窓を開けると、ひらひら、とモンシロチョウが目の前を横切っていった。
ああ、ありがとう。
と、ボクは心の中でつぶやく。
″蝶は神さまからの応援メッセージなのよ″
これは、亡くなった母が教えてくれたことだ。
幼い頃、運動が苦手だったボクは、運動会が大嫌いだった。どんなにがんばってもいつもビリで、かけっこなんて、いやだー!と家に帰っては泣いていた。
運動会当日、半泣きになりながら家を出ると、目の前をモンシロチョウが横切っていった。そのとき、母が言ったんだ、″応援してくれてるね、蝶が″と。
運動会の結果は予想通りだったけど、その日以来ボクは蝶を見かけると嬉しくなった。走るのも少しだけ、楽しくなった。
今朝は頭が冴えない目覚だったけれど、モンシロチョウのおかげでなんだか元気が出てきたから、1日乗り切れそうだ。
ありがとう、モンシロチョウ。
ありがとう、お母さん。
今度は声に出して言い、ボクは出かける支度をはじめた。
この焼肉、美味しいねえ とか
失敗して、悔しいよー とか
掘り出し物みつけて、ラッキー とか
なんでもいいんだけどね、
こころがじ~んわりすること。
そういうのってさ、
忘れられない、いつまでも。
ずっとずっと
おもいだすと、じ~んわりする、よね。
「一年前」という映画を観た。
いろんな人が登場し、その生活の様子をただ映す、そんな内容だった。
その映画にはボクの知り合いが出ていた。いま、彼女はこの世にはいない。
一年前の彼女は、スクリーンいっぱいの笑顔で花束を抱えていた。彼女が抱えていた花束は、ボクが誕生日にプレゼントしたもので、なぜか花束のままずっと咲きつづけていた。
彼女は、一年後にこの世にいないことを望んでいたのだろうか?
彼女は、一年後にはこの世にいないことを知っていたのだろうか?
映画を観たあと、ボクは部屋戻り、花束を持って海辺に向かった。彼女とよく散歩した場所だった。
日が暮れ、星が輝きはじめた頃、ボクは花束にそっと火をつけた。灰となっていく花をみて、灰となった彼女を想った。
今日のたけるくんは、とってもはりきっています。いつもより早く起きて、パクパクと朝ごはんを食べ、ひとりでテキパキ支度をして、今ずんずんとバス停に向かっています。
なぜかって?
今日のバス当番は、だーいすきなルミ先生だから。
1年前の入園式の朝、たけるくんは泣きながらお母さんと妹と幼稚園に向かっていました。どうしても大好きなお母さんと離れるのがイヤだったからです。
2つ下の妹は家でお母さんとずっと一緒なのに、どうしてボクだけ幼稚園に1人で行かなきゃならないんだ!と心の中で怒っているたけるくんに、優しく声をかけてくれたのが、ルミ先生でした。
「たけるくん、はじめまして!」
とにっこり笑ったルミ先生は、たけるくんの右手をそっととり、両手でぎゅっと包んでくれました。その瞬間、たけるくんは泣きやみ、恋におちました。
たけるくん、初恋の日の出来事です。
それからというもの、ルミ先生にカッコいいところをみせたくてたまらないたけるくんは、自分でなんでもできるようにがんばっています。
もちろん、失敗もするし、ぐうたらもするけれど、たけるくんを見かけるたび、にっこり笑ってくれるルミ先生のために、たけるくんは日々成長中、なのです。
空に不思議な物体が浮いていて、
そこには長~い垂れ幕がぶらさがっていて、よ~く見てみたら、
「明日世界が終わるなら……」
と、書いてあった。
物体はラグビーボールのような形をしているのだけど、愛らしいハートマークがあちこちに描いてあるせいか、あんまり怖い感じはしない。
でも、これが明日大爆発をして、世界が本当に終わってしまったら?…と考えたら、ちょっぴり背筋がゾクッとした。
💗 💗 💗
次の日、その不思議な物体はまだそこにあって、見た目はなんにも変わらなかったけど、垂れ幕の文章が少しだけ変わっていて、それに気づいたボクはなんだかばかばかしくなって笑ってしまったけど、内心かな~り安堵していた。
「明日世界は終わりません……」