コトノハ

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4/11/2026, 3:33:54 AM

青空、雲、新緑、桜

囃子、鈴、足音、笑い声

日本酒、団子、枝豆、焼きそば

祭事、春爛漫

4/8/2026, 3:09:25 PM

コルセットが私をまだ締め付けている。
先程までの賑わいが嘘のように静まっていた。

ふと隣を見ると、彼は私に合わせた赤のネクタイを緩めているところだった。

「……ん?なんかあった?」
「ううん、見てただけ。」
「……惚れ直したでしょ。」
「うん。」
「えーそこは……え?!惚れ直したの?!」

ふふ。器用にも、慌てながら喜ぶ彼に、思わず笑いが漏れる。
いつまでも子供のようだ。まるで、私が告白を受けたあの日の。

「一緒に生きていこうね。」
「もちろんだよ!!てかもうやっちゃったでしょ、結・婚・式!」
「そうだね。苗字も同じだもんね。」
「そうそう!……え、苗字同じなのか……やばー……。」
「何いまさらびっくりしてんの。」

私たちは愛を誓った。
書類、言霊、指輪、キス。今やそれらが私たちを証明している。
意識的に口元をなぞった。

「あ、てかそうだ、言いたいことがあるんだよ」
「ん?」

彼は緩めたネクタイをもう一度締め直すと、私にきっちりと向き合った。私もそれに合わせる。

「これからも、よろしくお願いします!」
「……こちらこそ、よろしくお願いします」

頬と涙腺が緩む。あぁ、どうかよろしく。
これからも、ずっと。

4/7/2026, 11:40:08 AM

「見て、沈む」
「綺麗だね〜」

とうに終わりだった。足元を濡らす海はつつがなく満ちゆく。現実的な光だけが空を照らした。あかいあかい夕焼けだった。

「もうダメかぁ」

ぽん、と小気味よい音を立てて瓶を開ける。ざらりと錠剤を手のひらに出す。

「ほい」
「ありがとー」

ふたり流れ着いて数ヶ月。この建築物が徐々に沈んでいることに気がつくのに、そう時間はかからなかった。

だからと言ってどうも出来なかった。懸命に狼煙を炊いても、漁船ひとつ見えはしない。座標はおろか、海域も分からない。ここは一体どこなのか。

拳を握ると、ぎっ、と薬の糖衣が擦れる音がした。

「あ、最後一服よき?」
「もちろ〜ん」

彼女はポケットに錠剤を突っ込むと、タバコとライターを取り出した。小柄な体格にはどうも似合わないそれをふかす。

幸いにしてここにはある程度物資があった。私達は死までのつかの間の猶予を、探索と娯楽に費やした。

「ふー……」
「屋上、まじ寝心地悪かったね〜」
「それはガチでそう。最後くらいふかふかにせえやって感じー」

副流煙。気にする気にはもうならない。磯の香りを、キツいミントがかき消す。もう足首まで冷たい。

「終わりか」
「終わりだねー」

あっ、と声がした方を見ると、タバコが水面に流されて沈んでいくのが視界の端に写った。

「あぁ、ラスト一服……」
「どんまい」

手のひらを開くと、手汗で薬がベタついていた。特に取り出す必要は無かったかもな、と今更思った。

「いくか」
「しゃーなし」

ずるりとふたりでフェンスに体重を預けて座り込む。

「あ、冷たっ」
「うぉ〜、おしり冷える……」
「ま、これからうちら全身ヒエッヒエになるけどね」
「笑えな〜」

ちゃぷんと波の音がした。息を吸う音がした。

「せーのっ」

甘い。噛み砕くと苦い。嚥下しても相変わらず不味かった。

「おえ」
「はい、第二陣」
「不味すぎて先に死ねる」
「置いてかないで?」
「分かってるよ」

……数十、百は超えたか。日はもう沈んで、暗い。寒い。

肩に体重がかけられた。ぬるい彼女は、遅い呼吸をしている。それに妙な安心感を覚えて、そのつむじに頬を埋めた。

先程置いた空瓶が、もう波に攫われていく。ふと目を閉じると、開かない。見えない中で、背を濡らすほどの波が跳ねて、飛沫が首筋にかかる感覚がした。

4/2/2026, 2:53:23 PM

「あ、」

空を切った。
そこには何もなかった。何もなくなった。
あった筈の何か、それは一体何だった?

いまさら知覚をした。指先が震えて声も出ない。
未だあるのは残響と気配、それすら幻覚だった。

ぬるい風が頬を撫でた。次に雫が頬を撫でた。
鼻の奥が痛くなった。肺が広がらなくなった。

足元が濡れる音がした。子どもたちがじゃれ合う音がした。
それらすべては思い出のように。

膝をついて、手をついて、頭をつけて、私は泣きじゃくった。

ない。
それは喪失を超える孤独だった。

3/27/2026, 1:50:48 AM

君が窓を背にして立っている。​
煌々とさす月光と打ち付ける雨。

またか。

僕はただそれを見ている。動かない。動けない。

視線を下げて、上げると、景色が変質した。

熱帯雨林と愛犬の声。
うずまき銀河とスズメの群れ。
雲上の国と黒い出目金。

最後にあの日の景色になった。隣に君がいる。
そんなはずはないのに。

目の前に君の安らかな寝顔があった。透明な樹脂をすり抜けて頬を撫でた。温度はわからない。

踵を返して席につく。
花まみれの背景と横たえられた棺。
君はいつの間にかいなかった。

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