「こんな夢を見た」から始まる小説

Open App
3/11/2026, 11:22:29 PM

こんな夢を見た。霊感が強すぎるために、私は日常生活に支障が出ていた。幽霊の姿や声はもちろん触られることもある。それぐらいならまだマシだったが、私ほ嗅覚や味覚ですら幽霊を感じることが出来る。ちなみに、幽霊の臭いと味はどちらも食欲をなくすものだと書いておく。五感で幽霊を感じるなんて、私以外にいないだろう。見える、聞こえるまではいい。ご飯を美味しく食べられないのは嫌だ。何とか他の人と同じ平穏な日常を取り戻さなくちゃ。困った私は、同じクラスの霊感少女に相談してみた。彼女は私をジッと見つめると、何かに気づいたのかしきりに頷いていた。
「原因分かったの?」
「もちろん。たしかにそれじゃ不便だよね。えっとね、取り敢えず眉間に何か貼ってみて」
帰宅後、彼女に言われた通りにしてみた。眉間に絆創膏を貼る。変な感じがするが、しばらく様子を見よう。それはすぐに効果が出た。そもそも気配を感じなくなったのだ。今日の夕飯は久しぶりに美味しく食べることが出来た。翌日、私はお菓子を持って彼女に報告しに行った。
「おはよう!久しぶりに幽霊を感じなかったよ。はいこれ、お礼のお菓子ね」
「ありがとう。でしょうね、だってあなたの霊感は眉間から来てるものだから」
「眉間?」
「そう、第三の眼って聞いたことある?それがガン開きになってた。閉じ方の練習しようね」
私は知らぬ間に、三つ目小僧になっていたようだ。

3/11/2026, 9:12:48 AM

こんな夢を見た。私はどこかの国の戦争に参加している。だが、活躍もなく既に致命傷を受け死にかけていた。これまでか。痛む体を動かし、仰向けに転がる。どうせなら、青空を見ながら死にたい。そう思い霞む視界で妙に青い空を眺めていると、影が私の顔に落ちてきた。
「おーい、生きてますかー?」
この場に場違いなほど呑気な声が降ってきた。
「…?まだ生きてると思うんだけどなー」
誰かが覗き込んできた。目を凝らすと、場違いな格好をした女が私の頬をつついていた。女児アニメの魔女っ子のような格好をしている。サバゲー会場と間違えているんだろうか。指摘してあげたいが、声は出せそうにない。でも、つつくのはやめて欲しい。抗議の意味で女の指を力なく掴む。
「あ、生きてる!良かった!愛と平和の使者としては犠牲者は…ってあれ?」
女の呑気な声を聞きながら、私はそのまま気を失った。
「……生きてる…しかも痛くない?」
「お目覚めですか?お腹に大きな穴が開いてたので、塞いでおきましたよ!いやー、出血が酷いんですから先に治療するんでしたね!」
女はコツンと自分の頭を小突いた。軽く言っているが、瀕死だった私をここまで治すなんて。
「あんた…一体何者…」
「あたしですか?だから、愛と平和の使者ですって。ここの星やたらと死人が多いから、上司に無力化してこいって言われました」
「星?それに上司に無力化って…」
「あ、あたし宇宙人なんですよ!無益な暴力と殺戮を好まない平和な星からやって来ました!」
突然の超展開に私は頭が混乱した。
「あ!侵略しに来たわけじゃないんですよ!単にボランティアで来てるんです」
「じゃあその格好は?」
「データバンクによると愛と平和の使者と言えば、この星ではこの格好が正装なんですよ!」
どんなデータを参考にしたんだ。
「まあまあ、細かいことは後にして無力化しに行きますかね。あなたも行きます?きっと面白いですよ!」
戦場なのに面白いとは。ここで転がっているのも飽きたので、頷いた。
「じゃあ、行きますよ!」
ニコニコしながら、女は私を横抱きにして軽々と抱え歩き出した。
「ちょ、ちょっと…何でお姫様抱っこ…」
「足、怪我してるじゃないですか。治療はしましたけど、無理しちゃ駄目ですよ!」
そう言われると、ぐうの音も出ない。私たちは丸腰で戦場を歩き続けた。途中、銃撃や手榴弾が飛んできたが、女はお構いなく歩く。私たちに飛んできた銃弾はアメ玉とガム、手榴弾はポップコーンへと無力化された。
「何だこれ…アメ玉やガムになってる」
「お腹空いてるなら食べていいですよ。本物のお菓子ですから」
今は食欲はない。取り敢えず、胸ポケットにアメ玉とガムを突っ込んだ。一部始終を見ていた兵士たちは銃を取り落とし、投降した。それでも何人かはナイフを持って突っ込んできた。だが、ナイフもナイフ型のチョコに変わり戦意喪失した。
「皆さんもそれ食べていいですよ。美味しいものは元気になりますから」
急に声をかけられて兵士たちは戸惑ったように顔を見合わせる。返事は帰ってこなかったので、先に進んだ。激戦区に近づいてくると、戦車がうろついている。戦車は私たちに標準を合わせると撃ってきたが、砲弾は大きなマシュマロに変化した。
「戦車は流石にこっちも無力化しないといけませんね」
女が戦車の装甲を撫でると、甘い香りが周り一体を包んだ。チョコ菓子とロールケーキだろうか。
「うん、これで大丈夫ですね」
戦車まで無力化された兵士たちは投降してきた。もうこちらに敵意を向ける兵士はいない。これではもう戦いを続けられないだろう。女は私をゆっくり下ろすと、手をパンパンと打ち鳴らした。
「さあ、おやつの時間にしましょうか」
周りがざわついた。だが、皆空腹だったのかすぐにお菓子にかじりつき始めた。「うまい」「甘い」と小さな呟きや、鼻をすする音も聞こえてきた。
「あたし、思うんです。武力で自分たちが飢えるのって本末転倒なんですよ。武器のために飢えるくらいなら、いっそ武器なんかお菓子にしてしまえばいいんだって」
変な奴と思っていたが、何だかんだちゃんと考えてるんだな。少し感心していると女は宣言した。
「…だから、決めました。あたし、この星の武器を全てお菓子にします!そうすればきっと平和になるんですよ!」
何を言ってるんだ。戦争は武器だけの問題じゃない。
「そんな単純な話じゃ…」
「やって見ないと分かりませんよ!まずは行動!さあ、次の戦場に行きましょう!」
女に強引に手を引かれ、私はため息をついた。

3/10/2026, 3:14:34 AM

こんな夢を見た。郵便受けにガコンと何かが投函された音で目が覚めた。寝ぼけ眼を擦り、郵便受けを見に行く。郵便受けを開けると、分厚い茶封筒が入っていた。表を見ると、見慣れた筆跡で『大人になった私へ』とある。これは学生時代に私が未来の私へ宛てて書いたものだ。何を書いたんだっけ。ペリペリとペーパーナイフで開け、中身を見る。三枚ほどの手紙と写真が複数枚入っていた。手紙を読むと、学生時代の私の悩み、今やってること、未来への期待が書かれていた。我ながら微笑ましいと思いつつ、写真を見る。写真は卒業アルバムに入らなかった私の写真らしい。過ぎ去った日々に思いを馳せ、感傷に浸る。こういうのも良いものだ。そして、最後の一枚になったところで違和感を覚えた。私は手紙を書いただけで写真は入れなかったはずだ。手紙を入れた後、私が封をしたのだから写真は入れていない。後から先生が入れたかと思ったが、封は私が開けるまでそのままだった。じゃあどうやって?勝手に写真が封筒の中に瞬間移動でもしたというのか。それにこの写真も変だ。校内の写真ならまだ分かるが、私の登下校時の写真だ。いつ撮ったのだろう。それ以外にも校外に私と友人が遊びに行く写真がある。気味が悪い。もっと嫌なことに気づいてしまった。この封筒、消印がない。私は今一人暮らしで、卒業後誰とも連絡を取り合っていない。だから、私の現在の住所をクラスメイトや先生が知るはずがないのだ。じゃあ、今郵便受けに直接投函してきたのは一体…?先ほどよりも温度が下がった部屋の中で私は身震いした。

3/8/2026, 1:55:45 PM

こんな夢を見た。私は教室で授業を受けている。久しぶりに学生時代の夢を見たな。懐かしい気持ちで教室の中を見回し、黒板に向き直る。黒板には大きく『お金より大事なもの』と書かれていた。
「…よく、お金より大事なものがあると言いますが、皆さんにはお金より大事なものはありますか?」
お金より大事なもの?あまり深く考えたことはなかったな。悩む私とは対照的に、他の生徒たちが口々に具体例を挙げている。友人、家族、ペット…すぐに挙げられるほど大事なものがあるのは羨ましい。
「皆さんの周りには大事なもので溢れているんですね。素晴らしいです。でもそれを犠牲にすれば、大金が手に入ると言ったら皆さんは差し出せますか?」
困惑する生徒たちをよそに教師は教壇の下からアタッシュケースを取り出した。
「皆さんはとてもいい子たちなので特別ですよ。この中には一億入っています。大事なものを差し出せる方にこれを全て差し上げましょう」
途端に教室中がざわめいた。当たり前だが、学生にとって一億は途方もない金額だ。欲しいとは思うが現実味がない。
「差し出すものは今持っているものでお願いします。無いものは差し出せないので。人の場合は、その人の許可を取る必要はありませんよ」
教師は生徒たちを見回し、にっこりと微笑む。
「今、皆さんが挙げたものが一億の価値を持っているのですよ。誰か、差し出してもいい方はいませんか?」
これは授業なんだろうか?様子がおかしい。生徒たちも、こそこそと話し合っている。大方、一億は欲しいが警戒しているのだろう。
「うーん…誰も名乗り出ませんね。大金が手に入ると言うのに。仕方ありません、こちらから一人指名しましょう」
教師は、迷いなく私の方を指差した。
「あなたはまだ答えていませんね。あなたの大事なものを、そしてそれは差し出せるものか教えてください」
大事なもの…やはり思いつかない。
「無いなんてことはないでしょう。生きていれば一つはあるはずです」
沈黙し続ける私に教師は答えを催促する。挙げられた大事なものは私にしっくり来ない。
「一億ですよ、一億。あなたの大事なものと引き換えで全てもらえるんです」
お金より大事なものを引き換えることなんか、出来ないはずだ。そうだ、引き換えられないものと言えば一つだけあった。
「私の大事なものは自分自身。だから、一億積まれても差し出すことは出来ません」
「他に大事なものはありませんか?」
「私には私しかありません」
教師はため息をついた。
「他の皆さんは本当に良いんですか。皆さんがいい子なので、特別にそう言っているんですよ」
生徒たちは顔を見合わせている。どうする、と言わんばかりに。
「お金があっても守るもの自体が無ければ意味ありませんよ」
「あなたにはもう聞きました。良いですか、お金よりも大事なものはお金でしか…」
教師は完全に私から目を逸らした。その隙を見計らって私は教壇に近づき、アタッシュケースを奪い取った。
「あ、こら!」
教師が手を伸ばしたが、既にアタッシュケースは開き中身が散らばった。バサバサと落ちる束を近くの生徒が拾い、声を上げる。
「何だこれ!一番上の一万円札以外白紙じゃないか!しかも、一万円札もペラペラのただの紙だし!」
空になったアタッシュケースを投げ捨てる。教師は呆然と立ち尽くしていたが、笑い出した。
「ふ、ふふふ。やはり、あなたは本当に侮れない人ですね。今回はあなたの勝ちです。今度は必ず…」
教師はニヤリと笑うと、窓を開け跳躍する。下に着地すると、獣のように走り去っていった。

3/8/2026, 1:08:24 AM

こんな夢を見た。縁側で私は夜桜を見ている。昼の桜は当然美しいが、夜の桜も美しい。今晩は満月で淡い桃色の花が照らされいる。光っているように見えて美しさが際立つ。こういうのを桜月夜と言うのだろう。
「月と桜を肴に一杯いかが?」
後ろの障子が開き、お盆に載った徳利とお猪口が出てきた。
「ああ、一杯もらうよ」
ニュッと障子の隙間から白い手が伸び、徳利を掴むとお猪口に酒を注いだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
お礼を言い、お猪口を手に取る。ふと、二人で飲んだ方が楽しいのではないかと思い、声の主に尋ねる。
「あんたもこっちで飲まないか?」
「お酌をするのが好きなので」
「じゃあ飲まなくてもいいから、こっちで月と桜を見よう。綺麗だぞ」
「顔を見られたくないので」
難儀な奴だ。私はそれ以上声をかけずに酒をあおった。白い手が徳利を持っていたので、もう一杯もらった。
「…来年もここで見てくれますか?」
「そうだな。今夜の月と桜を見ながらの酒は美味かった。また来る、来年はあんたと酒が飲めると良いんだけどな」
障子の向こうから、息を呑む音がした。
「嬉しい。来年もお待ちしております」
ビュウと突風が吹き、桜が舞う。満月を囲むように散った花びらがぐるぐると回る。それを眺めている内に私は気が遠くなっていった。
「約束ですよ。月と桜が満開になったら、あなたを迎えに来ますから」
気を失う寸前、そんな楽しそうな声が聞こえた。

Next