「ウィキペディアで調べたら″絆″って、あんまりいい意味じゃなかったんだねー。」
隣の子が、スマホ片手にぶつぶつ言っている。
僕たちは、もうすぐ卒業で、来週のお別れ会で『絆』というテーマで書いた作文を読み、『絆』という曲を歌う。
ん?あんまりいい意味じゃなかったのなら、『絆』づくしで良かったのか?
ま、今さら変えるの面倒だし、今はいい意味で使われているし、ま、気にしない気にしない。
しかし、世の中まだまだ知らないことばかりだなあ。確かに親の世代と僕たちとで使う言葉も違ったり、意味が違ったりする。そんな日本語はない!と母親によく注意されたりするしね。僕たちは、僕たちのルールがあって、僕たちの言葉があるのにさ。大人に、昔はね!ってグチグチ言われるのとか、ああ、ホント面倒くさい。
でもさ、僕たちが大人になったら、子どもたちに同じように言っちゃうのかなあ。ああ、イヤだなあ。大人って面倒くさいよなあ。いろんな面倒なのなくしてさ、自由に生きたいよなあ。
あ、余計なこと考えてたら、作文提出の時間になっちゃったよ。
続き書かなきゃ!
なんかさ、最近危うくなると、なんかに助けられてる感じするんだよね。
昨日もさ、うっかり電車にカバン忘れちゃったんだよ。大切なもの入っててね、大慌てさ。気づいたのが駅から出てバスに乗ろうとした時で。後ろから「すいませーん!」って声かられて振り向いたら、知らない人がボクのカバン持って走ってきたんだよ。びっくりしたけど、ホント、ありがたかったなあ。
あとはさ、うっかり赤信号渡りそうになった時。疲れすぎてぼーっとしていたんだよね。横断歩道に一歩足を踏み出そうとしたらさ、目の前をなんかシュッて通ったんだよね。紙飛行機だったんだけどね。近くにいた子どもが紙飛行機飛ばしたんだよ。その子は親に、危ない!って叱られていたけどさ。あれは渡っていたら、危なかったよ。よくダンプカーが通る道だったからね。ああ、命拾いした。
他にも、ちょこちょこ上手くいかないなあみたいなときに、なんかに守られてる感じするんだよなあ。ホント、ありがたいんだけど、なんだろうなあ。
んー、そろそろ、ばあちゃんの命日だな。そういや、しばらくお墓参りしてないなあ。たまには、まとめて休みをとって田舎に帰るか。団子屋の看板見たら、ばあちゃんのみたらし団子思い出したよ。甘くてもちもちで、旨かったなあ。また、食べたいなあ。ばあちゃん、優しかったなあ。
また会いたいなあ。
『ボクは、キミに、何かできたかな?』
最後の日、僕は大好きな君に、こうたずねた。君は泣き続けて、ただ頷くだけだったね。その辛く悲しい泣き顔をみながら、僕はこの世を去ったんだ。
いま、僕からみえる君は、笑っている。
側には、新しいパートナー。
2人で仲良く海辺を歩いているね。
よかった、君がしあわせそうで。
本当に、よかった。
僕はさ、君とずっと一緒にいられなかったからさ。やっぱり君のことちょっぴり心配だったんだ。
ああ、安心したら、身体がさらに軽くなってきた。
そろそろ、本当にいくね。
君と会えてしあわせだったよ。
最期に、大好きな君の笑顔がみられて、僕はとてもとても嬉しいよ。
ありがとう。
じゃあね!
「わぁ、ぼくたちくらいのにんげんがいっぱいだ!」
この部屋に住んでいるこびとたちは、うれしそうに、雛人形のまわりをかけまわっています。
数ヶ月前、この部屋に住む人間たちに、赤ちゃんが産まれました。
名前は、ももちゃん。
今日は、ももちゃんの初めてのひなまつりの日です。
人間たちは、色とりどりのお料理を囲んで、ワイワイと賑やかです。主役のももちゃんは、いろんな人に抱っこされて疲れてしまったようで、今はママの腕の中で安心してすやすや眠っています。
「おひなさまは、うごかないのかなあ。」
こびとたちは、雛人形たちと遊びたくてたまりません。みんなでじ~っと人形の顔を見ていたら、キラキラと人形たちの瞳が輝き始めました。そして、一番上の人形が何かごにょごにょ言っています。それに気づいたこびとのひとりが、その人形の側に駆け寄りました。
刀を脇に携えたその人形は、
「よる…よる…」
と、人間たちに気づかれないように言っています。
どうやら、雛人形たちもこびとたちと遊びたくなってきたようですね!
今夜、人間たちが眠りについた頃、雛人形とこびとたちもひなまつりのパーティーをするのでしょうか🌸
″あなたの願いを叶えます″
店の看板にはこう書いてあった。
私は、幼い妹と共に店のドアを開けた。
中には、古びた机と椅子が二脚あるだけで、机の上には紙が1枚とペンが置いてあった。その紙に、願いを書くのだ。
私は妹を膝にのせ、椅子に座った。
ペンを持つのは久しぶりだ。緊張もあって、文字を書く手が震える。
幼い妹は、私の顔を心配そうに見た。
「大丈夫。また、お母さんに会えるからね。」
私は、できるかぎり落ち着いた声で妹に伝えた。うん、と彼女はうなずいた。
母が天国にいってから、幼い妹は毎日毎日泣き続けた。母が死んだことも、もう2度と会えないことも、彼女には理解できなかった。なぜ突然いなくなってしまったのか、まだ幼い妹には分かるわけがなかった。
この店の話を聞いたとき、たった1つの希望の光がみえたような気がした。
死んでしまったものに、もう会えるはずはないと思いつつ、私は意を決して妹を連れ、ここに来たのだ。
願いを書き終えると、私たちは店の外に出た。そんなに時間が経ったようには感じなかったが、空には一番星がキラキラしていた。
「なんだか、おかあさんみたい。」
と、一番星を指さしながら幼い妹が笑った。彼女の笑顔をみたのは、久しぶりだった。緊張が解けた私も、空を見上げて微笑んだ。
優しくて、穏やかな、美しい夜だった。