安心って、
あったかくてやわらかくて
ぎゅっとすると
形がくずれるものだと思う。
もらったときはうれしいのに、
時間がたつと
これって本物かなって考えちゃう。
不安はそのとなりにいつも座ってて、
何も言わないのにずっとこっちを見てる。
「だいじょうぶだよ」って
言葉は毛布みたいだけど、
なぜか夜になると足りなくなる。
安心は貸してもらうものみたいで、
返す日を勝手に決められてる気がする。
不安は返さなくていいから、
いつのまにか自分のものになる。
だから私は安心を大事に持つふりをして、
不安を落とさないように歩く。
本当は逆にしたいのに、うまくできないだけ。
安心が消えたら泣くくせに、
不安がなくなったら信じられない。
たぶん私は、
安心よりも不安のほうが、
うそをつかないって知っている。
逆光の中で
君を正しく見えない
輪郭だけが過剰に輝いて
表情はすべて奪われる
それなのに目を逸らせない
光は真実を照らすふりをして
必要な部分だけを焼き切る
私は見たいものほど見失う
逆光の中
私は影になる
名前も感情も後ろに落ちて
ただ視線だけが残る
どうして
見えないほど近く感じるの
想像が空白を丁寧に埋めて
現実より正確な像を作り上げる
触れられない距離が
思慕を最適な形に保っている
逆光は優しい
欠点を隠してくれるから
期待も不安も同じ白さに溶かす
完全に見えてしまったら
私はきっと壊れる
だからこの位置で立ち止まる
君を理解しないまま
理解したつもりで
逆光のまま
それが私にとっての
最も安全な距離
こんな夢を見た
私は友達の家にいた。私たちは四人だった。
みんなで話したりテレビを見ている間に
私はうとうと寝てしなった。
夢の中で、私はまだ友達の家にいた。
ただ違うのは、
そこら中から釘が突き出ていること。
私が見知らぬ人もそこにいる。
見知らぬ人は冗談を言って、
みんな笑っていた。
みんながその冗談を笑っている時に
私は目が覚めた。
笑い声は夢のものではなかった。その喋り声で
私は起きたのだ。
見知らぬ人は誰だったのだろう、
そしてみんなはどうやって冗談を言う
タイミングを把握したのだろう。
タイムマシーンがあったら
べつにすごいことはしない
ヒーローにもならないし
せかいも救わない
ただちょっとだけもどって
あのときのわたしに言う
「だいじょうぶ」って
ほんとは
だいじょうぶじゃないけど
でもそれを
知らないままのほうが
まだ
ましだから
タイムマシーンはいらない
これ以上
がっかり
ふやしたくない
窓の外で黒い影が立ち止まる。
私は灯りを落とし、
台所に残った匂いをそのままにしておく。
呼ばなくても来る、と知っているから。
アレは学習する。
優しさと好奇心の曖昧な境界を。
与えたのは食べ物じゃない。
「また来てもいい」という許可の形。
夜は静かに条件を整える。
偶然に見せかけた反復、
危険を理解したうえでの、小さな選択。
私は扉越しに、自分の衝動を観察する。
特別なのは出来事じゃない。
何も起きなかった、その事実。
引き返せたはずの瞬間を
越えなかったこと。
それでも影は、確かにこちらを見ている。
次も来る、と約束する目で。
特別な夜。
私はまだ、餌を切らずにいる。
それが抑制なのか、期待なのか、
自分でも区別がつかないまま。