かたいなか

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「このアプリの文章投稿、意外と真夜中と20時21時頃と、正午付近に集中してる説」
ぶっちゃけアプリ入れてから2ヶ月と少ししか経ってねぇから、気のせいの可能性の方が大だが。
某所在住物書きは真夜中に書き終えていた文章を推敲し、結局削除しながらチョコを食べていた。
テレビ画面にはニュース番組。夜とも真夜中とも言える時刻に昔々沈没した豪華客船の、スキャン画像が映し出されている。

「かく言う俺も結構深夜テンションで書いて……」
深夜テンションで書いて、真夜中投稿してる。そう付け加えたくて己の過去投稿分をさかのぼるも、以外に朝投稿や昼投稿の多かったことに気付き、
「寝て起きて『コレ違う』って大部分修正するわ」
ぽつり。己の深夜帯の文才を疑問視する。

――――――

最近最近の都内某所。とあるアパートに住む捻くれ者、人間嫌いと人間不信を併発した寂しがり屋が、職場の同じ部署の新人から、日付変わってちょい過ぎの深夜に相談を受けておりました。
捻くれ者の後輩から、「新人ちゃん」と呼ばれ可愛がられている彼女は、先月別部署に左遷で飛ばされた係長から、新人いびりでいじめられていた不運持ち。
いじめっ子が部署から消え、1ヶ月以上経った後も、いじめられっ子の心の傷は残ったまま。
それは十分な治療を得られず、治癒も遅れて、一部化膿を始めておりました。

『もう誰も信じられなくなってしまいました』
グループチャットで新人が嘆きました。
『全員あの係長に見えます。誰もが私を叱りそうで』
誰も信じられない。
その文面を見た時の、捻くれ者の自虐自嘲混じる薄笑いといったら。
『誰かの優しさも怖いんです。裏を疑ってしまって』

『それでいいと思う』
それでいい。それこそ、人間の本質だ。
昔々、大切だと思っていた筈のひとから心をズタズタにされた捻くれ者が、ポンポン文章を編集します。
敵か味方かなど嘘だ。世の中は、敵か、まだ敵でないかでしかない。他人に心を開くなど、愚行だ。
誰ひとり、お前を大切になど思っちゃいないよ。
ポンポン、ポン。編集のフリックを終え、「人を信じるのも頼るのもやめると、少し楽になるぞ」の文面を送信しようとした直前、
「……」
ふと、捻くれ者の心の片隅に、同じ職場の後輩の、
ちょっとおドジでしたたかで、弱いわりに真っ直ぐな食いしん坊顔が、浮かんで、消えました。

あの後輩は、敵でしょうか。
(例外は無い。あいつだって、どこか関係が崩れさえすれば、いつかきっと)
あの後輩は、信じるに足らぬ後輩でしょうか。
(当たり前だ。人間など皆、自己中の塊で……)

『それでいい。アレが怖かったのは当然だ』
気がつけば、捻くれ者は送信前の文章を全削除して、正反対に書き直していました。
『信じなくなって孤立しては、病んでしまう。今の君に難しいのは分かるが、誰かと繋がり続けることだ。その苦しいのと重いのを、どこかに降ろさなければ』
あーあー。よくまぁ、心にも無いことをつらつらと。
送った後で後悔すれど、一度流して既読のついたメッセージを、取り消す方法も存在せず。
ガリガリガリ。捻くれ者は己の失策に頭をかいて、
それでも少しだけ、優しそうな、穏やかそうな微笑をしました。

5/18/2023, 1:51:29 AM