れいおう

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1/29/2024, 10:01:11 PM

『I love youを伝えるために』

I loveの後の言葉はすんなりと口から出てこない。
あなたへ愛を伝えたいとそう思っていたのに
僕の言葉はそこで止まってまう。
花束をもって君のお気に入りの場所で
I love youと言えたならどんなにロマンチックだろうか
心の中でI love youと呟いたって君の耳には届くはずもない。
僕は君に失望されるのが嫌だから、I love youと伝えることができない。
僕は君に拒絶されるのが嫌だから、I love youと伝えることができない
僕には君に愛を伝える資格なんてないと思い込んでしまう。
日を追ったところで君への愛は薄れない
衝動的感情に追い詰められてむやみに愛を吐かないように
儚い思いが僕を締め付ける。
君と一緒に行ったカラオケ
君と一緒に行った映画館
君と一緒に行った公園
君と一緒に行ったレストラン
どれも記憶の中に閉じ込める
I love youをいつか君に送りたい。
そのいつかが来なくなることはないはずだったのに
君はいつの間にかいなくなってしまった。
それが叶わなくなってしまってからじゃもう遅い
そんな単純なことにすら気付けなかった。
やり場のない想いほど
虚しいものはない
I love youと伝えるために
僕は今日も花束を持つ

1/28/2024, 10:26:22 PM

『いざ街へ』

街へ行くのは簡単だ。
家の玄関から一歩踏み出せばそこには街が広がる。誰が住んでいるかも知らない住宅と強烈な光を放つ店が立ち並ぶ。そこには数多くの人、人、人。僕はその光景が嫌いだ。まるで自分は住む世界が違うと嘲笑ってくるように感じてしまうからだ。
だから僕は今日も自分の家に引きこもる。
朝起きてリビングに行くと僕はテレビを付ける。いつも朝見ているニュース番組。これはさらに僕に恐怖を植え付ける。ぼーっと見ながらご飯を食べていると親の「いって来るね」という声が聞こえてくる。最近は特に何も言われなくなった。
ご飯を食べ終わってもすることがないのでそのニュース番組を僕は見続ける。きっと僕の学校の中で毎日このニュース番組をエンディングまで見ている人は誰一人としていないはずだ。
そのニュース番組が終わると、僕はスマホをいじりだす。SNSサイトを巡回して何をすることもなく時間を浪費していく。そこにはキラキラとした投稿が表示されている。いつもならただすごいとしか思わないその投稿に僕は今日嫌悪感を感じた。
きっと今日は心がナイーブな日だ。
用意されてある昼ご飯を食べてまたSNSサイトを見始める。心は嫌がっていたのになぜかやめられない。
ふととある投稿が目に入ってきた。入学したての時にフォローしてそのままになっている同級生の投稿だった。そこには今日のテスト疲れたというような内容が書かれていた。そう言えば今日はホントだったら期末考査の日だったな。そう思い出すと心の中がざわざわしてきた。
このままじゃだめじゃないかと長い事見てこなかった現実が僕に向き合ってきた。
もうやめようと、別のアプリを開く。関係ない動画を見て心を落ち着かせようとする。だがしかし現実が僕を襲うのをやめてこない。何も楽しくないと思ったのはそれが初めてだった。こんな現状を変えないといけないという思いがもんもんと湧いてでてくる。
すると現状に不満を持つあなたへというタイトルの動画がおすすめされてきた。僕は誘い込まれるようにその動画を開く。見たこともないチャンネルだった。動画が始まるとオープニングを経て、少しのことから初めよう、そうすれば人生変わります。と音声が流れてきた。
なぜかは分からないが、その知らない人の知らない言葉に心が動かされたような気がした。ストンと何かが落ちた。
少しのことでいいから始めてみよう。そしてこの現状を変えよう。その言葉は僕を突き動かすのに十分な力を秘めていた。そう決心した僕は家から出ようと思い立った。きっとこれは少しのことだ。
玄関で靴を履き、ドアに手を掛ける。
少し緊張する。心臓がバクバクと鼓動を止めない。
俺は覚悟を決めてドアを押す。
そして勢いのまま僕は街へ踏み出した。
街へ一歩踏み出すと、そこに広がっているのはのはなんてことはないただの一風景でしかなかった。何が僕をこんな恐怖にさせていたのだろうかと分からなくなるほどだった。
そこにいる数多くの人もただの風景の一部分でしかないではないか。
今日僕はひとつ成長を重ねたようだ。
さあこれからどうしようか。
いざ街へ。
僕はどこかに向かって歩き始めた。

1/27/2024, 11:35:02 PM

『人に向ける優しさ』

「人には優しく接しなさい」
子供の頃に親に言われた言葉を今でも覚えている。
どうしてそういう話になったのか、たぶん友達に対してひどいことを言ったりしたのだろう。
その時から俺にとって人に優しさを向けることは、なんでもない当然の行為として身体に刻み込まれていた。
「ありがとう」 
という言葉を何回聞いてきたことだろう。
感謝されるような行為は全て優しさを原理に行ってきた。
そんな俺の一日は優しさと感謝に満ち溢れている。今日もそんな一日が送られる。
朝の通学、いつものバスに乗っていると、お年寄りが乗ってきた。周りを見回すと席は一つも空いていない。優しさは時に目上の人に向けられる。
これは…と気づいた俺は
「席座りますか?」
と声を掛ける。
「あら、ありがとう」
とそのお年寄りはいい、席に座った。いいことをしたと心の中で密かに思う。朝からいい気分になるのはいいことだ。
学校に着くと、友逹が
「宿題見せて!」
と泣きついてきた。優しさは時に友達に向けられる。だがこの時俺の行動は一つとは限らない。この場合優しさの考え方によって行動は変わる。
果たして友達に宿題を見せるのが優しさなのか、はたまた宿題は自分でしなきゃ力にならないぞといってあげることが優しさなのか。毎回のように俺は迷う。だけど最終的には友達の困った様子に同情して
「しょうがないなー」
と言いながら宿題を見せる。そんなことを色んな友達に対してしてるので宿題のある授業の前は俺に宿題を見せてほしい者たちによる行列ができてしまう。頼られるのは喜ばしいことだが、こいつらは果たして大丈夫なのかなんて考えも浮かんでくる。
時が来たら自分でやれよと叱ってあげよう。きっとそれも優しさだ。
時は過ぎて昼休み、職員室の前でなにやら困っていそうな生徒を見つけた。きっと一学年下の人だろう。優しさは時に目下の人にも向けられる。
「どうしたの」
優しく声を掛けると、その生徒は少し驚いた顔を見せ、
「化学の先生を探しているんですが、職員室にいなくて、どこにいるのかって困ってて」
と返事をしてきた。化学の先生といえば少し心当たりがあった俺は、
「理科室とかにいると思うよ」
と答えてあげた。この時もし全く心当たりがない場合はその先生が受け持ってるクラスにいるんじゃないと答えるようにしている。聞いておいてなにも知らないじゃあまりにもだめだからだ。
時はまた過ぎて放課後、俺は部活をしに理科室に行った。俺は化学実験研究部という無駄に名前の長い部活に所属している。顧問は昼休みに探されていた化学の先生だ。理科室に着くと、部活の友人が実験をしようと準備をしていた。俺は思わず
「手伝おうか」
と声を掛けた。優しさは時に困ってない人にも向けられる。その友人は
「じゃあせっかくだからお願いするわ」
と言ってくれた。こういう時は断られることも多いからこうなるとなかなかに嬉しい。
部活が終わると俺は家に帰るためにバス停に向かって歩き出す。
優しさは時に数多くの人に向けられる。優しさを他人に向けるのは俺にとって当たり前だ。
家に帰るとどっと疲れが湧き出てきた。当たり前だとはいうものの、誰かに優しくするというものはいつでも疲れるものだ。俺はすぐに冷蔵庫からチョコとコーラを取り出した。
優しさは時に他人ではなく自分に向けられる。
「人に優しく、自分に厳しく」なんかじゃなくて、「人に優しく、自分にも優しく。」
今日も一日頑張った自分に優しさを与える。こうやって疲れた日は大好物のチョコとコーラで自らを癒やす。一人で空に向かって乾杯をして、
「お疲れ様です」
そう言って俺の優しさに溢れた一日は終わりを向かえる。

1/26/2024, 10:51:44 PM

『ミッドナイトゴーストハウス』

ミッドナイトゴーストハウス。それは夜の12時、人間たちが寝静まった頃、幽霊たちが目を覚まし訪れる場所。とある空き家に幽霊たちは集まり、人間たちと同じよう言葉を交わす。
「今日は新しく幽霊が来るんだって!」
子供の幽霊がそう興奮した様子で話しかけてきた。人間は亡くなると幽霊になる。そしてこの家に集まってくる。今日もまた一人亡くなったた人間がいたようだ。
「へーそれは楽しみだね」
「せっかくだし見に行こうよ!」
と言われ、仕方ないなとついていく。新しく幽霊になった人間は無意識的にこの家にたどり着き、家の扉を開く。
その家の玄関にたどり着くと、他にも二人の幽霊が待っていた。
「おーお前も来たのか」
と話しかけてきたのは先輩幽霊さん。
「あっ、どうもこんにちは」
と時間にあってない挨拶をしてきたのは物静かな幽霊。その二人が一緒なのは珍しいなと思っていると、
「もうそろそろ来るんじゃないか」
と先輩幽霊が呟いた。彼は長年幽霊として存在してこの家にいるのでなんでも分かるらしい。そしてその言葉通りすぐに家の扉が開き、新しい幽霊が入ってくる。そしていつもの通りその幽霊に向けてこう言う。
「ウェルカムトゥーミッドナイトゴーストハウス!」
四人の言葉が重なり大きな声となったそれは、少々
その新入り幽霊を驚かしてしまったようだ。
「え…何?どういうこと」
と困惑した様子でこちらの姿を見回す。するとその新入り幽霊に向かって子供の幽霊がこう言う。
「君は幽霊になったんだよ!」
「え、幽霊?」
「そう、君は死んじゃって幽霊になってこの家に来たんだ!」
「死んだ?」
子供幽霊の言葉に新入り幽霊はさらに混乱したようだ。毎回みんなして同じ反応なのが少し面白い。
「まあ、その現実は今は受け入れられなくてもしょうがない。ここで過ごすうちに慣れてくるだろう」
先輩幽霊がそう新入り幽霊に声を掛けた。新入り幽霊はなにも言うことができずぼーとしている。死んだという感覚は本人は感じることができないらしい。なのでそれも無理はない。
「とりあえず家の中を案内しますね」
物静かな幽霊がそう言い、新入り幽霊の手を引いた。
「あっちょっと待って」
という言葉には耳を貸さずに物静かな幽霊はその幽霊を引いていった。
「諦めたほうがいいかもです」
僕はそう言うと、後についていった。
最初に行ったのは遊戯室。競技や囲碁などが置いてあり、遊ぶことができる。すでに数体の幽霊が将棋に興じていた。テレビを見ている幽霊もいた。新入り幽霊は将棋や囲碁には興味を示さなかったようで、テレビを見に行った。テレビを見ながら他の幽霊と楽しそうにしている様子を見ると、こちらも楽しくなってくる。少しすると物静かな幽霊が、
「べつの場所にもいきましょう」
と言った。この幽霊は賑やかな場所が嫌いらしい。
次に行ったのは図書室。本がたくさん置いてある部屋だ。そこではすでに数体の幽霊が本を読んでいた。そこに入ると、新入り幽霊は目を輝かせ、本だなを眺めに行った。きっと亡くなる前は本好きだったんだろうなと推測されるくらいの食付きようなので驚いた。本を何冊か重ねると、本を読み出した。僕も久しぶりに読んでみるかと本を抜き出し読んでみる。本を読む時に集中するのはどの幽霊でも同じようだ。すると、今度は子供の幽霊がこう切り出した。
「鬼ごっこしよー」
この幽霊は静かな場所が好みではないのだ。四人で鬼ごっこを行うと、童心に帰ったような気持ちになった。どのくらいしていたか分からないが、久しぶりに運動したので、少し疲れたと感じた。子供の幽霊以外もそうだったようで、
「戻ろうか」
という言葉とともに、みんなで玄関に戻った。
いつの間にか時間が経っていたのだろう。ゴーンと鐘が一回鳴った。この家が閉まるまであと十分という合図だ。朝まで開いていると人間たちが驚くので閉まる時間は決まっている。それが聞こえると、それぞれが行動しだした。
「もうそろそろ帰らなきゃ!」
子供の幽霊はそう言うと、扉から出ていった。慌ただしい様子はいつもと変わらない。
「俺もここで御暇するぜ」
先輩幽霊はそう言うと遊戯室に入っていった。きっと時間いっぱいまで囲碁で勝負でもするのだろう。
「お疲れ様でした。」
と言いながら物静かな幽霊も扉を出ていった。ていった。今日はいつもより楽しそうだったのが印象に残っていた。
他の三人がいなくなり、新入り幽霊とふたりきりになる。すると新入り幽霊が
「あのっ。今日は楽しかったです」
と話を切り出してきた。そして、
「また来ていいですか?」
と聞いてきた。不思議なことを言うんだな、と思いながら僕は笑いかけ、こう答える。
「もちろんです。いつでも待っていますよ。また次のミッドナイトにお会いしましょう」
ゴーンゴーンとまた鐘がなる。もう時間らしい。帰らないと。僕はその新入り幽霊にまた会えることを楽しみにしながらミッドナイトゴーストハウスを出ていった。

ミッドナイトゴーストハウスは毎日夜の12時に開く幽霊たちの居場所です。
ミッドナイトゴーストハウスは死んでしまったあなたをいつでも歓迎しています。

1/25/2024, 10:01:49 PM

『不安と安心の感じ方』

模試で志望校を書かなければならなくなったのは高2のときからだった。受験カードを見ると、志望校の欄が追加されていた。先生は
「そろそろ志望校を決めておこう」
と言う。僕はまだ気が早いだろうと思っていたのだが、周りの人間を見るとスラスラと志望校の欄を埋めていく様子が目に映った。
なぜみんなして行きたい大学が決まっているんだ。僕はシャーペンを持つことができずその場で固まる。行きたい大学なんてない。先生の
「あと五分だぞ」
という言葉で正気を取り戻す。
結局その時は自分の県の国立大学で志望校の欄を埋めた。
模試の何週間か後に、教育相談という拷問が始まった。その時に、今回の志望校についての質問をされる。
「大学に行ってなにがしたいですか」
と。大学に行ってしたいことなんてある訳がない。周りが行くから行く。それでいいじゃないかと言いたくなる。
「まだなにも考えてないです」
正直に答えると、何かごちゃごちゃと説いてくる。
「他の人はもう決めてますよ」
とか言って、不安を煽るだけ煽ってくる。
今度からは先生に話せるように内容を創らなきゃ。
僕は不安の感じ方と安心の感じ方を知っている。どちらも他人と自分とを比べることで感じることができる。自分よりレベルの高い人を見ると不安になるし、自分よりレベルの低い人を見ると安心する。
さっきは少なからず不安を感じてしまったので、僕は安心感を得たかった。だから僕は喋りに行く。僕よりレベルが低いと思われる人へ。
だけどそれは無意味な行為だった。誰一人として僕よりレベルが低い人はいなかった。それもそうかと模試の時を思い出す。みんな志望校書いてたもんな。意識高すぎて笑えない。
不安に押し潰されそうになったので一旦家に帰ることにする。家に帰ったからといって何かが変わるわけでもないけど。とりあえず親に相談してみる。そしたら
「自分のしたいように行きなさい」
だってさ。それがないから悩んでるんじゃん。子供が夢を持ってるなんてそんなの願望でしかないじゃん。反論したい気持ちに駆られる。だけど面倒くさいのでそんなことしない。僕は優等生だから。
なにも決まらないまま時間は進んで三年生ゼロ学期。いや二年生だろとかいうツッコミは誰にも届かない。
周りの人間はもう受験モードに入ってるらしい。大学受験の話ばっかり。よくそんな話できるな。ただそれを聞いていると嫌になる。周りが僕よりレベルが高いと自覚させられるから。だけど学校には行かなきゃいけないから逃れられない。
そんな時期だからかまた教育相談が始まった。僕は創った話を先生に聞かせてやる。そしたら
「いい夢だな」
って、適当に創った話なのに。
そのまま時間は進んでいった。僕は全くもってやりたいことが決まらないし、夢だってもてない。だけど受験までの日数は減ってくるので勉強している。
志望校は県の国立大学。学歴はどんくらいだろ。地方国公立のレベルは知らない。ただ周りの人間からすれば低いらしい。僕は低いレベルの人間だと言われたような感じがした。
僕はその大学に落ちた。その代わりに名前も知らない大学に受かった。
その名前も知らない大学の合格発表があった日、僕は多くのSNSサイトを巡回した。合格したあと周りの人間の、僕より高いレベルの大学に合格したという報告でこんな大学で良いのかと不安を感じたからだ。
合格の報告なんていらない。不合格で浪人決定した人の投稿だけが見たかった。安心感を得たかった。
多大な安心感を得たあと僕はこんなことを思った。
「僕はもしかして最低の人間か」
と。
その受かった大学に僕はとりあえず行くことにした。そしてこんなことに気がつく。
「この大学は僕よりレベルの低い人ばかりだ」
と。僕はそこにいるだけで安心感を感じることができたのだ。不安は一切感じなかった。
僕は不安の感じ方と安心の感じ方を知っている。自分よりレベルの高い人を見ると不安になるし、自分よりレベルの低い人を見ると安心する。
それはこの世の理だ。
そう自分を肯定して、僕は大学に出かけていく。
就活や社会人生活がどうなるかなんて考えず、
ただ自分を安心させるためだけに。
自分のその時だけの利益のために。


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