不整脈

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「またね」って、
どうして、あんなに優しいのか?
どうして、あんなに冷たいのか?
口にした瞬間に、
全てが「終わり」になるって知っていたのに、
私は笑って言ってしまった。

今夜も、あの帰り道で街灯が揺れている。
蛍光色が、私の髪を照らすたび、
ふいに
あなたの指先を思い出してしまう。

猫みたいに静かだった足音。
笑うと片方だけ深くなる目尻の皺。
忘れたくて、忘れたくなくて、
同じ道を何度も歩いている。

それでも、あなたはいない。
「またね」と言った場所に、あなたはいない。

あの言葉はまるで呪い。
また会えるという希望を、
私の中に突き刺したまま。
ずっと、
ずっと、
時間を腐らせていく。

「またね」という言葉が嫌い。
けれども、
「さよなら」よりも嫌いではないのが悔しい。

だから、私は今夜も街灯の下で待っている。
あなたがもう一度、
「またね」って笑うのを。

8/6/2025, 11:27:34 AM