光に向かって 押し出す風
善も悪も 全てを 押し上げる
そもそも 善悪なんて ないのだけど
光に向かって 大きく 大きく
全てを 押し上げている
こぼれ落ちる ものが ないように
光に向かって うねりながら
ゆっくりと 時には 豪快に
巨大な手のような 風が
地球全体を 吹き抜けていく
火を灯す。
目の前に拡がる懐かしい風景。
必ずあの子が出てくるが、あと少しで手が触れる、というところで、いつも火が消えてしまう。
私は、何度も何度もランタンに火を灯す。
あの子の笑顔が見たくて。
あの子に触れたくて。
いつしか私は、自分がかなり年老いていることに気づく。老いの速度が異常に早い。記憶の中のあの子に会うことは、私の寿命と引き換えだった。
それでも、あの子に触れられるまで私は火を灯し続けるのだろう。
木枯らしが吹く季節は、キミのことを思い出す。初めて会ったのは、この公園だった。キミは泣きながら落ち葉を踏み潰していた。その姿があまりにも切なくて、ボクは思わず声をかけたんだったな。何度かバッタリ会ううちに、趣味が同じことをしり、急激に仲良くなったボクたち。お互い約束したわけではなかったが、毎日大体同じ時間にこの公園に来るようになった。
明日、キミに告白しよう、この手紙を渡そう、と決めてボクは生まれて初めてラブレターを書いた。今どきラブレターなんて古くさいかもしれないが、ボクはどうしてもキミに手紙を渡したかったんだ。
次の日、キミは来なかった。いつまで経ってもキミは来なかった。それからキミに会うことはなかった。連絡先を交換してにいなかったから、その日何故来なかったか分からないし、今どうしてるかも分からない。キミは元気なのかな?
この季節になると、渡せなかったラブレターを箱からそっと取り出し、唯一知っているキミの名をただ見つめる。
ラブレターの宛名は『冬へ』だ。
鈴の音が どこからか きこえる。
キミを 迎えにきたのだ。
月夜に照らされ キミの横顔を みれば
目からひと筋の涙が こぼれ落ち
光のつぶ と なって 消えた。
どこかの 昔話のようだ。
こんな夜に
キミが いなくなる なんて。
鈴の音と共に あらわれた
大きなカバンを 背負った男。
キミの 本当の父親。
嬉しいことのはずなのに
涙が溢れて止まらない。
2人は 深く頭を下げて
何も言わずに 去っていく。
ボクは ただ 見送る。
ずっと ずっと。
姿が みえなくなるまで。
きっと また 会える。
キミは
月に帰るわけでは ないのだから。
光のつぶをみるのが好きだ。
木々の隙間からこぼれ落ちる、キラキラしたつぶたち。離れてくっついて、くっついて離れて。形を変えて、流れていく。
粒たちが消えた跡には、わずかな音がみえる。むかしむかし聴いたことがあるような、どこか懐かしいメロディー。それは、小さな天使たちが、ひっそりと奏でていることをボクは知っている。
お日さまが輝き、風が優しく、なんだか気持ちのよい日は、木々の隙間を眺めてみるといい。きっとそんな光景がみられるだろう。