かたいなか

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5/19/2023, 3:30:19 PM

「死別、夜逃げ、恋仲をフッて縁切り。メジャーどころはこんなモンか」
ちょっと変わり種で、今まで頑張って進めてきたゲームのデータを不注意で初期化?
かつて某モンスター収集ゲームで、129匹登録した図鑑を「はじめから」の「ボックスをかえる」でサヨナラバイバイした経験のある某所在住物書き。もう15年程度昔の失敗談である。

「……セーブデータとの突然の別れは、一部失恋より喪失感ハンパない説」
昔々のモノクロドットを思い出す物書きは、懐かしさに負けて、折り畳みの2画面ゲーム機を取り出す。

――――――

「突然の別れ」。なかなか、そこそこ想像力をかきたてそうなお題ですね。こんな失恋話はどうでしょう。
約8年前。まだ年号が平成だった頃。
都内某所で、とある人間嫌いで寂しがり屋な捻くれ者が、初恋のひとの前から突然姿を消しました。
同じ職場で昨日まで、普通に一緒に働いていたのに、まるでコインをひっくり返したように、あるいは長々書いていた文章を全選択して一括削除したように。
捻くれ者は、電話番号もグループチャットのアカウントも住み慣れたアパートの一室さえ、すべて、ごっそり、さっぱり。消えてしまっておりました。

これに一時パニクったのが「初恋」側。
思い当たる節が大き過ぎて、失踪当日から1週間程度、急きょ有休を申請して、探し続けたのでした。

(別垢で、愚痴ってたのがバレた?)
「初恋」側にとって、捻くれ者は人生二度目の恋人。顔に惚れて、真面目過ぎる性格に解釈違いを起こし、娯楽に疎い学術トークが地雷で駄目でした。
(皆愚痴るでしょ?あれでも我慢した方だよ?)
「真面目過ぎて地雷」、「解釈不一致」、「話合わない」、「頭おかしい」。
吐き出せる場所が呟きアプリの別垢しか無くて、苦しみを数度、ポロリしました。
前の恋人と比較して愚痴って、それでも捻くれ者を捨てられなかったのは、恋のステータスを手放したくなかったから。
(まだ間に合う?まだ元に戻せる?)
ごめんなさい。言葉が人をこんなに傷つけることを、ちゃんと理解してなかっただけなの。
せめて目の前から消える前に、こっちの言い分を聞いて、話をさせて。勝手に一人勝ちしないで。
その言葉を伝えたくて、区内は勿論、近隣の区も日夜探し続けましたが、手がかりのひとつも見つからず。
珍しい名字のひとだから簡単に足がつくだろうと、依頼料の金額に目をつぶって頼った探偵も、「都内にこの名字のひとは居ませんね」と空振りでした。

「会いたい」
それから何度か誰かに恋して、振って振られて、また恋をして。
結局「あの二度目の恋人」が、トークも性格も解釈不一致で地雷だったけど、一番優しくて誠実なひとだったと、気付いて再度行方を追って。
「どこにいるの、附子山さん……」
今日もその「初恋」側は、突然別れた恋人を、一方的な勝ち抜けが気に入らなかったか恋の執着ゆえか、
ひとりで、探し続けているそうです。

5/19/2023, 3:28:48 AM

「このアプリ、さてはエモ系と恋愛系と、空とその他サムシングのお題で過半数だな?」
だって先日も「愛があれば」だった。某所在住物書きは過去投稿分の題目を辿りながら、小首をひねる。
「続き物っぽい文章2ヶ月半投稿して思ったけどさ。意外と、『付かず離れずな日常風景の相棒もの』な物語って、ハナシ続けるのラクな気がする」
ベッタリ恋愛ものは続かねぇの。恋愛皆無の仲間ってのは俺の好物なの。
心の距離感便利。物書きはポツリ結び、今日も文章を投稿する。

――――――

昨日の猛暑から一転、今日の東京はいい具合に過ごしやすい気温に戻った。
昨日と一昨日でろんでろんに溶けてた、雪国の田舎出身だっていう先輩も、今日は通常運転。
上司にゴマスリばっかりしてる我らがゴマスリ係長の、押し付けられた仕事をテキパキさばいて、自分の本来の分担もさっさと終わらせてた。

昨日お疲れだった新人ちゃんは、「微熱と喉の痛みにより、念のため自宅待機」。
先輩からのリークで、「事情」は知ってる。
4月1日で左遷されたウチの前係長、名前通りのオツボネ様、尾壺根係長にいじめられた心の傷が酷くて、朝、涙が止まらなくなっちゃったって。
私もオツボネにいじめられたから分かる。こういうときは、職場でも泣きたくなっちゃうから、一旦有休でも欠勤でも何でも使って、家で休んでた方が良い。

今はそっとしておいて、元気になったら、先輩のお宝情報で釣って、お悩み相談会でも。
どこか、おいしいお肉が食べられる個室で。

「私のお宝情報?」
昼休憩、お悩み相談会の話を「リーク元」に渡したら、お弁当のスープジャーの中を突っつく手を止めて、先輩があんぐり口を開けた。
「何故、新人を釣るのに私の情報が要る?」

「だって新人ちゃんゼッタイ恋してるし」
「こい?……だれに?」
「先輩以外いないでしょ。先月4日か5日頃に1回先輩に相談して、昨日も2回目で先輩に相談して、どっちも『オツボネ係長がトラウマで、今すごく弱ってます』って話だったじゃん」
「たまたま係長への密告リスクの低い相談者が私だっただけだ」

「ああいう社会に出たばっかりのバンビちゃんってね。追い詰められてるときに優しくされると、キュンしちゃうんだよ」
「はぁ」
「てことで、交際決まったら呼んで。『ウチの先輩はやらん!』の頑固オヤジ役やりたいから」
「私はお前の何なんだ」

そもそも恋なんてものはだな。
所詮不勉強の付け焼き刃知識でしかないが、
前頭前野の活動鈍化とドーパミンの活発な分泌と、血中コルチゾールの上昇等々による、ただの生理現象であってだな。
照れもせず顔を赤くもせず、ただ淡々と、先輩はいつもの心理学&脳科学講義を、つらつら。

「先輩」
びしっ。私が人差し指を伸ばし、突き立てて、小さく左右に振り、
「恋の前にはね。多分ゼントーゼンヤは無意味なの」
恋愛は学問云々じゃなく、多分ハートから始まるんだよ、って意味でポツリ言うと、
「その通り。前頭前野は無意味だ」
なんか全然違う、ちゃんとした学問の話で意味が通じちゃったらしく、数度頷いてた。
ちがう。そうじゃない。

5/18/2023, 1:51:29 AM

「このアプリの文章投稿、意外と真夜中と20時21時頃と、正午付近に集中してる説」
ぶっちゃけアプリ入れてから2ヶ月と少ししか経ってねぇから、気のせいの可能性の方が大だが。
某所在住物書きは真夜中に書き終えていた文章を推敲し、結局削除しながらチョコを食べていた。
テレビ画面にはニュース番組。夜とも真夜中とも言える時刻に昔々沈没した豪華客船の、スキャン画像が映し出されている。

「かく言う俺も結構深夜テンションで書いて……」
深夜テンションで書いて、真夜中投稿してる。そう付け加えたくて己の過去投稿分をさかのぼるも、以外に朝投稿や昼投稿の多かったことに気付き、
「寝て起きて『コレ違う』って大部分修正するわ」
ぽつり。己の深夜帯の文才を疑問視する。

――――――

最近最近の都内某所。とあるアパートに住む捻くれ者、人間嫌いと人間不信を併発した寂しがり屋が、職場の同じ部署の新人から、日付変わってちょい過ぎの深夜に相談を受けておりました。
捻くれ者の後輩から、「新人ちゃん」と呼ばれ可愛がられている彼女は、先月別部署に左遷で飛ばされた係長から、新人いびりでいじめられていた不運持ち。
いじめっ子が部署から消え、1ヶ月以上経った後も、いじめられっ子の心の傷は残ったまま。
それは十分な治療を得られず、治癒も遅れて、一部化膿を始めておりました。

『もう誰も信じられなくなってしまいました』
グループチャットで新人が嘆きました。
『全員あの係長に見えます。誰もが私を叱りそうで』
誰も信じられない。
その文面を見た時の、捻くれ者の自虐自嘲混じる薄笑いといったら。
『誰かの優しさも怖いんです。裏を疑ってしまって』

『それでいいと思う』
それでいい。それこそ、人間の本質だ。
昔々、大切だと思っていた筈のひとから心をズタズタにされた捻くれ者が、ポンポン文章を編集します。
敵か味方かなど嘘だ。世の中は、敵か、まだ敵でないかでしかない。他人に心を開くなど、愚行だ。
誰ひとり、お前を大切になど思っちゃいないよ。
ポンポン、ポン。編集のフリックを終え、「人を信じるのも頼るのもやめると、少し楽になるぞ」の文面を送信しようとした直前、
「……」
ふと、捻くれ者の心の片隅に、同じ職場の後輩の、
ちょっとおドジでしたたかで、弱いわりに真っ直ぐな食いしん坊顔が、浮かんで、消えました。

あの後輩は、敵でしょうか。
(例外は無い。あいつだって、どこか関係が崩れさえすれば、いつかきっと)
あの後輩は、信じるに足らぬ後輩でしょうか。
(当たり前だ。人間など皆、自己中の塊で……)

『それでいい。アレが怖かったのは当然だ』
気がつけば、捻くれ者は送信前の文章を全削除して、正反対に書き直していました。
『信じなくなって孤立しては、病んでしまう。今の君に難しいのは分かるが、誰かと繋がり続けることだ。その苦しいのと重いのを、どこかに降ろさなければ』
あーあー。よくまぁ、心にも無いことをつらつらと。
送った後で後悔すれど、一度流して既読のついたメッセージを、取り消す方法も存在せず。
ガリガリガリ。捻くれ者は己の失策に頭をかいて、
それでも少しだけ、優しそうな、穏やかそうな微笑をしました。

5/16/2023, 11:28:53 PM

「『何でもできる』の『何でも』にどういう制限を仕込むか、登場人物にどこまでのスペックを付与するかで、結構変わってくるんじゃね?」
俺は「実現可能不可能は別として、恋で頭がいっぱいなやつは、愛の下に何でもやろうとする」学派。
異論は認める。某所在住物書きはそう付け足し、朝から食っているカップアイスにスプーンをさした。
「『愛を理由に法を外れることも実行できますか』とか、『愛を理由に自分の命を危険にさらすことも実行できますか』とか、その辺がメジャーどころ?
一部の親御さんは『子供のためなら』の愛情から、後者を実際に実行しちまうこともあるらしいな?」
愛ねぇ。物書きは首筋をかき、深く考え込んで……

――――――

「『あいがあれば』? ふざけるな」
雪国の田舎出身な先輩が溶けた。
「あいがあれば、ひもまたすずし、か?あいがあれば、とーきょーのきおんを、さげられるか?」
東京の、今日の最高気温は30℃予報。朝の時点でもう20℃を超えた。明日は最高32℃予想らしい。
「やってみせろ。できやしない。あいがなんだ」
真夏もほぼ35℃以下、冬は最「高」気温氷点下。そこから上京してきた先輩は、東京に来てもう長い筈なのに、毎年毎年4月の20℃、5月6月の夏日で、暑さに負けて溶けてエアコンが効き始めるまで机に頬つけて死んでる。
「だまされるものか。あいなど、あってもなつは、すずしくできない……」
さっきから愛に恨みをぶつけてるのは、隣部署の体育会系なタイイク課長が「お客様への愛があれば」とケアレスミス注意の朝会スピーチしてるからだと思う。
「何でもできる」がどうとかも言ってた。

いつもバリバリ仕事して、ゴマスリ係長からの仕事の押し付けもパッパとさばいて、真面目で感情ちょっと平坦な先輩が、でろるんと、チカラなく頬も指先も重力に任せてる。
それはウチの風物詩で、「春も終わるなぁ」、としんみりし始める目印だった。

「あのね先輩。『愛があれば何でもできる』って、そういうハナシじゃないと思う」
「いいや。『なんでも』、できるハズだ。なんでもできるなら、あいがあれば、おんだんかだって」
「行間読むって大事だと思うよ先輩。あと新人ちゃんが持ってきた情報だけど、ウチのフロアのエアコン不具合か何かで調整入るって。動くの数時間後だって」
「おのれタイイク」
「いや隣の課長関係無いし。……アイス買ってくるけど、先輩いつものやつ?」
「たすかる。ありがたい。たのんだ」

愛よりアイス。アイスは夏日を救う。
なんか、ささやき程度の小さい声で、アイスと私への感謝を述べてる先輩。
東京の明日は、今日より暑い。エアコンの調整が万が一今日で終わらなかったら、先輩はきっと、明日無理矢理にでも在宅ワークに切り替えるか、
クーラーボックスかポータブル冷凍庫に、低糖質アイスと冷茶をぎっしり詰めて職場に来る。と思う。

5/15/2023, 2:50:35 PM

「お題の連想ゲームは、結構心がけてるわ」
人生ぶっちゃけ後悔の連続だと思うがどうでしょう。某所在住物書きはコンビニでついつい購入してしまったグミのパッケージを開けながら、呟いた。
「『後悔』、だろう。後悔『する』のか『しない』のか、そもそも『何に対する』後悔か。
『後悔』が花言葉の花は複数あるが、その中のカンパニュラ、後悔の他に『抱負』や『誠実』なんて花言葉もあるぞ?――って具合に」
オマケの剣ピック目当てに、ありゃまたダブり、こりゃまた目当て以外。なかなか思う結果は訪れぬ。
「……ガチャは得てして『後悔』多しよな」
なんでこんなに金の退魔剣ピック出ないんだろう。
物書きはうなだれ、ちびちびとグミを食べる。

――――――

「後悔」。今日も今日とて、手強いやら難しいやらなお題ですね。こんなおはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某アパートの一室に、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が住んでおり、
その部屋には週1〜2回、不思議な二足歩行の子狐が、不思議なお餅を売りに来るのでした。
現実感ガン無視とか、細かいことは気にしません。
大抵童話でキツネは喋るし、なんなら「ごんぎつね」や「手袋を買いに」なんて前例もあるのです。
気にしない、気にしない。「そういうおはなし」だと諦めましょう。――さて。

「これが、狐の執着か……」
今日の捻くれ者の部屋は、たいそう賑やかでした。
捻くれ者はため息ついて突っ立って、首筋をカリリ。視線の先では例の子狐が、狐の本能と食欲に従い、タケノコとワラビとお揚げさんをもっしゃもっしゃ。
タケノコとワラビは、捻くれ者の両親が、遠く離れた雪国の田舎から速達で送ってきた大容量。
捻くれ者ひとりでは到底食べきれぬ、田舎サイズに田舎クオンティティーです。
おまけにタケノコはずんぐり孟宗竹ではなく、すらりと長い根曲がり竹、その天然物。キロ単価3千5千オーバーがどっさりで、さぁハウマッチ。

そういえば狐がタケノコを食う映像を観たな。
いつも通り餅を買って、商品を受け取りお金を払った後、ふと閃いた、その後の行動が悪手だった。
『人間の食べ物だが、食ってみるか?』
子狐に田舎から届いたタケノコを見せると、子狐コンコン、途端に鋭いおめめとおはなでクンカクンカ香りを嗅ぎ、タケノコをぱくり!
味を覚えた子狐は、匂いを辿って大きい段ボールを見つけ出し、ひとり大宴会を始めてしまいました。

「子狐、あの、そのへんにしておけ」
「ダメ!さわらないで!ダメッ!!」
ギャン!ギャン!
捻くれ者が近づくと、コンコン子狐、食べ物を取られまいと大声で威嚇して、噛みつこうとしてきます。
その全力の声量の、大きいこと、大きいこと。
防音の部屋で良かった。捻くれ者は思います。
無駄に本能を煽ったか。捻くれ者は後悔します。
自業自得、自分が撒いた種、致し方無し。子狐に悪いことをしてしまったと、捻くれ者は反省しました。

結局田舎クオンティティーのタケノコとワラビは、半分以上が子狐のおなかの中。
後日母狐が子狐を連れて、丁寧な丁寧なお詫びをしに来ましたが、子狐が食べてしまったタケノコとワラビとお揚げさんの弁償に母狐が渡した金額は、諭吉さん2枚と、野口さん4枚だったそうな。
多分めでたし、めでたし。

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