かたいなか

Open App

「某地平線音楽で初遭遇のアイディアだが、青を『セイ』、紫を『シ』って読ませて、『生死』の物語に織り込むのは、バチクソ良い衝撃だったわな」
その話、「誰も嘘を言ってない」前提なら、「あじさい」が青で、スミレが紫だったわ。某所在住物書きは20年程度昔の、布教されて得たアルバムの音源を、深い懐古の情と共に聴き直していた。
「……で、あじさい?」
花言葉は「辛抱強い」に「冷酷」等々。ふーん。
物書きはスマホ画面を見て、長考に首筋をかき……

――――――

今日は「はやぶさの日」だそうですね。どうしても「はやぶさ」を書きたかった物書きが、お題「あじさい」とこじつけ、こんなおはなしを書いたようです。

昔々の6月13日、1機のはやぶさが多くの人に見守られながら、空気の摩擦に火をまとい、流れ星と同じ要領と美しさで、大気圏に突入して消えました。
「第20号科学衛星MUSES-C」とも言うそうです。「アトム」という名前だったかもしれないそうです。
なんやかんやあって「はやぶさ」と名付けられたはやぶさは、2003年に打ち上げられ、2010年の6月13日に、運用が終了しました。

はやぶさの、複数ある「おつかい」のひとつは、遠くの小惑星から小石や砂を持ってくることでしたが、その道のりは初っ端から、困難苦難の連続でした。
打ち上げ半年で太陽フレアに焼かれるわ、2年後11月には実家の地球と通信途絶するわ。道中故障とアクシデントで、もう踏んだり蹴ったりです。
それでもはやぶさは、辛抱強く目的地に辿り着いて、必要なものをガバチョと手に入れました。

なんやかんや、ここで語っては文字数の酷くなるようなことがあって、なんとか帰路についた後も、はやぶさに向けられた人の目は一部冷酷でした。
「1位じゃなきゃ駄目なんですか」でお馴染みの、当時の某事業仕分けでは、後継機開発など宇宙開発関連予算が削減。
「お前のどこに税金つぎ込む価値があるの」と、
「お前より大事な事業はいくらでもある」と、
当時の政権から無情に無駄宣言されたようなもの、だったかもしれません(断言は避けるスタイル)
それでもはやぶさは辛抱強く、当初4年だった道のりを倍近くかけ、実家の地球に向け飛び続けました。

アクシデントと故障に見舞われながら、一部の人間に価値と意義と重要性を否定されながら、それでも辛抱強く地球の近くまで来たはやぶさ。
その頃には報道や動画投稿サイト等々で、多くの人がはやぶさを知り、応援し、到着を待っていました。
体がボロボロ満身創痍で、それでも辛抱強く役目を果たし続けたはやぶさが、最期の最後に目を開き、地球を見て、何を思ったか。そもそも機械なので何も思わなかったか。
まぁ後者であることは事実なのでしょう。小惑星探査機のはやぶさには、思考のための前頭連合野も、褒めてほしいと望む側坐核もありません。
ただ6月13日、「はやぶさの日」が流れ星程度の短い間トレンド上位を横切って、
はやぶさの育ての親、プロジェクトマネージャーの故郷では、「辛抱強さ」を花言葉に持つ青や紫のあじさいが、その八割九割はツボミですが、
一部だけ、ほんの一部だけ、空を見上げて花を開き始めています……多分(断言は以下略)

多分二割、下手すれば八割九割、事実無根、実話に基づいたフィクションで成り立っているかもしれないおはなしでした。
おしまい、おしまい。

6/13/2023, 1:51:02 PM