かたいなか

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5/18/2023, 1:51:29 AM

「このアプリの文章投稿、意外と真夜中と20時21時頃と、正午付近に集中してる説」
ぶっちゃけアプリ入れてから2ヶ月と少ししか経ってねぇから、気のせいの可能性の方が大だが。
某所在住物書きは真夜中に書き終えていた文章を推敲し、結局削除しながらチョコを食べていた。
テレビ画面にはニュース番組。夜とも真夜中とも言える時刻に昔々沈没した豪華客船の、スキャン画像が映し出されている。

「かく言う俺も結構深夜テンションで書いて……」
深夜テンションで書いて、真夜中投稿してる。そう付け加えたくて己の過去投稿分をさかのぼるも、以外に朝投稿や昼投稿の多かったことに気付き、
「寝て起きて『コレ違う』って大部分修正するわ」
ぽつり。己の深夜帯の文才を疑問視する。

――――――

最近最近の都内某所。とあるアパートに住む捻くれ者、人間嫌いと人間不信を併発した寂しがり屋が、職場の同じ部署の新人から、日付変わってちょい過ぎの深夜に相談を受けておりました。
捻くれ者の後輩から、「新人ちゃん」と呼ばれ可愛がられている彼女は、先月別部署に左遷で飛ばされた係長から、新人いびりでいじめられていた不運持ち。
いじめっ子が部署から消え、1ヶ月以上経った後も、いじめられっ子の心の傷は残ったまま。
それは十分な治療を得られず、治癒も遅れて、一部化膿を始めておりました。

『もう誰も信じられなくなってしまいました』
グループチャットで新人が嘆きました。
『全員あの係長に見えます。誰もが私を叱りそうで』
誰も信じられない。
その文面を見た時の、捻くれ者の自虐自嘲混じる薄笑いといったら。
『誰かの優しさも怖いんです。裏を疑ってしまって』

『それでいいと思う』
それでいい。それこそ、人間の本質だ。
昔々、大切だと思っていた筈のひとから心をズタズタにされた捻くれ者が、ポンポン文章を編集します。
敵か味方かなど嘘だ。世の中は、敵か、まだ敵でないかでしかない。他人に心を開くなど、愚行だ。
誰ひとり、お前を大切になど思っちゃいないよ。
ポンポン、ポン。編集のフリックを終え、「人を信じるのも頼るのもやめると、少し楽になるぞ」の文面を送信しようとした直前、
「……」
ふと、捻くれ者の心の片隅に、同じ職場の後輩の、
ちょっとおドジでしたたかで、弱いわりに真っ直ぐな食いしん坊顔が、浮かんで、消えました。

あの後輩は、敵でしょうか。
(例外は無い。あいつだって、どこか関係が崩れさえすれば、いつかきっと)
あの後輩は、信じるに足らぬ後輩でしょうか。
(当たり前だ。人間など皆、自己中の塊で……)

『それでいい。アレが怖かったのは当然だ』
気がつけば、捻くれ者は送信前の文章を全削除して、正反対に書き直していました。
『信じなくなって孤立しては、病んでしまう。今の君に難しいのは分かるが、誰かと繋がり続けることだ。その苦しいのと重いのを、どこかに降ろさなければ』
あーあー。よくまぁ、心にも無いことをつらつらと。
送った後で後悔すれど、一度流して既読のついたメッセージを、取り消す方法も存在せず。
ガリガリガリ。捻くれ者は己の失策に頭をかいて、
それでも少しだけ、優しそうな、穏やかそうな微笑をしました。

5/16/2023, 11:28:53 PM

「『何でもできる』の『何でも』にどういう制限を仕込むか、登場人物にどこまでのスペックを付与するかで、結構変わってくるんじゃね?」
俺は「実現可能不可能は別として、恋で頭がいっぱいなやつは、愛の下に何でもやろうとする」学派。
異論は認める。某所在住物書きはそう付け足し、朝から食っているカップアイスにスプーンをさした。
「『愛を理由に法を外れることも実行できますか』とか、『愛を理由に自分の命を危険にさらすことも実行できますか』とか、その辺がメジャーどころ?
一部の親御さんは『子供のためなら』の愛情から、後者を実際に実行しちまうこともあるらしいな?」
愛ねぇ。物書きは首筋をかき、深く考え込んで……

――――――

「『あいがあれば』? ふざけるな」
雪国の田舎出身な先輩が溶けた。
「あいがあれば、ひもまたすずし、か?あいがあれば、とーきょーのきおんを、さげられるか?」
東京の、今日の最高気温は30℃予報。朝の時点でもう20℃を超えた。明日は最高32℃予想らしい。
「やってみせろ。できやしない。あいがなんだ」
真夏もほぼ35℃以下、冬は最「高」気温氷点下。そこから上京してきた先輩は、東京に来てもう長い筈なのに、毎年毎年4月の20℃、5月6月の夏日で、暑さに負けて溶けてエアコンが効き始めるまで机に頬つけて死んでる。
「だまされるものか。あいなど、あってもなつは、すずしくできない……」
さっきから愛に恨みをぶつけてるのは、隣部署の体育会系なタイイク課長が「お客様への愛があれば」とケアレスミス注意の朝会スピーチしてるからだと思う。
「何でもできる」がどうとかも言ってた。

いつもバリバリ仕事して、ゴマスリ係長からの仕事の押し付けもパッパとさばいて、真面目で感情ちょっと平坦な先輩が、でろるんと、チカラなく頬も指先も重力に任せてる。
それはウチの風物詩で、「春も終わるなぁ」、としんみりし始める目印だった。

「あのね先輩。『愛があれば何でもできる』って、そういうハナシじゃないと思う」
「いいや。『なんでも』、できるハズだ。なんでもできるなら、あいがあれば、おんだんかだって」
「行間読むって大事だと思うよ先輩。あと新人ちゃんが持ってきた情報だけど、ウチのフロアのエアコン不具合か何かで調整入るって。動くの数時間後だって」
「おのれタイイク」
「いや隣の課長関係無いし。……アイス買ってくるけど、先輩いつものやつ?」
「たすかる。ありがたい。たのんだ」

愛よりアイス。アイスは夏日を救う。
なんか、ささやき程度の小さい声で、アイスと私への感謝を述べてる先輩。
東京の明日は、今日より暑い。エアコンの調整が万が一今日で終わらなかったら、先輩はきっと、明日無理矢理にでも在宅ワークに切り替えるか、
クーラーボックスかポータブル冷凍庫に、低糖質アイスと冷茶をぎっしり詰めて職場に来る。と思う。

5/15/2023, 2:50:35 PM

「お題の連想ゲームは、結構心がけてるわ」
人生ぶっちゃけ後悔の連続だと思うがどうでしょう。某所在住物書きはコンビニでついつい購入してしまったグミのパッケージを開けながら、呟いた。
「『後悔』、だろう。後悔『する』のか『しない』のか、そもそも『何に対する』後悔か。
『後悔』が花言葉の花は複数あるが、その中のカンパニュラ、後悔の他に『抱負』や『誠実』なんて花言葉もあるぞ?――って具合に」
オマケの剣ピック目当てに、ありゃまたダブり、こりゃまた目当て以外。なかなか思う結果は訪れぬ。
「……ガチャは得てして『後悔』多しよな」
なんでこんなに金の退魔剣ピック出ないんだろう。
物書きはうなだれ、ちびちびとグミを食べる。

――――――

「後悔」。今日も今日とて、手強いやら難しいやらなお題ですね。こんなおはなしはどうでしょう。
最近最近の都内某所、某アパートの一室に、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が住んでおり、
その部屋には週1〜2回、不思議な二足歩行の子狐が、不思議なお餅を売りに来るのでした。
現実感ガン無視とか、細かいことは気にしません。
大抵童話でキツネは喋るし、なんなら「ごんぎつね」や「手袋を買いに」なんて前例もあるのです。
気にしない、気にしない。「そういうおはなし」だと諦めましょう。――さて。

「これが、狐の執着か……」
今日の捻くれ者の部屋は、たいそう賑やかでした。
捻くれ者はため息ついて突っ立って、首筋をカリリ。視線の先では例の子狐が、狐の本能と食欲に従い、タケノコとワラビとお揚げさんをもっしゃもっしゃ。
タケノコとワラビは、捻くれ者の両親が、遠く離れた雪国の田舎から速達で送ってきた大容量。
捻くれ者ひとりでは到底食べきれぬ、田舎サイズに田舎クオンティティーです。
おまけにタケノコはずんぐり孟宗竹ではなく、すらりと長い根曲がり竹、その天然物。キロ単価3千5千オーバーがどっさりで、さぁハウマッチ。

そういえば狐がタケノコを食う映像を観たな。
いつも通り餅を買って、商品を受け取りお金を払った後、ふと閃いた、その後の行動が悪手だった。
『人間の食べ物だが、食ってみるか?』
子狐に田舎から届いたタケノコを見せると、子狐コンコン、途端に鋭いおめめとおはなでクンカクンカ香りを嗅ぎ、タケノコをぱくり!
味を覚えた子狐は、匂いを辿って大きい段ボールを見つけ出し、ひとり大宴会を始めてしまいました。

「子狐、あの、そのへんにしておけ」
「ダメ!さわらないで!ダメッ!!」
ギャン!ギャン!
捻くれ者が近づくと、コンコン子狐、食べ物を取られまいと大声で威嚇して、噛みつこうとしてきます。
その全力の声量の、大きいこと、大きいこと。
防音の部屋で良かった。捻くれ者は思います。
無駄に本能を煽ったか。捻くれ者は後悔します。
自業自得、自分が撒いた種、致し方無し。子狐に悪いことをしてしまったと、捻くれ者は反省しました。

結局田舎クオンティティーのタケノコとワラビは、半分以上が子狐のおなかの中。
後日母狐が子狐を連れて、丁寧な丁寧なお詫びをしに来ましたが、子狐が食べてしまったタケノコとワラビとお揚げさんの弁償に母狐が渡した金額は、諭吉さん2枚と、野口さん4枚だったそうな。
多分めでたし、めでたし。

5/14/2023, 11:50:46 AM

「今のタイミングじゃ『風』っつったら、俺が12日投稿分でネタにしたあのゲームだろ」
どうすんの、コンビニで退魔剣ピックか両手剣ピック狙ってグミ買ったら「風」切羽ピックでしたって実話でも出す?某所在住物書きは、水色だの黄色だのの小さなグミを爪楊枝で刺し、舌に載せた。グミを購入するのは久しぶり。大抵チョコか、クッキーである。
「そういや某鳥族、初出『風』タクだったな」
懐かしい。海出て帆を張ったの何年前よ。物書きは題目そっちのけで、当時の記憶にイカリを下ろし……

――――――

「さようなら。お元気で」
2023年から遡ること、約8年前。春一番の風吹いた頃、ひとりの人間嫌いが、初恋のひとの前から完全に姿を消しました。
「どうぞお幸せに」
スマホは番号もアカウントもキャリアも総入れ替え。グループチャットアプリは完全消去。
居住区も仕事場も、遠い遠い場所へお引っ越し。部屋は引き払い家具は売却。手荷物は、トランクひとつ。

以下はこの人間嫌いが辿った、遅い遅い初恋と、ありふれた失恋話。その一端です。

…――まだ年号が平成だった頃。花と山野草溢れる雪国から、ひとりの真面目で優しい田舎者が、春風吹くに身をまかせ、東京にやってきました。
田舎と都会の速度の違いについて行けず、最初の職場は木枯らし吹く前に解雇となりました。
まずは都会の生活に慣れようと、挑んだ次の職場は人間関係と距離感の向かい風に吹き倒されました。
置き引き、スリ、価値観相違、過密な人口。
4年で5回転職してやっと生活に慣れてきた頃には、優しい田舎者は人間嫌いな田舎者になっていました。
都会の悪意と時間の嵐に、揉まれて擦り切れてしまったのです。

『元気無いね。具合でも悪い?』
その人間嫌いに、構わず声をかけてきたのが、薫風吹くに身を任せて流れ着いた、5度目の転職先の同期。他県出身の同い年でした。

『実家から送られてきたの。食べる?』
そのひとは、田舎者の顔が好きなようでした。
『大丈夫大丈夫。見た目地味だけどおいしいから』
そのひとは、田舎者に一目惚れしたようでした。
『他県民でしょ。どこ出身?』
田舎者がどれだけ平坦な対応をしても、話しかけて、一緒に食事して、休日は都内散策に誘ってきて。
『こっちも4回目の転職なんだ。なんか似てるね』
そのひとは、田舎者の擦り切れた心を、ゆっくり紡ぎ直してゆきました。
『大丈夫。今つらいだけだよ。いつか、良くなるよ』

『あの……!』
気がつけば田舎者も、そのひとに恋をしていました。
『もし、良ければ、……良ければでいい、』
心拍数の明らかな上昇と、前頭葉のブレーキの緩み具合と、報酬系及び大脳辺縁系の馬鹿具合から、田舎者は人生初めての、遅い遅い初恋を自覚しました。
『日本茶と和菓子の、美味い店を見つけたんだ。……良ければ、今週の……土曜日にでも』

自分の心を癒やしてくれたこのひとに、恩返しがしたい。この人が幸せになるなら、自分のすべてを差し出しても構わない。
優しさを取り戻し、人間嫌いの寛解しつつあった田舎者は、当時、この幸せな時間が今後ずっとずっと流れていくのだと、本気で思っておりました……

5/14/2023, 12:06:53 AM

「『おうち時間にやりたいこと』、大半が『やりたいこと』止まりで実行に移せてない説」
かく言う俺が実際そうなんだわ。某所在住物書きは素直に白状し、手元のメモ帳を見た。
「筋トレ」、「読書」、「積みゲー消化」等々。
達成できたものより手つかずの項目が多く並べられた紙切れの字は、お世辞にも、綺麗とは言えない。
「……今からでも何かやるか?」
ダイエットくらいはできそう。呟く物書きはそのくせして、相変わらずポテチとチョコをつまんでいる。

――――――

毎日配信のお題を、持ちネタである3〜4個の物語のテンプレに落とし込み、ひとつの大筋として編み上げる。そんなスタイルの中の、おはなしのひとつ。
いつ回収されるとも、そもそも実際に回収できるかも分からぬ、以下は未来のお題へ向けた伏線です。

最近最近の都内某所。昨今のコロナ禍で空いた時間を利用して、人探しをする者がおりました。
それは、8年前突然失踪した、初恋の次に恋したひと。田舎出身という同い年。
話題が花やら心理学やら、堅苦しいネタばかりだったものの、以降3回恋した中で、最も誠実で、真面目で、自分に多くを捧げてくれたひとでした。
そこに気付くのがあまりにも遅かった。

「なんで見つからないんだろう」
在宅勤務の休憩時間、呟きアカウントを開いては人探しのハッシュタグを見たり、ウェブ検索にポンポン打ち込んだり。
「会いたい。もう一度、会いたいのに」
失踪当初、探偵に依頼も出しましたが、頼った事務所が悪かったか、そのひとを撮った写真が一枚も無かったせいか、足取りは掴めず調査も打ち切り。
以降、いつか本人の呟きアカウントに行き当たることを願って、あるいはどこかでバッタリ顔を合わせることを祈って、
再会と再縁を強く求め始めた3年前から、おうち時間をそのひとの捜索に割いてきました。
「附子山さん……」

珍しい名字のひとでした。
堅苦しい話ばかりの、不器用なひとでした。
「面白くない」、「解釈不一致」、「あいつ頭おかしい」。あまりの人付き合いの下手っぷりを、呟きアプリの別垢で愚痴ったこともありました。
よもやそれがバレたか、まさか。
不器用な生真面目は突然姿を消して、二度と、会うことがありませんでした。
グループチャットは退会済み。電話も解約したらしく不通。住んでいたアパートはもぬけの殻。
珍しい名字です。どうせすぐ足がつくだろうと、探して挫折して、あれから8年経過しました。

「もう一度、今度こそ、最初からやり直したい」
なんだかんだで、あのひとが一番無難で、一番正直だった。
短い短い恋を思い出しながら、今日もそのひとは、おうち時間でかつての恋人を探すのでした。

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