かたいなか

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「そういや最近、ルール作家、あんまり見かけなくなった気がするんだが。ほらアレ。エセマナー講師」
今頃どうしてんだろうな。それとも見かけなくなったの、気のせいだったりすんのかな。某所在住物書きはニュースをぼーっと観ながら、ランチを食う。
「自作のルールで誰かを殴るとか、殴ルーラーでもあるまいし、某ソシャゲの中だけにしとけよとは思う。……まぁ個人的な意見と感想だけどさ」
ところでルールとマナーって云々、モラルとの違いは云々。物書きは味噌汁をすすり、ため息をついて……

――――――

ウチの職場には、誰が決めたとも分からないし、別にハッキリ規定に書かれているワケでもないけど、確かに「ここ」に存在するルールがある。

始業はこの時刻です。
「でもその時間ピッタリに仕事を始める人はいません。10〜20分早く業務を開始してください」。
終業はこの時刻で、その先は残業手当が入ります。
「でも非正規や、入ってきたばかりの方々の場合は、残業ではなく自己ケンサン、自己啓発です。残業として申告してはなりません」。
休日は休日なので、職場は一切関与しません。
「でも連休でどこか遠くに旅行した場合、部署の同僚・部下・上司に、合計2000円以上1万円以内でお土産を買い、配布してください」。
他にも色々、上司の指示は絶対断っちゃいけないとか終業時刻から10分程度は仕事を続けるとか、古くさいルールが未だに残ってるのが、ウチの職場だ。

「これでも少なくなった方だ」
私より何年か先にここに就職してた先輩は言う。
「トップが今の緒天戸に交代する前、ドン引きするやつが複数個あった。……本当に酷いルールさ」
昼休憩、一緒の机で、お弁当とちょっとのお菓子を広げて、18年前の大変な事故のニュースをBGMに、先輩は昔の話をほんの少しだけしてくれた。

「ドン引きって?学校のブラック校則みたいな?」
「ブラック校則そのものか、それ以上だ。私が入って2〜3年で撤廃になったが」
「たとえば?」
「よせよせ。メシがマズくなる」

意外とルールは「ルール」になってしまうと云々、時代に合わないから変えましょうと言っても云々、これだから云々と、あきれた目で遠くを見る先輩。
「そういえばどっかで、『大昔の会社は、女のひと採用するとき、勤務してる男性社員の結婚相手になることを見越して、キレイな若い子選んでた』ってデマ、見たことある気がする」
すんごく昔の、社会に女性が参加し始めた初期だったと思うけど、って前置いてぽつり私がしゃべったら、
「昔。むかしねぇ?」
先輩が小さい、短い息をフッと吐いて、乾いた空虚な微笑っぽい何かで、私を見た。

「……あったの?」
「黙秘」
「ガチ?男尊女卑?セクハラ?」
「『男女平等』。あとは言わない」
「待って!平等ってなに、どっち?!」
「黙秘だ」

4/25/2023, 4:17:11 AM