かたいなか

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「お祭りに、参加するハナシかお祭り自体の関係者か、そういうのを準備する立場からのハナシか、なんなら露店視点のハナシも、書けるっちゃ書けるか」
最近は真夏日猛暑日の報道ばかりだから、ぶっちゃけ俺は夏祭り行けてねぇけどさ。某所在住物書きは今回分の題目を見ながら、最後に祭りで飲食したのは何年前だったろうと回想した。
「あと、祭りであれば良いワケだから、春の花見だろうと冬の雪祭りだろうと」
そういや某雪まつり、2024年の雪像のラインナップ、どうなるんだろうな。物書きは暑さの逃避として、遠い約半年後の祭りを思い、アイスをかじった。

――――――

最近最近の都内某所は、相変わらずの最高気温。
雪国出身という、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者は、外出すれば秒で溶けてしまう。
よってもっぱら某アパートの己の部屋で、防音防振の静寂を享受しながら、ひとり来週の仕事の整理と準備をしていた。

『今日花火大会だって!』
ピロン。そんな捻くれ者のスマホに、グループチャットアプリでメッセージを寄せる者があった。
『19時から!花火!クレープ!たこ焼き!』
捻くれ者の知らぬアニメキャラのスタンプが、ハイテンションで連打して添えられている。
長い付き合いであるところの、職場の後輩である。
メッセージを読み、思案に短く息を吸い、吐いて、
画面を変え17時から21時近辺の天気予測と気温を確認して、小さく首を横に振った。

16時で35℃の予測である。
大会開始時点で31℃である。
後輩は無事であっても、捻くれ者は確実に途中でダウンしてしまうだろう。

『私などと一緒に行っても楽しくないだろう』
遠回りな表現でお断りの返信をして、捻くれ者が資料の作成に戻ろうとすると、

『行くんじゃないの。見るの』
ピロン。すぐスタンプとメッセージが返ってきた。
『先輩の部屋静かじゃん。涼しいじゃん。そこそこの高層階だから、焼きそばとかチキンとか、チョコバナナとか持ち込んでお祭りごっこ、みたいな』
そうくるか。
捻くれ者の目は秒で点になった。

『見えるかどうか、保証できない』
『ケバブと焼き鳥があれば雰囲気は出る(断言)』
『それはただの飲み会だ』
『じゃあ例の稲荷神社のおみくじと御札買って、お祭り要素追加しとくから。あとアイスとかき氷』

『何かあったのか。やけ食いのように、食べ物の名前がポンポン出てくるようだが』
『昨日ゴマスリ係長に捕まって不要不急のサビ残と上司接待させられた』
『了解。把握した』

要するに、花火や祭り云々より、心の緊急デトックスが本音本題らしい。
後輩の言う「サビ残と上司接待」を用意に想像できる捻くれ者は、少しの同情を寄せ、ため息をひとつ。
延々無駄な話を聞かされ、ぐずぐず己の管轄外を、書類なり掃除なり整理なり、やらされたに違いない。
『串焼き程度は用意できる。他に食いたいものがあれば、手間だろうが自分で買ってきてくれ』
冷蔵庫の中の肉と野菜を確認して、捻くれ者が降参のメッセージを送信すると、

『りょ!宇曽野主任も行くってさ。先輩の親友の』

「は?」
すぐに返信が来て、その文面は、再度捻くれ者の目を点にさせた。

7/29/2023, 6:02:53 AM