れいおう

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『ミッドナイトゴーストハウス』

ミッドナイトゴーストハウス。それは夜の12時、人間たちが寝静まった頃、幽霊たちが目を覚まし訪れる場所。とある空き家に幽霊たちは集まり、人間たちと同じよう言葉を交わす。
「今日は新しく幽霊が来るんだって!」
子供の幽霊がそう興奮した様子で話しかけてきた。人間は亡くなると幽霊になる。そしてこの家に集まってくる。今日もまた一人亡くなったた人間がいたようだ。
「へーそれは楽しみだね」
「せっかくだし見に行こうよ!」
と言われ、仕方ないなとついていく。新しく幽霊になった人間は無意識的にこの家にたどり着き、家の扉を開く。
その家の玄関にたどり着くと、他にも二人の幽霊が待っていた。
「おーお前も来たのか」
と話しかけてきたのは先輩幽霊さん。
「あっ、どうもこんにちは」
と時間にあってない挨拶をしてきたのは物静かな幽霊。その二人が一緒なのは珍しいなと思っていると、
「もうそろそろ来るんじゃないか」
と先輩幽霊が呟いた。彼は長年幽霊として存在してこの家にいるのでなんでも分かるらしい。そしてその言葉通りすぐに家の扉が開き、新しい幽霊が入ってくる。そしていつもの通りその幽霊に向けてこう言う。
「ウェルカムトゥーミッドナイトゴーストハウス!」
四人の言葉が重なり大きな声となったそれは、少々
その新入り幽霊を驚かしてしまったようだ。
「え…何?どういうこと」
と困惑した様子でこちらの姿を見回す。するとその新入り幽霊に向かって子供の幽霊がこう言う。
「君は幽霊になったんだよ!」
「え、幽霊?」
「そう、君は死んじゃって幽霊になってこの家に来たんだ!」
「死んだ?」
子供幽霊の言葉に新入り幽霊はさらに混乱したようだ。毎回みんなして同じ反応なのが少し面白い。
「まあ、その現実は今は受け入れられなくてもしょうがない。ここで過ごすうちに慣れてくるだろう」
先輩幽霊がそう新入り幽霊に声を掛けた。新入り幽霊はなにも言うことができずぼーとしている。死んだという感覚は本人は感じることができないらしい。なのでそれも無理はない。
「とりあえず家の中を案内しますね」
物静かな幽霊がそう言い、新入り幽霊の手を引いた。
「あっちょっと待って」
という言葉には耳を貸さずに物静かな幽霊はその幽霊を引いていった。
「諦めたほうがいいかもです」
僕はそう言うと、後についていった。
最初に行ったのは遊戯室。競技や囲碁などが置いてあり、遊ぶことができる。すでに数体の幽霊が将棋に興じていた。テレビを見ている幽霊もいた。新入り幽霊は将棋や囲碁には興味を示さなかったようで、テレビを見に行った。テレビを見ながら他の幽霊と楽しそうにしている様子を見ると、こちらも楽しくなってくる。少しすると物静かな幽霊が、
「べつの場所にもいきましょう」
と言った。この幽霊は賑やかな場所が嫌いらしい。
次に行ったのは図書室。本がたくさん置いてある部屋だ。そこではすでに数体の幽霊が本を読んでいた。そこに入ると、新入り幽霊は目を輝かせ、本だなを眺めに行った。きっと亡くなる前は本好きだったんだろうなと推測されるくらいの食付きようなので驚いた。本を何冊か重ねると、本を読み出した。僕も久しぶりに読んでみるかと本を抜き出し読んでみる。本を読む時に集中するのはどの幽霊でも同じようだ。すると、今度は子供の幽霊がこう切り出した。
「鬼ごっこしよー」
この幽霊は静かな場所が好みではないのだ。四人で鬼ごっこを行うと、童心に帰ったような気持ちになった。どのくらいしていたか分からないが、久しぶりに運動したので、少し疲れたと感じた。子供の幽霊以外もそうだったようで、
「戻ろうか」
という言葉とともに、みんなで玄関に戻った。
いつの間にか時間が経っていたのだろう。ゴーンと鐘が一回鳴った。この家が閉まるまであと十分という合図だ。朝まで開いていると人間たちが驚くので閉まる時間は決まっている。それが聞こえると、それぞれが行動しだした。
「もうそろそろ帰らなきゃ!」
子供の幽霊はそう言うと、扉から出ていった。慌ただしい様子はいつもと変わらない。
「俺もここで御暇するぜ」
先輩幽霊はそう言うと遊戯室に入っていった。きっと時間いっぱいまで囲碁で勝負でもするのだろう。
「お疲れ様でした。」
と言いながら物静かな幽霊も扉を出ていった。ていった。今日はいつもより楽しそうだったのが印象に残っていた。
他の三人がいなくなり、新入り幽霊とふたりきりになる。すると新入り幽霊が
「あのっ。今日は楽しかったです」
と話を切り出してきた。そして、
「また来ていいですか?」
と聞いてきた。不思議なことを言うんだな、と思いながら僕は笑いかけ、こう答える。
「もちろんです。いつでも待っていますよ。また次のミッドナイトにお会いしましょう」
ゴーンゴーンとまた鐘がなる。もう時間らしい。帰らないと。僕はその新入り幽霊にまた会えることを楽しみにしながらミッドナイトゴーストハウスを出ていった。

ミッドナイトゴーストハウスは毎日夜の12時に開く幽霊たちの居場所です。
ミッドナイトゴーストハウスは死んでしまったあなたをいつでも歓迎しています。

1/26/2024, 10:51:44 PM