かたいなか

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「神様ァ!3回目だぜ神様……」
拝啓神様。4月に「神様へ」で1度目、今月頭に「神様だけが知っている」を書きました。そろそろネタ切れそうですが大丈夫でしょうか。某所在住物書きは、19時着の通知画面を見た途端、目を閉じ、上を向きため息を吐いた。
「4月は神様のお告げのハナシ書いて、今月最初は御『神』木だけが知っている、ってネタにしたわ。
二番煎じだが、お告げネタもう1回出すか……」
もう1回神様ネタあるよ、とか託宣貰ったら、俺、「無理ぃっ!」てダイス振って宇宙規模の冒涜系深淵物語でも書くのかな。物書きはため息とともにいあいあし、ふんぐるいむぐるうなふであった。

――――――

片や現実ベースのネタが多い連載風アカウント、
片や完全非科学の信仰・神秘系なお題。
なかなかに水と油、混ぜるのが難しそうな組み合わせですね。こんなおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所、某アパートに住む人間嫌いで寂しがり屋な捻くれ者、藤森と言いますが、
この藤森のアパートには、稲荷神社に住む子狐、不思議な不思議なお餅を売り歩く御狐見習いが、週に1〜2回やってくるのでした。

「茶香炉さん、ちゃこーろさん、おはなし聞かせてくださいな」

今日もコンコン子狐が、葛のカゴ持ちホオズキの明かりを担いで、ピンポンピンポン。藤森の部屋までやってきて、インターホンを鳴らします。
部屋に入れて、少しお話をして、いつもならお餅を買ってハイおしまい、なのですが、

「茶香炉さん、いともかしこき、ハヤスサノオのミコトの子、ウカノミタマのオオカミサマの、しもべがコンコンゆるします。おはなし聞かせてくださいな」

何を察したかコンコン子狐、藤森の部屋の床に置きっ放しになっている、焙じ茶製造器もとい茶香炉の、匂いをくんくん嗅ぎまくり、クワァッ!とひと声鳴いてから、くるくるとてとて。周囲を回り始めたのです。
「くださいな、くださいな……」
子狐が人の言葉を話すのは棚に上げておくとして、
茶香炉が、話などするものか。藤森は思います。
それとも、大切に使った物に魂が宿るとかいう、「つくもがみ」か何かだろうか。藤森は考えます。

くるくるくる、くるくるくる。
何十周回ったともしれぬ子狐。突然ピタリ足を止め、その場にちょこんと座り込むと、
なんということでしょう。
『いや、付喪神は100年を経た器物に宿る精霊であって、お前に大事にされた「ワタシ」は厳密には、何だろうな……』
今回のお題どおりか別の物の怪か、ともかく「何か」が茶香炉に「舞い降りて」きて、藤森の声と抑揚で、真面目に堅苦しく話し始めたではありませんか!

「おまえ、だれだ?」
これには藤森もびっくり仰天。SAN値チェックのお時間です。0/1D6と思われます。

『誰って。今回のお題を知らないのか。お前が前回投稿分で売っ払おうとしていた茶香炉だ。今お前の目の前に在るだろう』
「前、なんだって?」
『にしても困るじゃないか。ワタシに今、お役御免など。12月のクリスマス近辺で後輩の手に渡る予定なのだから、それまではだな。そもそも、』
「12月、クリスマス……?」

ぺらぺらぺら、ぺらぺらぺら。
藤森の声した「何か」の話は、子狐が掛け合いで途中参加して、なんやかんやの座談会。
話のペースについていけない藤森は、ただただポカンで、開いた口が塞がらず、
ハッ、
と気が付いたら、何故か早朝のベッドの上。

夢オチだったのでしょう。あるいは微粒子レベル程度は可能性が残されているのでしょう。
ともかく茶香炉は以降ウンともスンとも言わず、いつもどおり、完全にただの茶香炉であったのでした。
おしまい、おしまい。

7/27/2023, 3:23:19 PM