譬えば貴方の肌の色はこうですから、貴方にはこれが似合いませんよ等と宣われるとしましょう。
そんなことを言われましても、と眉を下げつつ、はぁそうですかと応えます。
意地の悪い人間は顔を見ればわかります。
此奴のはなしを聞く必要は無いなと、第一印象で判断できます。
色のせいでしょうか。
私には生来、好きな色のはなしがわからずいました。
色など光の問題です。
そこに好き嫌いを見出せるほど、私の感性は鋭くなかったのです。
青とか赤とか緑とか、無難な声でやり過ごして、本当に好きな色って何かしらと思いましても、やはりわからないのです。
好きな色の画用紙を選んでください、という言葉がいまも鮮明です。
色とりどりの画用紙が、壁に貼り付けられていきます。
私は紫を選びました。
カラフルな壁になりました。それ以下でもそれ以上でもないでしょうに、みんなで手を叩きました。
色彩は実に奥が深い、それゆえに好きも嫌いもわからないのです。
ただ、あのカラフルな平面が、私の夢に出てくるのです。
『カラフル』
いつ死んでもいいやと破り捨てた詩人の原稿用紙の欠片
春を告げる啼鳥以外に、季節を感じる術は無い
覗き込んだ深淵をライトで照らして眩しい虚無に挨拶する
昔だれかが歌ったエーデルワイス
今日も迎えに来てください
地獄気取りの楽園へ
朝と昼の境目みたいな時間だった。こういうときに腹が減ると中々苦しかった。
今日はメロンパンを半分だけ口に放り込んで急いで家を出てきた。母親は洗濯物を干していた。父親はコーヒーの熱を冷ましていた。多分、駅前のパン屋のだった。許可も得ず食ったから、もしやしたら誰かの分だったかも知れない。その罪悪感もつゆ知らず、腹が鳴った。
文化祭の苺ソーダが妙に美味かった思い出。綺麗な色だったかと言われれば、やる気のない学生の、チープな品だった。野外にいくつかテラス席が用意されていて、向かい合って座った。カップルで並ぶとなぜか『特別です』と言われアベックストローを雑に差し込まれるそうだが、我々もまた同じ目にあった。甘美な秋だった。そうだ。美味しくはなかった。喉を突く炭酸がやけに痛かった。
手紙を出したかった。ずっと、宛のない手紙を書き続けた。いつか出会う人に渡す為の、ラブレターだった。想いは風だった。優しく撫でて、干渉しなかった。
もうすぐ白鷺の季節だ。貴方の嫌いな季節が来る。世界に求めているのは、美しさでなくて、ただ、我々を赦してくださいと、地を舐めた。顔をあげたとき、私はまだゲヘナを見下げる側にいた。
『風に乗って』
檸檬爆弾に妬けていた。
海で叫ぶひとが妙に羨ましかった。
冬に半袖で駆けるひとに憧れていた。
本質はきっと空虚な幻想だった。
ああすればこうなるという妄想に耽っている。
私はひとり、スニーカーを浜辺に沈める。
それは惑星だった。
少なくとも地球ではなかったが、水星や金星ほど小さくはなかった。
天王星や海王星ほど遠くはなかったが、木星や土星のように大きくはない。
今になって思い返せば、それは月だった。
衛星だった。
遠くの空を見た。
月が浮かんでいる。
人間が勝手につけた名前を、勝手につくったイメージやストーリーを、知ってか知らずかのうさぎ模様。
太陽がいないと輝けない。
もしかしたら夜の月は、太陽が『ずっと見てるよ』と示す為のオブジェなのかもしれない。
喃語を発した。
私は愚者だった。
死ねるほど強くもなかった。
自分は人間ではないと思い、どこかの名も無き星からの留学生と定義した。
あの西の空の小さく見える白き恒星だけに、私の居場所があるのだと、自己中心的に考えた。
いつか出逢う故郷のひとへ。
私が私になれるのはいつでしょうか。
遠くの空へ
たとえばのはなし、誰とも話さない日があったとして、確かな焦りを握って夜から逃げようとして
沈む夕日の気持ちになってみれば、我々は残酷かもしれないよね
逆光がカメラを射抜いて、あなたの輪郭がぼやけた写真
それから下手くそな波の写真とおかしな色彩の花達
寂寥を抱いたどこかの路地裏やアパートの風景
己の写真は一枚もないカメラロールをなぞる
もう既読がつかないトーク画面には、あなたの言葉
小説を読まないあなたの小説
夕焼けを見過ごしておきながらなんの罪悪も持たず純真無垢にカメラを向けた夜の街と月
たとえばのはなし、誰かと話した日があったとして、確かな喜びを握って朝を待っていて
沈む夕日の気持ちになってみれば、我々は残酷かもしれないよね
浮気のはなしです