「こんな夢を見た」から始まる小説

Open App
4/1/2026, 9:30:11 AM

こんな夢を見た。遠い昔の預言者が出現を予言した恐怖の大王が、今になって地球にやってくるらしい。私を含め数十名の若者が徴兵され、宇宙に旅立つことになった。地球に来る前に討伐しなければいけないらしい。ロケットに乗る前、皆家族や友人、恋人と涙を流して別れを惜しんでいた。今生の別れになるかもしれないから、尚更だ。逃げ出す奴はいなかった。徴兵された者は逃亡対策のため体内に超小型爆弾を埋め込む手術を受けており、逃げたら起爆するようになっている。それに逃げ出したところで、地球もろとも恐怖の大王に砕かれるからだ。そうして出発し、私たちは恐怖の大王を見事討伐した。無傷の勝利とはいかず、私と他の二名以外は事故やら相打ちで死んだ。他の二名は通信や治療するための非戦闘員で軽傷だった。だが私は相打ちの際、爆発に巻き込まれ片腕と片足を失った。満身創痍で帰還し、すぐに病院に搬送された。意識を取り戻すと、何故か失くなったはずの片腕と片足があった。義手と義足でも着けたのかと思ったが、繋ぎ目がない。本物のようだ。
「傷の処置中は確かに無かったのに」
医者は、そう首を捻っていた。奇跡でも起きたのだろうか。何にせよ、これならリハビリをすればすぐに退院出来る。だが、喜んでいられたのも少しの間だけだった。眠っていると、死んだ仲間が私を呼び続ける幻聴が聞こえてくる。主に大王を相打ちで倒すために、体内の爆弾を無理やり起爆させた仲間たちの声だ。恨み言を言っているわけではなく、何故か幸せそうにしている。どうやらあの時、木っ端微塵になった仲間たちと大王の血液は爆発に巻き込まれた私に降り注いだ。それで私の体の中に染み込んだらしい。手足が再生したのもそれが原因だと言う。
「大王のおかげで、皆と一緒にいられる」
「お前も、幸せになるために身を委ねろ」
何を言っているんだ?注意深く聞いてみると、大王が仲間たちの声を真似ている。体を乗っ取るために、私を騙そうとしているのだ。爆発だけでは死ななかったらしい。翌日医者に、強い睡眠薬を処方してもらい幻聴は聞こえなくなった。だが、再生した手足が勝手に動いて自分の首を絞めたり、窓から飛び降りようとする。日が経つにつれ、症状は悪化していった。今日は脳内で命令する声が聞こえ、その通りにしようとして看護師に止められた。私は、いずれこいつに乗っ取られてしまう。乗っ取って地球を破壊するつもりだろう。悩んだ結果、私はまた宇宙に打ち上げてもらうことにした。棺桶のような箱の中に、横たわると蓋を閉めてもらった。これで本当にお別れだ。カウントダウンがゼロになり、宇宙に打ち上げられた。このまま行けば太陽に到達し、骨の一片も残らず私も大王も消えてなくなる。
「やめろ!こんなことをするくらいなら、我に体を明け渡せ!我に体を渡せば、お前も破壊の快楽を味わえるのだぞ!弱いお前にとって、これ以上ない幸せが…」
耳元で喚く声がする。他人を傷つけて手に入る幸せに興味はない。ざまあみろ、と薄く笑った。

3/30/2026, 11:19:39 PM

こんな夢を見た。何を見ても怯える幼い私に、母はいつも優しくこう言い聞かせる。
「いい?怖いものは怖がることで見えるのよ。怖がらなければ、見えないの」
気がつかなければ、居ないも同じ。母はそう言いたかったのだろう。そうは言っても顔や足、手が家具の隙間から覗いていたら怖い。私が怯える度に、苦笑しながら同じセリフを繰り返す。母は見えていないから、そんなこと言えるんだ。そう思っていたが、私は気づいてしまった。いつも私が怯える場所に、母が何気ないふりをして塩を撒いているのを。

3/30/2026, 9:11:32 AM

こんな夢を見た。弁当を早々に食べ終え、私は図書室に向かっていた。図書室に入ると、カウンターで図書委員が暇そうに座っている。話しかけ、借りていた本を返却した。それから目当ての本を見つけ、貸出の手続きをする。さて、休み時間の暇つぶしは確保した。腕時計を見れば、まだ時間はある。何を読もう。背の高い本棚の間をふらふらと歩き、今日の気分に合った本を見つけた。本を手に取り、机に向かう。いつもなら課題やおしゃべりする生徒で座れないが今日は早く来たおかげで誰も座っていない。その内誰か来るかもしれないし、隅っこに座っておこう。本のページを開き、活字を目で追う。読書は、面白みのない現実と自分から逃避できるので良い。物語に没頭していると、隣に誰かが座った。
「やっぱり、ここにいた」
誰か来るかもしれないと言ったが、一番会いたくない奴が来てしまった。横目で見ると、同じクラスの委員長がこちらを見ていた。彼は私にとって、天敵のようなものですごく苦手だ。
「教室にいなくて心配したんだ。すぐに見つけられて良かった」
彼は私に微笑みかける。
「昼休みなんだから、教室にいなくてもおかしくないでしょ」
「それはそうだけど」
「好きで通ってるんだから、放っといて」
彼は頭をかき、苦笑する。
「居場所がないから、ここに来てるんじゃなくて?」
「誰のせいで…!」
「騒ぐと怒られるよ。俺、君との時間邪魔されたくないんだ。何が言いたいか、分かるでしょ?」
彼は、しーっと人差し指を私の口の前に立てた。相変わらず腹の立つ奴だ。彼は同じクラスになってから、やたらと私の世話を焼いて来る人だった。世話焼きな人なんだと思っていたが、すぐにそれは違うと確信する出来事が起きた。ある時から、他のクラスメイトと話をするだけで注意してくるようになった。変だと思い、距離を置くようにした。すると、どうだろう。他のクラスメイトたちが、私と距離をとるようになってしまったのだ。授業も話し合いの時も、私は彼としかペアを組めない。彼が皆に何か吹き込んだとしか思えないが、証拠がない。理由を聞こうにも、私を見ると皆逃げてしまうから。
「あー、でもここ良いかも。人目がなくて二人きりになれるし」
何か言っているが、無視だ、無視。貴重な昼休みがなくなってしまう。
「今日は何を読んでるの?…ふうん、冒険ものか。そういうのじゃなくて、主人公とヒロインが最後にくっつく話が俺は好きかな」
ハッピーエンドって良いよね、と彼は顔を覗き込んできた。私は納得出来れば、どんな結末でも良いと思う派だ。彼の言葉に、私は首を横に振る。彼は傷ついた様子はなく、言葉を続けた。
「物語の中の主人公とヒロインのように、俺たちの関係もハッピーエンドなら良いよね」
「あんたとのハッピーエンドなんて、望んでないよ」
切り返すと彼はキョトンとしたが、すぐに相好を崩し私の手首を掴んだ。
「俺、君のそういうとこに惚れたんだよね。本当、大好きだよ。絶対に俺しか見えなくしてやるから」
彼は不敵に笑った。

3/29/2026, 8:52:52 AM

こんな夢を見た。アラームで目を覚まし、私は体を起こす。
「もう朝…?仕事行きたくないなあ…」
何となく掛け布団の一点を見つめる。最初は気のせいだと思っていたが、少しずつ焦げそして煙が上がった。
「うわっ!」
驚いて立ち上がる。慌てて台所に行き、コップに水をくんで布団にかけた。水浸しになったが、火事よりはマシだろう。ふうっと息をつく。
「それにしても…」
今のは何だろう。一点を見つめたら、火が上がった。昔、理科の授業でやった虫眼鏡の実験みたいだ。
「もしかして私に見つめられると、燃えるのかな?」
試しに、壁に掛かったカレンダーを見つめた。じいっと見つめると、じりじりと一点が黒く変色していく。火が上がるといけないので、目を逸らした。もう一度見ると、やっぱり焦げている。
「やっぱり…」
私は、寝ている間にすごい力を手に入れてしまったようだ。何だか超能力者みたいで、カッコいい。
「でも、どうしよう…。これじゃ、仕事にならないよ」
そう、困るのだ。何をするにしても、必ず見つめなくてはいけない。身なりを整えるために、鏡で自分を見つめたら…。想像して私は身震いする。
「何とかしないと」
今日は具合が悪いと言うことにして、仕事を休もう。力を制御する方法を考えるのだ。職場に欠勤の電話を入れる。電話を終え、スマホを置くと私は目を閉じた。まぶたの裏が焼ける感じはしないので、目を閉じれば力は発動しないらしい。それからいろいろ試してみたが、やはり一点を見つめなければ焼けないことが分かった。
「でも、視線がずっと動いてるのって変だよね」
目を何かで覆うというのはどうだろう。仕事用の眼鏡をかけ、スーパーのチラシを見つめる。ボッと一瞬で火が着いた。
「うわわっ!眼鏡じゃ駄目だ!」
燃え上がるチラシを、あらかじめ水を溜めておいたタライに突っ込む。ジュウッ…と音を立てて鎮火するチラシに、私はため息をつき眼鏡を外した。危ない、危ない。やっぱり、仕事休んで正解だった。多分、凸レンズなのが悪いんだろう。他に何か目を覆う物は…。目をつむりながら、机の引き出しの中を手探りで探す。手に何か当たりつかんで見ると、派手な虹色のサングラス。これは、友人がふざけて買ってきた旅行のお土産だ。
「これも、試してみよう」
サングラスを掛け、古紙を見つめる。レンズに色が入っているのでよく見えないが、焦げてはいない気がする。恐る恐るサングラスを外すと、焦げは見つからない。
「やった…!」
喜んだのも束の間、私は気づいた。つまり私はこの力がなくなるまで、サングラスを着用しないといけないということ。面倒だが、度入りのサングラスでも買いに行くしかない。私は派手なサングラスを掛け、買い物に出かけた。店員に奇異の目で見られた気がしたが、背に腹は代えられない。私は、無差別放火犯にはなりたくないからだ。
「あー、疲れた…。でもこれでまた仕事が出来るし、仕方ないか」
ふと、窓の外に月が見えた。そう言えば、今日は満月だった。距離があるものを見つめると、どうなるんだろう?好奇心で月を見つめると、じりじりと月の表面の一部に黒い点が出来た。あ、しまった。

3/28/2026, 8:01:44 AM

こんな夢を見た。家に来ないかと男友達に誘われたので、遊びに行った。
「借りてたマンガ持ってきたから返すね。あと、コンビニでお菓子買ってきたよ」
「ああ、うん。それなら、飲み物取ってくるよ。次借りるマンガ、探してていいから」
彼が部屋を出ると、私は次に借りるマンガを物色し始めた。取り敢えず今読んでいるマンガの続きを二、三冊拝借した。たまには、小説でも読んでみようか。私でも読みやすい小説は…。小説のタイトルとにらめっこしていると、本棚からドサッと本が一冊落ちた。
「何だろう…」
拾い上げてみると、表紙に『My Heart』と箔押しされたハードカバーの本だった。
「マイ・ハート?何かの小説かな…」
だが、作者の名前はない。開くと、横に罫線が入ったページに日付と癖のある彼の字が並んでいる。
「これ、日記だ」
彼に日記を書く習慣があったとは。読書が好きな人だから、書くのも好きなのかな。耳を澄ませるが、部屋の外に足音は聞こえない。気配もしないし、まだ戻ってきてはいないはず。
「少しだけなら…良いよね」
物静かで優しいけど、何を考えているか分からない彼のことが少し分かるかもしれない。意外な一面が見られることを期待しながら文字を目で追う。だが、私が期待したものではなかった。
「これ、私のこと…?」
日記には彼の日常や本音ではなく、私の行動と発言が事細かに書かれていた。それから、必ず彼の一言がある。
「今日も…」
「今日も可愛い、ね」
急に背後から読み上げられ、私は悲鳴を上げる。
「へえ、マンガ以外の活字に興味あったんだ」
読み上げたのは彼で、ジュースのペットボトルを二本持っている。テーブルにそれを置くと、私から日記を取り上げた。
「勝手に読むなんて、酷いじゃないか。知ったとしても、僕の気持ちを受け入れる気なんかないくせに」
彼は日記を大事そうに抱えた。
「何で、こんなものを…」
「僕は君が好きなんだ。でも、君は僕のことを異性の友人ぐらいにしか思ってない。現に、僕の部屋に来ても特に警戒もしないしさ」
彼は机の上に日記を置くと私の前に座り、私の両手を包むように握った。
「内心、気持ち悪いと思ってるでしょ。こんな風に君との時間を記録して後で読み返してるなんて。でも、君との時間は僕にとってそれくらい幸せで大事なものなんだ」
だから、と彼は私を見つめる。
「日記のことは見逃してほしいんだ。あれがなくなったら僕、君に何をするか分からないから」
彼の視線は下がり、手をきつく握られた。これは、脅迫じゃないのか。たとえ日記を見逃したところで、彼が今まで通り接してくれるとは思えない。返事に困って彼を見る。何故か、とろんとした彼の目と目が合った。
「大丈夫だよ、恋人になれなくても。僕はただ君とずっと一緒にいたいだけだから」
彼の中でなにやら話が進んだらしい。頬を赤らめる彼に、私は間違えたのかもしれないと後悔した。

Next