Open App
4/22/2023, 11:34:53 AM

ぞっとする。
時が経つほど「好き」が募っていく自分に。
たまに昔を思い返すけれど、
今ほど拗らせてはいなかった。

物心ついた頃からよく遊ぶ仲で、
中高では毎日のように喧嘩も繰り広げて、
大学に進んだら穏やかに話せる仲になって、
社会人の今は気軽に互いの家を行き来する。

20年。
自覚したのはいつだった?
忘れてしまった。
ショックだったことだけは覚えている。
でもきっと平気だろうと高を括っていた。
俺は他の誰かを好きになれると思っていたし、
それが無理でもお前が結婚して諦めがつくか、
或いは自然と疎遠になっていくか、
どれかだろうと疑わなかった。

まさかずっとお前だけを心に置いたまま、
一番近い存在で、生殺しの状態で、
友達面して過ごしているとは思わなかった。
自分がこんなに馬鹿だとは思わなかった。

もしもお前が知ったらどうするだろう。
出来ればどうか、笑ってほしい。

こんなにも惹かれて焦がれて苦しんで、
でも俺は、一度も後悔したことはないんだ。
この想いがたとえ間違いだったとしても、
たとえ叶うことのないものだったとしても。
お前を好きにならなければ良かったと、
出会わなければ良かったと、
傍にいなければ良かったと、
思ったことは、ただの一度も。

お前に巡り逢えたことが俺の最大の幸せ。
陳腐な台詞だけれど本心からそう思う。
だからお前にも幸せになってほしい。

いつか膨らみすぎた「好き」で俺が潰れて、
お前の傍からいなくなったとしても。
ずっとずっと、誰より笑っていてほしい。

4/18/2023, 9:59:42 AM

今年は慌ただしくて花見に行けなかったけれど、
全て散ってしまう前に少しでも、と
仕事の後、お前と夜桜を眺めながら帰った。

儚いくせにどこか柔らかな力強さも感じさせる、
闇に浮かぶ桜たち。
ふとお前が俺を見て笑った。
「頭に花びら乗ってる」
不意に伸ばされた手。髪に触れる指。
息が止まる。
……動揺を、悟られてはならない。

離れていく指を目で追う。
「……お前の髪にも、ついてるぞ」
えっマジで、取ってー、と頭を差し出されて
平静を装いながら同じように取ってやった。
夜の闇の中で良かったと心底思う。
顔が熱い。心臓が痛い。

「さんきゅ」
とれたぞと声をかけてやれば、いつもの笑顔。
そのまま桜吹雪を暫く二人で見上げていた。

見上げながら、気付かれないように。
指に摘まんだままだった花びらを、
俺はこっそりとポケットに忍ばせた。

4/16/2023, 9:46:40 AM

好きです、付き合ってください。
そんな告白を受けるお前を、離れた所で待つ。

もう疾うに見飽きた光景だ。
今まで貰ってきた好意は相当な量になるだろう。
でも、それを全部併せたより、俺の方がずっと。

届かぬ想いなんてよく言うけれど、これは違う。
決して届けてはいけない想いだ。
だから舌の上でだけ転がして呑み込む。

――俺の方が、誰よりお前を想ってるのに。

申し訳なさそうに女に頭を下げて、
こちらに戻ってくるお前を俺は平静装って待つ。
いつまでこんな日が続くのだろうと思いながら。

4/2/2023, 9:32:54 AM

エイプリルフール、気付いたら過ぎててさ。
何か面白いことやりたかったのになぁ。
そう言ってお前が溜め息をつく、4月2日。
「オマエは何かした?」
聞かれて黙って首を横に振る。

本当は、好きだと言ってやろうかと思った。
困った顔をされても昨日なら嘘に出来たから。

冗談だと流されたらきっと辛かった。
でも、俺がその手の冗談を言わない奴だと
お前は知っているから、
本気がバレる可能性の方が高かった。
だから仕掛けるわけにはいかなかった。

どこかで吐き出さないと限界が来る。
わかっているけれど耐える以外に術はない。

穴を掘って秘密を叫ぶ寓話の人間の気持ちが、
きっと今の俺には、誰よりもよく、わかる。

3/7/2023, 4:01:58 PM

「月が綺麗だぜ」

外に出たら、通りの向こうに
まるまると輝くそれが浮かんでいたから
少し先を歩くお前に声を投げた。

「本当だ!しかも満月じゃん」
残業したお陰でいいもん見れた、と
カメラアプリを起動する無邪気な背中。

きっとそう返すと知っていた。
言葉に潜めた本心にお前は気付かない。
わかっていたからこそ、言えた。

柔らかな光が落ちる月夜の帰り道。
明日も晴れればいいのにと
ひっそり綻びながら、祈った。

Next