「月が綺麗だぜ」外に出たら、通りの向こうにまるまると輝くそれが浮かんでいたから少し先を歩くお前に声を投げた。「本当だ!しかも満月じゃん」残業したお陰でいいもん見れた、とカメラアプリを起動する無邪気な背中。きっとそう返すと知っていた。言葉に潜めた本心にお前は気付かない。わかっていたからこそ、言えた。柔らかな光が落ちる月夜の帰り道。明日も晴れればいいのにとひっそり綻びながら、祈った。
3/7/2023, 4:01:58 PM