かたいなか

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6/13/2023, 1:51:02 PM

「某地平線音楽で初遭遇のアイディアだが、青を『セイ』、紫を『シ』って読ませて、『生死』の物語に織り込むのは、バチクソ良い衝撃だったわな」
その話、「誰も嘘を言ってない」前提なら、「あじさい」が青で、スミレが紫だったわ。某所在住物書きは20年程度昔の、布教されて得たアルバムの音源を、深い懐古の情と共に聴き直していた。
「……で、あじさい?」
花言葉は「辛抱強い」に「冷酷」等々。ふーん。
物書きはスマホ画面を見て、長考に首筋をかき……

――――――

今日は「はやぶさの日」だそうですね。どうしても「はやぶさ」を書きたかった物書きが、お題「あじさい」とこじつけ、こんなおはなしを書いたようです。

昔々の6月13日、1機のはやぶさが多くの人に見守られながら、空気の摩擦に火をまとい、流れ星と同じ要領と美しさで、大気圏に突入して消えました。
「第20号科学衛星MUSES-C」とも言うそうです。「アトム」という名前だったかもしれないそうです。
なんやかんやあって「はやぶさ」と名付けられたはやぶさは、2003年に打ち上げられ、2010年の6月13日に、運用が終了しました。

はやぶさの、複数ある「おつかい」のひとつは、遠くの小惑星から小石や砂を持ってくることでしたが、その道のりは初っ端から、困難苦難の連続でした。
打ち上げ半年で太陽フレアに焼かれるわ、2年後11月には実家の地球と通信途絶するわ。道中故障とアクシデントで、もう踏んだり蹴ったりです。
それでもはやぶさは、辛抱強く目的地に辿り着いて、必要なものをガバチョと手に入れました。

なんやかんや、ここで語っては文字数の酷くなるようなことがあって、なんとか帰路についた後も、はやぶさに向けられた人の目は一部冷酷でした。
「1位じゃなきゃ駄目なんですか」でお馴染みの、当時の某事業仕分けでは、後継機開発など宇宙開発関連予算が削減。
「お前のどこに税金つぎ込む価値があるの」と、
「お前より大事な事業はいくらでもある」と、
当時の政権から無情に無駄宣言されたようなもの、だったかもしれません(断言は避けるスタイル)
それでもはやぶさは辛抱強く、当初4年だった道のりを倍近くかけ、実家の地球に向け飛び続けました。

アクシデントと故障に見舞われながら、一部の人間に価値と意義と重要性を否定されながら、それでも辛抱強く地球の近くまで来たはやぶさ。
その頃には報道や動画投稿サイト等々で、多くの人がはやぶさを知り、応援し、到着を待っていました。
体がボロボロ満身創痍で、それでも辛抱強く役目を果たし続けたはやぶさが、最期の最後に目を開き、地球を見て、何を思ったか。そもそも機械なので何も思わなかったか。
まぁ後者であることは事実なのでしょう。小惑星探査機のはやぶさには、思考のための前頭連合野も、褒めてほしいと望む側坐核もありません。
ただ6月13日、「はやぶさの日」が流れ星程度の短い間トレンド上位を横切って、
はやぶさの育ての親、プロジェクトマネージャーの故郷では、「辛抱強さ」を花言葉に持つ青や紫のあじさいが、その八割九割はツボミですが、
一部だけ、ほんの一部だけ、空を見上げて花を開き始めています……多分(断言は以下略)

多分二割、下手すれば八割九割、事実無根、実話に基づいたフィクションで成り立っているかもしれないおはなしでした。
おしまい、おしまい。

6/12/2023, 10:42:07 AM

「個人的にな。絵にせよ文にせよ、二次創作の一部界隈、『Aをバチクソ好きな人が、Aをバチクソ嫌いな人に配慮して、好きなものを好きに書けねぇ』って状況たまにあると思うんよ」
題目の「好き嫌い」に、どの言葉を差し込めば第一印象以上のイメージを取り出せるか。某所在住物書きはスマホの画面を見ながら、己の固い固い頭を懸命に働かせようと四苦八苦している。

「あと直近で言うとアレだ。『自分の心の中のAが長いこと好きだったのに、公式供給のAが自分の好きとズレてて、アレルギー起こしちまう』ってやつ」
俺は構わねぇけどさ。昔々の創作仲間がな。アレは「好き嫌い」を超えてたな。
物書きは深くため息をつき、数日前公開された某リバースの動画を眺めた。

――――――

6月もほぼ半分。雪国の田舎出身だっていう職場の先輩も、ようやく夏の気温に体が慣れてきたみたい。
相変わらず、上司にゴマスリばっかりしてる名前通りの後増利係長に、目をつけられて、仕事丸投げされて、暑さと戦いながらしれっと仕事終わらせてる。
あんまり他人を、私を頼ってくれなくて、ほぼほぼ単独で作業終わらせちゃうから、
いつかみたいに、丸投げを大量に押し付けられて、倒れかけやしないかって、心配ではある。
ゴマスリ係長は自分の仕事くらい自分でやれ(真理)

「先輩って、花に好き嫌いとかあるの?」
その日のお昼休憩は、いつもと違って休憩室がちょっと静かだった。
「『花に好き嫌い』?」
理由はすぐに分かった。いつも、別に誰が観てるでもなく付けっ放しになってるテレビだ。
中途採用で最近入った子が、「誰も観てないなら節電で消して良くないですか」って勝手にオフにしちゃったみたい。まぁ、正論っちゃ正論。一応。
お若いの。正論だけじゃ生きづらいぞ(経験論)
「先輩、よく綺麗な花の写真撮ってるじゃん。この花は撮るとかこの花は撮らないとか、あるのかなって」

休憩室のどこか遠くでは、例の勝手にテレビ消しちゃった中途採用君が、久々ご登場名前通りのオツボネ様、尾壺根前係長と色々言い合ってる。
誰も好きでもない番組をダラダラ流すよりテレビ消した方が節電じゃないですか。
あのねそういう話じゃなくてね。
あーだこーだ言ってるから、それを見て「なんかやってるね」ってランチトークのネタになってる。
珍しく、オツボネ支持者が多いケースっぽい。

「別に、……いや、嫌いな花はまだ無いが、好きといえばキンポウゲ科と、『春の妖精』あたりか」
「はるのようせい、」
「いつか見せただろう。フクジュソウ、キクザキイチゲ、キバナノアマナ、ニリンソウ」
「アマナとニリンソウは食べられるらしいから好き」
「お前は食い物に関してはよく覚えているな」
「先輩がよく食える食えない、美味い美味くない教えてくれるからでしょ」
「まぁ、たしかに。反論はしない」

中途採用君とオツボネのぐだぐだは、ウチの隣部署の宇曽野主任がしれっと割って入って、決着つかずで終わったみたい。
誰が好きってわけでもない番組を惰性で流してるテレビモニターは、結局今日一日は、電源オフのままになった。

6/11/2023, 10:41:35 AM

「昨日あのネタで書いて、翌日にこの地震かよ」
某防災アプリで地震の情報を確認しながら、某所在住物書きは地震に対する報道を注視していた。
マグニチュード6.2。確実に、大地震である。
「いつもなら時事ネタで、地震と防災ネタの短文書きたいところだが、昨日もう書いちまってるもん。今日は別ネタいくか」
にしても「街」?3月1日、アプリ入れて最初のお題が「遠い街へ」だったわ懐かしいな。ポツリ感想を述べて、物書きは今日の物語の執筆作業に戻る。
「で、『街』で何書けって?」

――――――

最近最近のおはなしです。物理も生物学も現実感もガン無視の、非常に都合の良いおはなしです。
都内某所の某稲荷神社の、敷地内にある一軒家に住む末っ子子狐は、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔。
家族で仲良く、幸せに暮らしております。
善き化け狐、偉大な御狐となるべく、週に1〜2回人の世に出て、不思議なお餅を売り歩く修行中。
今日は新たな味のお餅を開発すべく、人間にしっかり化けて、「同胞」の多い街へトコトコお散歩に行きました。

細かいことは気にしません。東京は大抵魔法も呪術も何でもあります。
化け狐1匹魔女ひとり、魔性の猫に大狸数匹。探せば簡単に見つかるのです。

「餅に合う食材?」
まず最初に、子狐は大白蛇の酒屋さんに聞きました。
「そうだな。個人的には、焼き味噌とチーズが好きだ。少しだけ餅を炙って、そこに七味や明太子入りの焼き味噌だの、少し塩を振ったとろとろチーズだのをつける。酒に……いや、餅によく合う」
そうか。濃いめの味付けか。コンコン子狐納得して、持ってきたメモ帳にお気に入りのクレヨンで、ぐりぐりしっかりメモしました。

「お餅ねぇ。味噌は、アタシも同感よ」
次に子狐は、オネェな大古鹿のカフェに聞きました。
「今の時期なら、スパイスやハーブに合わせるのはどうかしら?若芽はもう難しいでしょうけど、山椒の葉の醤油漬けとか最高よ。ミョウガに、大葉とかニンニクとか入りの味噌をつけて焼いたのとか、ワイン……もとい、お餅に合うと思うの」
どうやら、お味噌は万能みたい。コンコン子狐学習して、これもメモ帳にぐりぐり書きました。

「私なら、やっぱり肉と合わせるかしら」
それから子狐は、化け猫の惣菜屋さんに聞きました。
「炙ったお餅を、塩気の強めなハムで巻いて、少しオリーブオイルを垂らすの。お餅の甘さとハムの塩気を、オイルがまとめてくれるわ。少し辛い軽めのカクテル……じゃなくて、お餅と合うと思う。あと甘いのに合わせるならお餅カナッペも良さそうね」
かなっぺって、なんだろう。コンコン子狐さっぱりですが、美味しいらしいので、ひとまずメモ帳にぐりぐり記録しておきました。

焼き味噌、チーズ、醤油漬けに焼きミョウガ、生ハム巻きにカナッペ。
たくさん候補が集まったところで、最後にコンコン子狐は、自慢のメモ帳を家の父狐に見せました。
「んんん……」
すごく難しそうな顔をして、ちょっと言いにくそうに、父狐は言いました。
「非常に、大人の……麦ジュースが、進みそうなラインナップだな」
むぎじゅーすって、なに?まだまだ子供の子狐は、父狐をキラキラおめめで質問攻めにしましたとさ。
おしまい、おしまい。

6/10/2023, 1:45:20 PM

「2〜3人には共感してもらえる筈のネタ、言っちまって良い?」
指を組み口元を隠して、某所在住物書きは満を持してこのアプリに関する願望を告白した。
「3択4択程度でツイッターみたいなアンケートやってみたい。このアプリで。ある程度、投稿する物語のニーズを把握できるから」

ぶっちゃけ買い切り1000円2000円でも良いから途中途中に強制的に入ってくる広告全部消したい、ってのが本音だが。物書きは付け足し、ため息を吐くと、己のスマホの画面を見遣った。
「……つっても多分俺の投稿ってこの下の物語本編よりこっちの上の前座で共感してくれる人の方が絶対圧倒的多数よな」
ディスプレイには、「12歳以上対象」には少々不相応な、明らかにタバコを吸える年齢をターゲットにした広告が強制的に表示されている。

――――――

生物学ガン無視のおはなしです。八割程度がフィクションのおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしておりまして、
そのうちの末っ子子狐が、なにやら眠い目をクシクシと、こすりながら自分のお部屋でリュックに色々詰め物をしておりました。
子狐は、今己が行っている作業を、必ずやり遂げたいと、強く思っておりました。

「チョコと、クッキーと、ジュースと……」
きっかけは約2週間前の19時3分。マグニチュード6.2。都内23区は震度3で、とんと家の床が跳ねて、揺れて。子狐は母狐と一緒に、晩ごはんの皿洗いをしていたところでした。
「毛布は、……もーふは、リュック、入らないや」
コンコン子狐、狐なので避難訓練の習慣はありません。しかしメタい話を持ち出すと、「5月11日」の朝早く、「揺れたら机に隠れましょう」と、「日頃から揺れに備えましょう」と、不思議な「モンシロチョウ」からガッツリみっちり、話を聞いておりました。
あの5月26日から約2週間後の今晩です。
あの5月11日から約1ヶ月後の今晩です。
子狐は眠いのを頑張って我慢して、大きな余震に備えた非常用防災リュックを、しっかり準備してやりたいと思い立ったのでした。

LEDライトに歯磨きブラシ、耳栓に体拭きシート。
ノートの切れ端にぐりぐりお気に入りのクレヨンで、判読可能かどうかはさておき、名前と住所と連絡先も書いて、防災頭巾に貼り付けました。
「お菓子もあると、避難所でのコミュニケーションになるし、何より息抜きにもなるわよ」と、モンシロチョウが教えてくれたので、「コミュニケーションツール」は重点的に充実させました。

「おつきさま、おつきさま」
最後に大事な大事な、キラキラした物を収めた小さい宝箱をリュックに入れたコンコン子狐。部屋の窓から見えるお月様に、リュックを掲げて見せました。
「チョウチョさんに、聞いてください。『コレでいい?』って、聞いてください」
問い合わせ先が管轄外なのか、ちょっと雲で陰って声が届いていないのか、お月様は知らん顔。
ただ子狐のやりたいことを、その確固たる作業を、穏やかに見つめておるのでした。

6/9/2023, 3:19:19 PM

「あれ、今日も、比較的書きやすい……」
どうした書く習慣アプリ。てっきり今日はバチクソ書きづらいお題が飛んでくると思ったが、想定に比べて十何倍も書きやすいぞ。
19時到着の題目に、一定の感謝と最大の安堵のため息をつく某所在住物書き。
長文の題目は長文の題目で、裏をかく楽しみもあろうが、某短文すなわち強札のカードゲームよろしく、テキストの短い題目は、この物書きにとって書きやすかった。

「んん……」
早春の朝日にするか冬のそれにするか、なんなら北国か南国かで、「ぬくもり」の意味合いは変わるわな。
物書きは窓を見遣り、朝日から遠い夜の外を眺めた。

――――――

「朝日の『温もり』、ねぇ」
最近最近の都内某所、某アパート。人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者は、カーテンの隙間から差し込む6月上旬の朝日に網膜をイタズラされ、ベッドから体を起こした。
「『温もり』と言っていられるのは、東京ではきっと4月の朝までだろうな」

1日中くもりの予報が局所的に外れて、ピンポイントに雲が裂けたらしい。
朝から20℃超の外気に温められた室内は、更に朝の光を伴って、「ぬくもり」どころか「暑さ」に変わろうとしていた。
雪国の田舎出身である捻くれ者にとって、朝の20℃は7月か8月の気温分布。
昨晩から仕込んでいた冷蔵庫の中の冷水筒を取り出し、ぽつり。
「……買って良かった昨日の水出し」

カラカラ、ガラリ。
氷とティーバッグの入った水筒は水出し緑茶の穏やかな緑色を揺らし、涼ある音をたてる。
昨日食材の買い出しついでに寄った茶葉屋、そこで予定外に購入してしまった水出し専用茶葉である。
あさつゆ品種の細やかな茶葉は、低温でじっくりテアニンを――茶の甘味と旨味のエッセンスを吐き出し、
一杯注いで口に含み、喉へ通せば、暑さ一歩手前の温もりも瞬時に吹き飛んだ。
(そろそろ朝もエアコンを使うべきか、否か……)

室内に温もりを供給し続ける朝日を、遮光遮熱カーテンおよびレースカーテンでもって、完全に遮る。
捻くれ者にとって重要なのは、一日の始まりを告げる光の針ではなく、暑さに弱い己の心身を守る室温の数値である。
(うん。「朝日の『温もり』」は、多分4月か5月頃までだろうな)
6月から先は「朝日の『熱線』」だ。捻くれ者はため息をつき、氷でよく冷えた水出しの緑茶をもう一度、口に含んだ。

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