かたいなか

Open App
4/25/2023, 4:17:11 AM

「そういや最近、ルール作家、あんまり見かけなくなった気がするんだが。ほらアレ。エセマナー講師」
今頃どうしてんだろうな。それとも見かけなくなったの、気のせいだったりすんのかな。某所在住物書きはニュースをぼーっと観ながら、ランチを食う。
「自作のルールで誰かを殴るとか、殴ルーラーでもあるまいし、某ソシャゲの中だけにしとけよとは思う。……まぁ個人的な意見と感想だけどさ」
ところでルールとマナーって云々、モラルとの違いは云々。物書きは味噌汁をすすり、ため息をついて……

――――――

ウチの職場には、誰が決めたとも分からないし、別にハッキリ規定に書かれているワケでもないけど、確かに「ここ」に存在するルールがある。

始業はこの時刻です。
「でもその時間ピッタリに仕事を始める人はいません。10〜20分早く業務を開始してください」。
終業はこの時刻で、その先は残業手当が入ります。
「でも非正規や、入ってきたばかりの方々の場合は、残業ではなく自己ケンサン、自己啓発です。残業として申告してはなりません」。
休日は休日なので、職場は一切関与しません。
「でも連休でどこか遠くに旅行した場合、部署の同僚・部下・上司に、合計2000円以上1万円以内でお土産を買い、配布してください」。
他にも色々、上司の指示は絶対断っちゃいけないとか終業時刻から10分程度は仕事を続けるとか、古くさいルールが未だに残ってるのが、ウチの職場だ。

「これでも少なくなった方だ」
私より何年か先にここに就職してた先輩は言う。
「トップが今の緒天戸に交代する前、ドン引きするやつが複数個あった。……本当に酷いルールさ」
昼休憩、一緒の机で、お弁当とちょっとのお菓子を広げて、18年前の大変な事故のニュースをBGMに、先輩は昔の話をほんの少しだけしてくれた。

「ドン引きって?学校のブラック校則みたいな?」
「ブラック校則そのものか、それ以上だ。私が入って2〜3年で撤廃になったが」
「たとえば?」
「よせよせ。メシがマズくなる」

意外とルールは「ルール」になってしまうと云々、時代に合わないから変えましょうと言っても云々、これだから云々と、あきれた目で遠くを見る先輩。
「そういえばどっかで、『大昔の会社は、女のひと採用するとき、勤務してる男性社員の結婚相手になることを見越して、キレイな若い子選んでた』ってデマ、見たことある気がする」
すんごく昔の、社会に女性が参加し始めた初期だったと思うけど、って前置いてぽつり私がしゃべったら、
「昔。むかしねぇ?」
先輩が小さい、短い息をフッと吐いて、乾いた空虚な微笑っぽい何かで、私を見た。

「……あったの?」
「黙秘」
「ガチ?男尊女卑?セクハラ?」
「『男女平等』。あとは言わない」
「待って!平等ってなに、どっち?!」
「黙秘だ」

4/24/2023, 8:54:53 AM

「わぁ。今日もネタ浮かばねぇまま午後になった」
今日の心模様、って、今日も今日とて相も変わらず、平坦よな。某所在住物書きはポテチをかじり、茶をすすって、長いため息を吐いた。
「それこそ先日のお題の、『無色の世界』な状態よ。色彩学の定義だと、色の偏りが無いことを『無色』って言うらしいからな」
ぼっちだからダチだのハイグーシャだのに気ぃ遣う必要も無ぇし。自分の機嫌だけ取ってりゃ良いし。
付け足す物書きは、ふと誰かの視線に気付き、
「……泣いてねぇし。別に寂しかねぇし」
ぼっち万歳。ただポツリとそれだけ、呟いた。

――――――

人の心とは、まぁまぁ、不思議なものでございます。
脳科学のだいぶ進んだ昨今、あの感情にはあの領域とこの物質、この感情にはこの領域とその物質。
愛情ホルモンなんて持て囃されているオキシトシンが、実は他方で、ある条件下の攻撃性を、高めるとか仲間外れを群れから排除云々とか。
人間の今日の心模様は、その日の脳の機嫌次第。その日までの脳の形成過程次第。
現実世界の心は所詮、生理現象なのでございます。
いずれ物理的に操作可能になる日も訪れましょう。

しかしながら人間は、本当に厨二ちっくなものが大好きな種族でございまして。
大昔から現代まで、心は特別で神秘性があり、何かチカラを有していて、物質にもホルモンにも縛られず、自由であるとお考えの方々が、ちらほら、ちらほら。
物語世界の心は所謂、超常現象なのでございます。
魂か魔法の類でございましょう。

「……で、その魂か魔法の類の、その日の模様をそっくりそのまま取り出して、鑑賞して、バックリ食べてしまう化け物が、私なのでございますが」

都内、某所に確かに在る筈なのに、何故かマップアプリに表示されず、道を聞いても辿り着ける者と着けない者の居る古風な喫茶店。
店の名前は「ネタ置き場」。いつ日の目を見るともしれぬ「一発ネタ」が「閃いちゃっただけの設定」が、仮置きの名目で詰め込まれ、いつ来るとも知れぬ出番をここで待っている。すなわち「アプリの短文投稿に採用されるまで出られない部屋」である。

「設定が設定なもので、やること成すことほぼエナジードレイン系のセンシティブ案件でございます。アレでございますね。体から鏡だの結晶だの種だの取り出す系。……無理でしょう。出番とか。
かといって、無理矢理『ここ』から出て行こうものなら、『世界線管理局 密入出・難民保護担当行き』の、密入出の方でお縄になって退場なわけで」

どこかにこんな変態、ゲホゲホ!……妙な化け物でも、物語に採用してくれる物書き様はいらっしゃらないモンですかねぇ。
大きなため息ひとつ吐き、喫茶店のカウンターでココアをすする自称化け物。
「どこぞの物語のチョイ役でも良いので、出番、無いですかねぇ」
1カメ、2カメ。ちらりちらりと視線を送る「彼」の肩を、喫茶店の店員が、旧知の同士へのソレよろしく、優しく、同情的に叩いた。

4/22/2023, 10:03:10 PM

「やっぱこのアプリ、いわゆるエモ系のお題頻出説は可能性高いな……」
間違いだったとしてもって、「間違い」はどこまで行っても、すなわち「間違い」であろう。
前回の題目到着→迅速投稿はどこへやら。今日も某所在住物書きはいつも通り、首筋をガリガリかき頭を抱えて、うつむいたり、天井を見上げたり。
「ランダムなお題に即興で物語書いて執筆スキル上げよう、と思ってアプリ入れたが、このまま続けていくと、比較的、いわゆるエモネタ文章の執筆トレーニングになりそうなのかな」
不得意ジャンルへの偏りを、不得意科目克服のチャンスとすべきか、ここが潮時とアプリを消しても良い口実か。物書きはため息を吐き、ポテチをかじる。

――――――

都内某所。春到来の歓喜も完全に過ぎ去り、最大9連休となる今月末から来月初週に向けて、
報道機関は特集を組み、商業施設は感染症の拡大を不安視しつつも来客と来福を待ちわび、
かつて二次創作の物書き乙女であった社会人2名は、とある焼肉屋の個室で語り合っていた。

「ふと、ね。アレ見て分かんなくなったの」
きっかけはその日突然呟きアプリに浮いてきたトレンド語句。「解釈違い」。
「同カプ解釈違いの呟き、メッチャ多かったじゃん。本当は皆自分のヘキ以外読みたくなくて、他の人が書いたSSも漫画も、特に夢小説なんて、全部ヘイト対象だったのかなって」
私がT夢書いて上げて、解釈爆撃食らったのも、私が全部間違ってたからなのかな、みたいな。
付け足す乙女は元夢物語案内人。昔々、心無い批評家による批判と指摘の集中砲火に遭い作家を辞めた。

「わかるー」
返す社会人はかつての薔薇作家。キャラ付け左右の位置同軸違軸、諸々の論争に疲れ果てて、今はイメージカプ非公表の概念アクセサリー作家として、戦火遠い穏やかな界隈で静かに過ごしている。
「でも、たとえね、たとえ間違いだったとしても、私ちょっと物書きやって良かったと思う」
薔薇作家は微笑み、肉と肉と肉を金網に上げた。

「良いことあった?」
「うん。物書きして、筆折らなきゃ、概念アクセに手は出さなかったなって。……15日と16日にハンドメイドマルシェに店出したの話したっけ?」
「話した。そこそこ儲かったって」
「顧客情報だからアレだけど、『日頃世話になってるひとに、礼がしたくて』ってお客さん来たの。『頑張り屋で真面目で優しいやつだから』って」
「ふーん」
「筆折って概念アクセに来たから、あのお客さんのお手伝いできたんだろうなって。そう思って」

「その客の話、ちょっと詳しく聞いても良い?」

4/21/2023, 11:16:25 AM

「雫……しずくなぁ?」
丁度「雨」のお題を見越して書いたストックがある。
某所在住物書きはメモアプリを開き、書きかけの短文を見て、ぽつり呟いた。
「やっぱりこのアプリ、空関係のお題で書き貯めときゃ、どこかのお題でいつか引っかかる説」
問題は俺がそうそう大量生産できる頭も文才も無いってハナシな。ため息ひとつ吐く物書きは、しかし折角の機会だと、雨の物語の書きかけをコピーして……

――――――

最近最近。都内某所の某アパートに、人間嫌いと寂しがり屋を併発した捻くれ者が住んでおりました。
どこで何の世界線がバグったか、捻くれ者の部屋には、週1〜2回、不思議な不思議な子狐が、不思議なお餅を売りに来ます。
ひとくち食べると少しだけ、ふたくち食べるともうちょっと、心に溜まった毒がお餅にひっつき抜けていくような、不思議な不思議なお餅です。
低糖質から甘味まで、主食もおやつも何でもござれ。バリエ豊富にコスパ最高で1個200円。現代人の、腹にも懐にもありがたいお餅なのです。

その日もコンコン子狐が、防犯強化の叫ばれる昨今、唯一扉の鍵を開けてくれる捻くれ者のアパートに、たったひとりのお得意様の部屋に、お餅を入れた葛のカゴと小さいハスの葉の傘を持って、ざーざー降りの雨の中、やって来ました。

「あーあー。何も、この雨の夜に来なくとも」
玄関の前でぶるぶるぶる。体を振って水を飛ばしても、まだびしょびしょのコンコン子狐。
小さいハスの葉の傘では、カゴの中のお餅は守れても、カゴを持つ体までは覆えません。雨に濡れた子狐は、まるで洗濯直後のぬいぐるみです。
ぽたり、ぽたり、雨の雫が滴り落ちては、嫌なところに当たるのでしょう、また体をぶるぶる振ります。
「ドライヤーは?大きい音は、怖いか?」
大きいバスタオルでポンポンポン。捻くれ者は、子狐を優しく叩き拭いてやりました。

「ドライヤー、怖くないもん。かかさんが、ととさんを叱ってる時の方が、もっと怖いもん」
「かかさん?」
「かかさん、ととさんがお肉焦がすと、怒るの。ドライヤーより静かなのに、ドライヤーより怖いんだよ」
「つまりドライヤーも怖いんだな。分かった」
「怖くないやい。怖くないもん」

きゃん、きゃん。怖がり疑惑に子狐が抗議します。
捻くれ者はポンポン構わず、ある程度体が乾くまで、バスタオルで拭き続けてやりました。

「雨が止むまで居ろ。また濡れたくないだろう」
「平気だもん。濡れたってドライヤー怖くないもん」
「分かってる。分かってるよドライヤーは使わない」
「怖くないやいっ!ホントに、怖くないもん!」
「はいはい」

4/20/2023, 10:36:22 PM

「ワックスペーパー使って、低糖質の小さい菓子を、糖質約1〜2gずつに小分けして包めば糖質管理が楽、っつー知見を得たんだがな」
今日も今日とてエモみマシマシな題目を前に、書いて消して書いてを繰り返す、某所在住物書きである。
「包んでる途中で、そもそも包む手間と紙代がチリツモな気がして、なんなら菓子代を全廃止すれば紙代も何もいらないってハナシで、でもやっぱチョコは食いてぇから糖質管理大事、って堂々巡りしてるわ」
人はパンのみで云々。都合良く部分的に引っ張ってきただけの言葉で、物書きは己の食欲を肯定した。

――――――

今日も相変わらず仕事がクソだ。
ゴマスリばっかりの後増利係長は課長にスリスリ。
その係長に、一緒に仕事してる先輩が悪い意味で気に入られちゃったみたいで、仕事を片付けても片付けても、わんこそば形式に新しい仕事押し付けられてる。
朝イチに来た客なんてもっと酷い。
入ってきて、わざわざ全然関係無い話ばっかりダラダラ続けて、こっちが会話を切り上げようとすると、キレて怒鳴って突然号泣して。大騒動だった。

周囲の客は動画撮ったり子供を避難させたり。お客様対応中の誰かさんはチベットスナギツネなジト目。
最終的に、隣部署の宇曽野主任の伝家の宝刀「ウソ野ジョーク」と「悪いお客様はしまっちゃおうねバズーカ」が炸裂。逃げるようにその客は帰ってった。
神様仏様警察様。いるならこの世からカスハラ全部無くしてください(切実)
他には何もいらないから、迷惑系Customerを世界から一掃してください(嘆願)

「一応、年齢と性別と、身なりと会話内容の傾向から、アレの理由はいくつか推測できる」
昼休憩にそれを雑談ネタにする人、多かったみたい。
私も先輩に愚痴ったら、真面目な意見が返ってきた。
勿論チベットスナギツネな諦めの薄笑いで。
「脳のブレーキ、疎外感、怒りやすさ、薬の副作用、ストレス、王様欲求等。全部話すと昼が無くなるな」
仕方ない、仕方ない。先輩はため息をついて、スープジャーの中の肉団子をつっつく。
「『そんな行動をしてしまう人間が、一定数、事実としている』。それだけのことだ。深く考えると、医学と脳科学と心理学と社会学あたりにハマるぞ」
連中に心を寄せる必要は無い。何もいらない。放っておけ。先輩はそう結んで、また肉団子をつっついた。

「そういう人がいるのと、誰かに迷惑かけて良いのとじゃ、ハナシ違うと思う」
「ごもっとも。だが多分、彼等独りではどうにもできないんだろうさ。仕方ない。それだけだ」
「『それだけ』で全部済んでたらツー様は要らないし鶴カプも無いと思う」
「よく分からないがコーヒー飲むか」
「のむ。アイス。ミルク1個とシロップ4個」
「糖質過多だ。2個にしておけ」
「人間、ガッツリ糖質キメなきゃ、やってらんない時があるんだよ。先輩」

Next