3月7日か6日あたりに『絆』っつーお題があった。あと、友情じゃなく愛情。『愛と平和』とか『愛を叫ぶ』とか」
ひとつ物語を組んでは納得いかず白紙にして、もうひとつ物語を閃いては以下省略。このままでは19時に次の題目が来てしまうと、某所在住物書きはため息を吐いた。
「書いて消して書いて消して。自分の納得いくハナシが出てこないからまた消す。……妥協って大事よな」
愛情の長続きも友情の長続きも、小説書くのも意外に根っこが一緒で、適度な距離を保ってどこかで妥協するのが大事、なのかも。
物書きは再度息を吐き、天井を見上げた。

――――――

寂しがり屋な捻くれ者と、その後輩が、美しき友情により結託して、高温続く今日から金曜までのリモートワークを勝ち取る。
そんなネタを、思い浮かんだは良いものの、うまくストーリーを組めなかった物書きです。
そこで本日は昔のおはなし、年号が令和に切り替わった直後のおはなしを、ご用意しました。

「藤森。この案件は、お前がやれ」
「お言葉ですが、宇曽野主任。私などが担当するより、主任がおやりになった方が、確実に、迅速に終わると思いますが」

5年前、2017年の都内某所。某職場。限りなくブラックに近いグレーのそこ。
2023年現在は隣部署同士。しかし当時は同部署の、入社3年生な捻くれ者と、その教育係兼上司。藤森と宇曽野という親友ふたりがおりました。
右手と左手を合わせ、握り合い、
左手と右手でバインダーを押し返し合い、
ギリギリギリ、グギギギギ。足を開き腰に力を入れ、柔道ごっこかレスリングごっこをしている様子。
親友同士が手を取り合って、譲り合う。
友情いっぱい。とても美しい光景ですね。

「お前が他のやつらを全然頼ろうとしないから、協力し合う習慣をつけさせるために、これを預けるんだ」
「人は得意不得意があります。私は単独の方が力を発揮できるし、ミスも少ない。ご存知でしょう」
「うるさいコレでチームを頼れ。誰かと手を取り合うことを学べ。お前に足りないのは『他人』だ」

他人に手を差し出せ。上司の宇曽野が諭します。
その他人に心をズッタズタにされたので、無理です。3年生の藤森が訴えます。
ともかく宇曽野は藤森と他人の手を繋がせたがり、藤森はまだ宇曽野以外の他人が怖いのです。
片や友を思うがゆえの厳しさ、片や目の前の親友ひとり以外心を開けない弱さ。初々しい背景ですね。

「そもそも何故友人の俺に他人行儀で話す」
「ご自身の役職お忘れですか。宇曽野『主任』」
「また他人行儀で言った。ペナルティーにこの案件」
「『パワハラ』もお忘れのようですね。『主任』」

ギリギリギリ、グギギギギ。
仕事の譲り合いはその後数分続き、結局、藤森が受けて単独で処理。
そんなこんなしていたふたりも、5年経過した現在では、双方職場でもタメグチの仲良しで、笑い合い語り合い、互いが互いのプリンを勝手に食べて喧嘩したりするのですが、
その辺に関しては、過去投稿分参照ということで。
おしまい、おしまい。

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