かたいなか

Open App

「2〜3人には共感してもらえる筈のネタ、言っちまって良い?」
指を組み口元を隠して、某所在住物書きは満を持してこのアプリに関する願望を告白した。
「3択4択程度でツイッターみたいなアンケートやってみたい。このアプリで。ある程度、投稿する物語のニーズを把握できるから」

ぶっちゃけ買い切り1000円2000円でも良いから途中途中に強制的に入ってくる広告全部消したい、ってのが本音だが。物書きは付け足し、ため息を吐くと、己のスマホの画面を見遣った。
「……つっても多分俺の投稿ってこの下の物語本編よりこっちの上の前座で共感してくれる人の方が絶対圧倒的多数よな」
ディスプレイには、「12歳以上対象」には少々不相応な、明らかにタバコを吸える年齢をターゲットにした広告が強制的に表示されている。

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生物学ガン無視のおはなしです。八割程度がフィクションのおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で暮らしておりまして、
そのうちの末っ子子狐が、なにやら眠い目をクシクシと、こすりながら自分のお部屋でリュックに色々詰め物をしておりました。
子狐は、今己が行っている作業を、必ずやり遂げたいと、強く思っておりました。

「チョコと、クッキーと、ジュースと……」
きっかけは約2週間前の19時3分。マグニチュード6.2。都内23区は震度3で、とんと家の床が跳ねて、揺れて。子狐は母狐と一緒に、晩ごはんの皿洗いをしていたところでした。
「毛布は、……もーふは、リュック、入らないや」
コンコン子狐、狐なので避難訓練の習慣はありません。しかしメタい話を持ち出すと、「5月11日」の朝早く、「揺れたら机に隠れましょう」と、「日頃から揺れに備えましょう」と、不思議な「モンシロチョウ」からガッツリみっちり、話を聞いておりました。
あの5月26日から約2週間後の今晩です。
あの5月11日から約1ヶ月後の今晩です。
子狐は眠いのを頑張って我慢して、大きな余震に備えた非常用防災リュックを、しっかり準備してやりたいと思い立ったのでした。

LEDライトに歯磨きブラシ、耳栓に体拭きシート。
ノートの切れ端にぐりぐりお気に入りのクレヨンで、判読可能かどうかはさておき、名前と住所と連絡先も書いて、防災頭巾に貼り付けました。
「お菓子もあると、避難所でのコミュニケーションになるし、何より息抜きにもなるわよ」と、モンシロチョウが教えてくれたので、「コミュニケーションツール」は重点的に充実させました。

「おつきさま、おつきさま」
最後に大事な大事な、キラキラした物を収めた小さい宝箱をリュックに入れたコンコン子狐。部屋の窓から見えるお月様に、リュックを掲げて見せました。
「チョウチョさんに、聞いてください。『コレでいい?』って、聞いてください」
問い合わせ先が管轄外なのか、ちょっと雲で陰って声が届いていないのか、お月様は知らん顔。
ただ子狐のやりたいことを、その確固たる作業を、穏やかに見つめておるのでした。

6/10/2023, 1:45:20 PM